脳血管性認知症の4つの症状【その特徴や治療法を徹底解説】
<監修医師 豊田早苗>
認知症と聞くと一般的に有名なアルツハイマー型認知症を思い浮かべるかもしれません。しかし、認知症にはいくつか種類があります。
今回は脳血管性認知症の症状と特徴や治療法を徹底解説します。
脳血管性認知症とは
脳血管性認知症は、認知症の中でもアルツハイマー型認知症の次に多く、同じ割合でレビー小体型認知症も多いです。脳血管性認知症にかかっている患者さんは60~70歳代の男性が多く発症しています。
脳の血管の病気が元となって脳の血管が詰まり、場合によっては出血したりする事で脳の細胞に酸素が送られなくなります。その結果、神経組織が壊れ脳血管性認知症を引き起こすのです。
アルツハイマー型認知症はゆっくり進行するのに対して、脳血管性認知症はよくなったり悪くなったりを繰り返しながら病気が進行します。
※アルツハイマー型認知症とは…?
→ 女性に多いアルツハイマー型認知症は、認知症の中で一番多く全認知症のうちの半分以上を占めている。脳にβアミロイドと呼ばれる特殊なたんぱく質が溜まり神経細胞が壊れて減っていきます。
そのため、神経を伝える事が出来なくなり、脳も委縮していき身体の機能も徐々に失われていく病気。患者数はどんどん増えています。
※レビー小体型認知症
→ アルツハイマー型は女性の発症率が高いのに比べて、レビー小体型認知症は男性の方が多く女性の約2倍です。小体型認知症は特殊なたんぱく質により神経の伝達が障害されるために起こります。
脳血管性認知症の原因は何か
脳血管性認知症についての特徴を知る事ができたと思います。さて次はその原因についてどのような物があるかを説明していきます。
脳血管障害
脳血管性認知症とは始めにも説明したように、脳の血管の病気が元になり、病気の経過によって併発する認知症です。さて、脳血管障害にはどんな病気があるのでしょうか?いくつか挙げてみます。
以下に挙げるような病気にかかったことのある方は注意してください。
✅ 脳梗塞
→ 脳の血管が詰まり、詰まった血管の部位に応じた脳組織の機能が失われてしまう。
※気を付けなければいけない脳梗塞
ラクナ梗塞:
脳梗塞の中でもラクナ梗塞が一番多く、無症候性脳梗塞(何も症状がない脳梗塞)の場合が多い為に、薬の服用や生活習慣の見直しも行われることが無いまま、多発性脳梗塞へと移行してしまいます。
そして多発性脳梗塞を発症してから10年以上経つと、脳血管性認知症を発症しやすくなります。
多発性脳梗塞:
小さな脳梗塞が何度も起きていく症状。脳梗塞が起きる度に症状が悪化し、障害を起こした脳の場所によって症状が異なります。
✅ 脳出血
→ 脳の中を通っている血管が何らかの原因で破れて、脳の中に出血した状態のことを言います。意識障害、運動麻痺、感覚障害などの症状があります。
✅ くも膜下出血(※脳出血と区別されます)
→ 脳の外側を通っている血管が何らかの原因で破れて、流れ出た血液によって脳が圧迫された状態のことを言います。脱力感やめまい、言語障害、片方の手足のしびれなどの症状があります。
上記の病気によってその周りの神経細胞がダメージを受け、脳に酸素が行き届かなくなり最終的に脳血管性認知症を招くのです。
生活習慣病
上記で説明したように脳血管障害にかかった経験がある人に加えて生活習慣病の危険因子を持っていることが多いです。
生活習慣病に挙げられるのは以下の病気があります。
✅ 高血圧
✅ 糖尿病 ✅ 脂質異常 ✅ 動脈硬化 |
動脈が老化して硬くなり、血管内に物質が沈着して血管が狭くなり、最終的に血管が詰まる状態です。悪化すると、破れたりする事があり、脳梗塞(ラクナ梗塞)や脳出血を招きます。
脳血管障害の原因は動脈硬化でその動脈硬化の主な原因は、高血圧、糖尿病、悪玉LDLコレステロール、メタボリックシンドロームです。
生活習慣の改善や治療をしてコレステロール値などをコントロールしていくと、発症のリスクを抑えることができます。
生活習慣
生活習慣病と先ほどは説明しましたが、生活習慣病に繋がるのは生活習慣です。日頃の心がけが今後の健康に繋がっていきます。
生活習慣で気を付けるべき事を挙げていきます。
✅ 喫煙・飲酒をしない
✅ バランスのいい食事をしっかり摂る
✅ 運動をする
このような生活習慣は生活習慣病にも繋がります。食の欧米化が進むと共に健康維持が難しくなってしまいますが、健康でいるためには欠かせません。
脳血管性認知症の4つの症状
脳血管性認知症の主な症状は、他の認知症をきたす疾患と大きな違いはありません。ほとんどの脳血管性認知症は、初めて脳血管が詰まった場合や破れた際、突然的に症状が出てきて、再度同じような状態になると階段的に(次第に)症状が悪くなります。
また、高次脳機能障害とは異なるので一緒にしないようにしましょう。
※細い血管が少しずつ詰まるタイプの血管性認知症の場合は緩やかに進行していきます。
脳機能低下
脳の機能低下として、視空間認知機能が大きく低下しているが、記憶障害は軽度の機能低下という具合に、全ての脳機能が障害されるのではなく、残っている脳機能もあり(判断力や記憶は比較的残っています)、まだら痴ほうと呼ばれたりします。
診断基準の中には空間図形を書く問題もあります。
言語障害
発語を司っている脳の部位が障害されることで呂律が回らなくなり、コミュニケーションにも支障がでます。精神的緊張状態にあると舌がもつれたりもしますが、一時的な症状では無く症状が持続します。
運動障害
手足に麻痺が残る場合や感覚の障害などの神経症状が現れることがあり、転びやすくなったり、手足が麻痺するなどの運動障害があります。
その他にも、排尿障害(頻尿、尿失禁など)、握力が無くなるなどの症状があります。
※パーキンソン症状
50歳以降に発症することが多く、いくつかの特徴的な症状がみられます。
手足が震える、筋肉がこわばる、動作が遅くなる、歩きづらくなるなどで、徐々に症状が進行し、10数年後には寝たきりになる患者さんもいます
感情失禁
感情・行動・心理
抑うつなどで感情をコントロールできなくなり、泣いたり、怒ったりしてしまうことや、せん妄などの症状が早期からみられることがあります。
認知機能の低下があることの自覚があり、「せん妄」(おかしな発言や認知症のような症状)が起きで突然認知機能が悪化する事がありますが、アルツハイマー型認知症とは大きく異なります。
※抑うつ症状
脳血管性認知症を発症するとしばしば不安や怒りが強くうつ状態に陥って表情は暗くなり、動作は今まで以上に遅くなります。夜になると徘徊やせん妄の症状があり、酷くなると昼夜逆転を起こします。
脳血管性認知症の治療法
もし脳血管性認知症にかかった場合にはすぐに治療を始めます。
治療法はどんなものがあるのでしょうか?治療法について詳しく説明していきます。
薬物療法
脳血管性認知症におおい症状である「抑うつ」に対して、抗うつ剤が使用されます。他にも、意欲や自発性の低下、興奮するといった症状に対して脳循環代謝改善剤が効く場合もあります。
非薬物療法
薬物療法が優先的かもしれませんが、第一に薬物療法を選択したくない場合もあります。そのような際にはリハビリテーションやレクリエーションが認知症の症状や生活の質の改善に有効な場合もあります。
体を動かして楽しく過ごすことが良いとされます。
脳血管疾患の予防
これまでに説明してきた脳血管性認知症の治療法ですが、記憶障害やその他の認知機能障害を改善させる確実な方法が現在はまだありません。
確実な治療方法ではありませんが、原因となる脳血管障害の再発予防をしていきます。脳血管性認知症は脳血管障害を再発することで悪化していくことが多いと説明しましたが、再発予防にはとても重要になります。
脳血管障害の原因である高血圧や糖尿病などを適切にコントロールし、脳梗塞の再発予防のための薬剤が使われることが多くあります。
やはり病気には生活習慣が密に関わっています。最近では認知症の予防に効果のあるサプリメントもありますが、やはり日頃の生活から気を付けていきましょう!!
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