アルギン酸とはどんな成分?【7つの効果や含まれる食品を解説】
<監修医師 WASHIO>
厚生労働省許可の「トクホ」(特定保健用食品)の表示を頼りに買い物をする方、「なぜ体に良い物と認可されているのか」を理解した上で使用していますか?
その効果や副作用を含めて理解した上で摂取すると、ますますその作用を発揮させることが出来ます。
今回はアルギン酸とはどんな成分なのか、その効果や含まれる食品を解説します。
アルギン酸とはどんな成分?
まずはアルギン酸がどのような成分なのか、解説します。
アルギン酸の正体
アルギン酸は多糖類の仲間で、天然の食物繊維とも言われています。
甲殻類の殻を加工して作られるキトサンと同じ天然由来の食物繊維です。1883年にスコットランドで発見されました。
キトサンについてはこちらを参考にして下さい。
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海藻のぬめりに多く含まれている成分で、乾燥した状態の海藻の約10~50%はアルギン酸で占めています。
海藻は世界中で数千種類ありますが、特に褐藻類の中でも大きく育つ昆布やジャイアントケルプから抽出されます。
抽出されたアルギン酸は食品添加物やサプリメント、医薬品、工業製品の原料と幅広く活用されます。日本では1940年より国産で生産されるようになりました。
アルギン酸が含まれるもの
海藻のぬめりに含まれているアルギン酸はワカメやひじき、モズクなどに多く含まれています。なお、海草の一部が海藻ですので、厳密には海草ではなく海藻にアルギン酸が含まれているといえます。
アルギン酸は世界各地で利用されていますが、いまでも天然素材から抽出する方法がとられています。
アルギン酸の構造
アルギン酸は多糖類で、マンヌロン酸(M)とグルロン酸(G)という二種類のウロン酸が直鎖重合した構造です。
マンヌロン酸とグルロン酸の比率は、海藻の種類や生育環境によって変わってきます。産地や種類によって海藻のぬめりに下がるのは、こうした生育環境に違いのせいでもあります。
また海の中で海藻は海水中のミネラルとアルギン酸の反応が起き塩分を作ります。そしてアルギン酸は細胞間隙に不溶性のゼリーの状態で充填されます。
抽出する際はこの海藻をよく洗った後、ナトリウムを加えることで不溶性から水溶性のアルギン酸ナトリウムに変え排出させるのです。
アルギン酸の性質
アルギン酸は単体では水に溶けません。ナトリウムあるいはカリウムと化合すると塩をつくり水に溶けます。
ただしカルシウムやクエン酸と化合させても水には溶けません。また熱に弱く、効果を発揮させるためには非加熱の状態で利用する必要があります。
アルギン酸の7つの効果
それでは実際に、アルギン酸にはどのような効果があるのかを解説します。
コレステロール値を下げる
水溶性アルギン酸カリウムは海藻のぬめり成分にふくまれています。ぬめりは体内の余分なコレステロールを包み込む性質があり、そのまま体外に排出してくれます。
そのためコレステロール値が下がるのです。
高血圧の抑制
水溶性アルギン酸カリウムは体の中に入り込むと、まずはアルギン酸とカリウムに分離します。
カリウムはそのまま体内に残り利用されますが、アルギン酸は体内の不要なナトリウムと結合すると体外に排出されます。ナトリウムとはすなわち塩分にほかなりません。
ナトリウムの過剰摂取は高血圧の原因となるため、アルギン酸を摂取すると排出を促し高血圧の抑制になります。
動脈硬化の予防
動脈に不要物が詰まると、血管が硬くなり弾力性や柔軟性が失われます。この状態を動脈硬化と呼びます。
動脈硬化は血流を阻害する確率が高く、心筋梗塞や脳卒中といった重大な疾患を引き起こす可能性があります。
動脈に詰まりやすい不要物は脂質やコレステロールですが、アルギン酸はコレステロールを体外に排出する効果があるため動脈硬化を予防できます。
腸内環境を整える
天然の食物繊維であるアルギン酸は、腸内細菌のうち善玉菌の活動を促進する作用を持ちます。さらに食物繊維には水溶性と不溶性があります。
水溶性の食物繊維は水に溶けると、体に害を及ぼす物質の吸収を阻害し、体外に排出する働きがあります。不溶性の食物繊維は水には溶けませんが、腸のぜん動運動を促すため便秘になりにくい体をつくります。
アルギン酸は水溶性と不溶性の両方の性質があり、それぞれが腸内環境を整えるはたらきを発揮します。
腸内環境についてくわしくはこちらを参考にして下さい。
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胆石予防
肝臓の右下には胆のうという袋があり、肝臓で生成される胆汁を貯蔵する役目を持つ消化器官の一種です。この胆のうにコレステロールが過剰に蓄積されると石になり、背中に痛みが現れます。
アルギン酸にはコレステロールを体外に排出する働きがあるため、この胆石が出来ることを予防できます。
ダイエットに効果を発揮
アルギン酸を摂取すると、体に取り込まれることはほとんどなく、その多くが体内の別の物質と共に体外に排出されます。
そのためアルギン酸を含む食品や飲み物をたくさん摂取しても殆どカロリーには換算されませんので、空腹感を満たすにはもってこいの食べ物です。
ダイエット中にはアルギン酸を含む食べ物を多く食べると、摂取カロリーを抑えつつ「お腹が空いた」という感覚に苦しまずに済みます。
またアルギン酸はそのぬめり力を他の食品にも発揮し、食べたものの粘度を高め消化器官をゆっくり移動するようにします。ゆっくり移動すると消化も緩やかになり、食後の血糖値の急上昇を抑えることが出来ます。
ストロンチウム排出
放射性ストロンチウムは短いベータ線を放出する物質です。一度体内に経口摂取するとなかなか体外に排出するのが難しいため、長く骨の中心部で影響を発揮する成分です。
放射性ヨウ素は甲状腺に作用しますが、放射性ストロンチウムは骨に作用しやすい物質です。IAEA(国際原子力機関)の発表では、このストロンチウムの体外への排出に最も効果を発揮するのがアルギン酸です。
アルギン酸はカルシウムと結合する性質がありますが、カルシウムと結合するかわりにストロンチウムと結合し、代謝反応により体外に排出させることができます。
アルギン酸はこんな食品に含まれている!
効果があるアルギン酸ですが、実際にはどのような食品に含まれているのでしょうか。また食品以外にも様々な分野で活用されていますので、その一部を解説します。
アルギン酸が含まれる食品
海藻のぬめりに含まれているアルギン酸は、ワカメ・コンブ・ヒジキ・モズク・アラメに非常に多く含まれています。またてんぐさ(糸寒天)にも含まれています。
天然由来の食品以外に、食物繊維サプリメントにも含まれています。ただしサプリメントの状態で摂取すると、ダイエット効果である「満腹感を得る」ことは出来ませんので注意が必要です。
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食品添加物にもアルギン酸は含まれている
アルギン酸自体には水に溶ける性質はありませんが、特定の物質を化合することにより、適度な吸湿性を持たせる事が出来ます。
そのため乾燥させず、かつ湿度に晒さないようにするための食品添加物として広く活用されています。
主に特定の物質と化合して粘度を増す性質を活用した「増粘剤」や「ゲル化剤」、そして水分を一定の状態で保つ性質を活用した「安定剤」や「糊料」という用途で使用されています。
ゲル状になる性質を利用して、「人工いくら」を作ることも出来ます。作り方は簡単で塩化カルシウム水溶液に赤く着色したアルギン酸ナトリウムを滴下したあと、固まったものを水切りするだけです。
これはアルギン酸がカルシウムに接触すると表面が覆われて、カプセル状になるためです。そのまま食べることも出来ますが、当然いくらの味はしません。
食品以外にもこんな用途に使用されているアルギン酸
体にたくさんの効果を発揮するアルギン酸ですが、食べる以外にも医薬品や工業製品の原料として幅広く活用されています。どのような使い道があるのか、ご紹介します。
【アルギン酸塩被覆材】
海藻から抽出できるアルギン酸塩を繊維化して1枚のシートにした医薬品です。
アルギン酸は水分を大量に吸収できますが、ナトリウムと結合するとゲル化します。すると、傷口に程よい湿度を保てるため湿潤療法に最適となります。
またアルギン酸自体がゲル化する際にカルシウムイオンを放つため強力な止血効果を持ちます。
【化粧品】
アルギン酸の保湿力は、人間の皮膚にも効果を発揮します。
100%天然由来の素材なので、アレルギー体質で肌が弱い人でもアルギン酸由来の保湿液ならば安心して使用できるという人もいます。
【染色の補助】
麻や綿などの天然素材に着色する際、染料にアルギン酸で粘性を与えると染色しやすくなります。
【製紙業】
特殊な紙の表面処理やインクカーボン剤としてアルギン酸が使用されます。
【農業・水産業】
養殖魚のエサや栽培用土にアルギン酸が活用されています。
アルギン酸に危険性はある?
アルギン酸自体は、昆布やワカメなどの海藻から抽出する成分です。
たとえばアルギン酸ナトリウムを抽出するため、途中で重曹(炭酸水素ナトリウム)を加えて精製しますがどちらも体の害にならない自然界に存在する物質です。つまり100%天然由来の素材と言えます。
またほとんど体内に留まらない成分ですので、「食べ過ぎると体の害になる」ということもありません。ですから安心してアルギン酸は摂取できます。
ただし腸内環境を改善するため、人によって過剰摂取で軟便になることもあります。下痢気味の際は避けた方がいいでしょう。
アルギン酸について解説をしました。アルギン酸はその発見以来、食品・医療・工業を幅広く活用されています。
その有用性を理解した上で、海藻を食卓に取り入れていきたいですね。
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