おたふく風邪の薬はコレ【5つの治療で緩和しよう】
<監修薬剤師 BlueP>
おたふく風邪はその名の通り、顔がおたふくのように膨れる病気です。
小さい子供がなる病気というイメージが強いおたふく風邪ですが、大人でもかかる可能性は十分にあります。実は大人がかかると重症化し、さらには恐ろしい合併症を引き起こす確率も高くなってしまうのです。
有効な治療薬がないおたふく風邪ですが、できれば辛い症状を少しでも和らげたいですよね。
おたふく風邪で処方される薬と自宅でできる緩和方法について知って、ぜひ実践してみてください。
おたふく風邪の5つの症状
おたふく風邪は正式名を「流行性耳下腺炎」といいます。唾液を出す腺である耳下腺および顎下腺に、ムンプスウイルスが感染することで発症します。
主に子供がかかる病気ですが、感染力が非常に強く、感染した子供から大人へとうつるケースが多く見られます。くしゃみや咳、痰唾などの飛沫感染のほかに接触感染でもうつります。
そのため、子供の看病などをする際はマスクをして、こまめに手洗いうがいをするようにしましょう。
感染すると2~3週間の潜伏期間の後、顔が腫れ始めます。この顔が腫れる前後5日は感染力が最も強い時期なので注意したいところですね。
腫れる位置はちょうど耳下腺がある耳の付け根辺りと顎下腺のある顎の下。酷い人だと鎖骨の上にまで腫れが広がることもあるそう。しかし逆に、片側しか腫れない人もいますし、感染しても症状が出ずに終わる人も全体の3~4割に上ります。
耳下腺炎の症状についてはこちらを見て参考にして下さい。
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おたふく風邪の症状
✅ 顔の腫れ:耳の下から顎にかけての腫れ、しこりができることも
✅ 高熱:38度以上(大人の場合40度以上になることも)
✅ 首の痛み:初期に強く出る
✅ 口の痛み:口を開閉した時、食事で唾液が分泌される時
✅ 風邪のような症状:咳、鼻水、倦怠感、頭痛、腹痛、吐き気、食欲不振など
子供の場合1週間ほどで症状は改善してきますが、合併症にかかる危険もあるので、良くなったと思ってもしばらくは他に症状が出ていないかどうか注意しておきましょう。
あと、よくあるのは鼻血が出るという症状。子供のうちは鼻の粘膜が弱いため鼻血が出やすくなりますが、特におたふく風邪との関連性はないので、酷くなければ心配しなくても大丈夫でしょう。
ワクチン接種で予防しよう
非常に感染力の強いおたふく風邪、その唯一の予防法が「予防接種」です。
ワクチン接種は、基本1歳から受けることができ、5年程空けての2回接種が推奨されています。ただし、1歳未満でも保育園などに入る予定があれば、その前に受けるようにしましょう。保育園などで流行り始めてからの接種では効果がありません。
しかし、このワクチン接種は日本では任意となっているため、接種率が低いのが現状です。そのため毎年、数万人~数十万人がおたふく風邪を発症しているとのデータもあります。
おたふく風邪にかかると、様々な合併症の危険もあります。ムンプスワクチンは副作用も少ない、比較的安全なワクチンとなっています。多少の費用はかかりますが、将来のことを考えても受けておいた方が良いでしょう。
おたふく風邪の合併症(子供の場合)
✅ 無菌性髄膜炎(10%):発熱、頭痛、嘔吐、運動障害、痙攣など ✅ 脳炎(0.2%):強い痙攣や意識障害があったら注意 ✅ 難聴(0.05%):片耳にだけ出ることが多い |
1歳でおたふく風邪の予防接種を受ける際は、同時に水痘(水ぼうそう)の予防接種も受けることができるのでおススメです。水ぼうそうは、発熱と数百個にもなる発疹が主な症状となっています。
一度かかると、大人になってから帯状疱疹にもかかりやすくなり、痛みを伴った発疹や唇の腫れなどに悩まされることになります。
髄膜炎に関してくわしくはこちらを見て参考にして下さい。
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大人のおたふく風邪は危険!
重症化する症状
子供の頃、予防接種をしなかった大人がムンプスウイルスに感染すると、症状が重症化することがあるので注意が必要です。
基本的な症状は子供と同じなのですが、熱が40度以上にまで上がったり、腫れが4週間以上も残ったりすることも。腫れや痛みで食事が取りにくいとは思いますが、栄養をしっかり取って治癒力を高めることが大切です。
危険な合併症
さらに、合併症にかかる確率も高くなります。中には後遺症が残るものや、最悪死に至るものもあります。症状の変化には常に気をつけて、少しでも異変があったら速やかに医療機関にかかるようにしましょう。
大人がかかる合併症
✅ 無菌性髄膜炎:子供と同じ症状だが重症化しやすい ✅ 脳炎・脊髄炎:後遺症が残ってしまうことも ✅ 難聴:めまいや耳鳴りも併発する・慢性化するが多い ✅ 膵炎:確率は低いが、すい臓の壊死が起こることも ✅ 心筋炎:確率は低いが、最悪の場合、突然死もあり得る |
他にも肝炎や腎炎などの命にかかわる病気を引き起こすこともあります。
また、耳下腺や顎下腺の位置から、内耳炎や外耳炎、顎関節症も起こしやすくなっています。さらにはメニエル病や突発性難聴などを合併する可能性もあります。
関連する病気についてくわしくはこちらを見て参考にして下さい。
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男性特有の合併症
20~30%と高確率で発症する精巣炎(睾丸炎)は発熱や激痛、陰嚢部の腫れが特徴です。片側にだけ起こることが多いのですが、もし両側に発症し深刻なダメージが残ると、無精子症といって不妊の原因になる恐ろしい病気です。
女性特有の合併症
女性特有の合併症に、卵巣炎があります。下腹部の痛みが特徴で、確率は約7%。不妊症の原因や後遺症が残ることもあるので、早めに婦人科を受診しましょう。
また、妊婦がおたふく風邪にかかると低体重児出産や流産の確率が高くなります。感染予防には細心の注意を払いましょう。
おたふく風邪の5つの緩和方法
病院で受診(処方薬:カロナール)
おたふく風邪には特効薬と呼べるものがありません。
「抗生物質で退治できないの?」と思われるかもしれませんが、抗生物質は細菌への効果がある薬で、ウイルスには効果がないのです。また、おたふく風邪に効く抗ウイルス薬というものも未だ開発されていません。
そのため、完治するまでの間、症状を和らげる対処療法しかできません。病院で処方されることの多い薬が、カロナールという解熱鎮痛剤です。カロナールは子供でも服用することのできる安全性の高い薬です。
しかし副作用もあるため、効果が感じられなくても服用は薬剤師の指示に従い、正しく行いましょう。
また症状の緩和には漢方も有効との声もあります。漢方薬は種類も多いので、気になる方は薬剤師や漢方薬局に相談してみると良いかもしれません。
子供でしたら1週間ほど安静にしていれば回復してきますが、心配なら迷わず病院へ行きましょう。もし耳が痛いなどの症状がある場合、おたふく風邪ではなく中耳炎という可能性もあります。
診療科は子供なら小児科、大人は内科で大丈夫です。耳の症状が気になる場合は耳鼻科でも診てもらえます。
カロナールのくわしい副作用についてはこちらを見て参考にして下さい。
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冷やす
痛みの緩和には冷やすことが有効です。
水で濡らして絞ったタオルや、保冷剤を包んだタオルを首に当てましょう。冷湿布を貼るのも効果的です。
反対に温めてしまうと痛みが増します。入浴は、強い痛みや高熱がある時には控えたほうが良いでしょう。
食べ物
梅干を食べると唾液が出ますよね。それと同じで、刺激のあるものを食べると唾液がいつもより多く分泌されます。おたふく風邪は唾液腺へのウイルス感染が原因のため、唾液腺への刺激が強いと痛みも強くなるのです。
痛みが強い時に控えたほうが良いもの
✅ 味の濃いもの:酸味、辛味、甘味など ✅ 刺激の強いもの:生姜、ニンニク、唐辛子、お酒、コーヒー、柑橘系の果物など ✅ 硬いもの(噛むことで唾液腺が刺激されるため) |
痛みが強いと大人でも食事が取れなくなることも。発熱により脱水症状にもなりやすい状態のため、水分は多めに取るようにしましょう。
ゼリーやお粥などの柔らかいものや、スープ状のものから少しでも栄養を取ることも大事です。
おたふく風邪に似た病気
大人の場合、過去におたふく風邪にかかったかどうか、予防接種を受けたかどうか忘れてしまうこともありますよね。もし大人になってから顔の腫れが起こっても、おたふく風邪ではない可能性もあるのです。
おたふく風邪のように耳下腺の腫れが現れる病気は主に2つあります。
「反復性耳下腺炎」は先天性の耳下腺異常やアレルギーなどが原因の非感染性の耳下腺炎です。腫れが片側だけのことが多く、1年程のサイクルで繰り返し発症します。
「化膿性耳下腺炎」は口の中の細菌が唾液腺に進入することで起こる耳下腺炎です。これも片側だけの腫れであることが多く、さらに化膿により患部を押すと口の中に膿が出てくることが特徴です。
おたふく風邪かどうかは血液検査で判断しますが、これは血中のアミラーゼ(唾液腺から分泌される)の数値で判断されるため、耳下腺炎なら全て引っかかってしまいます。
その際、炎症反応という体内の炎症個所の数で判断する検査を行うこともあります。おたふく風邪の場合、この炎症反応の数値が上がりづらいと言われています。
自分がおたふく風邪にかかったことがあるかどうか知りたい人は一度、ムンプスウイルスに対する抗体があるかどうか、抗体検査を受けることをお勧めします。
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