フラベリック錠は非麻薬性の安全なお薬【意外な副作用に要注意】
<監修薬剤師 サリー>
咳が続くと、思っている以上に体力を消耗します。特に、夜間に咳が悪化すると睡眠不足に陥りやすくなります。
咳は自分で止めようとしてコントロールできるものではありません。今回は咳止めの薬の中でも、比較的安全と言われているフラベリック錠について詳しく解説していきます。
気になる所から確認してみよう
フラベリックは咳を止めるお薬です
のどや気管支に異物が入ったとき、反射的に外に出そうとするのが咳です。脳の根元にある延髄の中に咳中枢という場所があり、咳はそこが刺激されることで起こります。
風邪を引いた時にも、ウイルスなどを除去しようとし咳が出ます。また、痰を出すためにも咳の力は必要になるため、咳はむやみに止めるべきではありません。
しかし、長引く咳はとても辛い症状です。また、風邪などから気管支に炎症が起きると気管支が狭くなり更に咳を助長し悪循環に陥りやすくなります。
そのため、体力の消耗を押さえるためにも咳止めが処方されることがあります。咳止めは医療用語では「鎮咳薬」とよばれます。
今回解説する「フラベリック」というお薬は中枢性鎮咳薬に分類され、咳中枢に働きかけ咳を出す指令を伝わりにくくすることで咳を押さえます。
また、気管支の平滑筋を緩める働きもあるので、咳をするときの収縮力を弱まるため咳自体の強さを弱くすることができるお薬です。
フラベリックは非麻薬性なので安心
フラベリックは中枢性鎮咳薬であることは説明しました。
この、中枢性鎮咳薬には「麻薬性」と「非麻薬性」の2種類に大きく分けられます。ここでは、それぞれについて詳しく解説していきます。
中枢性麻薬性鎮咳薬
麻薬性と聞くと、怖いイメージを持つかもしれませんが医療用として使用されるため心配しすぎることはありません。
麻薬性の咳止めは効果が高いのですが、医療用とはいえ薬への耐性や依存性は生じます。
しかし、鎮咳薬として使用する場合には薄い濃度で使用するため大きな心配はないでしょう。
副作用として、代表的なものは便秘です。これは、この麻薬性の咳止めに限らず医療用麻薬のほとんどにみられます。
麻薬性の咳止めの代表は「コデイン」と言われる咳止めです。作用が強力なため、強い咳が続くことで気管の損傷や肋骨骨折などの危険がある場合に処方されることがあります。
中枢性非麻薬性鎮咳薬
フラベリックはこの非麻薬性鎮咳薬に分類されます。
非麻薬性の咳止めは麻薬性の咳止めに比べて効果は弱いですが、薬への耐性や依存性がないため、幅広い年代で使用できます。
また、麻薬性に比べて副作用も少なく服用できるのがメリットといえるでしょう。
非麻薬性の咳止めは種類も多く、症状に応じた薬が処方されることが多いと思います。
咳は止めるのが必ずしもよいことではないため、自己判断ではなく必ず医師に指示に従って服用しましょう。
副作用は少ないお薬が多いですが、フラベリックでは聴覚異常や口の中のしびれなどの副作用がみられることがあります。
詳しくは後述しますが、聴覚障害は音が聞こえなくなるのではなく音が低く聞こえる。口の中のしびれは薬を噛んだ時に生じることが多いようです。
フラベリックに効果のある病気はコレ
フラベリックが適応となる病気は上気道炎などのいわゆる風邪から生じる気管支炎や、慢性気管支炎などによる痰の出ない咳となります。
咳は異物などを体の外に出そうとする反応であるため、咳そのものが悪いものではありません。また、炎症が強い場合には、気道の分泌物が増え痰となって排出されます。
この痰を体の外に出すためには、咳は必要不可欠なものとなります。そのため、痰の絡んでいる咳が出るときには咳止めではなく去痰薬を中心に処方されます。
フラベリックは非麻薬性の咳止めですが、効果は強い薬に分類されます。
急性期の咳では8割以上、慢性期の咳でも約7割の有効率があるとされているため長く続く咳や、咳が強く体力の消耗が大きい場合など生活に支障が出ている時には内服することで効果を得やすい薬だと言えます。
錠剤タイプだけのフラベリックは飲み合わせに注意して
フラベリックに含まれる成分により口の中のしびれが現れることがあります。そのため、フラベリックはフイルムコートされた錠剤の薬となっています。
しびれ感を少なくするために、コーティングされているので砕いて飲んだり口の中で噛んで内服したりしないように注意が必要です。
そして、基本的には1日3回の経口投与となります。非麻薬性の鎮咳薬ですが、フラベリックは小児への投与は安全性が確立されていないため成人への投与が対象になります。
妊婦への投与も治療上の有益性が上回る場合のみの投与となっているため、咳がひどくそれにより胎児に影響がある場合には処方されるかもしれません。
処方された場合には、自己判断ではなく医師の指示に従って服用しましょう。
フラベリックにも少ないが副作用はある
副作用がゼロという薬はありません。フラベリックは副作用が出る頻度は少なく、比較的副作用が少ない薬と言われています。
フラベリックを服用することで起きる可能性のある副作用について詳しく解説していきます。
口の中の乾燥
副作用の発生頻度自体が5%程度と、低確率ですがその中でも一番多く見られるのが「口の中の乾燥」です。口の中の乾燥が続くと、それに対する不快感が大きくなります。
ひどくなると味覚にも異常が出てくることがあるので、いつもより意識して水分を摂る・飴をなめる・氷を口に含むなどあらかじめ対応できるようにしておきましょう。
口の渇きがひどい場合には、主治医に相談し薬を変更してもらうことも必要です。
眠気
風邪薬全般でも見られますが、眠気を催すことがあります。このお薬を服用する場合は、念のため車の運転や危険を伴う機械作業などは控えるようにしましょう。
薬を飲むことで、眠気が強く日常生活に支障が出る場合には必ず主治医や薬剤師に相談しましょう。
腹痛・発疹
フラベリックの内服で上記2つ以外によく見られる副作用が「腹痛」です。といっても、麻薬性の咳止めで見られる便秘ではなく、症状としても重症化することもあまりありません。
しかし、副作用の一つとしてお腹が痛くなることもあると認識しておく必要があります。
また、発疹はどの薬でも現れる可能性があります。薬に対するアレルギー症状の可能性もあるため、薬を内服してから発疹が出た場合には服用を中止し、すぐに主治医に相談してください。
その他
フラベリックは非麻薬性の咳止めの中でも、効果の高い分類の薬ですが重篤な副作用が出にくいことも大きな特徴です。
そのため、咳を軽減させるために服用しやすい薬といえます。しかし、聴覚異常という副作用が起こることが知られています。詳細は次の項目で解説します。
最初にもお伝えしたように、副作用のない薬はありません。少しでも異変を感じた場合にはすぐに主治医に相談することが大切です。
フラベリックが絶対音感を狂わせる?
先ほど副作用の一つに「聴覚異常」が起こることがあるとお伝えしました。この、聴覚異常は音が聞こえなくなるのではなく、音の聞こえ方が通常と異なってしまうというものです。
フラベリックを内服したあと、耳に入ってくるすべての音が半音下がって聞こえるという不思議な現象が起こります。
この副作用は絶対音感を持っている人ほど症状が現れやすいため、不快感の程度には個人差が大きいのも特徴です。
なぜ、音が半音低く聞こえるのか原因は分かっていませんが、絶対音感を持っている人や音楽を仕事としている人にとっては、この副作用はとても苦痛なこととなります。
今まで、聞いていた音すべての音が違って聞こえる違和感は大きなストレスとなるでしょう。服薬を中止すると、徐々に音の違和感は軽減し2週間ほどで元の状態に回復するとされています。
音の変化に敏感な方にフラベリックが処方された場合、不快症状を避ける必要があるならば医師に相談すると良いでしょう。
今回はフラベリックという非麻薬性鎮咳薬について解説しました。
比較的、副作用の少ない効果の高いお薬ですが聴覚異常という他の薬ではあまり見られない副作用に注意が必要です。
どの薬にも作用と副作用は必ずあります。副作用はすべての人に出るわけではありませんが重症化することもありますので、違和感がある場合にはすぐに主治医に相談するようにしましょう。
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