血の味がする咳が出る原因とは【胸の痛みがあれば早めに病院へ】
<監修医師 まっちゃん>
咳が出だすと、風邪をひいたかな?と思うことが多いと思います。しかし、風邪でもないのに咳が続く時は病院に行くか悩むこともありますね。
今回は咳の種類や咳に関連する病気などについて解説していきます。
気になる所から確認してみよう
なぜ咳がでるの?
咳は外から入ってきた異物を取り除くために必要な生体反応の一つです。
人は空気(酸素)を吸って生きています。空気には目に見えない埃やちり・煙、様々なウイルスが混ざっています。
これらの異物が、のどや気管など気道の粘膜の表面にあるセンサーを刺激し脳の咳中枢に伝わります。そして、横隔膜などの呼吸筋に指令を出し咳反射を起こし押し出そうとします。
咳にはもう一つ、気道に溜まった痰を外に出すという役割があります。気道の粘膜には細かい毛(絨毛)と表面に粘液がありそれが痰となることで排出しやすくなるのです。
風邪をひくと、ウイルスが体内に入っているのを出そうとしたり、気道の炎症によって痰が増えたりすることで咳が出るようになると言われています。咳は自分自身を守るための防御反応でもあるのです。
咳にはいろんな種類がある
咳と一言で言っても「痰が絡んだ咳」や「から咳」「一回出だすと止まらない咳」などと表現されるように、様々な咳があります。
咳にはどのような種類があり、どのような特徴があるのか解説していきます。
湿性咳嗽
湿性咳嗽は字の通り湿った咳・痰がらみの咳のことをいい「ゴホン ゴホン」と表現されます。風邪などでウイルスが増殖すると、体はそれを排出しようとします。
のどから気管ではウイルスを絡め取ろうと粘膜から分泌液が増加します。それが、痰となって咳で出そうとするのです。そのため、風邪をひいた時の咳はこの湿性咳嗽であることが多くなります。
鼻水も同様にウイルスを出そうとする防御反応であり、この鼻水がのどを通って気管に入ることで痰が増加することもあります。
湿性咳嗽では、痰や鼻水が気管支にまで入ってしまうことを防ぐために咳をしているため、むやみに咳止めを使って自己判断で咳を止めることは控えたほうがいいでしょう。
乾性咳嗽
先ほどの湿性咳嗽とは逆で、乾いた「コン コン」という咳を乾性咳嗽といいます。
乾性咳嗽はほとんど痰が出ないため、乾いた咳になります。そのため、喉を痛めてしまうこともあります。
乾性咳嗽は気管支喘息などの気管支に関係する病気やアレルギー、薬の副作用など様々な原因が考えられます。
病気によっては、湿性咳嗽から乾いた咳へ変わったり、逆に乾性咳嗽から湿った咳に変わることもあるので、咳が出るときは経過を把握しておくことも診断の上で重要となります。
乾いた咳は続いて出ることも多く、高齢者などでは肋骨を骨折することもあります。また、咳を繰り返すと体力を消耗しやすくなるため、あまりひどい場合は咳止めを使用するのも一つの方法になります。
犬吠様咳嗽
あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、特に小さな子どもがいる家庭では知っておいたほうがよい咳の種類です。
名前の通り犬が吠えるような咳をするのが特徴で「ケン ケン」と表現されることが多く、乾いた咳をしてるけど何かちょっと違うかな?と感じるかもしれません。なかにはオットセイの鳴き声に近い場合もあります。
犬吠様咳嗽は気道が狭くなり呼吸困難を引き起こす「クループ症候群」で見られます。
自然に1週間ほどで消失することもありますが、気道が狭くなるため重症化すると呼吸困難によって死に至る可能性のある怖い病気です。犬吠様咳嗽が聞かれたら、すぐに病院を受診するようにしましょう。
急性咳嗽
咳が出始めて3週間未満で落ち着く咳を急性咳嗽といいます。
主に、感染症による咳であることが多く咳の種類としては湿性咳嗽であることが多いです。
遷延性咳嗽
定義としては3週間~8週間のうちにせきが収まる場合を遷延性咳嗽といいます。
感染症での咳が長引いている場合は湿性咳嗽であることが多いですが、咳が長引くほど乾性咳嗽となる傾向にあります。
慢性咳嗽
8週間以上続く咳のことをいいます。慢性咳嗽の場合は、感染症であることはほとんどなく咳の種類も乾性咳嗽であることが多くなります。
このように咳が長期に渡る場合は、様々な病気の可能性が出てきます。咳が長く続くことは、体力の消耗はもちろん生活の質を低下させてしまうため、早めに受診するようにしましょう。
咳の種類によって原因は様々
先ほど、咳の種類がいくつかあることをお伝えしました。では、実際には咳の原因となっているものにどのようなものがあるのか、詳しく解説していきます。
感染症による咳
子どもから高齢者までだれもがかかる可能性のある感染症。一般的な風邪からインフルエンザなど様々な感染症がありますが、これらは細菌やウイルスに感染することで起こります。
そして、感染するウイルスや細菌の種類によっては肺炎や気管支炎などが引き起こされます。肺炎や気管支炎では通常の風邪よりも咳もひどくなりやすく、ウイルスなどを排出するため湿性咳嗽であることがほとんどです。
また、治療により改善していくため3週間以内でおさまる急性咳嗽であることが多くなります。
その他疾患による咳
ウイルスや細菌などの感染症ではなく、慢性的な疾患でも咳がでることがあります。感染症ではないため、乾いた咳が長く続くことが特徴です。
一般的に知られているのがタバコの吸いすぎによる肺疾患です。肺がんをはじめ、ぜん息や肺気腫・COPD(慢性閉塞性肺疾患)など呼吸が辛くなる病気が多く、それらの前段階として咳という症状が出ていることもあります。
他にも、心疾患(心不全)や逆流性食道炎・副鼻腔気管支症候群など一見呼吸器とは関係がないようにみられる疾患も咳の原因となることもあります。
アレルギーによる咳
近年、様々なアレルギーが増えています。気管支喘息も何らかのアレルギーによって発症することが多く、気管支喘息では咳の症状が強くでるため入院管理が必要となることもあります。
ほかにも、花粉症やpm2.5・黄砂などその時期だけ症状が強くなる場合もあります。ハウスダストやカビによるアレルギー症状は気づいたら咳が続いているなど症状と原因が一致しづらいこともあります。
薬剤による咳
薬の副作用として咳がでることもあります。
よく聞かれるものとして、血圧降下剤による副作用があります。気になる場合には、薬剤師や主治医に相談してみるのもよいかもしれません。
咳をすると血の味がするのは病気のサインかも
口の中で血の味がすると、とても不安になりますよね。しかも、咳をしたときに血の味がしたら大丈夫だろうかとますます怖くなってしまうと思います。
ここでは、咳をして後に口の中で血の味がする場合の原因や可能性のある病気について解説します。
肺がん
肺がんは初期の段階では自覚症状はほぼありません。しかし、初期症状の一つに血痰があります。痰の中に血液がうっすらと混じっている状態のため、気づかないこともあるかもしれません。
自覚症状が出にくく、初期段階での発見が難しい肺がんでは血痰が早期発見の手掛かりになることもあります。
気管支拡張症
気管支拡張症は何らかの原因によって気管支が広がったまま元に戻らない状態をいいます。
そのため、異物を外に排出する力が弱くなり感染症を起こしやすくなります。更に、広がった気管支の部分にも血管が増えることで血痰が出やすい状態となるのです。
痰に血が混じるケースのなかでは比較的頻度の高い病気となっています。
アレルギー性気管支肺アスペルギルス症
アスペルギルスとはカビの一種で一般的なものであり健康な人には大きな問題をおこしにくいものです。
しかし、喘息を持っているひとがアスペルギルスを吸い込み肺で感染を起こすことがあります。通常の喘息より薬が効きにくいことや血痰があることも大きな特徴です。
心不全
肺とは関係ない心臓と口がどうつながるの?と不思議に思われるかもしれませんが、心不全は全身に血液を送る働きが弱くなってしまっている状態です。
心臓の左側の働きが悪くなると(左心不全)肺水腫を引き起こします。これによって、気道内に血液が染み出て痰に混ざると言われています。
心不全で血の味がする場合にはすでに他の症状が出ているかもしれません。
消化器疾患
胃がんや胃潰瘍・十二指腸潰瘍が原因で口の中に血の味がすることがあります。
潰瘍は粘膜をえぐる形で形成されます。そのため、出血がおこりやすくなるのです。
胃がんでは初期症状はあまりなく、気づきにくいですが腫瘍が進行し大きくなってくると出血を伴います。
消化器疾患では出血しても胃酸にふれてから口の中に逆流してくるため、一般的には鮮血ではなく酸に触れ茶褐色や錆びたような色をしていることが多くなります。
病気以外の可能性
血の味がするのは、実は病気と関係なくすることもあります。咳が長く続いていたり、咳き込みが激しいとのどや気道が切れてしまうことがあります。
切れてしまうほどの咳が続くようであれば、病院で相談し咳止めなども考慮してもらうほうがよいかもしれません。それ以上ひどくならないよう、喉への負担を軽減できるようにしましょう。
他にも、鼻血がのどをつたって口の中に広がり血の味がすることもあります。また、激しい運動をした後にも血の味がすることがあります。
激しい運動をすると全身に酸素を十分に行き渡すため血液中からヘモグロビンが放出されます。それが、唾液に混ざり鉄(血)の味がするのです。
血の味がする咳+肺が痛い時は早めの受診を
人は生きている限り、心臓が動き続けているのと同時に酸素を取り入れ二酸化炭素を出すことを続けています。これらが出来なければ、人はすぐに死んでしまいます。
この、酸素を取り入れ、二酸化炭素を出す「ガス交換」を担っているのが肺です。通常、呼吸をしている時に痛みを感じることはありません。
では、肺に痛みを感じるのはどのような時なのでしょう。実際には肺が痛いというよりも胸が痛いと表現されるかたのほうが多いかもしれません。
胸に痛みを感じる原因としては、肺に水が溜まったり穴が開いてしまうなど肺の病気によるものや心臓や消化器などの内臓や神経など様々な原因が考えられます。
しかし、咳を伴い胸に痛みを感じる場合は呼吸器系の病気の可能性が高くなります。
咳をしたときに胸の痛みを感じる病気では「COPD」や「肺がん」「肺炎」「肺結核」などが考えられます。
「COPD」は慢性閉塞性肺疾患で別名「タバコ病」とも呼ばれています。COPDになる患者の9割が喫煙者と言われているためです。
この病気は肺気腫と慢性気管支炎が一緒になった病気です。症状は少しずつ進んでいくため、気が付けば咳が長く続く・痰の量が多いなどの症状があり息切れがひどくなります。
「肺がん」は初期段階での自覚症状がほとんどなく気づいた時にはかなり進行した状態であることが多い病気です。
しかし、肺がんの初期症状として咳が頻回に出る・痰が多くなり血が混ざっていることが多いなどの症状があります。しかし、一見すると風邪の症状と似ている点も多いため見過ごしてしまうことが多いのです。
これらの病気の発見には、早めに病院を受診することが大切です。咳が長引く・胸が痛い・痰が多く血液が混じることがある。これらの症状は自然と治るのを待っているのでは手遅れになってしまうこともあります。
咳をすることで肺に痛みを感じるのであれば、呼吸器内科を受診しCTや胸部のレントゲンを行うことである程度の病気が見分けることができます。
そして、疾患に合わせた治療を早期に始めることが何よりも大切となります。
日頃のケアが大切!咳の予防5選
咳が続くと回りの人の目線も気になり、さらに辛くなることもあります。一時的な咳であれば、自分で出来るケアで予防していくこともできます。ここでは、予防法について解説します。
うがい
感染予防のためにも手洗い・うがいは大切です。うがいは外で吸い込んだ微細な異物を洗浄し、のどを潤す効果があります。
また、うがいをすることで異物を外に排出させる繊毛運動を刺激する効果もあります。
マスク
うがいと同様に感染予防にも使用されますが、マスクを着けることで咳の原因となるホコリやアレルゲン・花粉などを吸い込むことを防いでくれます。
また、マスクを着けることで口の中やのどの乾燥を予防する効果も期待できます。
加湿
空気の乾燥は咳の大敵です。空気の乾燥は口の中や気道も乾燥させ、痰を出しにくくします。痰を出しやすくするためにも、口の中を潤すためにも水分補給はこまめにしましょう。
そして、特に冬場は空気が乾燥しがちです。加湿器を使って湿度を50~60%程度に保つようにします。湿度が高すぎると、カビなどが繁殖しやすくなる可能性があるため加湿にも注意が必要です。
食事
咳が出ているときは刺激物といわれるお酒や辛いもの・熱いものは控えましょう。刺激物はのどや気道の粘膜を傷つけてしまうことがあります。
のどが弱っているときはのどに良いものを摂るようにしましょう。
タバコ
タバコはダイレクトにのどに刺激を与えることになります。タバコに含まれる有害物質が咳を誘発するため、自分自身が喫煙していなくても副流煙を吸うことで刺激されることもあります。
タバコは百害あって一利なしと言われます。咳の予防だけでなくCOPDの予防にも禁煙するようにしましょう。
今回は咳や胸の痛みを伴う場合などに考えられることを中心に解説していきました。他に症状がなく咳だけだと、どうしても受診を後回しにしがちです。
しかし、そこには大きな病気が隠れているかもしれません。何より、咳は体力を消耗します。それによって、他の感染症にもかかりやすくなります。
咳が続く場合は早めに病院を受診するようにしましょう。
当記事は医師、薬剤師などの専門家の監修を受けておりますが本サイトで提供する情報、文章等に関しては、主観的評価や時間経過による変化が含まれています。 そのため閲覧や情報収集は利用者ご自身の責任において行っていただくものとしその完全性、正確性、安全性等についていかなる保証も行いません。