アダムス・ストークス症候群とは?【原因や症状を一挙解説】
<監修医師 豊田早苗>
気になる強い倦怠感やめまいが少しの間続き、それが日に何度も起こることはありませんか?息切れやめまいなどは身体的な疲労や精神的ストレスからも起こりやすいので見過ごされがちですね。
強烈なだるさから、なんとなく意識がどこかへ行ってしまったような状態になることも、忙しい現代の人には「ありがちなこと」と考えられているかもしれません。
でも、そんな自覚症状がある「アダムス・ストークス症候群」という病気をご存知ですか?突然死を招くこともある「アダムス・ストークス症候群」は早めに専門医の診察を受けてみたほうが良い疾患です。
気になる所から確認してみよう
アダムス・ストークス症候群って知ってる?
アダムス・ストークス症候群は心臓の動作に異常をきたす病気です。心臓の動きが遅くなったり早くなったりする不整脈はよく知られています。
このアダムス・ストークス症候群は不整脈のうちでも「徐脈(動きが遅くなる)」により心臓の機能が低下し拍出量が減少、脳の血流低下から酸素不足を引き起こして脳虚血状態が発生します。
脳への血流が減少・停止することで意識障害が発生しますが、心臓の動きが短時間で回復すると意識も回復します。
アダムス・ストークス症候群とは、徐脈性の不整脈により脳虚血状態を発生した状態やそれを取り巻くめまいや失神など周辺症状の総称のことなのです。
アダムス・ストークス症候群という病名の由来は、1800年代前半に徐脈による失神発作を報告したAdamsとStokesという医師の名前からつけられたものです。
意識混濁についてはこちらを参考にして下さい。
【関連記事】
意識混濁とはどんな状態か【原因や段階別症状など詳しく解説】
アダムス・ストークス症候群の3つの主な症状
アダムス・ストークス症候群の症状を見ていきましょう。心臓の異常がどの程度の時間続くのかなどで症状が異なってきます。
短時間の脳虚血状態による症状
突然現れる脳虚血状態がごく短時間の場合に起こりうる症状はめまいや瞬間的な意識障害発作や四肢の脱力感・強烈な倦怠感などです。
これらはごく数秒の発現で収まることが多い症状です。わずかな運動でも動悸や息切れが発生することもあります。1日に何度も無意識の状態があれば注意が必要です。
心臓の異常が数分間続くことで起こる症状
てんかんのような全身の痙攣や尿失禁・失神を含む意識障害などが発生します。数分間異常が続いても、これらが一過性脳虚血発作であれば意識障害や痙攣などの症状はある程度の時間が経過すると回復するものです。
心臓の異常が元に戻らない場合は?
瞬間的な意識障害や一過性脳虚血発作でない場合はどうでしょうか。
徐脈から始まった心臓の異常がさらに機能低下を呼び、元の動きに戻らなければ突然死を招くこともあります。このように心停止し死亡した場合には心臓麻痺とされます。
心臓麻痺についてはこちらも参考にして下さい。
【関連記事】
心臓麻痺の3つの原因【前兆も確認しておこう】
通常は数秒から数分程度で意識が回復しますが、長時間心臓の動きが元に戻らない場合は死亡するケースもあります。
意識が回復した場合はアダムス・ストークス症候群とされ、死亡した場合は心臓麻痺や突然死と呼ばれることになります。
アダムス・ストークス症候群の怖い原因
アダムス・ストークス症候群の症状について見てきましたが、数秒から数分間で回復する一過性のものから死に至るものまで・・・
「徐脈」により脳虚血状態が発生することが原因ということがわかりましたが、それらがどのようなことから発生するのでしょうか。
どうして拍動する?
心臓が拍動する仕組みを知ることから始めましょう。
成人では1分間に50回から100回拍動して全身へ血液を巡らせています。オートマティックに拍動していますが、これには右心房の「洞結節(洞結節)」から発せられる電気刺激がキーとなります。
心臓には「心房(しんぼう)」と「心室(しんしつ)」があり、右心室付近の房室結節(ぼうしつけっせつ)に電気刺激が到達し収縮させて心房がポンプの役割で血液を送り出します。
原因の60%弱を占める房室ブロック
心房と心室の間で電気刺激の伝達が遅くなったり途絶えたりすることを房室ブロックと言います。これにより極端に脈が遅くなる「徐脈」が発生します。
房室ブロックは心筋梗塞や心筋炎などの循環器疾患、高カリウム血症や膠原病などの持病が原因となる場合もあります。また高血圧や頻脈性不整脈治療薬の内服による場合もあります。
洞不全症候群
2番目に多い原因は「洞不全症候群(どうふぜんしょうこうぐん)」です。右心房の洞結節の機能低下により脈が遅くなり、脳や心臓などが機能低下を起こすものです。
房室ブロック同様虚血性心疾患やリウマチ性の心疾患にも合併して起こることがあります。洞不全症候群がアダムス・ストークス症候群の原因の30%強とされています。
拍動が早くなる心室性頻脈
心室性頻脈でも脳虚血が引き起こされます。脈が飛ぶ症状がある心室頻拍は血圧が低下し、重篤な場合はショック症状になることもあります。
心室細動は拍動が不規則な震えになり、血液を送出できずに意識がなくなることが多く自然に収まることも稀なものです。救急車の到着まで、応急処置として自動体外式除細動器(AED)が使用されるのがこの心室細動です。
その他の原因として考えられるのは?
冠動脈硬化やウイルス感染・リウマチなどが挙げられています。他には徐脈・頻脈混合の不整脈である洞機能不全症候群や加齢による心臓組織の変化も原因とされています。
アダムス・ストークス症候群の疑いがあれば即検査して
予測不可能で長時間継続すると命の危険もあるアダムス・ストークス症候群は、早期の検査と発見が重要となります。診療科は循環器の専門医となります。
心電図
健康診断でも受けることができる心電図検査が有効です。心拍異常を可視化できる心電図は通常仰臥位で測定するものを思い浮かべますが、負荷心電図のように活動しながら測定するものもあります。
脈の乱れはいつ起こるかわからないので、普段通り生活しながら睡眠中を含め24時間測定が可能なホルター心電図も使用されます。
さらに重篤な症状にもかかわらずほんの一時的にしか現れない場合は植え込み型の心電図レコーダーを使用する場合もあります。ホルター心電図は睡眠時無呼吸症候群(SAS)の可能性を発見することでも知られています。
心電図についてくわしくはこちらを見て参考にして下さい。
【関連記事】
心電図を読んで異常や原因を発見!【心電図の種類も紹介!】
心臓カテーテル検査
心臓の手術でも知られるカテーテルを使用した検査方法です。足の付け根などの動脈から心臓までカテーテルを通して造影検査などをします。
これは冠状動脈狭窄の重度判定や閉塞箇所の特定などができる検査です。電極カテーテルによって心臓内で心電図を記録できる・電気的に心臓を刺激して誘発試験をすることができるという利点があります。
発覚したら早期治療して命を守ろう
予測できず前触れもなく意識がなくなると聞けば、とにかく早く治療しなくてはという気持ちになって当然です。
もしもアダムス・ストークス症候群だと発覚したらすぐに治療に取り掛かりたいところですが、どのような治療法があるのでしょうか。
心臓ペースメーカー
徐脈性(脈が遅くなる)であれば心臓ペースメーカーの埋め込み手術が施されます。心筋に電気刺激を直接与えるもので、徐脈によって意識がなくなったりすることがなくなります。
しかし電気的な機械を埋め込むため、定期的な検査やメンテナンス(電池交換など)が必要になります。生活の質は改善しますが、金属探知機などを使用する場面では注意が必要です。
心臓ペースメーカーは軽量かつ丈夫で人体にほぼ無害なチタンで製造されています。
植え込み型除細動器
体に植え込むことで重度の不整脈や突然死を予防することができ、徐脈にも頻脈にも適応する人工臓器です。
機械的に刺激を与えて徐脈を改善し、心室細動などはカルディオバージョンと呼ばれる電気ショック治療で改善させるというものです。
与える電気ショックの強さをプログラムすることも可能な点はメリットですが、心臓ペースメーカーよりも大型になること・手術中に頻脈の誘発テストをするという点がネックになるかもしれません。
カテーテル心筋焼灼術
不整脈を起こしている部分を直接死滅させる治療法です。高周波電流が流せる焼灼カテーテルを心臓内部に進め、細胞を焼灼します。
根本的な治療法に見えますが、正常な部分に傷がついて房室ブロックを誘発する危険がないとは言い切れない部分があります。
AED(体外式自動除細動器)
街角やオフィス・空港など、人が多く集まるところに設置されているAED。企業や自治体などでも使用法を学んだことがある方も多いでしょう。これは誰にでも緊急時に心肺蘇生ができる画期的な機械です。
使用法は機械が自動で音声ガイダンスで教えてくれるので、落ち着いてその指示に従って使用します。アダムス・ストークス症候群でも発生する心室細動は致死率が高いものです。
日頃からAEDが設置されている場所を確認しておくことで、目の前にいる患者の救命率を上げることができます。
投薬
心臓の拍動を増加させる働きのあるdl-イソプレナリン塩酸塩が処方されます。そのほかには抗不安薬のセパゾン散・レスミット錠・セルシン錠などが処方されています。しかしながら薬だけでの完治は難しいと言われています。
治療にどのぐらいかかるか不安
検査によりアダムス・ストークス症候群を発見し治療を開始できるようになるとしたら、最悪の突然死を防ぐことができます。しかし治療には必ず費用の心配が付きまとうものです。
心臓ペースメーカーを埋め込む場合の費用についてご紹介します。
ペースメーカーによる治療は本体や付属する機器・手術や入院などを含めると、総額で約300万円ほどかかります。
自費診療で300万円ですと一口に言っても高額ですよね。このため、高額療養費制度などの助成制度があるのです。
高額療養費制度
高額療養費とは、1日から月末までの同一月にかかった自己負担限度額を超えた分を払い戻してくれる制度です。
通常医療保険制度では3割負担や1割負担など、負担割合が所得などに応じて分類されていますが、それぞれに窓口で負担する上限額が決められています。
あらかじめ高額になると予想ができている場合には「限度額適用認定証」を発行してもらって提出すると、それ以上は支払う必要がありません。
300万円の3割といえば90万円、それだけでも高額ですが限度額適用認定証を提出すると高くても10万円程度の支払いで済むのです。
70歳以上であればこの「限度額適用認定証」が必要なく、窓口での支払いは自動的に上限額までになるというものです。
健康保険組合や市町村の健康保険課などに相談してみると良いでしょう。
その他の医療制度についてはこちらも参考にして下さい。
【関連記事】
入院費用の相談ガイド【平均の相場や健康保険の適用についても解説】
身体障害者認定
心臓ペースメーカーを植え込んだ場合、その手術日が身体障害者認定日となります。市町村の福祉課などに申請し「身体障害者手帳」を受け取ることができます。
障害者手帳を受けると「障害者医療費受給者証」「重度障害者医療費受給者証」が発行されるため、自己負担額がさらに軽くなるようになっています。
ペースメーカーの寿命は長くて10年、交換やメンテナンスのための定期検診などが行われますがそれらの費用も障害者に関わる医療費としての負担額となります。
認定日が属する付きの医療費から対象になるので、病院の医事課や窓口で相談してみると良いでしょう。
当記事は医師、薬剤師などの専門家の監修を受けておりますが本サイトで提供する情報、文章等に関しては、主観的評価や時間経過による変化が含まれています。 そのため閲覧や情報収集は利用者ご自身の責任において行っていただくものとしその完全性、正確性、安全性等についていかなる保証も行いません。