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多発性外傷は死亡の危険率が高い【症状や治療法を詳しく解説】

<監修医師 豊田早苗>

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事故などのニュースで「多発性外傷」という言葉を耳にしたことはありませんか。

 

多発性外傷によって、命を落とす方も少なくはありません。今回は「多発性外傷」についてお話していきましょう。

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多発性外傷とは

 

多発性外傷とはその名の通り「外傷」が多発している状態です。

 

「頭部・胸部・腹部・骨盤・手足」のどこか2か所以上に命の危険を及ぼす重度の外傷が、同時に存在する状態を多発性外傷、または多発外傷と言います。

 

臓器が単体で損傷するよりも、複数でダメージを受ける方が、互いの臓器に悪影響を及ぼします。

 

単体でダメージを受けた時よりも、複数でダメージを受けた場合の方が死亡率も約20~30%と高くなります。

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多発性外傷の症状は命の危険がある

 

多発性外傷は命の危険を伴います。多発性外傷の主な症状としては損傷した箇所の激しい痛みと出血が主になりますが、症状には比較的軽度なものと重度のものに分ける事が出来ます。

 

比較的軽度な症状

比較的軽度な症状として挙げられるのが、重たい物によって圧迫や打撲を受けたりした際の症状です。

 

1. 挫傷・・重たい物による圧迫や衝撃、衝突によって打撲を受けて皮下組織や臓器が損傷する事を言います。皮膚の表面には傷がなく、皮下出血やむくみがあります。

 

2. 挫創・・重たい物によって打撲や圧迫を受ける事で、皮膚や筋肉が損傷してしまう事を指します。出血や皮下出血、損傷部の腫れや痛みがあります。

 

3. 挫滅創・・車など急速に動く物体と衝突して、強い衝撃や摩擦などを受けた場合に皮膚や皮下組織、筋肉などが受ける損傷の事を挫滅創と言います。

 

皮膚がめくれたり、手足の指など身体の一部が押しつぶされてしまうケースもあります。

 

重度の症状

外傷が重症で、大量出血や傷口から内臓がはみ出る内蔵脱出、手足の切断などが挙げられます。

 

その他にも意識障害・呼吸障害・循環障害・神経機能障害などが起こったり、多臓器不全を起こし、短時間で死に至るケースもあります。

 

1. 意識障害・・呼びかけても反応がなく、反応があってもつじつまが合わない会話になったりします。意識も混濁していたり、眠り込んでしまい、昏睡状態になる事もあります。

 

2. 呼吸障害・・呼吸が弱くなったり、呼吸が増加して苦しそうになります。

 

多発性外傷によって呼吸機能が低下して、全身の細胞に酸素が行き渡らなくなると、様々な箇所にダメージを受けます。特に脳が酸素不足になってしまった際には、大きなダメージを受ける可能性があります。

 

3. 循環障害・・血液やリンパ液は身体の中を循環して、老廃物を流してくれます。

 

この血液やリンパ液の循環に障害が起こると、脈拍が高くなり、唇や手足の指先が紫になるチアノーゼが起こります。循環障害は意識障害、呼吸障害にも影響を及ぼします。

 

4. 神経機能障害・・多発性外傷によって神経系統に障害を受けると、様々な機能障害を生じます。特に脳や脊髄などの中枢神経に障害が起こると、情報伝達が損なわれます。

 

これが損なわれる事で、手足の感覚がなくなったり、痛覚を感じなかったり、手足を動かせなかったりします。

 

精神的ダメージも大きく、ASD(急性ストレス障害)やPTSD(心的外傷後ストレス障害)が起こる事もしばしばあるようです。

 

5. 多臓器不全・・神経系・循環系(心臓血管系)・血液系・腎臓・呼吸器・肝臓・消化器のうち、二つ以上が多発性外傷によって機能が低下すると命の危険を伴います。これを多臓器不全と言います。

 

致死的3徴について

多発性外傷では「低体温」「酸性血症(アシドーシス)」「凝血異常」という3つの症状がしばしば見られます。この3つの症状は「致死的3徴」または「致死的症状」と呼ばれ、これらの症状があると死に至る事があります。

 

1. 低体温・・人の体温は約37度前後に保たれていますが、多発性外傷によって頭部の損傷や広い範囲の熱傷、大量出血などによって体温が低下します。

 

体温が34度以下になるのは極めて危険な状態であり、臓器の機能も低下していきます。不整脈や心房細動なども起こりやすくなります。

 

2. 酸性血症(アシドーシス)・・人の体液や血液は「ややアルカリ性」の状態に保たれています。

 

これが多発性外傷によって呼吸機能や腎機能が低下する事によって、血液が酸性に傾いてしまいます。人は酸性に傾き続けると長く生存する事が出来ません。この事を酸性血症、または酸血症と言います。

 

3. 凝固異常・・負傷した部分からの出血が止まらない事を「血液凝固異常」と言います。

 

多発性外傷によって大量出血すると、血液を固めるために必要なたんぱく質である凝固因子が大量に失われてしまい、血液が固まらなくなってしまい、出血が止まらなくなります。

 

人は血液の三分の一、または二分の一を失うと死に至るケースが多いです。

 

このように多発性外傷には比較的軽度なものから、重度の症状、更に症状が酷くなると死に至る事もあります。

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多発性外傷を引き起こす原因とは

 

多発性外傷を引き起こす原因は一体何なのでしょうか。一番の原因はやはり「事故」です。

 

不慮の事故や交通事故、高いところから転落する転落事故、重い物に挟まれてしまったりする事故など様々な要因があります。

 

その他にもニュースで見かける集団暴行などでも、多発性外傷を起こし死亡するケースもあります。

 

様々な事故、または事件性を伴う暴行などによって多発性外傷を引き起こし、命を落としてしまう事例は少なくはありません。

 

多発性外傷患者の判断緊急度はコレ

 

多発性外傷は死に至るケースも非常に多い為、迅速な判断と治療が必要になります。その際の症状による緊急度を3つのステップで見ていきましょう。

 

第一ステップ

意識状態の異常(受け答えがトンチンカンなものだったり、呼びかけに反応がない)、呼吸状態の異常(呼吸が弱い、苦しそう)、血液循環の異常(脈が弱い、手足が冷たいなど)、これらの生命兆候(バイタルサイン)の異常を確認し、一つでも異常を認められた場合には重症と判断します。

 

第二ステップ

第二ステップはけがの状態から判断します。

 

✅ 頭部、顔面、頸部、胸部、腹部、背部、腰部の切り傷や刺し傷、大きな打ち身、傷口からの大量出血

✅ 内蔵脱出

✅ 頭部、胸郭・脊柱・骨盤・四肢の変形、手足の切断、運動麻痺

 

これらの状態を判断し、確認できた場合にには重症と判断します。

 

第三ステップ

自動車やバイク事故などの交通事故、重たい物に挟まれたり下敷きになったり、落下事故などに関しては迅速な救助と治療が必要になる為、重症と判断されます。

 

このように医師は外傷を正確に判断し、状況によって優先順位を決めて治療を行います。

 

多発性外傷の緊急度は、外傷の状態だけでなく患者の体質や体型、持病の有無、年齢などによっても異なってきます。

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多発性外傷の検査方法

 

多発性外傷は命の危険が伴う為、主に検査や診断は救命センターにて迅速に行われます。

 

重症度、緊急度の判断

意識、呼吸、血圧、脈拍などのバイタルサインを確認し、血液検査、尿検査、X線検査の結果より詳細な状態を把握していき、重症度や緊急度を判断します。

 

外傷の主な緊急検査について

外傷に関しての主な緊急検査は1.生理学的検査(血液生化学検査、動脈血ガス分析検査)、2.画像検査(超音波エコー検査、X線検査、CT検査、血管造影検査、内視鏡検査など)、3.モニター検査(心電図検査、カテーテル検査)が挙げられます。

 

これらは救命措置と前後して行われ、緊急度を判断していきます。

 

その他

その他にはMRIの検査によって、損傷の詳しい状況を知る事が可能になります。

 

またどのような状況で多発性外傷になったのか(事故、その当時の状況など)を知る事も重要になります。

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多発性外傷の治療法は優先順位が大切

 

多発性外傷の治療に関しては、外傷の全体像を把握する事が大切です。複数の外傷が影響し合い、重症化して命の危険を及ぼしているわけですので、医師も迅速な判断と素早い対応が必要になります。

 

その為、治療にも「優先順位(プライオリティー)」が重要になります。

 

多発性外傷に関してはどの外傷も生命に関わるものであり、どの部分が最も重症で、最も緊急を要するかなど迅速かつ正確に判断して、適切な治療が必要になります。

 

多くの場合に胸部・頭部・腹部・骨盤・手足が治療の優先順位となります。外傷の部位、重症度、緊急度は患者さんの状態によっても異なってきます。

 

また多発性外傷の患者さんに関しては、しばしばダメージコントロールという方法が取られます。

 

外傷からの大量出血がある場合には、まずは出血を止める処置を行い、集中治療室などにて全身状態の回復を行います。その後全身状態が落ち着いてきたところで、損傷箇所などの根本的治療を行います。

 

緊急の手術で目の前の危険を回避し、全身状態の回復を図った後、再度手術を行い根本的な回復を目指すという3段階の治療を行う事で、生命の危機を脱する事には有益な治療法です。

 

多発性外傷は生命の危険を伴い、治療や検査にも迅速かつ正確な対応が必要となってきます。医師にも難しい判断を迫られる事もある、非常に難しい状態です。

 

多発性外傷の最も多い原因は事故です。不慮の事故などもありますが、自分で自分の身を守る事も必要だと言えるでしょう。

 

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