トクホンの5つの効果【湿布との違いはコレなんです!】
<監修薬剤師 BlueP>
トクホンと聞いて何のことか即答するのは難しいかもしれませんが、きっと「ああ、あれのこと」とすぐに納得できる湿布のベストセラーです。
しかし、昭和世代にはトクホンが知られていても今時な感覚では突き指や首こり・腰の痛みで思いつく外用薬では「サロンパス」に軍配が上がるようです。
今回はポピュラーなのにあまり知られていないトクホンの特徴や効き目について解説します。
トクホンって名称?用語?
トクホンとは大正製薬が販売する鎮痛消炎プラスターの商品名です。昭和8年(1933年)に鈴木日本堂が発売した硬膏の名称です。
✅ 膏薬とは
→ 貼り薬・ハッカゴム膏・プラスターなど、薬効成分の入ったものを肌に貼り付けて使用する外用薬のことです。元々は脂肪・油やロウを練り合わせたものを紙や布切れに塗って肌に貼り付けていました。
株式会社トクホンの前身である鈴木日本堂は100年以上前に創業され、頭痛がする時にこめかみに貼る頭痛膏「乙女桜」や貼り薬の「シカマン」などを開発しましたが、関東大震災の被災を原因として大きな負債を抱えて危機に陥ります。
そこで開発されたトクホンは、「天来」という膏薬を改良して生み出されました。医聖と仰いだ永田徳本の人徳に感動した鈴木由太郎は、その人名と恩恵を与える「徳」・痛みからの解放の「解(とく)」をかけて「トクホン」と命名されたのです。
このトクホンは、それまでの動物油脂を使う膏薬ではなく天然ゴムを使用したことでシール状で貼りやすい・ハッカの生薬成分とさわやかさがヒットしました。以来、80年以上のロングセラーブランドとなっているのです。
日本家庭薬協会によると平成前までパッケージデザインを変えず、社名も平成元年に今の株式会社トクホンに変更されています。
サロンパスについてはこちらを参考にして下さい。
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トクホンにはこんな成分が入ってる
トクホンには貼付剤(プラスター剤・パップ剤)・液剤・エアゾール剤の3つの形態があります。冷感タイプと温感タイプもあり、痛い部位や原因・使うシーンによって使い方を選べるというのも特徴の一つです。
ロングセラーを続けるトクホンの成分とはどんなものなのでしょうか。
作用ごとに見る内容成分
✅ 消炎鎮痛作用
→ インドメタシン・フェルビナク・サリチル酸グリコール・サリチル酸メチル ✅ 鎮痛作用 → Dl-カンフル ✅ 知覚神経への軽い麻痺作用 → l-メントール(ハッカの成分) ✅ 血行促進作用 → ビタミンE酢酸エステル・トウガラシエキス・ニコチン酸ベンジルエステル・ノニル酸ワニリルアミド(唐辛子の成分カプサイシンの仲間) ✅ 皮膚の炎症を抑える → グリチルレチン酸・グリチルリチン酸・クロルフェニラミンマレイン酸塩 |
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注目の成分:インドメタシン・フェルビナク
痛みや腫れを鎮める効果の高いインドメタシンとフェルビナクは血流を抑える働きがあります。医療用の外用薬にも配合されている有名な成分です。
組織が傷んだときには修復するのに血液が必要です。そのために血管が膨張して痛みが発生しますが、腱鞘炎や突き指・打ち身でできる内出血などの患部を触ると熱いと感じるのはそのためです。その作用を抑えることで消炎鎮痛の効果を発揮します。
効き目はインドメタシン・フェルビナクの両者は同程度ですが、フェルビナクの方が低分子なため1.2倍ほど吸収率が良いです。
どちらも消炎鎮痛作用が高いのはとても助かりますが、その作用の高さゆえに連用しすぎることで副作用が出ます。実は、胃壁を保護する粘膜を分泌させる成分と炎症を起こす成分は同じなのです。
炎症を起こす成分を止めることは胃壁保護粘膜を出さなくすることと同じで、長期間使用することで胃痛が起きることがあります。患部の血流を増やさないようにする作用から、連用することで筋肉がやせることもあります。
いずれの場合も使用上の注意をよく読んで使うようにしましょう。
トクホンの効果
ここからはトクホンの効果について解説しますが、80年ものロングセラーには何か特別な秘密があるのでしょうか。大正製薬のホームページでは、トクホンの効能効果として次のものが掲載されています。
肩こり、腰痛、筋肉痛、筋肉疲労、関節痛、打撲、捻挫、骨折痛、しもやけ
外用の消炎鎮痛剤、王道の効果効能ですね。インドメタシンやフェルビナクはその高い消炎鎮痛効果で腰痛や打撲・骨折痛などを緩和します。
ビタミンE酢酸エステル・トウガラシエキスで肩こりや筋肉痛・筋肉の疲れなどで凝り固まった組織をやわらかくほぐすのです。
肩こり・腰痛
肩こりや首こりにはトクホンを半分や4分の1ぐらいにカットして、ツボや筋肉に沿って貼ると効果が上がります。そのままぺたりと貼り付けても気持ちよいですが、ツボやそのつながりにあたる経絡に貼ることによって直接薬効成分が浸透していくので効き目が早いです。
その他の肩こりに効果のある市販薬についてはこちらを見て参考にして下さい。
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しもやけ
効能・効果の最後尾のしもやけについてです。鎮痛効果で湿布、なぜしもやけに効果があるのでしょうか。
かゆくて痛くてたまらないしもやけですが、原因は寒さや冷えによる血流循環障害です。身体の末端に発生することが多く、手や足の指先が知られていますが他に耳たぶや鼻の頭にも発生します。
はじめは肌荒れのように赤くカサカサになり、ひどくなると紫色に腫れあがって痛痒くなるのです。血行が悪くなることが一番の要因ということで、ここにトクホンが威力を発揮します。
ビタミンE酢酸エステルとトウガラシエキスの血行促進作用でしもやけの原因から取り除くことが期待できます。しもやけに貼って手袋をして寝ていたら1週間で改善したというクチコミがあるほどです。
筋肉痛と筋肉疲労
筋肉痛はもっと運動して筋肉を動かすと治りが早いと言いますが、熱を持っているのでアイシングすることが大切です。そのアイシングにもトクホンは大活躍します。Dl-カンフルとl-メントールの冷感効果で素早く冷やせるでしょう。
知覚神経への軽い麻痺作用も相まって、痛みやだるさ・ほてりを鎮めて筋肉の修復を促進します。
関節痛・捻挫
関節痛や捻挫には患部に直接薬剤が届くので即効性があります。インドメタシンとフェルビナクの消炎鎮痛効果を直に貼り付けることができるので痛みの原因に届くのが早く、冷却効果もあるので腫れぼったさや熱も早く解消できますね。
膏薬時代からの特色と素材に天然ゴムなどを使用しているため、足首や膝などの動きのある関節にもぴったりフィットするので貼っていても快適に過ごせます。
打撲と骨折痛
打撲は早めに冷やすのが第一です。冷やさないでいると時間の経過とともに痛みも増しますが内出血の範囲が広がります。
インドメタシン・フェルビナクの血流を抑える働きで、傷を修復しようとして膨張する血管を鎮めてくれます。骨折痛は特に痛みが激しい急性の炎症が患部に起こります。
トクホンには適度な粘着力と薄さがあるため切り込みを入れることができます。そのため骨折した部位が母指球付近のように形が複雑なところだったとしても切り込みの入れ方を工夫すれば、骨折したところにもぴたりと貼ることができます。
番外編
トクホンを足の裏に貼るとダイエットに効果があるという噂は本当でしょうか。
「ダイエット効果につながるデータはない」というのが正解です。血流促進効果のあるトクホンを足の裏に貼ると確かに血行が良くなる気がして何となくじわじわと体中の血が巡るような気持ちにはなるかもしれませんが・・・
あくまでも気持ちの問題、残念ですが都市伝説のようなものです。ダイエットは他力本願ではムリですね。
注意してほしいこと
効果があるからと言って、貼り続けると副作用が出ることは解説しましたが、他にも使うにあったって注意したいことがあります。
同じところに長く貼っていると、配合されているサリチル酸メチルなどの成分により皮膚が赤くなったり肌荒れすることがあります。温感タイプを貼ったまま日光に当たると皮膚が真っ赤になってかゆみが出ることもあります。
トクホンのはがし方も優しくしましょう。一気に勢いよくはがすとそれもまた肌荒れの原因になります。
妊婦もしくは妊娠の可能性がある方も注意が必要です。
配合成分インドメタシンには妊娠末期に使用すると羊水過少症や胎児腸穿孔などが起こる可能性が指摘されています。トクホンに限らず湿布薬を使用する場合はかかりつけの産婦人科に相談してみてください。
湿布とは違う?!トクホンの特徴
トクホンって湿布じゃなかったの?とお思いですね。確かに外用薬・湿布ではあります。しかし、湿布剤にも種類があるのです。
プラスター剤とパップ剤
プラスター剤はテープ剤で、粘着剤が配合されているため患部に良く貼りついてはがれにくいので行動の制限が少ないのが利点です。しかし、その粘着力のために肌荒れやかぶれを起こしやすくなります。
一方パップ剤は含有されている水分の多さが特徴です。粘着力はその水分の濡れを利用しているため初めはとても心地よい粘着力ですが、時間の経過とともにはがれやすくなるのが弱点です。
脛や腕などのように比較的多く体毛が生えているところにはパップ剤の方が良く、背中や腰などのようにはがれやすい箇所にはプラスター剤が向いていると言えます。
トクホンには薄手で目立ちにくいプラスター剤・鎮痛成分を肌にやさしくマイルドに届けるテープ剤もあるマルチな湿布薬なのです。
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温める?冷やす?
ただ温かいか冷たいかということではないのは当然ですが、温湿布と冷湿布にはそれぞれに適した症状があるのです。
温湿布にはトウガラシエキス・冷湿布にはl-メントールがそれぞれ配合されていて、貼ることにより筋肉の温度にはさほど変化はありませんが皮膚温度が2~3度上下するというデータがあります。
温湿布は「温感タイプ」などと表記されています。肩こりや腰痛・神経痛などの慢性的な痛みに適しています。消炎効果というよりも温めることで筋肉の緊張やこわばりをほぐして心地よくさせる作用が特徴です。
冷湿布はインドメタシンなどの消炎鎮痛剤が配合され冷却効果も持っているため、ぎっくり腰や打撲・筋肉痛などの急性期疾患に大きな効果があります。
冷湿布の効果がほしい打撲やぎっくり腰のような急性期の痛みに温湿布を貼ってしまうと、炎症を起こしている患部に必要な冷却効果の逆になってしまいます。
逆に腰痛や関節痛のような慢性的な痛みに冷湿布を貼ると、きんにくや関節のこわばりが緩むどころか固くなってしまうという本末転倒な結果になります。
マルチすぎるトクホンの中からあなたの症状にベストマッチなものを見つけてください。
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