肺血栓塞栓症の14の症状!正しい予防法を知っていますか?
<監修医師 ドクターTST>
肺血栓塞栓症は血液の流れに乗って運ばれた血栓が血管をふさぐ事で発症します。
そして、その1つにエコノミークラス症候群があります。
心筋梗塞や脳梗塞に比べて以前は少なかった病気ですが、近年は増加しており、欧米では命に関わる循環器の三大疾病に入ります。
肺血栓塞栓症はどのような症状が出るのか、まだよく知られていない事と思います。
そこで今回は肺血栓塞栓症の症状や治療法、予防法までお話させて頂きたいと思います。
気になる所から確認してみよう
肺血栓塞栓症(はいけっせんそくせんしょう)とは?
肺血栓塞栓症とは、心臓から肺に血液を運ぶ血管である肺動脈に血栓が詰まり、
肺動脈の流れが悪くなったり、ふさがってしまう事で命に関わる怖い病気です。
検査には血液検査、超音波検査(エコー)やCT血液造影検査などを用い、深部静脈血栓症など原因がないかを探ることになります。
肺血栓塞栓症は、日本における309症例の調査では急性期の死亡率が14%と高い病気です。
早期発見し、早期に血栓を取り除く事が予後のためにも必要となりますので、しっかりとどんな症状が現れるのか把握しましょう。
この肺動脈に詰まる血栓は9割以上が下肢または骨盤内静脈にできたものです。
血液が固まりやすい、静脈内血液の流れが悪い、静脈が傷ついている等の状態が肺血栓塞栓症を起こしやすい状態です。
このような状態になる原因にはどんな原因があるかについてもお伝えします。
なお、肺動脈の血栓が器質化し、慢性閉塞になると慢性肺血栓塞栓症と呼ばれる病気になります。
多くの肺動脈が血栓で閉塞することで肺高血圧症を合併し、労作時の息切れを認めるようになる病気が慢性血栓塞栓性肺高血圧症です。
薬の服用なので症状を緩和することは出来ますが、長期間の治療が必要になります。
肺高血圧症についてくわしくはこちらを見て参考にして下さい。
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肺血栓塞栓症の原因
原因となる血液が固まりやすい、静脈内血液の流れが悪い、静脈が傷ついている等の状態にはどのような原因でなってしまうのか、お伝えします。
水分量の不足
近年増加しているのがエコノミークラス症候群です。
エコノミークラス症候群は飛行機等の狭い座席に同じ姿勢で長時間座ったままという状況で起きます。
他の乗客の前を通る事を遠慮して、なるべくトイレに行かなくて済むように水分を控える方が多いです。
水分を控える事で、体内の必要な水分量が不足し、血液が固まりやすい状況になります。
加えて、トイレに立たない為にずっと座ったままの時間が長くなり、脚がむくみ静脈の流れも悪くなってしまうのです。
またこのような状況は飛行機のみならず、長距離バスや新幹線の移動でも起こります。
仕事でタクシードライバーや長距離トラック運転手が発症する事もあります。
さらに怖いのがデスクワークでも起こるという事です。
水分を控え、長時間座ったままでいると同じ状況になります。
普段の日常生活でも起こる病気ですので、普段から気を付けなければなりません。
入院中に発症
肺血栓塞栓症を起こした方の半数は入院中に発症しています。
寝たきりの高齢者だけでなく、手術後やけが等で絶対安静の場合等、4日以上ベッドで寝たきりの状態を過ごしている場合に起こるのです。
安静期間を過ぎ、起きて歩き始めた時に呼吸困難や失神という症状が起きる事がとても多いです。
また脳梗塞や脳出血の後遺症による下肢の麻痺がある方も、静脈の流れが悪くなり、血栓が出来やすい状態になります。
病気や妊娠
危険性の高い病気としては、子宮筋腫、がんの抗がん剤治療中の方、ギプス固定をしている方もこの病気にかかりやすいので要注意です。
また妊娠中の方も同様に腹部の大きな静脈が圧迫される事で血液の流れが悪くなり、発症する可能性があります。
それから先天的凝固異常(せんてんてきぎょうこいじょう)といって、生まれつき血液が固まりやすい方、
後天的凝固異常(こうてんてきぎょうこいじょう)という何らかの病気により血液が固まりやすい方も肺血栓塞栓症を起こしやすいです。
また年齢層としてはやはり高齢者に多い病気と言えます。
ですが、若い方もこの病気にかかり、命に関わるケースがありますので、注意しなければなりません。
食生活の欧米化により、肥満傾向の方や食生活の偏りがある方が増えていますが、これも肺血栓塞栓症の発症のリスクになります。
血液からみる身体の異変についてはこちらを見て参考にして下さい。
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様々な原因を述べさせて頂きましたが、この病気の怖いところは特別な環境でなくとも、日常生活の様々な状況で起こる可能性のある病気だというところです。
早期に発見し、血栓を取り除かなければ命に関わる重大な病気です。
肺血栓塞栓症の症状
次に肺血栓塞栓症の症状についてお話させて頂きたいと思います。
症状について知る事で、早期発見、早期治療につながりますので、しっかりと把握しましょう。
息苦しさ・呼吸困難
最も多い症状が息苦しさです。
突然呼吸が苦しくなったり、普段は普通に上れた階段や上り坂で息苦しくなる等の状態が起きます。
また異常な呼吸音(ラ行の意味を為さない音声であることが多い)も特徴の一つです。
息苦しさとともに発熱の症状が出る場合もあります。
肺動脈が詰まる事で血液中の酸素濃度が低くなります。
心臓は酸素を体に行き渡らせる為に頻繁に血液を送り出し、肺はたくさんの酸素を取り込もうとします。
その為、安静にしている状態でも脈拍数や呼吸の回数も増加して、息苦しさが現れます。
ひどくなると呼吸困難に陥ります。
酸素濃度の変化による疾患についてはこちらを見て参考にして下さい。
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胸痛
息苦しさの次に多い症状が胸痛です。息を吸う時に鋭い痛みが現れます。
血栓が詰まり、肺動脈の血液が急にせき止められる事により、肺動脈内の圧が上昇します。
そして肺の血管が太くなったり、血圧が低下、冠動脈の血流までもが少なくなってしまう事が胸痛の原因です。
失神・ショック
心臓から流れる血液量が減り血圧が低下したり、神経反射の影響により失神やショック状態に陥ります。
重い場合には突然死する事もあるのです。
脚の腫れ・皮膚の色の変化
原因となる血栓の多くは脚にできます。
その為、下肢の腫れや痛み、皮膚の色の変化がこの病気のおよそ半数の患者さんに現れます。
全身倦怠感・不安感・動悸・冷や汗・顔面蒼白・咳・血痰など
肺動脈に血栓が詰まる事により、冷や汗や動悸、全身倦怠感、咳や血痰等の症状も現れます。
ただし、上記の全ての症状が起こる事は少ないです。
血栓が小さい場合には症状が軽かったり、無症状の事もあります。
血栓の大きさによっても現れる症状や重さは変わってくるのです。
血栓が大きい場合には呼吸困難、息苦しさ、胸痛、顔面蒼白、ショック等の状態になり、突然死する事もあります。
この病気は一刻も早く治療を開始しなければ命に関わる怖い病気です。
少しでも異常を感じたらすぐに救急車を呼びましょう。
肺血栓塞栓症の治療法
この病気にかかった場合には早期に治療を始めなければなりません。
肺動脈に詰まった血栓をお薬を投与する事で溶かす方法や、外科的手術で直接取り除く方法等があります。
重症度、合併症があるかないか、個人個人で治療法も変わってきます。
出血性の合併症等がない場合は、抗凝固療法(こうぎょうこりょうほう)という注射や内服薬により、血液をさらさらにする治療法を行います。
最初は注射から始め、次は内服薬を使い、注射を止めて、内服薬のみを続けます。
特にアスピリンは再発防止の効果があるとして、幅広く使用されています。
この病気になる危険因子や既往歴によって、数か月間の服用になる場合や一生お薬を飲み続けなければならない場合があります。
ショック状態に陥っている場合には血栓溶解療法(けっせんようかいりょうほう)という血栓を溶かす治療法を行います。
ただし、血栓を溶かすお薬は出血を起こしやすくしてしまいます。
また別の血栓が残っている場合にはそれも肺動脈に詰まり、病状を悪化させてしまいます。
この治療法の場合には重い合併症や、後遺症が生じる事もあります。
あくまでもショック状態に陥っている場合のみ死亡率が下がる治療法です。
また肺動脈内の血栓の近くまでカテーテルを入れ、薬剤を流したり、粉々に砕いたり、血栓を吸い取る等のカテーテル治療を行います。
ただし、カテーテル治療はとても難しい治療法になりますので、手術の技術に優れた医師のいる病院でしか行う事は出来ません。
外科的治療は動脈内の血栓を手術で取り除く方法です。血栓を取り除く事が出来れば状態は改善します。
お薬やカテーテル治療が行えない場合には外科的治療を行います。
血流そのものの改善についてはこちらを見て参考にして下さい。
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肺血栓塞栓症の予防法
肺血栓塞栓症は命に関わる怖い病気ですので、日常生活で気を付けるポイントをしっかりと抑え、意識的に予防しましょう。
エコノミークラス症候群の予防
飛行機内や高速バス内、新幹線内等、同じ姿勢を長時間取らないようにしましょう。また水分をしっかりと摂る事を心掛けましょう。
トイレに行かない為に我慢するのは止めましょう。
アルコールやコーヒーは脱水を招きますので、避けましょう。
意識的に脚を上下に動かしたり、少し立ってトイレに行く等、長時間同じ姿勢を取らないように気を付けましょう。
足の甲には比較的太い血管(足背動脈)が通っています。この部分に触れて普段の拍動が感じられない場合は、血液の循環に滞りが生じている証拠ですので、積極的に足を動かし血流を促進するようにした方がいいでしょう。
手術後の安静期間の予防
別の手術等により、安静期間中ベッドに寝たきりになっている患者さんが、肺血栓塞栓症を発症してしまう事もとても多いです。
脚の静脈の血液を心臓に戻す機能を持つ弾性ストッキングを寝ている間は着用する方法があります。
また予防法としての血栓を溶かすお薬や、血液をさらさらにするお薬等を使います。
弾性ストッキングと上記のお薬を併用して予防法とする場合もあります。
また長期間の安静が必要な場合には医師の指示の元、ベッド上での脚の運動やマッサージ等をする事も必要になります。
入院後のリハビリについてはこちらを見て参考にして下さい。
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この病気は早期発見・早期治療が重要です。少しでも異常を感じたらすぐに救急車を呼びましょう。
また常日頃から同じ姿勢を取らないように気を付けましょう。
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