オプジーボは注意すべき重篤な副作用がある【医師と対策を検討して】
新たながん治療の一つとして、免疫治療が注目を集めています。日本でも最近認可がおりたおかげで、保険治療ができるようになりました。
今回は免疫治療についてと、治療で使われる「オプジーボ」について見ていきましょう。
気になる所から確認してみよう
オプジーボとは
従来のがん治療では「外科手術」「放射線療法」「化学療法」の3大柱を中心として治療が行われてきました。しかし、近年になり第4の治療法「免疫治療」が注目を集めています。
今回取り上げるオプジーボは、まさに免疫治療の先駆けとも言えるお薬です。
悪性黒色腫、非小細胞肺がん、腎細胞がん、ホジキンリンパ腫に特に有効とされ、2014年に国からの認可がおり、製造販売が開始された免疫治療薬になります。
製品名は「オプジーボ」ですが、薬の名称は「ニボルマブ」と呼ばれています。
オプジーボは免疫治療のお薬です
従来の治療法では、手術や放射線、抗がん剤といった“外からの力”を使ってがんと闘おうという治療法です。
しかし今回新たに注目されている免疫治療は、私達が本来持っている「免疫力」を使ってがんと戦おうという治療法です。
上記の治療法に比べると投薬期間が長くなりますが、持続的に高い効果を維持するとして期待されている方法になります。
では、どのようにして免疫を高めるのでしょうか?それを理解するには先ず、がん細胞と免疫機構の関係について見ていく必要があります。
実は私達の体内では、毎日のようにがん細胞が発生しています。その数はおよそ5000個程度です。免疫が正常であればがん細胞は直ぐに撃退されるため増殖する事はありません。
しかし何らかの原因によって免疫機構が弱ってしまうと、がん細胞を全て撃退することができなくなり、その結果がん細胞が増殖を始めます。
増殖したがん細胞は、免疫細胞に攻撃されないよう「PD-L1」という物質を作り出します。この「PD-L1」は免疫細胞と結合することによって免疫機能を弱らせ、がん細胞を攻撃できなくしてしまう物質です。
残念なことに「PD-L1」が出続ける限り、免疫細胞はうまく働くことができません。
ここでオプジーボの登場です。オプジーボは別名「抗PD-1抗体」とも呼ばれています。
この「抗PD-1抗体」は免疫細胞と結合します。先に免疫細胞と結合することによって、がん細胞が出す「PD-L1」の結合を妨げようというお薬なのです。
こうすることで、体内の免疫機能の低下を防ぎ、がん細胞を攻撃し続けることができるというわけです。
このように体内の免疫へ直接作用して行う治療を「免疫療法」と呼びます。インターフェロン治療も免疫に作用する治療法の一つです。
オプジーボの出現時期など作用機序について
ここからは、オプジーボを使った実際の治療方法について見ていきましょう。
適応される疾患と用法用量
オプジーボは全てのがん治療に適応されるわけではありません。以下の疾患に対して適応されます。
✅ 根治切除不能な悪性黒色腫
✅ 切除不能な進行型・再発の非小細胞肺がん ✅ 根治切除不能、または転移性の腎細胞がん ✅ 再発、または難治性の古典的ホジキンリンパ腫 ✅ 再発、または転移を有する頭頚部がん |
用法用量は、対象となる患者の「体重」や「抗がん剤治療を受けた経験」などを考慮して決定されます。
投与間隔は14日おき
薬剤の投与は静脈注射で1時間かけて行われます。2週間に1度点滴を受け、13日の休薬期間を空けてから再度注射を行います。
1日目に注射を打ち、13日の休薬期間を設けるため、2週間サイクルでの治療を続けていく事になります。
オプジーボによる治療が受けられない場合があります
オプジーボは免疫治療薬であり、分類としては抗がん剤に属します。強い副作用が現れる事があり、治療が受けられない人や慎重に投与を行わなければならない人がいます。
治療を受けられない人
以前、オプジーボでアレルギー反応が出た経験のある人は使用することができません。
具体的な症状には、気管支けいれん、全身に出現する皮膚症状、意識障害、低血圧などです。
慎重投与の必要がある人
以下の人ではオプジーボの使用の際、慎重投与の必要があります。こちらも場合によっては治療を受けられない可能性があります。
✅ 自己免疫性疾患…甲状腺機能異常症、関節リウマチ、Ⅰ型糖尿病など
✅ 間質性肺疾患や肺疾患の経験有の人
これらの既往がある人は、使用の前に必ず医師や薬剤師に相談するようにしてください。
糖尿病など予期しない副作用に要注意
オプジーボの効果は、がん治療において注目すべき治療薬といえるでしょう。しかし、優れた作用に伴い、重い副作用が出現する可能性も十分にあります。
以下に挙げた内容は、オプジーボ使用中に考えられる重大な疾患です。
間質性肺炎
肺の中にある肺胞と呼ばれる部分におきる炎症です。通常の肺炎と違う点は、治りにくく、さらに治っても肺の機能が回復しにくいという点です。このため難病として取り扱われています。
症状が進行すると、安静時にも息切れや呼吸苦を感じるようになってきます。
重症筋無力症
神経と筋肉の継ぎ目が自己抗体によって攻撃を受け、破壊されてしまう自己免疫性疾患です。
全身性に筋力低下を起こしやすく、また急激に症状が増悪することがあります。症状が進行すると嚥下障害などが出る事があります。
筋炎・皮膚筋炎
自己抗体が筋肉を攻撃する事で起こる炎症です。こちらも自己免疫性疾患の一つで難病指定されています。
また筋炎が起こる部位によっては皮膚表面に紅斑が出現することもあり、この場合は皮膚筋炎と呼ばれます。
大腸炎や下痢
大腸の粘膜に炎症が起きることで、大腸炎や重い下痢症状を起こす事があります。
Ⅰ型糖尿病
食物から得られるエネルギー(糖質)を細胞に取り込む事ができなくなる病気です。糖尿病にはⅠ型とⅡ型があります。
Ⅰ型はインスリンを分泌する細胞が壊れる事でインスリンが生涯に渡り分泌されなくなる病気です。このためインスリン注射によって常に補充しなければならなくなります。
肝機能障害・肝炎
体内に入ってきた薬剤は肝臓で分解され尿中に排泄されます。このため強い薬剤や、長引く治療を続けていると肝臓機能に影響を与えるようになります。
甲状腺機能障害
甲状腺は体の新陳代謝を調整する器官です。甲状腺に炎症を起こす事で、甲状腺から分泌されるホルモン量が不安定になるため以下の症状が起こりやすくなります。
✅ 疲れやすくなる
✅ 体重増加、体重減少
✅ 暑く感じるため水をよく飲み多量の発汗、寒がりになり体が冷える
✅ 安静時に心臓がドキドキする などです。
症状が両極端な形で紹介されていますが、これは甲状腺から分泌されるホルモンが少ない場合と多い場合があるからです。このため症状には個人差があります。
神経障害
神経に炎症が起きることで、神経障害が引き起こされることがあります。
初期は痺れや軽度の痛みが続きますが、悪化すると手足全体で感覚が鈍くなり、動かしにくさを感じるようになります。
腎障害・副腎障害
腎臓と腎臓の上部にある副腎と呼ばれる部位に炎症が起きることで腎障害や副腎障害を起こす事があります。
腎臓は血圧調整や体内水分量調整を担っている器官ですが、副腎は糖分の代謝、水分・電解質調整、ストレス拮抗ホルモンといった様々な役割を担った場所です。
炎症によって障害を受けると、多岐に渡った症状が出やすくなります。
脳炎
脳や脊髄に炎症が起きてしまうために起こります。他の炎症と違う点は、高熱が出やすく症状が急速に増悪する可能性があるという点です。
さらに重症化しやすく、障害が残る事があるため特に注意が必要です。
また同時に言動がおかしくなったり意識障害を起こしたりする事があるため、発熱や吐き気、体の痛みなどの症状を感じたら早期に受診する必要があります。
皮膚障害
全身の皮膚や粘膜に、発疹や水ぶくれといった皮膚障害を来す事があります。通常の皮膚障害よりも悪化しやすく、症状が重い事が特徴です。
ひどい場合には同時に発熱や皮膚・粘膜の広範囲なただれを起こすこともあります。
静脈血栓塞栓症
静脈内で血が固まってしまい血栓ができやすくなります。この血栓が血液の流れにのって運ばれる事で、血管を塞ぐようにして詰まってしまった結果、重大な症状を起こすことがあります。
7つの症状がある時は即受診して副作用対策を
オプジーボは重大な副作用が出現するリスクがある薬剤です。特に、以下の副作用を感じたら早急に受診し対策をしていかなくてはいけません。
呼吸困難や労作時の息切れ
間質性肺炎になると労作時の息切れや呼吸苦を感じるようになります。さらに病気が進行すると、安静時にも呼吸苦を感じるようになり、空咳が出やすくなる、易疲労感を感じるようになります。
間質性肺炎は治癒が難しい難病指定の病気です。すぐに医療機関を受診するようにしましょう。
筋力低下や筋肉痛
筋肉や神経と筋肉を繋ぐ部位に炎症が起きると、筋肉痛や筋力低下といった症状を引き起こす事があります。
また、疲れやすさや瞼が腫れぼったい、複視(物が2重に見える)といった症状が出現することもあります。
症状は急激に増悪することがあり、放置すると物を飲み込みにくくなったり、呼吸がしにくくなったりといった症状が出るようになります。
尿量の変化
尿の回数や量がいつもより多い場合や、逆にいつも通り水分摂取しているにも関わらず、尿が全くでないなどの症状を感じたら受診するようにしてください。
また、尿量の変化と同時に頭痛や吐き気、手足の震え、ふらつき、意識朦朧などの症状を感じたら急いで病院へ向かうようにしてください。
血圧の変化
オプジーボの内服を始める前には、自分の血圧のおおよその範囲を知っておくようにしましょう。
というのもオプジーボの影響を受ける臓器には、血圧をコントロールする役割を担っている部位もあるからです。安静時の血圧がいつもより高い、低いなどの差を感じたら医師に相談するようにしましょう。
疲労感や倦怠感
オプジーボの副作用の中には慢性的な疲労感や倦怠感があります。
軽度であれば問題ありませんが、毎日のように続く場合や、発疹や皮膚の痒み、むくみ、意識が朦朧とするなどの症状を伴う場合は医師に相談するようにしてください。
発熱・悪寒
オプジーボを内服することで、出現しやすい副作用に発熱や悪寒があります。39~40度近い高熱を出す事もあれば、微熱程度が続く事もあります。
同時に皮膚の発赤や粘膜のただれ、瞼の腫れ、眼球の充血、異常言動、意識障害などが出現することもあります。自己判断せず、病院を受診するようにしましょう。
強い胸の痛み、呼吸困難
静脈血栓塞栓症になってしまった場合、突然の強い胸部痛と呼吸困難が出現することがあります。同時に唇や爪が青ざめて来ることがほとんどです。
この症状が出現したら最悪の場合も考えられるため、必ず救急車を呼ぶか救急外来に急いで向かうようにしてください。
オプジーボと免疫治療について見ていきました。
オプジーボは免疫治療の先駆けとして登場した画期的なお薬です。米国では注目すべき効果がある治療薬として医療機関で使用されています。
しかし副作用にも十分な注意を払わなければならない薬剤でもあります。
免疫治療は新たながん治療の一貫として、大変注目されている治療法です。研究と新薬の開発も進んで行われているため、今後はもっと副作用が少なく、効果が高い薬剤が開発されることが期待されます。
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