つらい通風の前兆症状とは【治療期間や対策を詳しく解説します!】
<監修医師 豊田早苗>
痛風の原因物質は尿酸です。尿酸は新陳代謝やエネルギー消費によってできる老廃物で、通常は尿中に排出されることで血液中の濃度が一定に保たれています。
しかし、何らかの原因によって尿酸が体内で過剰に作られてしまったり(産生過剰タイプ)、排出が少なかったり(排泄低下タイプ)すると血液中の尿酸が増えていきます。
気になる所から確認してみよう
痛風とは
血液中の尿酸値が7㎎/dl以上になると(高尿酸血症)、溶けきれなくなった尿酸が結晶となり、体内に蓄積し始めます。
すると白血球が結晶を異物と判断し、体外に排出しようとするため、炎症反応(腫れ、痛み、赤くなる、熱をもつ)が起こります。
この炎症反応が痛風発作(痛風関節炎)で、激痛を伴います(ときには歩行が困難になることもあります)。
尿酸結晶は温度の低い関節に蓄積しやすいという特徴を持っているため、痛風発作の9割以上が足に起きます。最も起こりやすいのが親指の付け根の関節で、1ヶ所のみに痛みが出ます。
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現在、日本の成人男性の2~3割が高尿酸血症だと言われていて、増加傾向にあります。以前は50歳以上の中年男性に多い病気でしたが、最近では30歳代で痛風発作を経験する人も増えています。
高尿酸血症の大半は男性です。これは、女性は女性ホルモンの影響があるため、男性よりもなりにくいと考えられています。
痛風の初期症状を感じたら早めに病院へ行こう
高尿酸血症の初期段階は、健康診断等で「尿酸値が高い」と指摘される以外、自覚症状はありません。痛風発作のように痛みが出現するのは、高尿酸血症が次の段階に進んでいるということになります。
痛風発作は前述した親指の付け根の関節の他にも、かかと、くるぶし、足の甲、アキレス腱付近、膝などにも現れることがあります。いずれも1ヶ所に痛みが出るのが特徴です。
痛風発作は関節に炎症が起こっている状態のため、痛み(関節痛)、発熱(熱をもつ)、発赤(赤くなる)、腫脹(腫れる)という症状が出ます。痛風発作の痛みのピークは24時間後で、10日程度で治まります。
以上のような症状が現れた場合は、近くの内科を受診し治療を受けましょう。応急処置として、安静(患部をなるべく動かさない)、挙上(患部を心臓よりも高い位置にする)、冷却(患部を冷やす)の3点を心がけましょう。
市販薬の鎮痛剤を使っても痛みが和らぎますが、アセチルサリチル酸が主成分の薬(商品名:バファリン等)は痛みは和らげますが、排泄機能が低下し尿酸値を上げる作用があるためバファリン等のアセチルサリチル酸が主成分の痛み止めは避け、ロキソプロフェンナトリウム(商品名:ロキソニンS等)やイブプロフェン(商品名:イブ等)を選ぶようにしましょう。
放置していると発作の持続期間が長くなり、出現するまでの間隔が短くなり、他の関節にも炎症症状が広がっていきます。
イブプロフェンの効能についてはこちらを参考にして下さい。
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痛風は再発する!前兆症状に要注意
初めての痛風発作は前触れがなく、突然起こることが多いとされています。しかし、2回目以降の痛風発作にはいくつかの前兆症状があると言われています。
関節の違和感(ピリピリ感、ムズムズ感)、しびれ、だるさ、ほてり、むくみ、こわばり、鈍痛などが現れます。
こういった前兆症状の段階で、病院で処方されたコルヒチンを服用しましょう。
コルヒチンには白血球が関節に集まるのを抑える作用があり、前兆症状の予防・改善に効果を発揮します。
しかし、激痛や腫れを改善したり、血中の尿酸値自体を減らす効果はないため注意しましょう。
大きな病気を招く痛風の悪化の危険性
高尿酸血症が恐ろしいのは、様々な合併症を招く危険性があることです。中には命に関わるものもあります。ここでは、高尿酸血症を放置した場合に起こる病気について説明します。
尿酸結節
体内の様々な場所に尿酸の結晶が蓄積し、結節という硬い塊を作ります。これを尿酸結節と言い、稀に骨の中にできて骨折や麻痺を起こすこともあります。
尿路結石
尿酸値が高くなると尿が酸性に傾きやすく、酸性尿になると尿中に結晶ができやすくなります。この結晶が固まったものを尿酸結石と言います。
結石が形成される場所によって、腎臓結石、尿路結石、膀胱結石と呼びます。腰背部、下腹部、側腹部などに激しい痛みが出現し、吐き気・嘔吐を伴うことがあります。
腎機能障害
尿酸の結晶が腎臓に蓄積したり、長期間の高尿酸血症によって腎臓の働きが低下(腎機能障害:通常の70%以下まで低下した状態)します。
腎臓の働きが低下すると、尿酸を尿として排出する力がさらに弱まり、尿酸値が上昇するという悪循環を招きます。高尿酸血症の人の1割程度に腎機能障害が見られます。
さらに、腎臓の働きが通常時よりの30%以下まで低下することを腎不全と言い、人工透析が必要となります。
腎機能低下についてはこちらを参考にして下さい。
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動脈硬化
尿酸値が高い人は、高血圧、脂質異常症、糖尿病、肥満の人が多いということが分かっています。これらの病気があると動脈硬化が起こりやすくなり、動脈硬化は心筋梗塞や脳梗塞などの危険因子となります。
ただ、心筋梗塞などの病気は尿酸値が高いことによって直接引き起こされているのか、高血圧などの異常も起こりやすいために間接的に引き起こしているのかは、まだはっきり分かっていません。
尿酸値が下がるのはいつから?痛風の治療期間はコレ
高尿酸血症の治療
尿酸値を下げるためには、まず食事療法や運動療法などで生活習慣を改善することが大切です。詳しくは後述しますが、プリンを多く含む食品の摂取を控える、禁酒、肥満解消などが必要です。
このような生活習慣の改善を行っても尿酸値の低下が見られない場合、すでに痛風発作を起こしている場合には薬物療法を開始します。
尿酸降下薬の種類と効果
尿酸値を下げる働きのある薬のことを尿酸降下薬と言い、尿酸の排出を促進するタイプ(尿酸排出促進薬)と尿酸の産生を抑制するタイプ(尿酸産生抑制薬)の2種類があります。
前者にはベンズブロマロン(商品名:ユリノーム等)やプロベネシド(商品名:ベネシット等)があり、後者にはアロプリノール(商品名:ザイロリック等)やフェブキソスタット(商品名:フェブリック等)などがあります。
これらの薬を服用することで痛風発作を予防したり、腎障害などの合併症を予防することができます。
尿酸降下薬の注意点
尿酸降下薬には痛風発作の痛みや腫れを抑える効果はありません。したがって、痛風発作時には鎮痛剤を服用することになります。
また、尿酸降下薬の服薬開始後、急激に尿酸値が下がることで痛風発作を起こすことがあります。しかし、自己判断で薬を中断せず、処方された量をしっかり飲み続けるようにしましょう。
痛風発作を起こさないように、最初は少ない量から投与が開始されることが多く、様子を見ながら、尿酸値が6㎎/dl以下の状態を維持できるようになるまで治療を続けることになります。
体質や生活習慣にもよるため一概には言えませんが、尿酸値が6㎎/dl以下になるまでに少なくとも数ヶ月はかかります。
目標値になった後も、いつまで、どのくらいの量の薬を続けるかについては、主治医とよく相談して決めるようにしましょう。
生活習慣を見直して痛風対策を心がけよう
血中の尿酸値が高くなるのは、遺伝的な要因と生活習慣があるとされています。ここでは尿酸値を下げるための生活習慣について説明します。
食事療法
1. プリン体を多く含む食品を避ける
尿酸の多くは元々体内にあるプリン体から作られますが、一部は食品から摂っています。そのため、尿酸値が高い人はプリン体の多い食品(魚卵、動物の内臓、肉・魚など)の摂り過ぎには注意しましょう。
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2. 尿酸の排出を促進する食品を積極的に摂る
尿酸の排出を促進する食品として、野菜、海藻類、きのこ類、大豆製品、果物などがあります。また、これらの食品の摂取量を増やすと尿がアルカリ性に傾き、尿路結石を予防することにつながります。
3. 水分を多めに摂取する
水分を多めに摂って尿量を増やすと、尿と共に尿酸が排出される上に、尿路結石を予防することにもつながります。
※その他にも暴飲暴食をしない、脂っこい食事を控えるというのも大切です。
適度な有酸素運動をする
激しい運動は尿酸の産生を促進したり、発汗量が多くなると体内の水分が減って血中の尿酸値が上昇してしまうため、お勧めできません。
適度な有酸素運動(ウォーキング、水泳、サイクリングなど)を無理なく、長期間続けるようにしましょう。
適正体重を維持する
BMI(体重(kg)を身長(m)の2乗で割ったもの)が25以上の人は肥満になりますので、減量に努めましょう。肥満を解消するだけで、尿酸値が下がる人が多いものです。
ただし急激な減量は一時的に尿酸値を上げてしまい、痛風発作の原因となるため、徐々に減量していくことが大切です。
ストレスをコントロールする
精神的ストレスは尿酸値を上げることが分かっています。十分な睡眠を取る、ゆっくり入浴する、自分の時間を確保するなどして上手くストレスを解消することが大切です。
特に短気、神経質、完璧主義などの性格の人はストレスが溜まりやすいため、意識的に解消に努めるようにしましょう。
飲酒を控える
アルコールは体内の尿酸の産生量を増やし、排出量を減少させるため、控えるのが賢明です。特にビールはアルコール類の中でもプリン体含有量が多いため注意が必要です。
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