腰椎圧迫骨折の看護やリハビリ治療を解説! 【後遺症に注意して】
<監修柔道整復師 岡部大輔>
高齢者や女性にとって転倒などで骨折をすることは多々ありますが、とりわけ腰椎圧迫骨折は何気ない原因でも起きる事がある骨折と言われますが、今回は腰椎圧迫骨折の治療や看護、またリハビリ、後遺症について解説します。
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腰椎圧迫骨折の特徴
腰椎圧迫骨折は第11~12胸椎(きょうつい 背骨には12個の脊椎があります)と第1腰椎(ようつい 腰の部分を腰椎と言い5の脊椎からなっています)にかけて頻発する椎骨の骨折です。
主な原因は骨の強度の低下をもたらす骨粗しょう症と言われ高齢者や女性に多いと言われ、過激なダイエットも骨の細胞を弱体化して骨折の原因といわれています。
特に高齢の女性は閉経後女性ホルモンであるエストロゲンが減少し骨の成分が減少し骨がもろくなっており、さらに年齢を重ねる事によって骨の成分が流出して衰弱し、骨がスカスカになり少しの衝撃(転倒・尻もち・咳やくしゃみ)でつぶれてしまいます。
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腰椎圧迫骨折を起しますと、神経症状を呈し、下肢にしびれや麻痺および、歩行障害が現れる場合もあります。
腰椎圧迫骨折の治療とリハビリ
高齢者や特に高齢の女性などに多く発生する腰椎圧迫骨折はどのような治療を行い、どのようなリハビリが必要なのかを解説します。
保存治療
保存治療は基本的にはコルセットやギプス等を装着し患部を固定し負担をかけない範囲で行います。
✅ 薬による治療
→ 痛みの軽減に消炎鎮痛剤の投与、注射や温熱療法などで疼痛の軽減をはかります。
✅ 安静を保つ
→ 骨折直後から2週間から1ケ月程度は患部を動かさないよう安静状態を保ち骨の形成を待ちます。
✅ 運動療法
→ 骨折部位への負担を軽減するため、腹筋や背筋、足の筋力強化を図ります。また、運動することで身体のバランス感覚の回復により転倒防止をはかります。
✅ 日常生活動作指導
→ 高齢者の場合安静にする期間が長くなりますと寝たきりになったり普段の行動ができなくなりますので、行動が可能な期間を徐々に増やし日常の生活動作をさせるよう指導します。
手術療法
最近では患者の身体に負担の少ない内視鏡を使った手術なども開発されています。
✅ 椎体形成術(骨セメント療法)
→ 押しつぶされた椎骨にセメント様のもので修復する手術です。
✅ 腰椎固定術
→ 腰椎を金具で支える手術ですが、手術の難易度が高いため高度な技術をもった医師と設備のそろった整形外科などの病院で行う必要があります。
リハビリの方法
✅ 骨折直後~1ケ月
→ この時期は硬めのコルセットやギプスで腰部を固定し安静にしておきます。日光浴やカルシウムなどを多く含んだ食事も必要です。
ベッドから起き上がり時注意が必要でトイレなどはおむつや尿道カテーテルで対応します。
✅ 1ケ月以降
→ 骨折部位の骨の形成具合をチェックしながらリハビリを行います。最初は身体を動かさず体力の低下や筋肉硬直を防ぐ運動を取り入れ、次第に身体を動かし背筋などの筋力強化などのリハビリをとりいれて行きます。
回復期には足浴やお風呂もとりいれ身体を清潔に保つようにします。但し、身体をひねったり前後に曲げる事は厳禁です。疼痛のある場合は、薬剤による緩和を積極的に行っていきます。
高齢者の場合、完治は難しい疾患ですので痛みと付き合うよう指導します。
腰椎圧迫骨折の介護の5つの注意点
では、介護をする側の注意としてはどのような点に気をつけてすべきかを解説します。家族の方も介護の機会がありますので知っておくことが大事です。
前屈、回転の禁止など
骨折当初は痛みの緩和を最優先に消炎鎮痛剤などの薬を服用しますが、体位の変換時は患部をできるだけ動かさないように注意します。
腰部の骨折ですので、コルセットやギプスで固定している期間はもちろんコルセット等がはずれても、前屈、身体を回転させるという行為はさせないようにします。
廃用性症候群(はいようせいしょうこうぐん)の予防
また、1ケ月近くの安静が必要ですので高齢者は廃用性症候群になる可能性がありますので、この廃用性症候群の予防が重要です。
この症候群は長期臥床(ちょうきがしょう 長い間寝たきりになること)で筋肉が落ちて弱くなったり関節が動かないため硬くなったり萎縮したりして身体の活動機能が落ちる事を言います。
腰部をできるだけ動かさないように体位の変換や足や身体のマッサージを行う、身体の清潔保持をしっかりおこない筋力低下予防等活動の低下を防ぐようにします。
くわしくはこちらを見て参考にして下さい。
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合併症に予防
長く安静にしていますと、マットレスで床ずれになったり、身体を動かさない事による合併症も発症します。
特に下肢の静脈血栓といい足の静脈に血栓ができ静脈が詰まる病気を発症しますので歩行訓練などを行い、ストレッチなどで血液の循環を良くします。
画像診断などを元に骨の形成にあわせて行う
CT等の画像診断による骨の再形成の進度をチェックし、その形成度合いにあわせて医師の指示に従いリハビリを行う必要があります。
再発の可能性が高い事を念頭に介護することが大事です。
再発率の高い疾患
高齢者や女性は骨粗しょう症の可能性が高い方が多いので、再発する率も高くなります。
普段の生活動作を見直したりや家屋内のフラット化などを行い転倒やつまずき、尻もちをつくなど腰椎圧迫骨折を再発する危険を排除しておきます。
腰椎圧迫骨折にならない4つの予防法
腰椎圧迫骨折にならない予防法とはどんなものがあるのかを紹介します。予防と言う観点から早い時期の取り組みが必要です。
薬による予防・治療
骨自体が高齢になる事で、スカスカになる骨粗しょう症の可能性がありますので、薬や注射によって骨粗しょう症の予防と治療を行います。
薬による治療は以下の通りです。
✅ 骨密度(こつみつど 骨のつまり具合)を高めたり痛みをとる薬剤の投与
✅ カルシトニン製剤の注射 → エルシトニンの注射 鎮痛作用があります。 ✅ 活性型ビタミンD3製剤の服用 → アルファカルシドール(アルファロール・ワンアルファ等)、エルデカルシドール(エディロール)、カルシトリオール(ロカルトロール)などを服用しビタミンD3(カルシウムの吸収促進作用を有しています)の補給します。 ✅ ビスホスホネート製剤の服用 → リセドロン酸(ベネット・アクトネル)、アレンドロン酸(フォサマック・ボナロン)等骨量増加と骨折予防の効果が期待できます。 ✅ SERM(サーム) → ラロキシフェン(エビスタ) 骨量増加と骨折予防の効果が期待できます。 ✅ ビタミンK2製剤 → メナテトレン(グラケー) カルシウムの沈着を助け骨量増加と骨折予防をします。 ✅ テリパラチド注射剤 → ファルテオ・テリボン注 骨折の危険の高い骨粗しょう症に使います。 |
これらの薬剤を医師の指示に従い症状によって服用し骨粗しょう症の予防と治療を行いますが、嘔吐、顎の骨の副作用など注意する事項や服用後うつぶせにならない等の注意事項もありますので、医師の指示通りに服用することが大事です。
軽めの運動
適度な運動は骨量を増やしたり、筋肉を強化する効果がありますので、日常の生活の中で運動習慣を身につけ、骨を強くすることによって姿勢を正し転びにくい身体を作ります。
また、午前中に日差しを浴びながらの散歩も新陳代謝を促進し骨のビタミンDの生成につながり骨の強化になります。
骨密度などのチェック
骨粗しょう症の予防と骨折リスクを予知するために定期的に骨密度の測定を行います。現在では簡易的に足首の関節で測定しますので簡単に状況が判明しますが、より正確にはX線骨密度測定機などを使います。
食生活の改善
食事改善によりタンパク質、エネルギーや各栄養素をバランスよく摂取したうえで、カルシウム・ビタミンD・ビタミンKなどを積極的に摂取します。
牛乳・乳製品・大豆製品・小魚などカルシウムを多く含む食品を毎日の食事にとりいれる事も大事で、サプリメントなども使ってそれらのビタミンを効果的に摂取します。
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圧迫骨折が引き起こす後遺症
圧迫骨折が高齢者などの生活に大きいダメージを与えますが、圧迫骨折の後遺症も注意が必要になってきますので、その後遺症について解説します。
✅ 神経の障害
→ つぶれた骨の影響で神経を圧迫して神経麻痺や鈍痛、しびれが現れることがあります。
✅ 歩行障害
→ リハビリなどで歩行訓練をしますが、骨の一部が神経を圧迫ししびれや麻痺があり間欠性跛行(かんけつせいはこう しばらく歩くと休まないと歩けない状態)などの歩行障害を引き起こします。
✅ 背骨の変形とその影響
→ 背骨が圧迫骨折の影響でゆがみ、曲がってしまって起きる病気があります。
✅ 脊椎側弯症
→ 背骨が横に曲がってしまいます。
✅ 脊椎後弯症
→ 背骨が後ろに曲がってしまいます。
✅ 逆流性食道炎
→ 背骨が前に曲がり胃を圧迫することで、胃液が食道に逆流する逆流性食道炎を起します。
✅ 膀胱直腸障害
→ 骨折により飛び出た骨が神経に触り内臓に麻痺症状等の障害を引き起こす膀胱直腸障害があります。
膀胱や直腸などの泌尿器の機能障害を起し、特に高齢になると尿意や便意を感じやすくなり失禁や頻尿・便秘などの症状を呈します。
✅ 寝たきりの状態
→ 高齢者で圧迫骨折が起きますと、寝たきりの状態になりやすくなります。患者は同じ姿勢で寝ており、起き上がりで再発したり激痛を感じて消極的になりさらに回復期が遅れる事があります。
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以上腰椎圧迫骨折について説明しましたが、圧迫骨折を放置することなくすぐに整形外科など専門の医療機関を受診することが重要になってきます。
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