耳の後ろに痛くないしこりが!【癌が原因の可能性アリ】
<監修医師 豊田早苗|監修看護婦 ジビ子>
耳の後ろ側に、しこりのような物があるけど痛くない。そうしたしこりが生じる原因と、癌の場合との見分け方を解説します。
痛くないしこりの原因
粉瘤腫
粉瘤腫は、何らかの原因で本来は垢として外に排出されるはずの古い角質や皮脂といった老廃物が、皮膚(真皮)の下に蓄積した物のことです。
しこりがニキビ程度の大きさのうちは問題がありませんが、放っておけば垢がたまって大きくなっていきます。
細菌に感染して化膿すると、炎症が起こって痛みが生じてきます。最初の内はゴリゴリと固い感触ですが、化膿すると柔らかくなります。
頂部には「へそ」と呼ばれる小さな穴があり、指で押すとひどい臭いのする膿が噴き出してくることがあります。
小さいうちは経過観察で済みますが、急激に肥大したり炎症を起こしたりしているようであれば手術が必要になります。
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リンパ節炎
リンパはリンパ液と呼ばれる透明な液を運搬する、血管系と似た体のネットワークです。リンパ液は全身の細胞の間を満たす体液と基本的に同じもので、リンパ系には脂質を運び、免疫細胞を生産する役目があります。
リンパ節はこうしたリンパ系と血管系が合流するポイントで、リンパから細菌やウイルスが血管に入り込まないようにするチェックする検問のような役目を持っています。
場所は耳の後ろや下、腋、足の付け根前側、腸、気管支などに存在しています。病原体が入ってくるとここで免疫機能との戦いが生じ、リンパ節の炎症が生じます。
いきなり生じて数日で消えたということもよくありますが、腫れが引かない場合は病院に行きましょう。
病原体の侵入以外にも、肩こりでリンパ腺の腫れが起きることもあります。
リンパ液は筋肉の運動で循環する物なので、肩の筋肉が硬直していると流れが滞るためです。肩こりを生み出すストレスも免疫機能を下げてリンパが腫れる原因になるので、適度に解消することが大事です。
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耳下腺腫瘍
耳下腺は耳の前から下にある腺で、唾液を生産する役目があります。ここに生じる腫瘍が耳下腺腫瘍です。
良性のものと悪性の物両方があり、良性腫瘍では多型腺腫、腺リンパ腫(ワルチン腫瘍)があります。
悪性腫瘍では粘表皮がん、線様嚢胞がん、腺房細胞がん、扁平上皮がん、悪性リンパ腫などがあります。
流行性耳下腺炎
いわゆる「おたふく風邪」のことです。おたふく風邪はムンプスウイルスが原因の感染症です。
ウイルスが体の中に入り症状が出始めるまでは2~3週間、平均すると18日前後かかります。ノロウイルスやインフルエンザウイルスに比べて潜伏期間が長いのが特徴です。感染力が強く、唾液などの飛沫から人にうつります。
特徴的な症状は耳の下からあごの下にかけての耳下腺が場所に生じる腫れで、1~2日程度で急速に腫れます。腫れが出たときから3日ほどは痛みがあり、腫れそのものは1週間~10日ほど続きます。多くの場合、腫れと共に熱が出て、頭痛や嘔吐、腹痛が生じるケースもあります。
予防接種をすれば感染する危険性は低くなり、2~3歳までにしておけばかなり安全になります。
任意接種なので費用は一回当たり5000~7000円ほどと高めですが、医療機関や地域によっては公費補助が出ることがあるので、安く受けられることもあります。
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痛風
痛風は血液中の尿酸が多いために尿酸が結晶化することで生じる病気です。
結晶は体の中でも外気にさらされて温度が低い耳たぶを始め、足の親指の付け根や足首、アキレス腱のまわり、ひじ関節などにたまります。そうなった時、白血球は尿酸の結晶を異物とみなし攻撃を行い、炎症を起こす化学物質を放出して激しい痛みを引き起こします。
耳たぶにしこりが出来るのは痛風の初期症状で、触って分かるほどのサイズになっているようならかなり進んでいる証拠です。
数週間から数カ月、遅い人でも1~2年で痛風の発作が始まります。足の親指を押してみて、足に痛みや痒みが生じれば痛風予備軍のサインです。
肉芽腫
肉芽腫とは、炎症が慢性的に続く場所に生じる腫瘤です。炎症が生じ続けていると、その場所に炎症細胞や線維芽細胞が集まって溜まり、毛細血管が入った線維からなる腫瘤が生じます。
中でも、体内に長い間居座っている異物による炎症が原因で生じた肉芽腫は、異物肉芽腫と呼ばれています。
怪我をした際に傷口に入って取り残された砂粒や、ピアスなどの装飾品、美容整形外科での美容手術で入れられた充填剤などが原因となります。
癌の可能性があるしこりの特徴
悪性腫瘍ではがん細胞が周囲の組織を破壊・浸食しつつ拡大していきます。そのため、悪性腫瘍は周囲の組織と癒着しており、押してもあまり動くことはありません。
良性腫瘍の場合は腫瘍と周囲の組織との境界が明確なので、押すと動く点で見分けが付けられますす。それ以外に、リンパ腺の腫れなどに比べると固い傾向にあります。
また、悪性腫瘍は急速に大きくなります。5cmを超えるような大きさに成長するようであれば、速やかに病院で検査を受けましょう。
最初は痛みがない物の、拡大して顔面神経に影響を及ぼすようになると強い痛みが生じるようになるばかりでなく、リンパ管を通じて全身に転移する危険性も増大します。
悪性の腫瘍かどうかは、造形MRIを受けることで、より正確に判断することが出来ます。
痛いしこりの場合はこちらを見て参考にして下さい。
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しこりの治療法
しこりが気になるときに何科を受診すればよいのかは、しこりの原因によって異なってきます。
リンパ節の腫れやおたふく風邪、耳下腺腫なら耳鼻科が専門です。粉瘤腫や肉芽腫の場合は皮膚科です。
悪性腫瘍であった場合は血液内科が専門になります。耳の下にしこりが出来ても何科で見てもらえばよいかわからない時は、ひとまず内科を受診しましょう。
リンパ節炎の時は、炎症を抑える薬や、細菌の場合はそれを殺す抗生物質を服薬、あるいは注射し、体が病原体を排除するまで安静にします。
粉瘤腫や肉芽腫の場合は取り除く以外の治療法がないため、切開手術をすることになります。
粉瘤腫は切開して老廃物の詰まった袋を取り出すか、中身を絞り出して袋を取り除くかします。肉芽腫は腫瘍全体を取り除くか、液体窒素で凍らせて死滅させるかします。
悪性腫瘍の場合は手術で取り除くことが第一の選択です。
しかし、近い場所に顔面神経が走っているので、腫瘍が大きい場合は影響を及ぼさずに取り出すことは難しくなります。
腫瘍が大きすぎたときは、手術後に後遺症が起きることもあるので、早めの発見が大切になります。
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