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観念奔逸とは?【統合失調症でなるケースを解説!】

<監修臨床心理士 鈴木崇弘>
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観念奔逸という言葉を聞いたことがあるでしょうか。症状を聞けば誰もが思い当たる節のある症状ですが、意外と原因に精神的な病気が関与することを知っている人はいません。

「ちょっと話し方が下手な人かな」と思っていると、対処や介護の仕方を誤る可能性もあります。観念奔逸とはどんな症状なのか、また統合失調症になるケースを解説します。

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観念奔逸とは

 

観念奔逸とはどのような概念か

観念奔逸(かんねんほんいつ)とは、思考が寄り道してしまい目的観念を見失ってしまうことを指します。反対の概念としては「思考制止」が挙げられます。こちらは思考のスピードが遅く、話の寄り道はありません。

 

観念奔逸の具体的症状

観念奔逸に陥った人を客観的にみると、「ひどくまとまりのない話を喋っている」ように見え、まるで酔っ払いのとりとめもない話を聞かされている状態に感じます。

観念という面から見れば、表面的にはつながりのある話をしますが、全体としては統一感がなく、次々と頭に湧く考えを、本筋を逸脱し本筋にとらわれずに語ります。

そのためやたらと早口になったり多弁に感じますが、本人が自覚的に話しているわけではないので、「相手に話が通じない」という事実に関して苦痛は感じないことがほとんどです。

躁状態の場合も同様の症状が見られます。躁状態とは、気分障害の一種です。明るい気持ちになるイベントや情報もないのに、感情だけが先行して高揚する状態を指します。「うつ」の症状と交互に出る場合もあります。

そのため両者を併せて「躁鬱病」と呼ぶこともあり、思考過程の乱れの他に身体症状も出ます。特徴的な身体症状は不眠、食欲不振(食事をとっても味気なく感じる)、涙が止まらない、全身の倦怠感などです。

鬱の波が来ると自殺願望が起きることもあります。また病気でなくても、高齢者になると認知症や痴呆を発症しやすくなり、思考力が低下すると観念奔逸の症状を示すことがあります。

観念奔逸の症状が悪化すると、次々と頭に浮かんだ単語を並べるだけになり、他者との意思疎通は困難になります。

 

鬱の症状についてはこちらを参考にして下さい。

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プチ鬱症状チェック!この診断を試してみて!

 

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統合失調症で観念奔逸になる?

 

統合失調症と観念奔逸の関係性

統合失調症とは精神の構造がうまく機能していない状態で、脳に何らかの異常がある状態を指します。脳に届けられる情報を正しくまとめることが出来ず、「妄想」や「幻覚」の症状が現れるのが特徴の病気です。

脳のはたらきにまつわる障害のため、思考過程に障害が生じることもあります。主な思考障害としては「思考阻害」や「支離滅裂」が見られますが、人によっては「迂遠思考」や「観念奔逸」が起きるという実例があります。

なぜこのような思考過程のエラーが出てしまうのかというと、統合失調症に特徴的な「妄想」や「幻覚」が大きな原因となります。思考とは入力された情報に基づいて、経験や知識と照合して目標にたどり着く作業に他なりません。

しかし妄想や幻覚などによって誤った情報が入力されると思考のスタート地点から間違っていることになります。

多くの人はこういった思考障害を経験や学習から矯正することが出来ますが、統合失調症の患者にはその訂正作業が難しいのです。

また妄想や幻覚などの積極的な症状だけではなく、思考能力の低下や意欲の低下、判断能力の低下に伴うIQの低下も見られます。

 

観念奔逸のメカニズム

統合失調症を発症すると観念奔逸が起きる具体的なメカニズムについて解説します。なぜ統合失調症を発症するのかという問題はまだ解明されていませんが、症状を引き起こすメカニズムについては明らかになっています。

統合失調症はドーパミンという神経伝達物質の伝達に異常が起きるために引き起こされます。

まずドーパミンとは、脳の中枢で別の脳神経細胞に電気信号を伝達する作用がある脳神経伝達物質です。主に物事に対する意欲や学習、動機を司る物質です。

このドーパミンが異常なほど過剰に分泌されると、不必要に脳が活性化し、観念奔逸と言ったとりとめもない考えを頭に浮かぶ片端から話してしまう症状が現れるのです。

つまり観念奔逸は、脳内神経伝達物質の分泌抑制により阻害できると考えられますが、ドーパミンの異常は何も過剰分泌だけではありません。異常に減少する場合もあります。

ドーパミンが減少しすぎると今度は感情表現が薄くなったり意欲が低下し、酷い場合は社会的な引きこもりになってしまいます。

観念奔逸が起こる脳の過剰な活動を統合失調症の「陽性症状」と呼び、逆に身体面でも精神面でも機能が低下する症状を「陰性症状」と呼びます。

 

統合失調症の見分け方

統合失調症の症状も軽度のものから重度のものまであり、重度になると他者との会話が成立しない高度な思考障害が発生します。

しかし軽度の統合失調症の場合、「連合弛緩」との区別が付きにくく、「なんとなく話がまとまっていないな」程度にしか感じられません。

人と話すのが苦手な人の中にはまとまりのある話し方ができない人もいますので、統合失調症だと判断するのは難しくなります。注意深い分析・診断が必要となります。

人とうまく話すためのコツについてはこちらを見て参考にして下さい。

【関連記事】
会話が続かない悩み【話題がなくても安心な裏ワザ会話術を伝授】

 

観念奔逸は治療できるのか

観念奔逸だけを治療する方法は、今のところありません。ただし、統合失調症や躁鬱病などの疾患を治療する過程で観念奔逸が改善されることはあります。

統合失調症は、殆どのケースで薬物療法が選択されます。これはドーパミンの分泌を抑制したり、受容器に結合することを防ぐ治療薬を投与するというものです。

つまり電気信号のはたらきを阻害することにより、統合失調症を引き起こす原因を取り除くのです。ただし、脳内の神経物質を阻害するわけですから、副作用としてIQの低下が見られます。

平均して10ほどIQは低下する傾向があり、観念奔逸が抑えられたとしても、多少の思考の停滞が引き起こされるのは確かです。

脳内物質と一般的に言うところの「頭の良さ」の関連性についてはこちらを参考にして下さい。

【関連記事】
頭の悪い人の6つの特徴!【原因はこれだった!】

 

観念奔逸についてお伝えしました。老化による思考力判断の他、躁鬱病や統合失調症でも観念奔逸は発症する可能性があります。

統合失調症は脳内の情報伝達物質であるドーパミンが異常に分泌されるせいだと考えられています。過剰に分泌されることで思考がとりとめのないものになり、観念奔逸の症状が現れると考えられています。

介護をする人や周囲の人は、観念奔逸に隠された病気に注意して対処しましょう。

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