股関節炎の原因や治療法ガイド【大人・子供別に解説します!】
<監修柔道整復師 りんご>
普段何気なく動いていますが、ある日突然歩くことも座ることも立つことも不自由を感じることになれば困りますよね。もしかしたらそれは股関節炎が原因かも知れません。
そこで今回は股関節炎の原因や治療法を解説します。大人と子供では理由が異なりますので、大人・子供別に分かりやすく解説していきます。
気になる所から確認してみよう
股関節炎の原因
股関節とは足の付け根にあたる関節です。大腿骨と骨盤をつないでいます。
立つ・しゃがむ・座るといった姿勢保持はもちろん、歩く・走るといった動作やあらゆるスポーツに関係する下肢の動作を行う上で重要になるパーツです。
この股関節部分に炎症が起きることを「股関節炎」と呼びますが、なぜ股関節炎が起きるのでしょうか。その原因を解説します。
原因不明
実は股関節炎の直接の原因ははっきりとしていません。大人よりも子供や乳幼児に多いということは分かっていますが、大人でも発症することがあります。
どのようなケースが存在するのか、以下で解説します。
免疫力の低下
子供も大人も共通する原因として、「免疫力の低下」が考えられます。何らかの理由で免疫力が低下すると防衛機能が弱まり、そのタイミングでウイルスや外傷などにより炎症を起こしやすくなります。
子供、特に乳幼児はまだ免疫力が弱く発症しやすい原因と考えられますが、大人でも免疫力が低下していると発症するおそれがあります。
特に子供は風邪を引いたときは免疫力が弱まっており、「単純性股関節炎」を引き起こすことが多いです。
単純性股関節炎は大人でもまれに発症しますが、風邪を引いたタイミングで股関節や膝の痛みを感じ、歩きにくくなります。
一時的なものなので、風邪が治り免疫力がまた高まると自然と症状は消えます。
風邪で起こる関節痛についてくわしくはこちらを参考にして下さい。
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細菌の侵入
乳幼児に多く見られるのが、細菌の侵入による「化膿性股関節炎」です。体内に侵入した細菌が股関節に炎症を引き起こし、関節内部に膿が溜まります。
痛みと腫れを伴いますが、乳幼児が訴える身体の痛みは分かりにくい上、目視で股関節付近の腫れを発見することが困難なことから、発見が遅れるケースが目立ちます。
早期に治療を開始しなければ関節が破壊されるリスクが高まり、特に乳幼児は骨や軟骨が変形してしまう原因になります。後遺症を残さないためにも、早期発見と治療が重要です。
自己免疫疾患
関節リウマチが原因となり股関節炎を発症することを「リウマチ性股関節炎」と呼び、子供よりも大人に多く発症が診られます。
関節リウマチも原因不明ではありますが、自分の免疫が誤って己の関節を攻撃する疾患です。攻撃された関節は痛みや腫れを発症します。
この場合は関節リウマチの治療をうけることになります。
姿勢や外傷
姿勢が悪い人は左右どちらかに重心が傾くため身体の負担が偏ります。そのため股関節を酷使し炎症を引き起こすことがあります。
股関節の動きは周辺の筋肉によって助けられますが、股関節周りの筋肉が衰えていたり運動不足だとやはり股関節炎を引き起こしやすくなります。
また大腿骨頚部転子部骨折といって、ふとももの付け根辺りの大腿骨を骨折した影響で、股関節炎を発症する場合があります。
特に女性に多く見られますが、これは女性は妊娠・出産を経験するとカルシウムを大量に消費して骨の強度が足りなくなったり、閉経後に女性ホルモンのバランスが崩れ骨粗しょう症を発症しやすくなるためです。
病気
病気が原因となり股関節炎が合併症としてあらわれる場合があります。可能性のある病気は以下の通りです。
【変形性股関節症】
骨や軟骨が破壊されたことで慢性的に関節炎を引き起こす病気です。
子供ではなく大人に多い症状で、特に女性に多い病気です。その発症率はなんと男性の5倍ですが、最近では高齢者にも多い症状となっています。
徐々に症状は悪化していき、股関節だけではなく下肢のあらゆるパーツが痛みだすので、早めに医療機関で検査を受けたほうがいいいでしょう。
【特発性大腿骨頭壊死症】(とっぱつせいだいたいこつとうえししょう)
大腿骨頭と呼ばれる骨に血液が通わなくなり、壊死してしまう病気です。原因不明で国の難病指定となっており、30~50代の大人に発症がみられます。
股関節に近い場所に発生し、骨が壊死するだけの段階では痛みを感じませんが、壊死した部分が潰れると痛みを感じます。
股関節炎の症状
股関節炎の主な症状について解説します。
大人は「股関節に異常がある」と自覚しやすいですが、子供は乳幼児の場合は本人が自覚しにくいため、発見が遅れることがあります。
どのような症状が出るのか知っておき、子供の異変を早期に見抜けるようにしておきましょう。
痛い
股関節に炎症が起きると、患部が腫れたり痛みを伴います。
乳幼児が股関節炎を発症した場合、無理に足を動かすと痛がって泣きます。極度に痛むと子供から大人まで歩けなくなります。
関節が動きにくい
股関節に炎症が起きると、股関節の可動域が狭くなり、足を動かしにくくなります。可動域が狭いと「歩きにくい」「足を引きずる」といった、通常の歩き方とは異なる症状を見せます。
子供や乳幼児の場合は特にうまく身体の異変を表現できませんので、歩き難そうにしていいたら、股関節炎など身体の異常を読み取れます。
股関節が固い場合の原因についてはこちらを参考にして下さい。
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発熱
体内で炎症が発生すると、治癒のために体内の熱を上げようと身体は自動的に反応します。そのため38℃前後の発熱を引き起こすことがあります。
股関節炎の検査方法
単純性股関節炎の場合は症状が一時的なものなので難しいですが、それ以外の股関節炎であればレントゲン撮影や血液検査・MRI検査を行うことで病状診断を行います。
股関節炎の治療法
原因不明なことも多い股関節炎ですが、幸い治療については方法が確立しています。どのような治療法があるのか解説します。
薬物療法
股関節に炎症が出来る場合は、体内の免疫力が低下していることがほとんどです。そのため抗生物質を静脈投与し、炎症をこれ以上悪化させないようにします。
痛みが激しい場合は鎮痛剤も投与します。摂取方法は内服薬以外にも注射や座薬など、症状に応じて変わります。
筋肉の衰えなどに伴う股関節炎の場合は、湿布や塗り薬が処方されることもあります。
安静
単純性股関節炎の場合は、股関節を動かさないでいることが最も重要です。免疫力が復活するまで、約10~14日ほど安静にして過ごします。
痛みが酷い場合は同時に薬物療法も行います。ただし痛みが過ぎ去ったら、運動した方が股関節の強化のためにはいいでしょう。
安静の摂りすぎは下肢の筋力を衰えさせ、股関節炎発症の確率を高めます。
股関節周辺のトレーニング方法についてはこちらを参考にして下さい。
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手術
股関節炎により膿が関節に溜まってしまうと、自力で排出するのは難しいです。
そのため内視鏡により関節に抗生物質を含む生理食塩水を注入し洗浄します。そして膿を排出するチューブをとりつけます。
またリウマチ性股関節炎を発症した場合は滑膜切除術(滑膜が増えすぎた場合)や人工股関節置換術に踏み切ることもあります。
さらに痛みを伴う関節を切除する「骨切り術」や股関節の軟骨を取り除いた後に金属プレートでなくなった関節の代わりに固定する「関節固定術」などが整形外科で行われる場合もあります。
運動
原因が筋力不足だった場合など、病気や免疫力低下以外の原因の場合には運動療法が有効です。
また股関節炎の痛みが引いた後に、衰えた股関節周辺の筋肉や神経の回復のためにリハビリとして運動療法を取り入れる場合もあります。
固まってしまった股関節を広げるストレッチ、衰えた下肢の筋肉を鍛えるための筋トレや水中ウォーキング、自転車など症状や年齢に併せて運動は行います。
肥満の人はまずは体重を運動で落とすことから始めましょう。股関節への負担を減らすことが出来ます。激しい運動は痛むという場合には無理をせず、気分転換の散歩程度で十分です。
リハビリとして病後に行う場合は、必ず医師や専門家の指導の下に行いましょう。
股関節の原因や治療法について大人・子供別に解説しました。
子供の方が股関節炎を発症しやすいですが、早期に治療を開始すれば障害も残らず生活していけます。保護者が子供の異変にいちはやく気付く必要があります。
大人の場合は、生活習慣に影響されることがほとんどです。股関節の痛みは放置せず、早めに医療機関を受診して治療を行いましょう。
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