術後の発熱のメカニズム解説!【原因を知れば不安解消!】
<監修医師 まっちゃん>
何かしらの手術をした後、発熱を起こすことがあります。発熱にもいくつか理由があり、その原因によって問題ない発熱と問題ありの発熱があるため、自己判断は禁物です。
術後の発熱メカニズムについて知り、不安を解消しましょう。
気になる所から確認してみよう
術後の発熱に不安!そのメカニズム!
そもそも発熱とは感染症や外傷を負ったとき、それらから体を守ろうとする免疫機能の反応であり、いわゆる生体防御反応の一つです。
熱を引き起こすとき、発熱因子とよばれるパイロジェンが放出されます。発熱因子には大きく分けて2つの種類があり、内在性発熱源は、主に白血球が働き体の感染症などに対応するために発熱します。
例えば、白血球から放出された炎症性サイトカインという物質は、プロスタグランジンという発熱物質を脳の一部である視床下部に働きかけさせ、発熱を促進されます。
一方外来性発熱源は体内に感染しようとする菌による発熱です。侵入した菌が私たちの体の中の防御機能である白血球と反応した時に出る熱を発生させます。エンドトキシンともよばれています。
外因性発熱源
外傷には、怪我だけでなく、手術も含まれます。これは、体にとって傷つけられるということは一緒だからです。
手術後の主な発熱原因は、手術によって受けた体のダメージを修復しようとし、発熱することが原因です。
一般的に、侵襲(生体を傷つけること)の程度が大きいほど、パイロジェンが多く作られるため、高熱になりやすい傾向にあります。
微熱の原因についてくわしくはこちらも参考にして下さい。
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術後の発熱の3つの原因
術後の発熱が起こる原因を段階別にご紹介します。
温度の調整機能
人間には体温を調節する機能があります。その調整機能の中に、体温をある一定の温度にセットする機能があります。この温度をセットポイントと呼び、通常約37度と言われています。
手術後には、セットポイントが高くなるため、発熱しやすくなります。
体を修復するため
ではなぜ、術後にセットポイントが高くなるのでようか?
手術後の熱は、風邪をひいたときの発熱と一緒で、熱を出すことで風邪を治癒する働きと一緒です。
手術によって傷ついた組織を修復するため、炎症物質(炎症サイトカイン)が活発化し傷口に多く集まります。この炎症サイトカインが他の白血球も活性化させ、免疫系が働き、術後の回復を促しています。
風邪と発熱の関係についてはこちらを参考にして下さい。
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ストレスの解消
術後に微熱になることもあります。その原因として、心因性によるものが考えられます。手術をすることは、精神的にも大きな影響を及ぼしています。
また、術後も回復するのか不安になりますし、静養のため活動も制限されています。普段のような日常生活を送れないため、この状況下ではイライラは溜まりがち。
そのストレスを発散するため、微熱という形であらわれることがあります。
発熱する期間とその長さ
術後による発熱は原因によって、起こるタイミングが違います。
一つは、術後麻酔が切れてから。この場合の発熱は、約48時間後にピークとなり、2~3日後には解熱していきます。
もう一つは術後3~4日後に起こる発熱。
後で詳しく紹介しますが、手術から何日か経過した後の発熱は注意が必要です。もちろん、発熱の期間や程度に関しては個人差があります。
また、行った術式や切り口の大きさによっても、異なり一概に同じとは言えません。
心配しないでOK!術後発熱の良い例
術後に起こる発熱原因のうち、問題のない熱は2つあります。
治癒熱(侵襲熱)
これまで説明した、手術による侵襲をうけた体が、そのダメージから回復するために発する発熱の事を言います。 体の環境を維持するために働く主な物質がサイトカインとよばれるもの。
このサイトカインが主役となり、細胞活性化を図ります。
術創の治癒を促すために、プロスタグランジンE2 と呼ばれる物質の生産を促します。プロスタグランジンE2は体の情報を視床下部へ伝え、発熱を促進させます。
吸収熱
特に全身麻酔を行った場合で起こるのが吸収熱という発熱です。浸出液と呼ばれる、傷ついた細胞を治癒し、細胞を増やす働きのある液が出てきます。
また、体内には手術によって壊死した組織(細胞)が残ります。体は、これらをもとに戻すため吸収しようとします。その働きによって高熱が出ることを吸収熱と言います。
術後の発熱の良し悪しを見分ける!
逆に心配な発熱原因もあります。これらの原因に共通しているのは長引くということ。手術してから発熱が続くようであれば、要注意です。
感染症
感染症による発熱には注意が必要です。
感染による原因には、カテーテルからの感染によるもの、創からの感染によるものがあります。(ちなみにカテーテルとは、点滴等で使用されている、柔らかい管のことです。)
また、術後に何らかの感染を引き起こし、肺炎や腸炎を発症したときにも発熱が起こります。感染が原因の発熱の場合、特徴的なのが一度発熱してから、再度発熱してくることが多いということ。
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また、感染兆候があれば、疼痛や熱感・発赤を伴います。また、血圧も高くなります。
血液データでは炎症反応が見られるため、感染熱がわかったら早期に原因となった箇所に対して、処置が必要となります。
持病で糖尿病を患っている方や栄養状態が良くない方は感染熱にかかるリスクが高いため、注意が必要です。
薬剤熱
術後の熱でもう一つ厄介なのが、薬剤熱といわれる発熱です。これは、特定の薬剤を使用した際に、その薬が原因で引き起こされる熱のこと。薬の副作用の一つです。
原因となる薬を投与してから約3~14日ごろから発熱が出現してきます。
薬剤熱の場合、血液データで炎症反応の数値が上昇するなどの所見がないため特定しにくいという怖さがあります。
薬の副作用として有名なのが、発疹。
熱と一緒に発疹が出現していれば、薬剤熱を疑いますが、発疹が出ない場合も多いため、その時は原因が分かるまで、不明熱となり、処置が遅れてしまいがちです。
薬剤熱を起こしやすい薬には、抗菌薬・抗てんかん薬・利尿薬などがあります。手術以外でも服用することがある薬でも起きやすく、どんな薬でも薬剤熱を起こす危険性があります。
感染熱と違うのは、発熱している割に、元気にしている様子であること。脈拍が比較的ゆっくりしている(徐脈)という所見が見られます。
薬剤熱を治すには、原因となる薬を特定し、その薬の投与や服用を中止することが最も良いですが、その薬を特定するのが難しいです。そのため、投与や服用を中止しても大丈夫な薬をすべて止めることが薬剤熱の治療の原則です。
止めてから約48~72時間以内に解熱した場合、薬剤熱と判断されます。しかし、薬の種類によっては、解熱するまでに時間がかかるものもあります。
悪い発熱は予防できる?
良い発熱と悪い発熱の違いは、術後の経過に大きな違いが出てきます。
術後の体は、想像以上に弱っています。そこへ、不必要な発熱は弱っている体にさらにダメージを加えてしまいます。
術後の経過を悪化しかねない悪い発熱。これらの発熱は予防できるのでしょうか?
病原菌の感染ルートが創やカテーテルの場合や薬剤熱が原因の場合は、自分たちで予防することはできません。
それでも、防ぐ方法はあります。それは、免疫力を高めておくことです。
術後の体が弱っているのは、入院生活や手術によって免疫力が低下しているからです。
そこで、免疫力を保つために、術前予防としてできることがあります。
1.うがいや手洗いの習慣を身につけること
2.手やよく触るものにはアルコール消毒をすること
3.歯磨きをこまめに行い、口腔内を清潔にしておくこと
4.栄養バランスの良い食事をとり、睡眠を十分にとること
これら4つの事は、手術前だけでなく、日常生活でも元気に過ごすために身につけておきたい習慣です。
日頃から、免疫力を上げ、術後に悪い発熱を起こさないよう、3つの習慣を身につけておきましょう。
質の高い睡眠についてはこちらを参考にして下さい。
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