スピロヘータ感染症の歯周病が怖い【2つの治療法でスッキリ】
<監修医師 ゆまこ>
“スピロヘータ”って聞いたことがありますか?これは細菌の一種で、私たちにも身近な歯周病の原因菌でもあります。しかし、歯周病以外でも、ちょっと怖い病気の原因となることも。
スピロヘータ感染症による歯周病はどうして怖いのか、ほかの病気の可能性や治療法とともに見ていきましょう。
気になる所から確認してみよう
スピロヘータって何?
スピロヘータは真正細菌、つまりはバクテリアの一種です。らせん状の糸のような形をしていて、くねらせたり、コルク抜きのような回転運動をしながら活発に動きます。想像すると、ちょっと気持ち悪いですね。
自然界のいたるところに存在していて、シロアリやゴキブリなどの昆虫の腸内で、共生体として住み着いていることも確認されています。ただし、一部の種類では病原体として、人間に悪影響を与えてしまうものもあります。
スピロヘータに感染することで発症する病気には、梅毒や回帰熱、ライム病、レプトスピラ症、そして歯周病など。
感染経路としては、ドブネズミなどの菌を持っている動物の排泄物で汚染された土壌から、粘膜や皮膚を通して。
もしくは、食事の時に口から入ってしまうこともあります。そのため、あまり衛生環境の良くない国へ渡航する時などには注意が必要です。
レプトスピラ症についてはこちらを参考にして下さい。
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スピロヘータ感染症で発病する病気
梅毒
性病として有名な梅毒ですが、これもスピロヘータの一種に感染することが原因です。病原体となるは「梅毒トレポネーマ」というスピロヘータ。
梅毒は慢性的な病気で、少しずつ進行し、全身へと症状が広がっていってしまいます。また、感染しても症状が出ない場合もあり、血液検査などで偶然発見されることもあります。
一般的には感染すると、まず感染部にしこりが感じられると思います。まれに、しこりが硬くなって潰瘍になることもあり、ほかにはリンパ節の腫れなども見られます。
その後、症状は全身へ。「バラ疹」という赤いブツブツが出たり、バラ疹より色の濃い「丘疹」というブツブツが出たり、ほかにも発熱や全身倦怠感、関節の痛みなども見られます。
回帰熱
回帰熱の名前の由来は、熱が出たり下がったりを何度も繰り返すことから。「回帰熱ボレリア」というスピロヘータを、シラミやダニを介して感染することで発症します。
風邪の時の体調不良のような症状と共に、発熱と無熱を繰り返すもので、まれに肝炎や心筋炎、脳出血などが起こってしまうこともあります。
日本での発症例は、ここ数十年の間で報告はありません。ただし、世界的には存在する病気なので、あまり衛生環境の良くない国に旅行する時などは気を付けなければなりませんね。
ライム病
「ライム病ボレリア」というスピロヘータが病原体のライム病は、主にマダニを介して感染します。日本でも原因となるマダニは確認されていますが、人から人へと感染するものではありません。
マダニに噛まれたところを中心に紅斑が広がり、風邪のような症状も見られます。その後、全身へと広がり、神経や心臓、眼などの重要器官にも症状が出てしまうことがあります。
マダニについてくわしくはこちらを参考にして下さい。
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レプトスピラ症
病原体は「レプトスピラ」というスピロヘータ。これは1915年に日本人によって発見されました。
日本では“秋疫(あきやみ)”や“七日病(なのかびょう)”とも呼ばれるもので、ワイル病と呼ばれるものもこのレプトスピラ症に分類されます。
レプトスピラ症は急性発熱の病気で、症状は種類によって軽症~重症まで様々です。軽症なら風邪のような症状だけで治ってしまうこともありますが、重症だと、発熱や黄疸、出血、腎障害などが見られます。
スピロヘータ感染症の歯周病で起こる病気
ご紹介した病気以外でも、スピロヘータは歯周病の原因菌としても有名です。
歯周病の原因は細菌感染。バイオフィルムという、細菌が集まってできているヌルヌル、ネバネバしたものが歯に付着することで感染します。
つまりは歯垢、プラークとも呼ばれるもののことですね。歯垢(プラーク)には、1mgの中に、10億個もの細菌が含まれているとされ、歯周病の原因となるものにはスピロヘータの他、カビや原虫(歯肉アメーバ)などもあります。
本来、スピロヘータは悪玉菌。そのため、スピロヘータに感染していると、歯周病も重度に陥っていると言えます。
歯磨きなどの日々のケアが不十分だと、歯と歯肉の間に歯垢(プラーク)が溜まってしまい、それによって歯肉に炎症が起きてしまいます。
歯周病を放置していると、歯槽膿漏や顎炎になったり、歯周ポケットという歯と歯肉の隙間が広がってしまったり。さらには歯を支えている骨も溶かして、最終的には歯が抜けてしまうことも。
でも、歯周病は口の中だけの病気、と思ってはいませんか?
歯周病が進行すると、原因菌や毒素成分が、歯肉の毛細血管から心臓や全身へと流れていってしまいます。それにより発症する可能性のある病気には、以下のようなものがあります。
✅ 糖尿病(合併症も発症しやすくなる)
✅ 認知症
✅ 動脈硬化による脳梗塞や心筋梗塞
✅ 肺炎
✅ 内臓疾患(腎臓や肝臓の機能低下など)
✅ 肥満(メタボリックシンドローム)
✅ 低体重児出産(早産)
特に妊娠すると歯周病が悪化しやすくなってしまうので、子供を望む女性の方は、日頃のケアを大事にしたいですね。
また、スピロヘータの一種であるトレポネーマが、食道ガンの要因としてかかわっているとのデータもあります。
歯の健康は、全身の健康へ。歯周病になったら早めに治療を開始しましょう。
歯茎から見る歯の健康についてはこちらを参考にして下さい。
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スピロヘータ感染症の2つの治療法
歯周病予防
スピロヘータ感染症の中でも、やはり一番身近なのは歯周病でしょう。今や、糖尿病やメタボリックシンドロームなどと並んで、生活習慣病とまで呼ばれています。
歯周病予防で大切なのは、セルフケアでのプラークコントロールです。歯周病の原因は、溜まった歯垢(プラーク)からの細菌感染。毎日の正しい歯磨きで、プラークを的確に除去したいですね。
歯ブラシや歯磨き粉の選び方から、歯ブラシの持ち方、磨き方など。一度、歯医者さんに行って正しい歯磨きの仕方を学んでおくと良いでしょう。
また、歯磨きの補助として、歯間ブラシやデンタルフロスなどを活用するのも効果的です。
専門医を受診
歯周病の場合は、歯科や口腔外科での治療となりますが、それ以外の病気の場合はどうしたら良いのでしょうか。
スピロヘータ感染症は細菌感染によるものなので、抗生物質や抗真菌薬の長期服用での治療が基本となります。
しかし、梅毒・回帰熱・ライム病・レプトスピラ症のそれぞれで病原体となっているスピロヘータも違うので、もちろん効果のある抗生物質や抗真菌薬も変わってきます。
まずは、病名と病原体の特定のために専門的な検査を受ける必要があります。
これらの感染症が疑われる場合には、専門は「感染症内科」というところになります。あまり馴染みのない診療科ですが、総合病院や大学病院に入っていることが多くなっています。
ただし「自分は回帰熱だ」などと疑うことは難しいと思うので、最初はかかりつけの内科や、少し大きい病院の総合内科などからの受診となるでしょう。
梅毒に関しては、男性なら泌尿器科、女性なら産婦人科が専門です。皮膚科でも診てもらえるので、気になる症状がある時には、重症化する前に、早めに相談や受診をしましょう。
梅毒の原因であるスピロヘータ“梅毒トレポネーマ”に関しては、抗生物質への耐性を持たないという珍しい特徴もあります。そのため、ほとんどの抗生物質が有効とされ、代表的なものではペニシリンがあります。
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