肘が痛い!【外側・内側別にズキッとする原因や病気を解説!】
<監修柔道整復師 岡部大輔>
「テニス肘」、「ゴルフ肘」、最近では「スマホ肘」なんていう言葉も耳にするようになりましたが、これらはみんな手の使い過ぎによって引き起こされる肘痛です。
肩や手首と同様、肘に痛みを感じたことのある人も少なくないでしょう。肘痛は私たちにとってとても身近な症状なんです。
今回は、そんな肘の痛みについてまとめます。肘の外側・内側別にズキッと痛む原因や病気について詳しく解説し、その治療法や予防法なども解説します。
肘が痛い原因はコレ!
筋肉や腱・靭帯の炎症
肘の痛みのよくある原因として、使い過ぎがありますが、これは肘自体というよりも手首や指の酷使によって起こることが多いんです。
手を握る動きや手首を折り曲げる動きをするときには、必ず肘周辺の筋肉が盛り上がるのはそのせいで、指先を動かす筋肉が肘まで伸びていて繋がっているからです。
重たいものを無理して持ったり掴んだり、同じ動作を連続して行うことで、肘や手首に負担がかかり、結果的に肘関節に繋がる筋肉や腱・靭帯を痛めてしまうことがあります。
このとき生じる炎症により、血液がうっ血して神経を圧迫し、肘痛が引き起こされます。
肘関節のすり減りや変形
スポーツなどで肘を酷使し過ぎると肘関節の内部にある軟骨がすり減り、骨が擦れ合うときに神経を刺激して痛みが生じることもあります。
また肘関節の内部の骨や軟骨が変形したり、肘関節が硬くなる拘縮によって関節の動きが制限された場合にも、肘を動かすと痛むことがあります。
変形や拘縮は、スポーツや怪我で起きやすく、また加齢やストレッチ不足も原因となります。
病気が原因
使い過ぎや疲労、加齢が原因となる筋肉や関節の炎症の他に、何らかの病気によって肘痛が引き起こされる場合があります。
例えば、足の付け根の関節に尿酸が溜まってしまう痛風とよく似た症状で偽痛風というものがあり、これは肘にピロリン酸カルシウムが溜まる関節炎です。
また、こわばりや関節の変形を伴う関節リウマチによる炎症もあります。この場合は、専門医による原因となっている病気の治療を行う必要があります。
この他にも意外ですが、狭心症や心筋梗塞などの心臓病が原因で左手がしびれたり痛んだりすることがあるそうです。
肘が痛い外側・内側別の症状
肘の外側の症状
肘の外側に痛みが生じるときは、肘周辺の腱の炎症が原因となります。手首を返す動作で肘の外側から前腕にかけて痛みが出現し、安静時には痛みがないのが特徴です。
物を掴んで持ち上げる動作やタオルを絞る、ドアノブを回す、手首を使う動作の度に、患部や手首、肩まで痛みが放散します。
肘の使い過ぎや使い方の悪さが原因で、安静によって良くなってもまた元の生活に戻ると再発しやすく、なかなか治らないと言われています。
肘の内側の症状
肘の内側に痛みが生じるときは、肘の内側を通る神経が圧迫されていることが原因となります。この場合、指先まで走るしびれや痛みを認めます。
筋肉や関節が炎症を起こしている場合は、患部を押したり、手首を手のひら側に曲げたときに痛みが生じます。
また、関節の変形による痛みは、常にしびれていたり、変形によって肘が曲がらない、もしくは伸ばせない等の症状を伴い、生活に支障が出てしまいます。
肘全体が痛いときの症状
肘全体に痛みが生じるときは、関節や骨、筋肉にこわばりが起きたり、関節の炎症・腫れが原因の場合があります。
この症状は自己免疫疾患の一つである関節リウマチに当てはまります。
関節痛は指先や手首など小さな関節に起こることが多いですが、症状が進行するにつれて全身の関節に症状が現れます。また発熱、全身倦怠感などを伴うこともあります。
その他、肘の痛み方別に見る症状についてはこちらを参考にして下さい。
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上腕骨外側上顆炎 (じょうわんこつがいそくじょうかえん)
上腕骨外側上顆炎は、テニス肘とも言われる病気で、テニスをやっている人の他にも、家事やパソコン操作をよくする人によく見られます。
最近では、スマホ肘とも言われ、長時間のスマホで指を酷使する人に増えています。
肘の外側にある、骨の隆起部分には手首を返す筋肉が付着しており、使い過ぎによって炎症を起こします。
レントゲン写真では上腕骨外側上顆炎は何も写らないことが多いですが、エコーで患部を診ると炎症を確認できます。
こちらの症状も参考にして下さい。
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上腕骨内側上顆炎
上腕骨内側上顆炎は、ゴルフ肘とも言われる病気で、ゴルフのスイング、家事や手に力を入れる動作を繰り返す人によく見られます。
肘の内側付近の筋肉は手首を手のひら側に曲げる強い筋群であり、テニス肘に比べると発症頻度は比較的低いと言われています。
変形性肘関節症
変形性肘関節症は、加齢や骨折・脱臼などの外傷、使い過ぎによって肘関節に変形が生じ、痛みと炎症を伴う病気です。
レントゲン写真では、関節内部の軟骨のすり減りや骨棘と言われる異常な骨の増殖、遊離体などを認めます。
関節の変形によって、正常な範囲の曲げ伸ばしが制限されたり、肘の内側の神経を圧迫して麻痺が生じることもあります。その場合は、手に力が入りにくくなったり、指先がしびれたりします。
小指や薬指にしびれが出現した場合、肘部管症候群という診断がつきます。この他、親指・人差し指・中指にしびれが生じた場合は手根管症候群かもしれません。
肘部管症候群も手根管症候群も、骨と靭帯に覆われたトンネル状の狭いスペースに神経と腱が通っており、それが圧迫されることで引き起こされる症状で、変形性肘関節症の症状が進行していることを意味します。
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関節リウマチ
関節リウマチは、自己免疫疾患の一つで原因不明の病気です。30〜50代の女性の発症率が高いと言われています。
手指や手首など小さな関節から徐々に肘、膝、首などの関節へと進行し、痛みと腫れは左右の同じ部位の関節にほぼ同じ時期に起こることが多いです。
朝のこわばり、関節の骨や軟骨の破壊・変形による炎症は、良くなったり悪くなったりを繰り返しながら慢性の経過をたどることが多く、肘の場合は曲げ伸ばしの制限が生じてきます。
外側・内側別に治療法
外側の痛みはまず安静!
まずは患部に負担が掛からないように動作に気を付け、安静にする保存療法です。
この間には、湿布や外用薬、冷却などで炎症を抑え、痛みが酷いときは痛み止めやステロイド注射で様子を見たり、テーピングやバンド固定で対処します。その他、患部以外の手首や指のストレッチをこまめに行うことも重要です。
保存療法が有効なケースの場合、1ヶ月くらいで痛みが改善し良くなっていきます。
保存療法が効かない場合は、筋膜切開術、切除術などの手術を行うこともあるそうです。その他、レーザーや超音波、電気や針治療などの物理療法、マッサージなどの手技療法、肘周囲の筋力トレーニングなどの理学療法があります。
内側の痛みもまず安静!
肘の内側の痛みも、治療法は外側の痛み同様で、安静にする保存療法が第一となります。痛みや炎症には、鎮痛処置と注射、装具やサポーターが有効です。
3ヶ月程度経っても改善がみられない場合は、手術療法を選択する場合もあります。整形外科を受診し、症状や時期に合わせた治療を行いましょう。
人工関節置換術もある!
主に関節リウマチで変形による機能障害をきたした人に対して、機能回復を目的とした人工肘関節置換術が適応されることがあります。
関節リウマチは、薬物療法とリハビリを併用しながら、それでも関節の破壊や可動域の制限が進行して生活に支障をきたした段階で手術が検討されます。
リウマチ内科、整形外科など複数の専門医のセカンドオピニオンを参考にしながら症状に合った治療をしていくことをオススメします。
予防が大事!
使い過ぎによる肘痛は、一度発症してしまうと完治までに時間が掛かり、再発する例も多いため、日頃から肘の使用方法に気をつける等の予防が大事です。
肘を使う前に、ストレッチなどのウォーミングアップを行ったり、肘に負担を掛けない動作を心がけることが重要となってきます。
また、少しでも痛みや違和感を感じるようなら症状が悪化する前に治療することで予後も良く、再発を防ぐことができますよ。
今回は、肘の痛みの原因についてまとめました。使い過ぎによる炎症の他、意外な病気や知らない疾患も出てきて驚きでした。いずれも早めの治療と再発予防が大切です。
もしも痛みや違和感を感じるようなら一度受診をオススメします。
家事や様々なスポーツ、仕事をする上で重要な役割を担っている手。肘はその大事な一部であり、痛みやしびれは想像以上のストレスとなります。
「我慢できる程度だから」「忙しいから」等の理由で放っておかず、重症化する前に適切なケアをしてあげましょう。
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