夢の中で夢を見るときの3つの心理とは【病気の可能性も疑って】
<監修医師 まっちゃん>
よく夢を見る人、夢なんかあまり見ないという人、夢を見ていたかどうかよく覚えていない人、夢に関しては人それぞれですよね。
色々な夢のパターンがあるかと思いますが、「夢の中で夢を見た」という経験がある人もいるのではないでしょうか。何とも不思議な夢ですよね。
夢からは様々な心理が読み取れると聞きますが、この夢は一体どんな状態を示すのでしょうか。
実は病気の可能性も疑ってみたほうがいい場合もあるんです。今回は夢の中で夢を見るときの心理について解説します。
気になる所から確認してみよう
夢を見るメカニズムとは
まずは夢を見るメカニズムについて解説します。
とはいえ、実はまだ夢を見る仕組みが完全に解明されているわけではありません。
心理学や精神分析学や脳波の分析など、様々なアプローチで解明が進んでいる途中です。
人類の潜在意識は夢で共有されているという説もあるようですが、まだ定かではありません。
現在提唱されている説についてお話しします。
かつては睡眠とは、脳が完全休息時間に入るために必要なものと考えられてきました。
ところが徐々に、人の睡眠は「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」を繰り返すことが分かってきました。
そして人はまぶたを閉ざし眠っている間も活発な眼球運動が起きていることが分かりました。
この眼球運動が行われている影響で脳内の視覚野では情報整理が行われていると考えられます。
さらに眠っているときに行われているこの視覚野の処置では、記憶消去や再生といった処理が行われており、それに伴い「過去の記憶」や「イメージ」がランダムに引き起こされ再生されると見られています。
これが夢の正体と考えられます。経験や知識がバラバラに再現された結果が夢だとすれば、内容が荒唐無稽なものであることも納得です。
夢を覚えている時と忘れているときの違いって何?
「夢を見ない」という人に対し、「見ているけれど覚えていないだけ」という説もあります。
また人によっては夢を覚えている日と忘れている日もありますよね。この違いは何でしょうか。
この違いも、やはりレム睡眠とノンレム睡眠が関係してきます。
まず人が寝る時はレム睡眠とノンレム睡眠を繰り返しています。そのどちらの状態でも夢を見ますが、夢の内容に若干違いが出ます。
レム睡眠中には鮮明な内容の夢を見て、目が覚めてからも内容を覚えていることが多いです。
鮮明な夢を見るといっても内容はまさしく夢物語のような、つじつまの合わない現実ではあり得ない展開ではあるもののストーリー立てされており、まるで映画の世界を体験しているような中身が多いようです。
そもそもレム睡眠の「レム」とは「Rapid Eye Movements」(急速眼球運動)を示す「REM」からとられた名称です。
そのためレム睡眠中には活発な眼球運動が起き、記憶の再生がさかんに行われています。
この知識や経験の再生が断片的に引き出され、「夢」という形を作ると考えられています。
一方ノンレム睡眠時にはぼんやりとした夢で、目が覚めると忘れていることが多いです。
内容も日常の続きのようなありふれた内容であることが多いです。
これは脳が完全休息時間に入り、眼球活動も休止する状態に陥っているためと考えられます。
ノンレム睡眠は目覚めのタイミングに近い「浅い眠り」の状態なので、すっきり起きられた朝はあまり夢を覚えていない状態であることが多いと言えます。
目覚まし時計で強制的にノンレム睡眠から引きずりだされた場合はなおのこと夢の内容を覚えていません。
夢の中で夢を見る原因の第一位は疲労
夢は覚醒時に得た知識や経験を整理する際の副産物なので、生理現象の一つと言えます。つまり夢を見ること自体は生理現象なので心配する必要はありません。
しかし夢の中で夢を見るという現象には、ある一定のパターンがあると言われています。
まず第一に挙げられるのが「疲労」です。
心身共に疲れ切ってピークに達している場合、「夢の中で夢を見る」確率が上がると言われています。
よくある身近に起きた心霊現象話になって「金縛りに遭って人の気配を感じた」という体験談を語る人がいますよね。
金縛りについては科学的な究明が為されており、「金縛りは睡眠障害の一種」という結論が出ています。
金縛りの際に感じる人の気配は実は夢の一部というわけです。
そして睡眠障害は、心身の疲労感が解消されないために起きる疾患です。特にレム睡眠中に睡眠障害は引き起こされています。
深い睡眠に陥るべきタイミングで心拍や呼吸のリズムが乱れ、不安感が増してしまうのです。
そしてこの不安感が夢に影響を与え、幽霊などの「怖いもの」を作り出してしまいます。
金縛りに代表される夢中夢や「同時に複数の夢を見る」多重夢は、身体からのシグナルとも呼べます。
また夢の中で夢を見る場合、起きている間の心理が強く影響を与えると言われています。
一体どんな心理が働いているのかは次の項でくわしく解説します。
夢の中で夢を見るときの3つの心理
夢の中で見る夢は、しばしば「夢だと分かっているのになかなか覚醒できない悪夢」として現れることがあります。
多くは心身の疲れや不調により起きる現象ですが、覚醒時の自分の行動や思考が原因で起きる場合もあります。
どんな心理に影響を受けて夢の中で夢を見るのかくわしく解説します。
解決策を模索している
人間が無意識下でも緊張状態にある場合、多くは「解決すべき問題を抱えている」状態です。
よく真剣に解決策を探してる状態を指して「寝ても覚めても同じ問題について考えている」という表現がありますが、文字通り夢の中でもミスを挽回すべく現状を分析しているわけです。
現実世界でストレスを強く感じている
ハッピーな状態ではない場合、すなわち認めがたい現実に直面している場合「夢の中で夢を見る」状態に陥ることがあります。
特に過去の過ちは、否認したくても時間が巻き戻せない以上どうしようもないストレスを感じるものです。
認めたくなければ認めたくないほどに潜在意識に居座り、夢の中の夢という形で現れてしまうわけです。
恋愛に失敗した
夢の中で見る夢は、「うまく眠れない」睡眠障害の状態下で起きることが多い現象です。
恋人とケンカしたり関係がうまくいかなくなったり、失恋したりすると心理的には相当なダメージを受けますよね。
その結果、夢の中で見る夢という形になるのです。
特に夢占いやフロイトの心理学では、「夢の中で見る夢」とは恋愛に関する思考の現象だとみなす傾向にあります。
とはいえ夢の中で意図的に解決策を示すことはなく、多くは「取り返しのつかない失敗」について反芻する内容になるようです。
夢の中でこれは夢だ!と自覚する明晰夢とは
夢の中で見る夢の中でも、「コレは夢なんだ」とはっきり自覚する場合があります。この状態を「明晰夢」(めいせきむ)と呼びます。
夢であることを自覚するため、「このあとこんな展開にしたい」と意識して自由自在に内容を変えることができる人もいます。
なぜ夢を自己コントロール可能な状態になるのでしょうか。それは前頭葉が半覚醒状態にあるためだと考えられます。
前頭葉とは脳の一部の名称で、大脳の前部分にあります。ちょうどおでこの裏側辺りです。
人間の思考と行動の中枢を担う器官で、記憶・言語・運動を司ります。
他の動物と比べて人間の前頭葉が占める割合は大きく、それにより人間が複雑な思考を可能にしているといわれています。
そして同じ大脳部分には、細長い形をした「海馬」が存在します。
海馬は記憶の中でも比較的新しいもの(ショートタームメモリーと呼ばれます)をストックする機能があります。
そして記憶は整理整頓された後、大脳皮質へと収納されることになります。
つまり覚醒しているときには前頭葉にインプットされた情報は海馬へと送られ、そこで整理されるというわけです。
人が眠るとこの機能もお休み状態に入るわけですが、前頭葉が半覚醒状態だとこの機能はまだ動いており、夢を見ながらも意識を操作できるため明晰夢のような「自分の意志でコントロールできる夢」を見ることになるのです。
どうして明晰夢の状態になるのか、その条件についてはまだ完全には解明されていません。
しかしいくつかの研究・実験により、「ある一定の電気刺激(40ヘルツくらい)を与えると夢から覚めないまま意志を操作できる状態」にできることが分かっています。
夢を自分の思い通りにコントロールできるなんてわくわくしますが、条件がまだよく分かっていないためにどれくらい危険があるかどうかも分かっていません。
夢は潜在意識が現れるという観点から、「潜在意識に革命を起こすには明晰夢が確実」という認知改革も一部では人気があります。
解決能力や洞察力に優れた人ほど明晰夢をみるという実験結果もあります。
ただし「半覚醒状態=質の高い睡眠をとれていない」ということは確かです。
睡眠がきちんと取れてなければ疲れは体内に蓄積され、健康を害します。
脳は肉体の疲労状態も精神状態の疲れも同様に「疲れ」として処理するので、明晰夢ばかりみるのはちょっと考えものです。
ひどくなると「眠っても疲れが取れないから眠りたくない」と睡眠障害を引き起こす可能性もあります。
夢の中で夢を見ることが多いときは解離性障害も疑って
解離性障害とは自分を自分であるという自己認識の感覚(思考・それに伴う感情や行動・記憶)がバラバラになってしまう状態を指します。
自分自身を認識するために必要な要素が散逸してしまうのです。
一時期、虐待を受けて育った子供が成長して多重人格を発症するドキュメンタリー本が話題を集めたことがあります。
解離性障害は虐待など心的外傷を負った場合に「こんなに辛い目にあっているのは自分ではない」と現実逃避することにより自分自身を守るためには必要な機能として現在では認識されています。
児童虐待を受けた子供などは、自分自身の心を守るために「虐待を受けている自分」をスクリーン越しで見るように自分自身から切り離し、それが多重人格のような症状を引き起こすとみられています。
虐待だけではなく、災害や事故などに遭遇した人も引き起こす可能性があります。
そして明晰夢だけではなく、徐々に日常生活の中で幻覚をみたり空想の世界と現実の世界の境界線が曖昧になることがあります。
このように自分自身を守るために引き起こされる解離性障害は、その後の環境の変化やPTSD治療によるカウンセリングや薬物療法、催眠療法で解消することができます。
自分が解離性障害を発症しているかどうかは、夢判断によっても判定することができます。
✅ 夢の中で夢であることを自覚する
✅ 触覚や味覚など、五感がリアルに感じられる夢を見る ✅ 夢から覚めたと思ったが実はまだ夢の中だった ✅ 眠りに落ちかける瞬間、自分の身体が浮遊しているような感覚に襲われる ✅ 夢の中で飛ぶ感覚がある ✅ 夢の中にいる自分を遠いところから認識する ✅ 同じ夢を見る ✅ 決まった動物やキャラクターが夢に登場する ✅ 以前見た夢の続きを見る ✅ 夢の中で殺される ✅ 夢の中で高いところから落ちる ✅ 目覚めた瞬間、冷や汗や動悸など恐怖を感じる夢を見る |
以上で「月に3回以上当てはまる夢を見る」という項目が多ければ多いほど、解離性障害の可能性は高くなります。年に数回見る程度ならば問題ありません。
解離性障害はカウンセリングと薬物療法で治療できますので、まずは「もしかして」と思ったら、心療内科を受診しましょう。
自力で解決しようと自己流の努力をせず、専門家の治療を受ける方が解離性障害には有効です。
夢の中で夢を見るメカニズムについてお伝えしました。
夢の中で見る夢は、心身が疲れて負担を感じているために前頭葉と海馬のつながりが半覚醒下に置かれている状態で起きます。
脳が半覚醒状態だと十分にリラックスしているとはいえず、回復力が得られないために睡眠障害を引き起こしてしまいます。
頻繁に夢中夢が起きる場合は、解離性障害の疑いがあります。
解離性障害は子供の頃のトラウマが原因で起こることが多く、なかなか症状が改善できないとオカルトに傾いてしまい、ますます安眠からは遠ざかります。
頻繁に夢の中で夢を見るような場合には、医療機関で相談した方がいいでしょう。
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