感情鈍麻の症状チェック【原因や3つの治療法も解説!】
<監修臨床心理士 鈴木崇弘>
感情が乏しくなったりいろいろな物事に関心や意欲がなくなってきたりする感情鈍麻では対人行動もおぼつかなくなります。他の人の感情表現に共感することも無く当人も感情自体を感じなくなり、自発的な行動も少なくなってくるというような症状があります。
また、他社の症状には気づけても当人は症状に気づくことすらなくなってしまうのです。このような感情鈍麻の症状や治療法を解説します。
感情鈍麻とは
感情鈍麻(かんじょうどんま)とは一体どのようなものなのでしょうか。字を見ると感情が鈍くなってくるのだろうということぐらいは想像ができますが、実際どのようなことなのかを考えてみましょう。
「感情」というものを一言であらわすとしたら「喜怒哀楽」でしょう。喜怒哀楽の原因はあきらかなもので「気分」と似たようなものですが、気分は感情変化の中でも原因はあまり明確ではありませんね。
喜怒哀楽の表現が少ない人だ、と言われる程度の感情鈍麻であれば場合は日常生活でも特に気づかれる要素はありませんが、重症化して高等感情の鈍麻になると倫理的な事柄や道徳観も麻痺してくるために周囲との隔たりが発生します。
何事に対しても無関心で、情動の変化を起こすような事柄からの刺激を受けても感情表現をできない・感情自体を感じなくなった状態を感情鈍麻というのです。
また逆に脈絡なく感情が爆発する状態を「感情失禁」と呼びます。くわしくはこちらを参考にして下さい。
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感情鈍麻の具体的な4つの症状
感情的な反応を起こすような状況にあってもその反応が見られない、物事への興味や関心もなくなります。自発的行動も低下するために社会活動への参加もなくなります。その結果行動範囲も次第に狭まって引きこもることもあります。感情鈍麻は統合失調症の陰性症状が代表的なものです。
感情表現の平板化
感情自体の表現が乏しくなり平板化します。表情も行動も非活動的となり、他への共感や視線を合わせることなどがなくなります。気分の上下もなく、すべてのものへの関心を失ったようになります。
意欲や気力の低下
目的意識や根気が失われ無気力になります。目的を持つことや行動を持続することが困難で、意欲も気力もわかずに周囲への興味自体を失います。関心を持てなくなることにより何に対しても集中力が低下して物事の処理能力も低下します。
何事に対しても無気力になる症状について、くわしくはこちらを見て参考にして下さい。
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思考力と会話力の減退
何を話しかけてもそっけない相槌ぐらいしか打たなくなります。思考力も関心もなくなっているため会話自体が成立しなくなることもあります。会話がなくなるため人とのトラブルはありませんが逆に誰ともけんかや言い争いができなくなります。
自閉的傾向
周囲とのかかわりを避けて引きこもるようになり、自室でただぼんやりと過ごすようになります。社会生活もうまくできなくなり無表情で、すべての事柄に実感や現実感を持たなくなります。
感情鈍麻の原因
感情鈍麻は脳内の神経伝達物質によってもたらされます。
緊張や構文を促す神経伝達物質ドーパミンが大きくかかわっています。ドーパミンにより情報伝達している神経経路は数か所あり、それぞれに異なった機序を持っていて、中脳皮質系でドーパミンの機能低下があることが原因で感情鈍麻が現れることがあります。
疾患が原因の場合
精神疾患や脳障害がきっかけで感情鈍麻が起こることがあります。
✅ 統合失調症・双極性障害・うつ病:ストレスなどが原因で起こる精神疾患です。
不安や焦燥感などがおもな症状ですが、統合失調症や双極性障害の陰性症状として感情鈍麻が挙げられます。
✅ 認知症:認知症の中核症状は脳神経細胞の破壊によるものです。
初期の認知症では認知症と物忘れの区別がつきにくいものです。症状が進むにつれ妄想や介護者への暴力などが現れたりします。家族などが感情鈍麻に気づいて受診を進めることで認知症を発見することが多くあります。
✅ 脳梗塞・高次脳機能障害・パーキンソン病:脳内出血などで脳内の機能が傷つけられたり、脳内の神経細胞が減ることでも感情鈍麻が現れます。
いずれも障害がある部分により症状の違いはありますが、前頭葉の損傷や障害が広範囲であれば同様の症状が発生します。
✅ 甲状腺機能障害:甲状腺機能低下症は甲状腺ホルモンの減少により身体機能の低下も起こります。
体重増加や肌の乾燥など様々な部位に病気かどうかもわからないような症状が現れます。高齢者の甲状腺機能低下症では物忘れや認知症に似た症状と共にうつ病のような感情鈍麻が現れることもあります。
外的要因が原因の場合
✅ PTSD・急性ストレス障害:自然災害や事故などの急激で強烈な体験の後に起こる障害です。一時的または繰り返し情動麻痺(思考や行動が一時的にすべて止まってしまうこと)や感情鈍麻が症状として現れます。
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感情鈍麻の3つの治療法
感情鈍麻の治療法はその原因によって変わってきます。回復には長期間を要し、診療科も精神科や神経内科など様々です。
投薬
脳障害や甲状腺機能障害はそれぞれの診療科での投薬となりますし、精神疾患が原因の場合は抗精神病薬の投薬となるでしょう。
精神科を例に挙げますが、基礎疾患によっては薬の効き目がない場合や副作用が出る場合もあります。向精神薬を服用していてそれを急に断薬することで感情鈍麻が出現したり増悪する場合もあるので注意が必要です。
認知行動療法
心療内科などで受ける作業療法や行動療法・カウンセリングなども治療法として挙げられます。感情鈍麻を伴う離人症や対人関係などを実践的な社会生活技能訓練として取り入れていきます。
身体的アプローチ
自律神経を整える呼吸法やヨガ・整体などを摂り入れる場合もあります。感情鈍麻は自分の感情に全く気付けないため、身体からのアプローチの方が効果があると考えられる場合もあります。
まずストレスをなくすために規則正しい生活をすることから始め、ヨガや呼吸法などで自律神経を整えていきます。自然の中を散歩することなども周囲に関心を持つ心を取り戻すツールとなるので、一緒に歩く家族のサポートも重要になってきます。
自律神経を整える方法についてはこちらを参考にして下さい。
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いずれの場合も周囲の人たちとのかかわりを持ちながら毎日を過ごすこと、そして失っている鈍麻している感情を取り戻そうという希望を持つことが重要なカギとなります。
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