ストレスだけではない!寝たくない心理とは【病気の可能性も疑って】
<監修医師 豊田早苗>
眠いけれど寝たくない、このような心理状態になったことはありませんか。正常なのか?または病院に行った方が良いのか?
今回は「寝たくない心理」に見られるパターンと、病気を疑う睡眠障害、睡眠の質を上げるために気を付けたい習慣について見ていきます。
気になる所から確認してみよう
明日の事を考えると寝たくない心理とは
体は疲れているのに眠りたくないという人は、翌日に仕事や学校といった辛い事が待っているからという理由が多いのではないでしょうか。
特に週末が終わって翌日から月曜日ともなると、その憂鬱さはとても強いものになります。
また、週末だけに限らず、大事な試験や重要な会議などが控えている場面でも、そのプレッシャーやストレスから眠りたくないと感じる人もいます。
これらの場面に共通するのが、翌日に待っているストレスから逃げ出したいという心理です。このまま夜が続けばいいのに、という気持ちからついつい夜更かししてしまうのです。
楽しいことが翌日に控えている時も寝たくない
上記のパターンとは逆に、翌日にワクワクするような楽しいことが控えている時も眠りたくないという心理になる事があります。
前から予定していた旅行や、特別な人とのデート、楽しみにしていたイベントなどは、その時間が近づくにつれてドキドキワクワ感が強くなっていくことでしょう。
このような場面では「楽しみで眠くならない」「この時間をもっと楽しみたい」「寝るのがもったいない」という心理が起こります。
この興奮から脳が覚醒して、眠りたくないという心理になるのです。
寝ずに今日という日を噛み締めたい
眠りたくない人の中には、現在感じている興奮を冷ましたくないという気持ちから眠りたくないと考える人もいます。
例を挙げてみると、仕事で大成功を収めた、テストで予想以上の好成績をとって褒められた、試合で逆転勝利を治めた、とても嬉しいことがあった、などの場面などです。
達成感からの喜びや楽しみの余韻はいつまでも感じていたいものですが、残念ながら寝てしまうと醒めてしまいます。
このため「この楽しい気持ちをもっと感じていたい」「寝るのがもったいない」という心理から、眠りたくないと感じてしまうのです。
寝たくないことが続く時はうつ病の可能性も疑って
上記の3つのパターンは、誰しもが感じる「眠りたくない原因」といえます。
人間は苦しい事を避け、楽しい事を進んで選択する性質があるため、上記の理由は健康的な選択といえるかもしれません。
しかしこれらの例に当てはまらず、慢性的に眠りたくない、眠れないと感じているようなら、病気の可能性を疑った方が良いかもしれません。
というのも、うつ病の前駆症状の一つに睡眠障害があるからです。うつ病の過程には、前駆期、極期、回復期と時期によって分けられます。
前駆期は、うつ病の診断は受けていないが、うつが症状として現れる時期です。
この期の症状として、精神面ではイライラや不安、強い疲労感を感じていますが、寝つきが悪くなる、寝てもすぐに起きてしまう、寝たのに日中強い眠気がある、などの症状が起こります。
これらの症状が起こってしまう原因は、過度のストレスや疲労によって睡眠の質を高めるメラトニンの元となるセロトニンという脳内ホルモンが不足してくるからです。
メラトニンの元となるセロトニンは深い睡眠をとるために必須のホルモンになりますが、うつ状態にある人ではセロトニンの分泌量が少ないことがわかっています。
このためうつ状態やうつ病の患者さんでは、深い睡眠(ノンレム睡眠)の時間がほとんど見られず、浅い睡眠(レム睡眠)を繰り返すため、寝ても疲れがとれない、日中強い眠気に悩まされるといった症状を感じるようになるのです。
また、うつ病が悪化しやすい原因の一つに睡眠障害が大きく関係しているという事もわかっています。
このためうつ病の治療には、抗うつ薬と合わせて睡眠薬が処方されることが多いのです。
これらの症状に思い当たる人は一度病院を受診することをお勧めします。
うつは早期の段階で治療や休息を十分にとれば、およそ7割の人が完治すると言われています。
逆に治療が遅くなれば回復までにかかる時間が非常に長くなる事も知っておかなくてはいけません。
良質の睡眠のための環境作り
眠りたくない心理と、睡眠障害について見ていきました。ではここからは睡眠の質を向上するために気を付けたいことについて見ていきます。
明るさ調整
私達の体内リズムは、目に入る“明るさ”の影響を大きく受けています。太陽が昇る内は活動を促すホルモンの分泌が促進され、暗くなると休息のためのホルモン分泌量が増えるのです。
このため寝る前2~3時間前は照明を暗くし、スマホやPC,テレビといったものを極力見ないようにすると休息ホルモンが出やすくなります。
また、逆に朝の目覚めがすっきりしないようであれば、起きてすぐに太陽の光を全身に浴びる事が効果的です。
環境音を小さく
なかなか眠れない時、普段気にならない環境音が耳障りに感じることがあります。一般的に静かな住環境にある人ならば、許容できる騒音は40㏈(デジベル)以下といわれています。
40㏈以下は、例えると畳みの上を歩く音が聞こえる程度です。
他にも、パソコンの音は40~50㏈、流しに水を落とす音は50~60㏈、洗濯機を回す音は70~80㏈となります。
就寝の前には、これらの環境音をできる限りなくすようにしましょう。一番早い方法は耳栓を使って音を遮断してしまう方法です。
理想的な温度と湿度
理想的な温度は18度~28度、湿度は50~70%前後が良いとされています。これは睡眠中だけに限らず、就寝前から保つことが理想です。
この最適温度と湿度を保つことで、体内の深部体温が下がりやすくなり、自然と体が休息状態に移行していきます。
夏場や冬季になかなか寝付けないという人は、空調や寝具などで環境を整えてみるとよいかもしれません。
お風呂は就寝1~2時間前
良質な睡眠に最適な入浴は、「就寝1~2時間前に、体温よりやや高めのお風呂にゆっくり肩まで浸かる事」です。
ポイントは体温よりやや高め、40度前後が理想です。さらに肩までゆっくり浸かって体をリラックスさせると、末梢血管が拡張され寝る直前の火照りや冷えを改善することができます。
さらに睡眠直前というのは、私たちの体温はやや下がる傾向にあります。
お風呂で一時的に体温を上昇させると、その後の体温低下がよりスムーズに進みやすくなり、眠気を誘発しやすいと考えられています。
寝室は落ち着いた色合いを選ぶ
普段あまり意識することはありませんが、色は視界に入ることで脳の様々な部位を刺激することがわかっています。
特に刺激が強いとされる色は赤色で、強い赤色は脳を興奮させ、気持を高揚させる効果があるようです。
逆に感情を穏やかにする色は緑、青、黄色などです。
また、色を選ぶ際も、色の濃い物よりパステルカラーのような淡い色合いを選択すると安心感を得られやすいとされています。
寝る直前に軽いストレッチ
ストレッチや軽い有酸素運動には筋肉の強張りをほぐし、高いリラックス効果があります。就寝前にこれらの運動を取り入れることで、より効果的に体内を休息モードに移行することができます。
また血液の循環を良くする効果もあるため、足先の冷えやのぼせで寝付きにくいという人にもおすすめです。
寝たくない気持ちに拍車をかける5つのNG
寝る前のカフェイン飲料
珈琲や緑茶、紅茶といったカフェイン飲料の摂りすぎは、交感神経を活発にさせ睡眠の質を下げる事がわかっています。
では寝る前以外は良いのか?というと、実はお昼を過ぎてからのカフェインの摂取はあまりお勧めできません。
というのも、カフェインは体内に吸収されてから排泄されるまで4~10時間と、とても個人差が大きい成分だからです。
寝る前にカフェインを摂っていないのに睡眠が浅い、という人は寝る前の10時間以内はカフェイン飲料を摂らないようにしてみると良いかもしれません。
就寝2時間前は何も食べない
就寝直前に何かを食べてしまうと、深部体温が上昇し寝付きにくく浅い睡眠になりがちです。
遅くても就寝3時間前までには夕食を済ませ、寝る直前には胃の中が空っぽになるように調整しましょう。
どうしても仕事や家庭の事情で夕食の時間が調整できないようであれば、よく噛んで消化に良いものや腹五分~七分目を心がけるようにしましょう。
飲酒、喫煙は脳のリラックスを妨げる
寝つきがよくなるという理由から、寝酒や寝たばこを習慣にしている人もいるのではないでしょうか。
しかし、お酒は確かに寝つきをよくしますが、深い睡眠を妨げるため中途覚醒しやすくなり、結果的に睡眠の質を下げる事がわかっています。
また寝る前のタバコについても、喫煙直後は一時的なリラックス効果があるようですが、少しして脳の覚醒を促してしまうため睡眠のためには逆効果と言われています。
スマホやモニターなどは極力見ない
スマートフォンやモニターから発せられるブルーライトは、目に強い刺激を与え、脳の休息を妨げることがわかっています。
理想は睡眠の数時間前には見ないようにすることです。特に日中にパソコンを使った仕事や事務作業といった目を酷使する仕事をしている人ならば、夜間は目を休ませる時間にしましょう。
また強い光源という理由から、深夜に明るいお店に行くことも避けた方が良いです。
明るい光を深夜に浴びてしまうと、眠気を誘発するメラトニンの分泌量が減少することがわかっているため、睡眠の質を下げる事になってしまいます。
深夜遅くのゲームやネットサーフィン
ゲームやネットサーフィンの直後、体は疲れているのに眠りたくても眠れないという状態になったことはありませんか?
これはゲームなどによって交感神経が優位になり、体全体が興奮状態にあるためです。このような状態では頭の興奮が冷めるまでは寝付けなくなってしまいます。
就寝2~3時間前は、ゲームはやめてスマホやモニターを遠ざけるようにしましょう。
眠りたくない心理と注意したい睡眠障害、睡眠前の気を付けたい習慣などについて見ていきました。
質の低い睡眠は生活のリズムを狂わせ、自律神経の働きを妨げてしまい、健康や美容にあまり良いとはいえません。
睡眠の質を上げる生活を意識して、日頃から健康的な生活を心がけましょう。
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