脇腹がつるような痛みの8つの原因【危険な病気に注意しよう】
<監修医師 吉野 聖奈>
「筋肉がつる」とは、筋肉の痙攣のことです。こむら返りでおなじみのふくらはぎでよく起き、皆さんも一度は経験したことがあるでしょう。
症状の特徴としては、筋肉が一気にかたくなり、激しい痛みを伴うため身動きがとれません。つった後にまた繰り返したり、筋肉痛になって酷い目にあったという人もいるのでは?
筋肉の痙攣が起きる原因はいろいろありますが、足ではなく脇腹につるような痛みを感じたことはありませんか?もしかすると、それは思いもよらない病気のサインかもしれませんよ。
今回は、脇腹がつるような痛みの原因についてまとめてみました。
脇腹がつるような痛みの原因
足がつりやすいのは、心臓から遠くてよく使うから
身体の中で筋肉の痙攣がもっとも起きやすい、つまりつりやすい部分は足です。足というのは、立ち仕事や歩くときなど使う頻度が多くて、先端は冷えやすいです。これが、つりやすい原因となっています。
筋肉がつる原因は大きく4つあり、筋肉疲労、水分不足、血行不良、ホルモンバランスの崩れです。
足は、心臓から遠いためもっとも血液を送りにくく、血行不良になりやすい場所です。そして、よく使うということは筋肉疲労しやすいのです。
しかし、これらの原因で身体のどの筋肉にも起こりうる症状なので、脇腹がつることもあります。
他の身体の部位がつる場合の症状についてくわしくはこちらを参考にして下さい。
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脇腹の筋肉疲労
脇腹の筋肉は内腹斜筋と外腹斜筋あがりますが、脇腹がつるのは、この筋肉の疲労が原因です。
たとえば、身体をひねるような不自然な姿勢をとったり、寝るときの姿勢が悪かったり、笑いすぎたりすると脇腹をつってしまうことがあります。
筋肉疲労は運動不足で起きやすくなるので、日常的に運動や体幹のストレッチを心がけるとよいでしょう。
また、筋肉疲労を回復させる効果のあるビタミンB1不足も原因の一つになりますので、積極的に摂取するようにしましょう。
筋肉や神経の働きを調整するミネラルが重要
カルシウムやマグネシウム、ナトリウム、カリウムなどのミネラルは、筋肉や神経の働きを調整する働きがあります。これらのミネラルが不足すると筋肉がつることがあります。
たとえば、激しい運動や熱中症で大量に汗をかくと一緒にミネラルも流れてしまいます。また偏食などによる栄養不足や、貧血の人、ミネラル吸収率の低い高齢者もミネラルが不足し、筋肉がつりやすくなります。
ミネラルを含む食物を積極的に摂り、汗をかいたときはミネラル入りの飲料で水分補給するようにしましょう。
血行不良
身体が冷えると血流が悪くなり、筋肉がかたくなります。そうすると筋肉の疲労が蓄積されやすくなったり血液中のミネラルが行き届かないので筋肉がつりやすくなります。高齢者や女性は、筋肉量が男性よりも少ないため冷え性になりやすいといわれています。
冷え症の人は、温めたりマッサージなどで血行を良くしましょう。
ホルモンバランスの崩れ
過度のストレスによる自律神経のバランスが崩れても筋肉が痙攣することがあります。
また、妊娠さんはホルモンバランスが崩れやすく、冷え症にもなりやすいため、筋肉をつることがよくあります。
病気ではない内臓の痛み〜急激な運動〜
急激な運動の直後、脇腹がつったように痛いことがあります。これは、血液を蓄える臓器である脾臓が、筋肉へ急激に血液を送ろうと収縮するときの痛みです。この場合、脾臓のある左脇腹がつったように痛みます。
病気ではない内臓の痛み〜食後すぐの運動〜
食後すぐに運動すると脇腹に激しい痛みが生じることがあります。
食後は消化のために胃や腸に大量の血液を使用しますが、この状態で運動をすると全身の筋肉にも血液を送らなければなりません。そのため消化活動の筋肉に十分な血液や酸素が不足してしまいます。内臓筋は疲労が溜まりやすくなり、脇腹がつるように痛くなるのです。
食後の姿勢についてくわしくはこちらを見て参考にして下さい。
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病気
脇腹のつりがストレッチや温めでも治らず、長期にわたるときは病気の可能性があります。
たとえば、糖尿病や動脈硬化などの血管の機能低下から血流障害や末梢神経障害が起こり、筋肉がつりやすくなることがあります。
または虫垂炎や、女性特有の卵管炎など脇腹付近に位置する内臓の炎症です。この場合、臓器の位置によって左右どちらかに限定されることがあります。
意外に多い圧迫骨折
脇腹が痛むので何かの病気かと内科を受診したら、実は胸椎や腰椎の圧迫骨折だったという場合が骨粗鬆症を患う年配の女性に多いようです。
多くは腰痛として症状が出ますが、中には脇腹が痛むことがあります。
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左右でちがう病気の可能性
急性腹症
お腹の痛みの原因はたくさんあり、中には命の危険に関わるものも少なくありません。発生して間もなく、緊急を要する症状には「急性腹症」という診断がつけられます。
急性腹症で最もよくみられるのは急性胃腸炎です。脇腹の痛みも症状の一つに含まれ、その他、痛みとともに吐き気や嘔吐、下痢、冷や汗の症状もみられます。
右脇腹が痛いとき
右脇腹には肝臓、胆嚢、腎臓、大腸、盲腸といった内臓が集中しています。筋肉痛、便秘、帯状疱疹による神経痛によって右脇腹が痛むこともありますが、内臓の病気が原因であることも少なくありません。
最も多いのが、胆石症による胆嚢炎です。胆嚢は肝臓の下、右肋骨の下あたりに痛みが響きます。この部分を手で押さえながら深呼吸すると、脇腹がつったような痛みが瞬間的に生じます。
胆嚢炎は、発熱、吐き気、嘔吐などの症状も6〜7割の患者さんにみられるため、これらの症状もあわせて注意してください。
この他、尿管結石、十二指腸潰瘍、大腸がん、肝臓がん、腎臓がんの場合も、右脇腹がつるような痛みを伴うことがあります。
左脇腹が痛いとき
左脇腹には脾臓があります。
右脇腹同様に筋肉痛、便秘、帯状疱疹による神経痛が左脇腹にも生じることがありますが、狭心症、心筋梗塞、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などの病気が原因の場合もあります。
脾臓は腫瘍や破裂、捻転以外に、他の臓器の病気によって腫れることがあります。これは、脾臓が血液の貯蓄、免疫に関わる臓器で、肝臓とも密接な関係を持っているからです。
肝硬変になると、肝臓が担っていた機能を補うために脾臓に大きな負担が掛かります。脾臓に負担が掛かると脾腫になり痛みが生じます。その他、感染症や貧血、がんなどの場合も、脾腫の状態になるので注意が必要です。
脇腹というよりも下腹部が痛いとき
右下腹部が痛むといえば虫垂炎が代表的です。虫垂炎は最初、上腹部の脇腹に痛みが出て、徐々に下降し、最終的に右下へ移動するのが特徴です。
逆に左下腹部が痛いときは、大腸が詰まっている病気が多く、大腸がんや腸閉塞の可能性が高いです。
泌尿器科、産婦人科、循環器科疾患など、消化器科以外の疾患は左右どちらに特定されず痛みが出ることが多いです。
脇腹をつったときの対処法
安静にする
病気が原因ではない筋肉の痙攣は一時的なものです。
つった筋肉は引っ張って伸ばすことで治りますので、つった脇腹を伸ばす方向に身体を側屈させた姿勢を保持してください。痛みを伴いますので辛いと思いますが、そのうち痛みが軽減してきます。少し姿勢を元に戻してみて、またつりそうなら再び脇腹を伸ばします。
これを繰り返し、完全に治ったらしばらくは無理に動かず安静にしましょう。
ストレッチ
脇腹の痙攣を予防するために、日頃からストレッチなどの運動を行い、筋肉の柔軟性を保ちましょう。ストレッチを行うことで、血行も良くなり疲労しにくい状態になります。
温める
血行不良が原因の場合は、冷えている筋肉を温めるようにすると血行がよくなるので効果的です。
脇腹がつったときは、温かいタオルなどを当て、温めてみましょう。
栄養のある食事
筋肉の疲労回復が期待できる栄養素や、ミネラルを積極的に摂取することが大切です。
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たとえばバナナ、トマトにはカリウムが多く含まれています。納豆やアーモンドにはマグネシウム、レバーや卵にはビタミンB1、乳製品や小魚にはカルシウムが多く含まれていますので、それらの食品を積極的に摂りましょう。
そして、水分補給も大切です。運動で汗をかいた時や暑い日には積極的に飲むようにしてください。
病院受診
長期的につったような痛みが消えない場合、筋肉ではなく、内臓の痛みの可能性があります。重篤な病気の症状であることも考えられるため、すぐに病院受診をおすすめします。
今回は、脇腹がつるような痛みについて、そしてその原因になる病気についてまとめました。単なる筋肉のつっぱりかと思いきや、内臓の痛みだったなんて本当に驚きですよね。
一時的な筋肉疲労によるものは自分で対処できても、持続するものは軽視せず病気を疑いましょう。脇腹の激しい痛みは緊急を要する病気である可能性があるので、絶対に我慢しないでくださいね。
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