セボフルランの6つの副作用【特徴や作用・使用量を徹底解説!】
<監修薬剤師 いちかわえつこ>
日常的にお世話になる薬剤ではないセボフルランですが、何の薬剤かご存知でしょうか?これは吸入麻酔薬です。手術時などで使用されることが多い全身麻酔です。
今回は、吸入麻酔薬セボフルランの特徴や作用、使用量や副作用について解説していきます。
セボフルランの特徴
セボフルランは吸入麻酔薬です。吸入麻酔薬とは、呼吸器から吸収され作用する麻酔薬です。今のところ吸入麻酔薬といえば全身麻酔薬です。標準状態では液体のため専用の気化器が必要です。
また、揮発させて使うので揮発性麻酔薬と呼ばれています。セボフルランは導入が早く、また覚醒も早いと言われています。筋弛緩薬との共同作用を持ち、気管支拡張作用を持つため、気管支喘息の患者にも使いやすいです。
気道刺激性が低く吸入時の咳誘発が少なく、急速導入できるので小児領域の麻酔では好まれています。また、心筋のカテコラミン感受性亢進による不整脈誘発作用は少なく、毒性はほとんど問題がありません。基本的には静脈麻酔薬によって入眠させてから使用します。
全身麻酔についてくわしくはこちらを見て参考にして下さい。
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セボフルランの作用
麻酔作用
気道刺激性が少なく臭気も良いので緩徐導入に適しています。麻酔の導入及び覚醒は円滑かつ速やかで、麻酔深度は容易に調整できます。
全身麻酔が必要なときによく使われています。
神経系への影響
麻酔中の脳波変化は急速導入時、急速に徐波(脳波図で緩やかな波)パターンとなり、ついで大徐波が現れ、その後は紡錘波(ノンレム睡眠時に見られる)主体に徐波が混在する脳波図となります。
緩徐導入時では、麻酔が深くなるにつれて速波(覚醒時、入眠時に見られる)が現れ、ついで紡錘波群発主体の脳波像からこれに徐波が混じり急速導入時の最終パターンと同じようになります。
また、視床や小脳の抑制が強く、エピソード記憶の回避という点で有利な海馬シナプスが蘇生の抑制作用を持ちます。他にも低容量で、情動記憶に関与する扁桃体を抑制し、脳内GABA濃度に左右されにくい鎮静・健忘作用があるので術中覚醒予防効果があります。
呼吸・循環器系への影響
呼吸数は麻酔導入とともに増加し、1回換気量は減少します。分時換気量はほぼ一定しています。麻酔の深度にほぼ並行して呼吸抑制傾向を示しますが、適当な補助もしくは調節呼吸により換気を適正に保つことができます。
麻酔後の呼吸抑制は軽微です。心拍数は不変ないし減少の傾向を示します。収縮期血圧は麻酔導入により低下しますがその後、安定してきます。
セボフルランの副作用
悪性高熱
原因不明の終末呼気二酸化炭素濃度上昇・頻脈・不整脈・血圧変動・過呼吸、二酸化炭素吸収剤の異常過熱・急速な変色などの初期症状、
急激な体温上昇、チアノーゼ、発汗、アシドーシス、高カリウム血症、心停止、ミオグロビン尿等を伴う重篤な悪性高熱があらわれることがあります。
これらは麻酔後に見られることもあるので患者の状態に注意します。また、腎不全を続発することがあるので尿量の維持を図ることが必要です。
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横紋筋融解症
筋肉痛、脱力感、CK上昇、血中及び尿中ミオグロビン上昇と特徴とする横紋筋融解症があらわれ、これに伴って高カリウム血症、心停止、または急性腎不全等の重篤な腎障害があらわれることがあります。
異常が認められた場合には適切に処理を行うことが必要です。
ショック、アナフィラキシー
ショック・アナフィラキシーを起こすことがあるので、観察を十分に行い、血圧低下、頻脈、皮膚発赤、蕁麻疹、気管支喘息発作、全身紅潮、顔面浮腫等異常が現れた場合には投与を中止し、適切な処置を行うことが必要です。
痙攣・不随意運動
周術期に痙攣・不随意運動が現れることがあるので観察を十分に行い、異常が認められた場合には減量または中止、あるいは他剤を併用するなど適切な処置を行うことが必要です。
肝機能障害・黄疸
AST(GOT)、ALT(GPT)等の著しい上昇を伴う肝機能障害、黄疸があることがあるので、異常が見られた場合には適切な処置を行うことが必要です。
肝臓機能をチェックするための血液検査についてはこちらを参考にして下さい。
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重篤な不整脈
心停止、完全房室ブロック、高度徐脈、心室性期外収縮、心室頻拍、心室細動があらわれることがあるので、異常が認められた場合には減量または中止、除細動、心肺蘇生等の適切な処置を行うことが必要です。
他にも、瞳孔拡大、咳、気管支痙攣、悪心、嘔吐、悪寒などの副作用が出ることもあります。
セボフルランの使用量
✅ 導入
セボフルランと酸素、もしくは酸素・亜鉛化窒素混合ガスとで導入します。また、睡眠量の静脈麻酔剤を投与し、セボフルランと酸素、もしくは酸素・亜鉛化窒素混合ガスとでも導入できます。
本剤による導入は、通常、0.5〜5.0%で行うことができます。
✅ 維持
患者の臨床兆候を観察しながら、通常、酸素・亜鉛化窒素と併用し、最小有効濃度で外科的麻酔状態を維持します。通常、4.0%以下の濃度で維持できます。
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