骨盤骨折の2つの分類【治療期間や後遺症を徹底解説!】
<監修柔道整復師 岡部大輔>
骨盤骨折は大きく2つに分類されます。
外から圧力が加わり発症しますが、重度の場合は後遺症を残すこともある怖い骨折です。
今回はそんな骨盤骨折について解説します。
骨盤骨折とは
骨盤骨折とは、軽度の打撲・交通事故・高所からの落下などの外的要因で発症します。
骨の一部が破損し、骨盤の環状構造が破壊され内臓破裂や関節・筋肉・神経が損傷することもあります。
軽度の場合は安静にしていれば治癒しますが、重度の場合はリハビリが必要になり歩行も困難になる場合があります。
骨盤骨折は折れた場所によって「安定型」と「不安定型」に分類されます。
特殊な例として、若い人のスポーツ外傷があります。これは筋肉の付着部が剥がれる剥離骨折(はくりこっせつ)で、サッカーのキックでも起こる事があります。
高齢者の外傷では転倒などの比較的小さな外力によって起こる骨盤骨折もあります。基礎疾患として骨粗しょう症を持っている人はリスクが高まります。
また産後の影響で骨盤の疲労骨折や肉離れを起こす人もいます。出産時や産後は痛くても仕方ない・子育てが忙しくて自分の事にまで手が回らず放置してしまうお母さんも多くいらっしゃると思います。
しかしそんな時は我慢せずに病院へかかるようにしましょう。子供を預けられない環境の場合は、赤ちゃんのお昼寝の時間に合わせて病院へ行かれることで負担も軽減されると思います。
また、病院の近くに時間をつぶせるような場所があればさらに安心ですね。
骨盤は骨折までいかなくても、ずれているだけで身体に影響が出ます。くわしくはこちらを見て参考にして下さい。
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骨盤骨折は2つに分類される
安定型
腸骨翼骨折・恥骨骨折・坐骨骨折は安定型に分類されます。
まず腸骨翼骨折は構造上、直接的には体重がかからない為負担も少なく済みます。
また恥骨骨折・坐骨骨折も直接的な荷重が加わらないため、負担は軽いといえます。
安定型の場合はほとんどが永久的な障害は残さずに治癒すると言われています。
恥骨骨折についてくわしくはこちらを見て参考にして下さい。
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不安定型
腸骨骨折・仙骨骨折・仙腸関節離開は不安定型に分類されます。
場所的に体重の負担がかかりやすく、そこに体重が加わることで骨折部がズレるリスクが高まります。
骨盤の周囲には神経や動脈などの重要な組織があるため、大量出血の恐れもあり注意が必要です。
このように大きな動脈や静脈の血管破損にも注意が必要です。
骨盤骨折の症状
激痛
恥骨骨折や坐骨骨折では、横になっても座っても、股間にかなりの痛みを生じます。
さらに骨折部位には腫脹(しゅちょう/はれあがること)が見られます。中には歩ける人もいますが、歩こうとすると痛みは増してしまいます。
更に大きな骨盤骨折の場合の痛みはそれ以上にひどく、歩くことも不可能になります。また、骨折部位に触れただけで痛みが生じてしまいます。
ショック状態
骨盤を骨折した場合、動脈や静脈が損傷する恐れがあります。さらに骨盤は様々な臓器を守っているので、骨折によって臓器に損傷が加わる恐れもあります。
骨盤を骨折した場合は、この出血に気をつけなければなりません。動脈や静脈の損傷によって出血性ショックが起きた場合、最優先で血管の塞栓手術や輸血を行います。
またほかの臓器も損傷している場合は、必要に応じて修復手術を行います。手術後は大体の場合がICUで経過観察が行われるようです。ICUでは看護師が患者さんの容態を24時間管理します。
また出血が外から見ても分かるのであれば出血源が分かりますが、内出血の場合は分かりにくいので注意が必要です。
一見血も出ていないし大したことなかった?と思っても、体内はどうなっているか分かりません。
体内での出血で代表的なのが胸腔内出血(大量血胸)、腹腔内出血、骨盤骨折(後腹膜出血)ですが、前者2つはFASTというエコー検査や胸のレントゲンで判断する事が出来ます。
後腹膜出血は骨盤のレントゲンを見て判断します。
神経障害
骨盤の周囲には、腰部から膝の裏側を通り下腿から足指まで走る坐骨神経があります。この神経は神経の通り道を見ても分かるように、下肢全般の筋肉を支配しています。
この神経が損傷してしまう一番多い例は、車の座席に座っていて、衝突事故によって体が前に投げ出されて膝をダッシュボードで強打した時です。
座っている状態では、膝の関節は曲がっていますよね。その状態で膝関節から股関節方向に強い力が加わると大腿骨近位が後に脱臼してしまいます。この合併症で坐骨神経障害が見られます。
症状としてはお尻や太ももの後面・ふくらはぎに電気が走るような痛みやしびれ・感覚鈍麻(かんかくどんま)・足に力が入らないなどが見られます。
重症例では、下肢の痺れや痛みによる筋力の低下、それによってさらには歩行障害に陥ることもあります。
また男性の場合、勃起不全といった症状が見られることもあります。
排尿障害
骨盤が骨折すると、骨盤内の臓器が損傷する事があります。例えば膀胱や尿道が損傷されると、血尿が出る事が多くあります。
尿道を損傷すると、自力での排尿が困難になるため、尿道カテーテルの挿入が必要になります。
また排尿障害だけでなく、排便障害も見られます。骨盤骨折によって内臓が損傷されてしまうと死亡率も上がってしまいます。
排尿障害に関してくわしくこちらを見て参考にして下さい。
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骨盤骨折の治療法
骨盤骨折の原因の約60%~70%は交通事故が原因で起こり、20%は外傷で起こります。
このように、予期せぬ事が原因で起こることが多いため、予防は困難であるといえます。
車に乗ることが多い人は安全運転を心がけ、危険な運転をする車と平行して走る・その前を走ることは避けるなどの対策を取るようにしましょう。
また、骨を強くするためにもカルシウムを多く摂取する事で、将来的に骨粗しょう症のリスクを低減する事ができ、将来の骨盤骨折のリスクを下げる事にも期待が出来ます。
また、腹筋の腹横筋という筋肉を鍛え、正しい姿勢で生活するようにし、さらにコルセットを装着すると腰痛を防げます。しかしコルセットは、背筋を劣らせる原因にもなりえますので注意が必要です。
しかし若い人で多いはく離骨折の場合は予防する事が出来ます。この骨折は筋肉が硬いほど起こりやすいと考えられます。その為、ストレッチやウォーキングで柔軟性を高める事で予防が期待できます。
また骨盤骨折が起きた場合は、一番に出血の有無を確認し、出血がある場合は止血をし、救急車を呼ぶようにしましょう。
大量出血の場合は出血性ショックが考えられますので、血管塞栓術や輸血を行います。
交通事故の場合は、脳などの損傷もあり得ますので注意が必要です。骨盤自体には、一定の圧力で圧迫する器具や骨折部を体の外から仮固定する創外固定という器具を使用します。
これらが止血の基本になります。
安定型は主に保存療法で経過を見ていき、不安定型では手術が選択されます。
手術療法の場合は、保存療法よりも早く車椅子の使用や歩行訓練が出来ることが利点です。
保存療法、手術療法どちらであっても理学療法士によるリハビリが開始されます。リハビリは時期によって変わって来ますが、初めの1ヶ月は安静にする必要があります。
しかし安静にするということは筋力低下や関節が硬くなって可動域が狭まるなど、様々な障害が出て来ます。それを予防するために廃用予防(はいようようぼう)のリハビリが開始されます。
初期から筋肉トレーニングを開始する事が、骨折部位以外の筋力を低下させない為にも必要になるのです。さらに痛みが治まり始めたら、杖を使用して部分的に体重をかけてのリハビリが行われるようになります。
腰のリハビリに関してはこちらを見て参考にして下さい。
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また災害時など骨盤骨折の有無を確定できない時は、福木や板を使って全身を固定し骨盤周囲を動かないようにするなどの応急処置をとります。
骨盤骨折の後遺症
内臓損傷や神経の損傷によって、下肢に痛みや短縮・腰痛・膀胱直腸障害などの後遺障害が残る場合もあります。さらに重症の場合は歩行障害が現れる事もあります。
また女性の場合は子宮や膣の障害、男性であれば勃起不全などの障害が見られることもあります。
骨盤骨折は交通事故で起こりやすい骨折なので、身体障害者認定や慰謝料などの問題も多くあります。
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