肘部管症候群の原因の症状ガイド【3つの治療法や手術費用を解説】
<監修柔道整復師 りんご>
「指が曲がって伸びない」、「なんだか手がしびれる」などの症状を感じたことはありませんか?加齢や疲れが原因だろう、と軽く考えている人も要注意!その症状は「肘部管症候群」かもしれません。
聞きなれない病気ですが放置していると手術が必要になることもあります。今回は肘部管症候群の詳しい症状や治療法を紹介します。
気になる所から確認してみよう
肘部管症候群とは?
「肘部管症候群」とは、小指と薬指の感覚や指の曲げ伸ばしなどの手指の筋肉をつかさどる、
尺骨神経が肘の内側の肘部管というトンネル内で圧迫や引き延ばしなどの刺激を受けて引き起こされる「神経麻痺」の事を言います。
簡単に言うと、「肘を酷使してしたことで肘が関節症を起こし、手の神経を圧迫している」状態です。
症状としては、「手の小指・薬指側の外側を中心にしびれや痛みを伴う」、「小指や薬指が曲がったまま伸ばせなくなる」などがあります。
主に指に症状が出るため「指のトラブル」と勘違いされやすいのですが、肘の部分にある神経が長期にわたって圧迫され続けることで引き起こされる関節症です。
進行すると手に力が入るにくくなったり、痛みを感じるため治療せずに放置していると手の筋肉量が低下し手術が必要になる場合もあります。
症状を放置してしまうと手術をしても完全に手の機能が戻らないこともあるので、手に異常を感じたら早めに整形外科を受診することをおすすめします。早期発見が早期回復に繋がります。
肘部管症候群の症状
指や手に違和感
肘部管症候群の症状は以下のようなものが挙げられます。
*初期症状*
✅手の外側を中心にしびれや痛みを伴う
*進行してくると出てくる症状*
✅小指や薬指が曲がったまままっすぐ伸ばせない鉤爪変型が起こる
✅筋力が低下し、指を閉じたり開いたりの動きができなくなる
✅握力の低下
✅手指の筋肉が痩せてくる
勘違いされやすい症状
「手先に力が入らない」、「指が曲がって動かしにくい」、という症状があっても深刻なものと考えずに我慢して日常生活をこなす人が多いようです。
中には市販の湿布薬を張ったり、塗り薬を塗ったりしながら「手首や筋肉の炎症だろう」、「加齢のせいだろう」などと考えてしまう場合もあるようです。
肘部管症候群の特徴としては、麻痺の感じ方によって異なりますが「しびれ~指の曲げ伸ばしが困難になる・筋肉が減り手が痩せてくる~握力が低下する」という流れで進行していきます。
おかしいな?と思ったら早めに整形外科を受診してみることで悪化を予防することに繋がります。
肘部管症候群を引き起こす原因
生活習慣が原因
肘の内側にある上腕骨内上顆というくるぶしの後には、「骨と靭帯で形成された肘部管というトンネル」があり、ここを尺骨神経が通っています。
トンネル内は狭く、圧迫や引き伸ばしが慢性的に加わるとすぐに「神経麻痺」を起こしてしまいます。
日常の癖や仕事中の作業姿勢などが原因で肘に気が付かないうちに慢性的に負担がかかってしまうことで、副作用的に発症します。
そのため生活習慣など見直し、原因を改める事が必要になります。
それ以外の原因
肘部管症候群は生活習慣以外にも、「発症する年代」や「それ以前からのトラブル」などによって原因は様々なようです。もし原因に心当たりがあれば予防や改善につなげましょう。
*代表的な原因*
✅加齢などによる骨の変型・・・骨棘(こつきょく)といって、骨がとげ状に尖ってしまう状態。この変形によって神経の圧迫が引き起こされる。
✅靭帯の肥厚(硬化)・・・神経に圧がかかり神経障害を引き起こす。
✅外反肘(がいはんちゅう)・・・幼少期の骨折などが要因で肘を伸ばすと過剰に外側に反る変型。
✅慢性的な負担・・・同じ動作を繰り返すスポーツや仕事などによる影響。
✅嚢腫(のうしゅ)・・・関節や腱の周りの潤滑液が蓄積し「ガングリオン嚢腫」というゼリー状のしこりができ神経を圧迫する。
肘部管症候群の治療法や手術について
検査&診断
主な検査方法は以下のようになります。
✅ティネルサイン陽性・・・肘の後ろ側をたたくと指先に痛みが響くかを調べる。
✅フロマン徴候陽性・・・1枚の紙を両手の人差し指と親指で挟んで引っ張った時に症状のある方の手は力が入らずに紙が抜けてしまうかを調べる。
✅電気による神経テスト・・・電気によって神経を刺激し、筋肉が反応するまでの時間を測る。 症状がある場合筋肉の反応に時間がかかるなどの筋肉の反応を調べたり、知覚テスターによって皮膚表面の触覚の反応を調べる。 これらは、首の病気による神経圧迫や糖尿病による神経障害と鑑別するために行われる。 |
段階で変わる処置&治療
肘部管症候群の処置や治療法は原因や症状の程度によって変わってきます。
「初期段階」や「軽度な症状」であれば肘をなるべく使わずに安静を心がけ「消炎剤鎮痛剤」や「内服用ビタミン剤」などの服用、
「肘に負担がかからないようにしながら十分に休ませる」などの処置を行いながら様子を見ます。
それでも症状が改善されなかったり、筋肉量の低下などの症状が現れた場合は手術が必要になることもあります。
治療に使用される主な薬
*鎮痛剤*
ボルタレン・ロキソニンなどの非ステロイド消炎剤鎮痛剤
*神経再生薬*
メチコバール(ビタミンB12)
良く聞く名前の薬もありますが、自己判断で市販薬を使用することは止めましょう。必ず医師の診断を基に正しく薬を服用することが重要です。
手術
上腕部の一部(肘の靭帯)を切除しトンネル部分を開いて、尺骨神経を圧迫している原因を除去します。
神経の緊張が強い場合は上腕内上顆を削ったり、神経の位置を移動させて神経が正常に機能するように処置します。
その際に変形している骨があれば骨を切って形を整えて矯正し、神経の麻痺状態を避けるように治療します。手術による体への負担は最小限に抑えることができる手術となります。
術後はしばらく安静が必要になります。状態にもよりますが術後の入院期間は2~3日、もしくは1週間程度で退院できる人がほとんどです。
ただし過度に肘に負担がかかるようなことをしない限り、1日中安静にしていても、夜間のみ安静にしていてもそれほど大差はないという実証結果があるので主治医と相談しながら術後の経過を過ごしましょう。
ちなみに手術にかかる費用は、外来で行う場合4~5万程度、入院するのであれば麻酔と手術で6万程度+入院料(約1万円×日数)といわれています。
肘部管症候群は予防の心掛けも重要
私たちが普段何気なくやっている生活習慣の中には、知らず知らず身体に大きな負担をかけていることがあるかもしれません。
肘へも気が付かないうちに負担がかかっているのかもしれません。そこで重要になるのが「負担をかけない工夫と予防」を心がけることです。
例えば、机に肘を付く癖はありませんか?この姿勢は神経を圧迫するため肘に負担をかけてしまいます。
尺骨神経を「引き伸ばす働き」と「圧迫する働き」が同時に行われてしまうため、肘にトラブルを抱えている人はさらに症状を悪化させてしまう原因になります。
また就寝時にしびれを感じる場合は「寝具の見直しが必要」なのかもしれません。寝具のマットレスを負担が軽減できるものに変えるだけで肘への負担が減るかもしれません。
加えて「肘が伸びた状態で眠るようにするだけでも肘への負担はだいぶ軽減される」ことがあります。
もし自分の寝ている時の姿勢が肘の神経を圧迫しているかも?と思い当る人は腕をしっかりと伸ばして肘をリラックスさせてあげましょう。
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