息苦しい浅い呼吸の4つの原因【改善方法や病気の可能性も解説】
<監修医師 豊田早苗>
「息苦しい」と言っても原因は様々です。呼吸が早くて息苦しいという時や、理由もわからずに呼吸が浅くて息苦しいということもあります。
胸の圧迫感があったり心拍数が上がったり、症状も人それぞれなのです。
「息苦しさ」の原因や改善の方法・考えられる病気などについて解説します。
気になる所から確認してみよう
呼吸のメカニズムを改めて確認
普段気に留めていない「呼吸」ですが、これによって私たちは生きています。深呼吸したり楽器を演奏したり、水に潜ることだってできるのです。
呼吸とは肋骨の間にある「肋間筋」や「横隔膜」を使って成立します。
肋間筋を収縮させて肋骨をあげることにより肺が伸展すると息を吸い込む「吸気」、逆に肋間筋が弛緩して肺が収縮することで息を吐く「呼気」ができます。
横隔膜が収縮することで胸郭が広がると息を吸い込む「吸気」、横隔膜が弛緩すると胸郭が狭まり縮小すると息を吐く「呼気」ができるのです。
肋間筋や横隔膜が動作することで呼吸ができる、ということで肺自体が動作するわけではないのです。
「胸郭腔」という陰圧の(圧力が低い)空間の中に肺があり、横隔膜や肋間筋がしなやかなゴムのように上下することで容積が変化します。
上下する動きによる圧力の変化で「換気(空気に出し入れ)」できるのです。
呼吸が浅いとは?2つのポイントをチェック
「呼吸が浅い」と言っても漠然としていて、自分がどうなのかよくわからないものです。ここでは「呼吸チェックポイント」をご紹介します。
深呼吸でチェック
アンダーバストの位置にメジャーを巻いて、胸でしっかりと深呼吸をしてみましょう。胸のふくらみ方で測定します。
✅ 5cm以上ふくらむ:上手に深い呼吸ができています。
✅ 3cm以上5cm未満:まずまずです、5cm以上ふくらむように深呼吸できるとなお良いですね。
✅ 3cm未満:呼吸が浅くなっています。
吐息でチェック
たっぷり息を吸い込んで、何秒続けて吐けるか「吐息の長さ」で測定します。
息を吸い込むのは鼻でも口でもどちらでも良いのですが、大きく吸い込みます。そして「口から糸のように」息をゆっくりと少しずつ吐き出してみてください。
合格ラインは20秒以上で、それ未満の場合は呼吸が浅くなっているかもしれません。
浅い呼吸には4つの原因があった
呼吸が浅い原因は胸郭の大きさによるところもあるかもしれませんが、それだけではないのです。
ストレスが呼吸を浅くすることもある
リラックスできない状態が続くと、呼吸が浅くなっていきます。呼吸の深さとストレスは反比例の関係です。
悩み事が増えると呼吸が浅くなり、プレッシャーがなくなると呼吸が深くなるという具合です。
これには「脳」が関係しています。ストレスがたまると「脳幹」が疲弊していきます。呼吸を司る「脳幹」が疲弊すると正常に作動しなくなるため、呼吸の深さにも影響を及ぼします。
悩みやストレスに関係するものとして寝不足も挙げられますが、寝不足も呼吸が浅くなる原因です。
姿勢が悪いと呼吸がうまくできない
猫背になったりして背筋が伸びていないと胸郭が狭くなり、横隔膜の動きも悪くなります。これは加齢による姿勢の悪さも同じことだと言えます。
高齢者はどうしても猫背の傾向が出てくるため、呼吸の浅い人が増加してきます。
口呼吸は浅い呼吸専用
近年口呼吸の人が多くなっています。口呼吸のデメリットは虫歯や口臭だけではなく、呼吸の浅さにも関係しています。
口から息を大きく吸い込もうとすると、体も仰け反りませんか?でも鼻から吸い込む時はまっすぐ姿勢を変えずに吸い込むことができます。
必然的に口呼吸では吸い込む量が不足しています。ということは、浅い呼吸の原因になっているのです。
何らかの病気のサイン
呼吸の仕方や姿勢に問題がないのに呼吸が浅い、胸の圧迫感や息苦しさがある時には病気のサインかもしれません。
心当たりがあれば、医療機関を受診しましょう。
呼吸が浅いと様々な副作用が発生する
呼吸が浅いと「息苦しさ」の他にも様々な症状が起こります。
身体の『冷え』
呼吸が浅いということは、吸い込む空気が少ないということ。絶対的な酸素不足を起こします。
酸素が不足すると筋肉などが必要とする量が供給されなくなります。
脳や内臓という生命維持の上で重要とされる部分から順に酸素が供給されるためです。このため身体の末端が冷えたりするということになります。
この「冷え」の症状はひどくなるとしびれや低体温症状・貧血を起こしたりすることもあるので注意が必要です。
イライラしやすい不安定な状態
呼吸が浅いだけでいらいらするなんて、と思うでしょう。呼吸が浅いというと自律神経の乱れから交感神経優位な状態になります。
こうなると不安定な状態になりいらいらやマイナス思考に陥りやすくなります。悪化するとうつ病を招くことさえあるのです。
血行不良と慢性疲労
呼吸が浅いと酸素が不足する、そのため血行不良が起こり全身の栄養状態も悪化します。
栄養状態が悪化すると身体自体の「力」が持続しなくなるので疲労が蓄積して慢性疲労を引き起こします。
血行不良でもう一つ気をつけたいのは「胃腸障害」です。胃のもたれや胃痛だけでなく、ガス溜まりやげっぷ・下痢など様々な胃腸症状が発生します。
睡眠にも問題が
浅い呼吸では交感神経が優位になり、睡眠障害を起こすこともあります。「睡眠」というのは副交感神経優位の状態です。
この副交感神経が優位になれないと寝付きの悪さや度々目がさめる・眠った気がしないなどの症状が起こります。
呼吸が浅く息苦しい場合は自律神経失調症の可能性も疑って
呼吸が浅くて息苦しさがあり、生あくびがよく出るしのどの詰まった感じや口渇もある・・・そんな症状に思い当たったら、自律神経失調症の疑いが出てきます。
倦怠感・頭痛・動悸・めまいなどの自覚症状はある、でも病院で検査をしてもどこも悪いところがなかった。
不安やゆううつな気分が続いたり、会社や家庭でもいつも疎外感を感じてしまうなども思い当たるかもしれません。
自律神経失調症と診断されるまで、その道のりがとても遠かったという人が多いのです。自覚症状はある、でも検査をしても異常が見つからない。
交感神経と副交感神経のアンバランスが招く疾患が「自律神経失調症」です。
いわゆる「更年期」にあたる女性に多いと言われる疾患ですが、閉経を迎えると女性ホルモンの量が大きく変化します。これによって不定愁訴や頭痛・冷え性などとともに「息苦しさ」を感じることもあります。
またこの自律神経失調症は外的要因からも発症します。深夜まで残業続きだったり大きな環境の変化なども引き金となります。
ストレスや過労が長期間続いていると交感神経が活発に働き続けます。これにより副交感神経とのアンバランスな状態が生まれて自律神経失調症を発症するのです。
自律神経失調症はその他にも心拍数の増加によって動悸や息苦しさ発生したり、高血圧のような症状が起こって頭痛が続いたりと特定の症状だけが続く場合とそうでない場合があるので診断が難しいとも言われます。
ビタミンBの不足も少なからず影響するようですので、もしも自律神経失調症であった場合にはサプリメントなどを取り入れるのも良い方法です。
気持ちよい深呼吸をするに。浅い呼吸の改善策
呼吸が浅いことに思い当たったら、今度はそれを改善する方法を考えてみましょう。
自律神経による身体の働きで唯一セルフコントロールできるのが「呼吸」なのです。浅い呼吸を「自分で改善」できる方法をご紹介します。
腹式呼吸をしよう
「腹式呼吸」と言っても、お腹に空気が吸い込めるわけではありません。通常意識せずに呼吸をしている時、人間は胸式呼吸になっています。
お腹を意識した呼吸をすることで、自然に呼吸が深くなっていくのです。
立っていても座っていても、ゴロゴロしていても良いのです。思い立ったら体にかかっている無駄な力をまず抜きましょう。
吸い込むのも吐き出すのも、必ず「鼻」です。そしてお腹に意識を集中するには「おへそに手を当てる」のが良いでしょう。
お腹がふくらんだりしぼんだりするのを手で感じながら、ゆっくりと大きな呼吸を繰り返します。
テレビを見ながらするならば、CMが流れている時間に呼吸をし続けるぐらいの感覚が良いでしょう。
ストレッチで伸ばして広げる
デスクワークで長時間同じ姿勢で固まっていると、背中も胸も伸び縮みを忘れて硬くなっています。これでは深い呼吸が望めません。そんなスキマ時間の休息にもってこいなのがストレッチです。
1. 両手をまっすぐに上に向けて伸ばして掌を合わせて息を吐く。
2. 胸を張って少しずつ肘を下側後方で合わせるイメージで、息を吸い込みながら引いていく。この時、肩甲骨がきちんと動いていることを意識しましょう。
この2つの動きで横隔膜と脇腹が伸びて胸が広がります。最後に背中側にもアプローチしましょう。
3. 両手を地面と平行に保って指先を組む。
4. 指先は組んだまま息を吐きながら、腕とお腹の間に「大きなボールを抱えるイメージ」で背中を丸める。
この4つのストレッチは全て通しても3分程度で済むので、お手洗いに行った時にでもすぐに実行できますね。
自宅で行う時には好みのアロマなどを取り入れるともっとリラックスできて効果もアップします。
心地よい程度の運動を取り入れる
運動をしようと思っても、なかなかまとまった時間が取れなかったりするでしょう。でも運動不足は万病の元、「1駅分歩こう」ということが言われるのもそのためです。
代謝アップも兼ねるならば、うっすら汗ばむぐらいのウォーキングで十分です。手始めにランチをするお店をワンブロック遠いところにして、行き帰りを少し早歩きするというのも簡単にできる方法です。
筋トレやツボ押しも効果があると言われています。筋トレとは言いますが、実は正しい腹式呼吸を毎日繰り返すことで「呼吸に必要な筋肉」は鍛えられるのです。
ツボ押しの「ツボ」は鎖骨の中央あたりにある「天突(てんとつ)」というツボです。親指で押しながら息を吐き、親指の力を抜きながら息を吸う。この動作を数回繰り返すことで、肋骨が開きやすくなると言います。
薬でも解消できる?
市販薬や漢方薬で解消できるのでしょうか。これはアレルギーや自律神経からくる問題などの場合で、医療機関での様々な検査方法を経てえられた結果によるものです。
自律神経系ならば抗不安薬などが処方される場合があるようです。また市販の漢方薬でも半夏厚朴湯などが合う場合もあります。
タバコはやめる
息苦しさでも物理的な要因から来ているものがありますね。アレルギーなどもそうですが、一番言われるのは「タバコ」です。百害あって一利なし、タバコをやめただけで息苦しさがなくなる人もいるのです。
呼吸が浅いと身体の全てに影響があります。呼吸を深くするように、毎日の積み重ねが大切です。
浅い呼吸は「薄毛の元」とも言われているのです。酸素不足で頭皮に栄養が行き渡らなくなることが原因です。気をつけたいですね。
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