プリオン病の3つ種類とその症状【感染原因や治療法も分かりやすく解説!】
<監修医師 豊田早苗>
プリオン病と言ってもどんな病気かわからない人もBSE(牛海綿状脳症、狂牛病)という病気は聞いたことがあると思います。BSEはプリオン病の一つであり、他にもいくつか種類があります。
そんなプリオン病の原因や症状について解説します。
プリオン病とは
脳と中枢神経系(脊髄)の病気です。プリオンというたんぱく質性の感染因子には正常型と異常型があり、プリオン病は異常型により発症しますが、発症率は年間100万人あたり1人です。
プリオン病はヒトだけでなく動物も感染する人獣共通感染症で、難病に指定されています。
動物に発症するプリオン病
✅ 牛:牛海面状脳症(BSE)
✅ 羊:スクレイピー
✅ 鹿:慢性消耗疾患(CWD)
✅ 猫:ネコ海綿状脳症
✅ ミンク:伝染性ミンク脳症
その他、猿、チーターなどにも感染例があります。
ヒトに発症するプリオン病の種類と感染源や症状
ヒトに発症するプリオン病は大きく分けて3つあり、日本における種類別発症率は孤発性CJD76.4%、遺伝性プリオン病18.7%、獲得性プリオン病4.5%となっています。
孤発性
✅ 孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)
100万人に1人の割合で発生します。
60代に多く、認知症、運動失調、視覚異常が発症し、運動系神経(錐体路、錐体外路、ミオクローヌスなど)が急速に麻痺し、3~4か月で無動性無言(自発的な発語、運動をせず、反応もしないが目を動かしたりする状態)になります。
発症は自然発症で原因は不明です。感染性がありますので注意が必要です。脳波にPSD(周期性同期性放電)が見られるのが特徴です。
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遺伝性
正常なプリオンたんぱく遺伝子に変異が生じて発症します。どの遺伝子に変異があるかで症状が異なります。人種により変異する遺伝子が異なり、感染性があります。
発症年齢は44~93歳で全経過平均は2年です。
✅ 家族性CJD:孤発性CJDと似た症状であったり、進行が遅い痙性対麻痺・脊髄小脳変性症に似た症状があります。発症平均年齢は58.4歳、全経過平均は1.1年です。
✅ 致死性家族性不眠症(FFI):40~50歳で発症することが多く、日本には数家系あります。
遺伝しても発症しない人もいます。進行性の場合は眠ることができず、幻覚を見たり、多汗、体温の上昇の症状が出ます。さらに進むと認知症や痙攣をおこすようになり、1年前後で無動性無言になります。
✅ ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病(GSS):進行性認知症、痙性対麻痺、進行性小脳失調症の症状から寝たきりの状態になります。日本では小脳失調症の病型が多いようです。
その他小脳に起きる疾患についてはこちらを参考にして下さい。
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獲得性
1. 医原性CJD
✅ 硬膜移植後CJD:硬膜移植によりおこりますが、潜伏期間が1~30年と幅があります。発症年齢は15~85歳、平均は57.9歳です。硬膜移植によるプリオン病の60%は日本で発生しています。
孤発性CJDと同様の症状や経過ですが、脳波にはPSDが見られません。その他の特徴としては脳の病変部に異常プリオンたんぱくが沈着したクールー斑や空胞が見られます。
このほか下垂体製剤、角膜移植、脳外科手術などにより感染した例があります。
2. 変異型CJD:1996年にBSEを発症した牛を食べて感染したのが最初と言われています。
発症年齢は12~74歳だが、平均は29歳。若年層に多く、精神病症状が発現したのちゆっくり(平均18か月)と進行します。ほとんどの感染は英国を中心としたヨーロッパで、日本での発症はありません。
プリオン病の治療法
残念ながらプリオン病の治療薬や治療法は確立されていません。対処療法のみでの進行抑制は見込めません。
また、薬剤における有効性は一部一過性の効果があったものの2~4週間で消失し、薬剤によっては肝機能障害などを発症するものもあるのが現状です。
しかし、ふるえなどの症状を軽減する治療法などは研究されています。また、看護やケアなどの日常的な接触では感染の危険性はありません。
肝機能についてはこちらを参考にして下さい。
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