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サヴァン症候群の特徴とは【診断や具体的な症状をしっかり解説】

<監修医師 豊田早苗>

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著名な音楽家や画家には、凡人にはない優れた才能があると考えられています。彼らのような天才脳を持つ人々は、凡人にないような脳構造を持ち、IQも高いのでは?と考える人も多いでしょう。

 

しかし、実は一般人よりIQが低い人や、重度の障害を持つ人も少なくなかったようです。

 

このように、一つの分野で並外れた能力を発揮しているにもかかわらず、日常生活を一人で送れないほどの障害を持つ人サヴァン症候群と呼びます。

 

世界でもサヴァン症候群として有名な人の中には、私達がよく知る山下清さんや、映画「レインマン」の実在モデルとなったキム・ピークさん、国内ドラマ「ATARU」の主人公が有名です。

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サヴァン症候群とは

 

サヴァン症候群が初めて論文上に書かれたのは19世紀後半の事です。

 

当時、ダウン症を発見したイギリス人医師ジョン・ランドン・ダウン医師が驚異的な記憶力を有していた男性を見つけたのが始まりです。

 

その記憶力というのは、読んだ書籍は一回で記憶でき、逆から読み上げる事もできるというものでした。しかし他の学習能力は通常並みであったため「idiot savant」=賢人白痴と名付けられました。

 

現在のサヴァン症候群の語源は、ここからきていますがidiotがやや差別的な意味合いを含むため、後にサヴァン症候群と名称が改められました。

 

現代では、知的障害や発達障害を有する人の中で、ある特定の分野において卓越した能力を持つ人の事をサヴァン症候群と呼びます

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サヴァン症候群の5つの能力例

 

サヴァン症候群の優れた能力は本の暗記だけではありません。今まで確認された驚くべき能力は次のようなものがあります。

 

カレンダー計算

適当な月日を伝えると、その日付が何曜日であるかが瞬時に計算できる。しかし他の計算は全く苦手で、九九が言えない人だったようです。

 

映像記憶

写真を見せた後に紙とペンを渡すと、記憶だけを頼りに正確に模写できますが、風景画は一切描くことができなかったようです。

 

逆のパターンに、自分が見た風景画を正確に絵画として表現できる人もいます。

 

音楽の再現

一度聞いた音楽を完璧に自分の演奏で再現できます。これは歴史の中でも、著名な音楽家などに見られた才能のようです。

 

暗記

書籍や電話帳、円周率などを暗唱できます。特に理解を必要とせず暗記できたようです。

 

語学

日常生活には支障をきたすほどの障害があるにもかかわらず、数か国語を流暢に話すことができました

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サヴァン症候群の原因はいまだ不明

 

統計が難しい

サヴァン症候群の原因はいまだにはっきりしていません。というのも、その才能の幅と、症状を持つ人の基本データに大きな差があるため比較検証が難しいのでしょう。

 

一般的にサヴァン症候群は自閉症やコミュニケーション障害を持つ人に現れると考えられています。しかし事故や病気などによって後天的にサヴァン症候群になった人も存在します。

 

認知症やてんかん発作の後にサヴァン症候群を発症したという事例もあるようです。

 

さらに、症例が極めて少ない事も原因特定が困難な理由の一つでしょう。わかっているだけでも、全世界に数十人しかいないのです。

 

左脳障害が原因か

ただし最新の調査でわかった事は、サヴァン症候群では左脳障害、左脳損傷を持つ人が多いということです。

 

先天的な自閉症や知的障害の患者では、生まれ持って左脳に障害があるとする意見もあり、後天的にサヴァン症候群になったケースでは左脳に何らかの衝撃を受けて発症しているパターンが多くあります。

 

これらの観点から、サヴァン症候群は左脳障害を右脳が補うように発達した結果、天才的な能力が開花したのではないかと考えることもできます。

 

精神発達遅滞についてはこちらを参考にして下さい。

【関連記事】
精神発達遅滞の3つの特徴【症状や原因をわかりやすく解説】

 

脳の神経伝達の違い

脳の電気信号がわかる特殊な機械を使用して測定したところ、通常の人とは明らかに違う点が発見されました。

 

例えば、何か一つの問題を出した時に、一般の人であれば脳の様々な領域を使って広範囲に答えを導き出そうと考えます。

 

それに比べてサヴァン症候群や自閉症といった症状を持つ人は、脳が興奮する範囲がとても狭く、限られた範囲のみで答えを考える傾向があるようです。

 

このため脳が使用するエネルギーを、狭い領域内で最大限利用できるため天才的な能力を発揮しているのではないかと考えられています。

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サヴァン症候群の特徴的な3つの症状

 

サヴァン症候群の診断を受けた人の中には、自閉症や知的障害を有する人がほとんどです。このため、自閉症と同様な症状をあらわします。

 

男性に多い

女性と男性を比較すると男性に多く見られます。これは自閉症も同じで、男性が多い傾向があります。

 

対人関係における障害

✅ 目線を合わせられない

✅ 相手の気持ちがわからない

✅ 場の空気が読めない発言、行動

などが挙げられます。これらの行動や動作を無理に変えようとすると、パニックを起こし落ち着きがなくなります。

 

コミュニケーション障害

✅ 言葉の発達が遅い

✅ 会話の時、言葉のオウム返しをする

✅ 人の話を遮って話出すことがある

✅ 抽象的表現が理解できず、皮肉がわからない

 

日常的に必要とされるコミュニケーション能力についてはこちらも参考にして下さい。

【関連記事】
ノンバーバルコミュニケーション【意味やスキルを簡単に解説!】

固執的な行動

自閉症では環境変化への適応が難しいため、決まった行動を好む傾向があります。

 

✅ 毎日決まった行動をとり、予定外の行動には対応できない

✅ 興味があることに集中し、興味がないことには全く無関心

✅ 初めての場所や人、物には抵抗を示す

 

IQには個人差がある

サヴァン症候群では、IQに問題がない人もいれば、低IQで日常生活が難しい人もいます。

 

これは自閉症の分類上、仕方がないことなのですが、サヴァン症候群は明確な診断基準がないため、アスペルガー症候群と混同されているようなところがあります。

 

アスペルガー症候群は自閉症の分類に属していますが、コミュニケーションや社会的な障害を持つだけでIQには問題ありません。そのため高機能自閉症と呼ばれます。

 

サヴァン症候群も自閉症の分類に属してはいますが、その障害は個人差が強く、低IQで日常生活が困難なレベルの人もいれば、IQには問題ないがコミュニケーションや人との関わりが困難な場合など様々です。

 

ただ、アスペルガー症候群とサヴァン症候群は定義の範囲がお互い似ている部分があるというだけであり「アスペルガー症候群=サヴァン症候群」というわけではありません。

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サヴァン症候群の診断方法

 

サヴァン症候群は、実は明確な診断基準があるわけではありません。

 

というのも、サヴァン症候群の定義が「知的障害や発達障害を持つ者の内、特定の分野において優れた能力を有するもの」と曖昧なため、明確な診断基準を作成することが困難だからです。

 

このため前述した通り、IQに問題がない自閉症「アスペルガー症候群」と混同されることがしばしばあります。

 

このため、自閉症やアスペルガー症候群、サヴァン症候群を疑った場合には、専門医にしっかりとした診断を受ける事が望ましいと言えるでしょう。インターネットを検索すると、簡単なセルフチェックを行う事が出来ます。

 

しかしただでさえ症例の少ないサヴァン症候群ですから、専門医を探すとなると大変です。まずは身近にある専門機関に相談してみると良いかもしれません。

 

子供と成人では相談する機関が異なってきます。以下に機関名を挙げました。

 

小児

✅ 保健センター

✅ 子育て支援センター

✅ 発達障害支援センターなど

 

成人

✅ 発達障害支援センター

✅ 障碍者就業・生活支援センターなど

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サヴァン症候群の半数以上が自閉症

 

サヴァン症候群を持つ人の過半数が、自閉症や知的障害を持つと言われています。逆に自閉症や知的障害があるからといってサヴァン症候群というわけではありません。

 

しかし自閉症や知的障害を持つ人の中には、その強いこだわりの性格から、一つの分野に卓越した能力がある人もいます。

 

興味深い統計の中に、自閉症患者の10人に1人、脳損傷患者あるいは知的障害者の2000人に1人がサヴァン症候群であると言われています。

 

一概に自閉症といっても、障害されている脳機能の分野によって障害に差があり、その分類は大きく分けて3種類あります。ここでは、自閉症の大きな分類とその症状についてみていきます。

 

自閉症の分類には、「知的障害の程度」「対人・言語の障害の程度」によって分けられます。

 

自閉症についてくわしくはこちらも参考にして下さい。

【関連記事】
自閉症の遺伝確率は高い?【特徴や傾向を丁寧に解説】

 

知的障害

知能に障害を来しているが、言語や対人関係においての障害はほとんど見られないか、軽度の障害であるタイプの自閉症になります。

 

話すことや書くことは苦手ですが、こちらが意図したことを理解したり、適切なコミュニケーション手段があれば意思疎通が可能です。

 

しかし、お釣りの計算ができない、体を洗う時に洗い残しが出る、適切な衣服を選択できないなど、生活支援が必要です。重度の障害になると、コミュニケーションや日常生活が困難になる事もあります。

 

カナー症候群

知的障害を有し、対人・言語分野の障害もある自閉症カナー症候群と呼びます。

 

こだわりが強く落ち着きがない事が特徴で、無理に言う事を聞かせようとすると感情の制御が困難になり、大声をあげたりパニックになるタイプの自閉症になります。

 

そのため集団行動をするときは周囲とのトラブルが起こりやすいため注意が必要です。

 

アスペルガー症候群

別名高機能自閉症と呼ばれるタイプの自閉症です。対人・言語に障害を持ちますが、知的にはほとんど問題ないか、むしろ高い人もいるくらいです。

 

対人において相手の気持ちがわからない、自分本位のコミュニケーション、皮肉がわからないといった特徴がありますが、幼少期からコミュニケーションの訓練を行う事で、問題なく過ごせる人もいます。

 

発達障害についてはこちらも参考にして下さい。

【関連記事】
思い通りにならないでイライラする!【これ危険な病気ですか?】

 

自閉症といっても、障害の種類によって症状も違ってきます。自閉症を患う多くの人は、感情がコントロールできない事を自覚しており、自身も悩んでいる事が多いのです。

 

これらの症状は根気よく繰り返し慣れさせる事で緩和することができます。

 

天才的な能力を持つと言われるサヴァン症候群ですが、自閉症や知的障害を持つ人も多く、自身の障害に悩んでいる人もいます。

 

私達は、障害からその人を決めつけるのではなく、個性として受け入れる姿勢をもちたいものです。

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