オキファスト注10mgは使用上の注意を厳守【効果や副作用も解説】
<監修薬剤師 サリー>
癌性疼痛や強い痛みに対して使用されるオキファストですが、使用禁忌とされる疾患や、併用に注意すべき薬剤があることをご存じでしょうか。
今回はオキファスト注10mgについて詳しく見ていきます。
気になる所から確認してみよう
オキファスト注10mgとは
オキファスト注10mgは中等度から高度の疼痛を緩和する目的で使われる麻薬性鎮痛薬です。
ロキソニンといったNSAIDsとの大きな違いは、オキファストは脳の中枢神経に作用し、痛みへの感受性を大幅に抑制できる点です。
同じ麻薬性鎮痛薬のモルヒネと違って副作用がやや穏やかなため、モルヒネに変わって選択されることがあります。
オキファストは一般名オキシコドン塩酸塩と呼ばれ、内服と注射による投与が可能です。経口薬はオキシコンチン錠、オキノーム散、注射薬ではオキファスト注として製品名がついています。
通常は、経口投与による内服量を調整することで疼痛管理を行う事が多いですが、経口投与が難しい場合は持続静脈注射や皮下注射で量を調整することになります。
疼痛管理に使われる鎮痛薬は、痛みの段階に合わせて各種選択されていきます。
以下はWHOによる痛みの3段階分類です。段階に合わせて適切とされる薬剤について書かれています。
✅ 1段階(軽度の疼痛)…非オピオイド鎮痛薬、鎮痛補助薬
アセトアミノフェン(カロナール、トラムセットなど)、NSAIDs(ロキソニン、アスピリン、ボルタレンなど)
✅ 2段階(中程度の疼痛)…弱オピオイド
コデイン(リン酸コデイン、リン酸ジヒドロコデイン)、少量のオキシコドン(オキファスト、オキノーム、オキシコンチン錠)
✅ 3段階(中~強度の疼痛)…強オピオイド
モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル
オキファスト注10mgの効果はコレ
オキファスト注10mgが実際に使われる場では、術後疼痛、分娩時、癌性疼痛などで、他の鎮痛薬では十分な疼痛コントロールが難しい場合に選択されます。
オキファストは脳のオピオイド受容体に作用する強力な鎮痛剤になりますが、その反面、副作用も強くなっています。
以下で薬の用法用量、副作用について見ていきます。
正しい用法用量をしっかり守って
オキファスト注10mgは一般名、オキシコドン塩酸塩水和物です。製品に添付されている医薬品の用法用量によれば
✅ 成人では1日に7.5~250mg範囲内で持続静脈内、または持続皮下投与する
と書かれています。
年齢や症状に合わせ、適宜増減していく事が望ましい薬剤です。
基本的に妊婦さんや授乳中の経産婦さんへの投与は推奨されていません。しかし投与することによる有益性と危険性を比べた場合、有益性の方が上回ると考えられれば使用されることがあります。
この時、オキファストは胎児や母乳に移行することがわかっているため、新生児の観察を強化する必要や授乳は一時中断するよう求められることがあります。
アルコールとの併用は危険。飲み合わせもしっかり知ろう
オキファストは特定の薬剤やアルコールと併用することで、その作用が増強され思わぬ副作用を増悪させてしまう事があります。
特に飲み合わせで気を付けなければいけないものに
✅ 三環系抗うつ薬
✅ 抗けいれん薬 ✅ 抗精神病薬 ✅ 吸入麻酔薬 ✅ 高血圧治療薬のβ遮断薬 ✅ 抗パーキンソン病薬としてのMAO阻害薬 ✅ 抗ヒスタミン薬 ✅ アルコール などです |
これらは中枢神経に直接作用し、特定の受容体を抑制的に働く作用があります。オキファストを併用することで、作用と副作用が大きく増減することになってしまうのです。
特に気を付けたい副作用には、呼吸抑制、低血圧、めまい、せん妄などがあります。
他の気を付けたい薬剤の中には、胃腸や泌尿器の治療目的で使われるアトロピンやスコポラミンといった抗コリン薬はオキファストと併用することで麻痺性イレウス、尿閉、せん妄が起こる可能性があります。
抗凝血薬のワーファリンを飲んでいる人は、作用が増強して易出血状態、血がなかなか止まらない、といった症状が出現する恐れがあります。
使用できない6つのケース
オキファストは強い鎮痛効果がある一方、副作用にも常に気を付けなければいけない薬になっています。
そのため既往や現病歴、現在内服している薬の種類によっては使用できないケースも少なくありません。
以下に、投与は「禁忌」とされている疾患についてまとめました。
呼吸の持病
オキファストを含むオピオイド系の鎮痛薬には呼吸抑制作用があります。
そのため閉塞性慢性肺疾患や気管支喘息発作、その他の呼吸抑制を引き起こす疾患を持つ人は、呼吸抑制が増大するリスクがあります。
また喘息患者においては、オキファストを投与することで気道分泌物が減少し、症状を増悪させる恐れがあります。
てんかん重責発作、破傷風、ストリキニーネ中毒
上記の疾患や中毒に特徴的な症状に、脊髄刺激や神経刺激による筋肉痙攣があります。
オキファストにも筋肉痙攣の副作用があるため、痙攣発作を誘発するリスクがあります。
薬物やアルコール依存症の既往、急性アルコール中毒
オキファストなどの麻薬性鎮痛薬は継続して使うことで薬物依存を引き起こすことがあります。過去に薬物やアルコール依存の経歴がある人は依存症を起こしやすいといわれています。
また、呼吸抑制の副作用があることから、急性アルコール中毒で意識障害、呼吸抑制がかかっている人への投与は禁忌です。
麻痺性イレウス
オキファストなどの麻薬性鎮痛薬は、胃腸の動きを抑制し、停滞させる作用があります。
麻痺性イレウスを持つ対象においては、その症状を増悪させることが考えられます。
出血性大腸炎
細菌感染性の出血性大腸炎では止痢薬は使用すべきではありません。
オキファストを投与することで消化管運動が抑制され、細菌の排出が遅延し、症状の悪化、治療期間の延長を来すリスクがあります。
アヘンアルカロイドの過敏症
アヘンアルカロイドとは、ケシ科のアヘンに含まれる複数の麻薬性成分を表した用語になります。
その中には、モルヒネ、コデイン、パパベリン、ノスカピンなどが含まれていますが、過去にこれらの成分に過敏症の症状が出たことある人には投与すべきではありません。
心配な副作用にも要注意
オキファストには軽度な副作用から、重大で危険な副作用まで存在します。
投与を初めて、すぐに現れる症状もあれば、継続して投与、服用する中で現れるものあるため注意してください。
以下に軽度の物から重度の物までまとめました。
軽度の副作用
✅ 便秘
✅ 吐き気
✅ 強い眠気
✅ 発疹・掻痒感
これらの症状は、比較的初期から出現しやすい症状になります。
吐き気や眠気については継続して使用している中で体が慣れてくることが多いようですが、便秘については便秘薬を併用する必要が出てくるかもしれません。
発疹が出現した場合は、症状が軽く発疹がすぐに消えるようなら問題ありませんが、呼吸苦や声の違和感、意識状態の低下などが見られたらすぐに病院を受診するようにしましょう。
✅ 食欲不振
✅ 排尿困難
続く嘔気による食欲不振や、オキファストを使用する中で排尿困難を起こすことがあります。
この場合は担当医に相談し、投与量の調整や必要ならば適切な処置を受けるようにしましょう。
✅ 頭痛
✅ 吐き気、嘔吐
✅ 不安感
✅ 体の震え
これらの症状はオキファストを継続して続けていく中で、突然大きく減量したり、中止したりした時に出る離脱症状になります。少しずつ減少していけば症状が出現することはありません。
通常、癌性疼痛などで強い疼痛をコントロールするために使用している場合は、上記の離脱症状が出現することは少ないと言われています。
重篤な副作用
稀に下記のような重度の副作用が出現することがあります。持病や他の内服と併用していなければ頻度は少ないですが注意してください。
✅ 呼吸抑制…呼吸が浅い、不規則な呼吸、呼吸回数が少ない、傾眠がち
✅ 意識障害、錯乱…おかしな発言や行動
✅ ひどい便秘、麻痺性イレウス…便が出ない、お腹が異常に張る、嘔吐、腹痛
✅ 肝障害…全身倦怠感、食欲不振、吐き気、皮膚が黄色い、全身の掻痒感、茶褐色の尿
✅ 不整脈、低血圧…胸部不快感、顔面蒼白、意識朦朧、息切れ、めまい
✅ アナフィラキシーショック…蕁麻疹、全身発赤、呼吸困難、血圧低下、顔面蒼白
オキファストの効果、副作用と用法用量についてまとめました。
麻薬性鎮痛薬に属するオキファストは、しっかりとした管理の元に使用すれば強度の疼痛に大変有効な薬剤です。
しかし注意すべき疾患や薬剤、副作用の事も忘れないようにして使用しなくてはいけません。
特に上記の注意点に加えて、高齢者や妊婦、衰弱状態にある人に対しては慎重に投与するよう心掛けてください。
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