γ-GTPが高い原因はストレスかも【病気の症状を見逃さないで】
<監修医師 happy days !>
健康診断の血液検査などで「γ-GTP」という検査項目を耳にしたことがあるでしょうか?
γ-GTPとはガンマ-グルタミルトランスペプチダーゼの略で、肝臓での解毒に関与しているグルタチオンと呼ばれるタンパク質の生成に関与している酵素です。
気になる所から確認してみよう
γ-GTPとは
γ-GTPは腎臓に最も多く存在し、次いで膵臓、肝臓、脾臓、精巣、小腸の順に多く存在することが知られています。
血液中のγ-GTPのほとんどが肝臓由来のものであり、肝臓や胆管の細胞が様々な原因で壊れることによって血液中に流出してくるため、逸脱酵素と呼ばれています。
また、アルコールや薬剤などにより組織内のγ-GTPが誘導されて増えることもあります。
γ-GTPが上昇する原因で最も有名なのがアルコール性肝臓障害です。アルコールが肝臓で代謝されると、アセトアルデヒドという毒性のある物質が生成されます。
このアセトアルデヒドの分解酵素の活性が弱くなると、アセトアルデヒドにより肝臓の細胞が障害されてγ-GTPが放出されます。このため血中γ-GTP値は肝臓の異常を知らせてくれる鋭敏なマーカーになるのです。
γ-GTPの基準値をしっかり把握
γ-GTPの基準値
γ-GTPの基準値は病院施設ごとに異なる場合もあります。男女別では次のようになります。
✅ 男性:50(IU/l)以下
✅ 女性:30(IU/l)以下
男性の基準値の方が女性の基準値より高い値になっています。これは女性ホルモンがγ-GTPを低下させる作用があるため、女性の方が低くなるのです。
また妊娠中は女性ホルモンの分泌が増加するため、γ-GTP値は1/2程度に低下します。男性にしかない前立腺からもγ-GTPが分泌されることもあり、男性の基準値の方が高くなるのです。
γ-GTP値は変動する
性別でγ-GTPの基準値は異なっていますが、年齢でも変動することが知られています。
まず新生児期は成人の約2倍と増えますが、乳児期から学童期にかけて徐々に漸減し、成人の約1/2程度まで減少します。そして思春期以降になると成人とほぼ同じ値になります。
γ-GTPの検査方法
血液中のγ-GTP値を調べるためには、まず血液を採取します。採血された血液は遠心分離機にかけられて、血球成分と血清部分に分けられます。
そのうち血清成分を自動分析器によって解析することでγ-GTP値を測定するのです。γ-GTPはアルコールに過剰に反応してしまうため、検査を行う前日はアルコールの摂取を控える必要があります。
γ-GTPが高い時に出やすい症状に気をつけて
γ-GTPが高くなるとどんな症状が出るでしょうか?
実はγ-GTP自体は人体に何も悪い影響はおよぼしません。γ-GTPが高くなる病気の症状が出てくるのです。
γ-GTPが高くなる病気にかかってしまうとどんな身体症状が起こるのでしょうか?具体的な症状を解説していきます。
疲労感や倦怠感が強くなる
γ-GTPが高くなる病気は大きく2つに分けることができます。それは「肝臓の細胞が直接障害を受ける病気」と「胆汁という名前の消化液の排泄障害が起こる病気」の2つです。
いずれの病気でも悪化すれば疲労感や倦怠感が強くなることが多いです。
食欲不振や下痢などの消化器症状
疲労感や倦怠感に加え、食欲不振や下痢などの消化器症状も併発することがあります。また病状が進行してから発見されることが多い胆管がんは初発症状として腹痛を起こすことが知られています。
お腹が張ってくるような状態であれば腹水が溜まっている可能性があり、肝硬変などが考えられます。いずれの疾患もγ-GTPが高くなることが多いです。
微熱が続く
風邪をひいた時のように、感冒症状や微熱といった症状を起こすことがあります。例えば肝臓に膿が溜まる肝膿瘍という病気は、全身倦怠感や食欲不振に加え、発熱することが多いです。
また薬の副作用で起こる薬剤性肝障害でも発熱や発疹、掻痒感などの症状が出ます。
黄疸
γ-GTPが高くなる病気といえば肝臓や胆道系の病気が一番に考えられますが、共通の症状として黄疸があります。顔色や目の色(白目)が黄色くなります。
肝臓の障害や胆汁のうっ滞によって血液中のビリルビン値が上昇することで起こります。疲労感や倦怠感、消化器症状、発熱などの症状と併発することが多いです。
放置していると5つの病気のリスクが高くなる!
γ-GTPの値が高くなる病気はその機序から「肝細胞が直接障害を受けて起こる病気」と「胆汁の排泄障害によって起こる病気」の2つ分けることができます。
これらの病気は単独で起こる場合もありますが、胆汁の排泄障害を起こすような病気が肝細胞を直接障害するように、併発する場合もあります。その中でも代表的な5つの病気に的をしぼって解説します。
アルコール性肝障害
アルコールの過剰摂取によって起こります。γ-GTPが高い人はまずアルコールが原因となる場合が多いです。
アルコールの代謝産物であるアセトアルデヒドによる肝細胞の障害によりγ-GTPが上昇しますが、放置しておくと肝臓の障害が進んでしまい最終的には肝硬変になってしまいます。
癌(悪性新生物)
肝臓癌や胆管癌によって肝細胞や胆管の細胞が直接障害されたり、癌による胆汁の排泄障害に起因してγ-GTPが高値となります。
また膵臓癌でも膵頭部にできるようなタイプのものは、胆管閉塞による胆汁のうっ滞が起こりγ-GTP値も上昇します。γ-GTPが高くなる原因にはこれらの癌もあるので注意が必要になります。
急性・慢性肝炎
代表的なものにB型肝炎とC型肝炎があります。病原となる肝炎ウイルスの感染経路はほとんどが血液感染であり、急性肝炎の場合はγ-GTPの上昇とともにGOTやGPTなどの肝胆道系酵素も急激に上昇します。
慢性肝炎になると症状はほとんど出なくなりますが、肝硬変や肝臓癌へ移行するリスクが高くなるので注意が必要です。
薬剤性肝障害
病気を治療するための薬が原因で肝障害を起こした場合もγ-GTP値は高くなることがあります。代表的な薬物としては抗生物質や解熱鎮痛薬、抗てんかん薬などがあげられます。
また副作用が少なく安全と思われていることが多い漢方薬や、市販されているサプリメントでも肝障害を起こすことがあります。原因不明の肝障害、実はサプリメントが原因だったということは時々見られます。
総胆管結石
胆嚢という袋の中にできた胆石が総胆管に転がり落ちて閉塞することで起こる病気です。
この総胆管結石に代表されるように胆管の閉塞が起こるような病気では、胆汁の排泄が障害され血液中にγ-GTPが漏出してしまい高値となります。
膵炎で膵頭部が腫れるような場合も胆管の閉塞を起こすことが知られています。
γ-GTPが高くなる原因とは?ストレスとの関係も知ろう
様々な病気の原因になると言われている「ストレス」ですが、はたしてこのストレスによってγ-GTPは高くなるのでしょうか?その答えは「No!」ということになります。
しかし正確には「直接的にはNo!」というのが正しいかもしれません。
γ-GTPが高くなる原因はこれまで解説してきたように、アルコールの過剰摂取や脂肪肝、胆汁排泄が障害されるような病気、そして抗生物質などによる薬剤性肝障害などでしたね。
この中でもアルコールの過剰摂取が最も身近な原因になりそうです。そしてこのアルコールの過剰摂取をさせてしまうもの、それがストレスになります。
すなわちストレスはγ-GTP値を上昇させる「間接的な原因」と言うことができます。日頃からストレスを溜めないように注意が必要ですね。
γ-GTPを下げる3つの方法
肝機能障害の指標の一つとなるγ-GTPですが、その値を下げるためには肝臓機能の回復に努める必要があります。
γ-GTPを下げる、すなわち肝臓機能を回復させるためには柱となる3つの方法があります。その3つの方法を中心にプラスアルファも含めて解説します。
アルコールを控える
アルコールの代謝産物であるアセトアルデヒドが肝機能障害を引き起こし、それに付随してγ-GTPも上昇することになります。したがってγ-GTPを下げる最も効果的な方法はアルコールを控えることです。
完全に禁酒ができれば良いのですが、お酒好きの人にとって逆にストレスになってしまう可能性もあります。まずは週に2日程度の休肝日をつくる努力をし、肝臓をしっかりと休ませるようにすることが肝機能の回復につながります。
食生活を改善する
次に食生活の改善です。不規則な食生活や、揚げ物・炭水化物の多量摂取によって脂肪肝となり、肝機能障害を引き起こすことになります。
糖質制限など食生活を見直すことで脂肪肝を予防できればγ-GTPを下げることにつながります。
また、しじみにはアルコール性肝障害の予防効果があると言われているオルニチンやタウリンなどが多く含まれているので積極的に摂取するのもいいでしょう。サプリメントを利用するのも効果的と思われます。
運動をする
お酒を飲む人の中には暴飲暴食で脂肪肝となっている人が多いです。肝臓に脂肪が貯留することで正常な肝臓の機能が障害され、γ-GTPが上昇することになります。
そこで食生活の改善に加え、適度な運動をすることで体の脂肪減少させることは、脂肪肝の改善につながります。
その他の方法として、コーヒーを飲むと肝機能が改善したという報告や、「大敦」という足の親指のツボ押しが肝機能改善に効果があると言われています。
いずれにせよγ-GTPを下げるということは肝臓の機能を回復させるということであり、最も効果的な方法はアルコールを控えることと、生活習慣の改善ということになります。
ビタミンやミネラルを多く含む食材を摂取し、適度な運動や十分な睡眠をとるように心がけ、健康的な生活を送るよう心がけることが大切です。
当記事は医師、薬剤師などの専門家の監修を受けておりますが本サイトで提供する情報、文章等に関しては、主観的評価や時間経過による変化が含まれています。 そのため閲覧や情報収集は利用者ご自身の責任において行っていただくものとしその完全性、正確性、安全性等についていかなる保証も行いません。