ボアラ軟膏の強さを解説!【顔や陰部に塗っても平気?】
<監修薬剤師 BlueP>
ボアラ軟膏というお薬をご存じですか?
ボアラ軟膏は主に皮膚科で処方されるステロイド外用薬です。よくステロイドは皮膚の薄い部分に使ってはいけないと聞きますよね。実際のところ、どうなんでしょう。
今日はボアラ軟膏の強さを例にとって、ステロイドを皮膚の薄い部分に塗ることは可能なのかどうか考えていきましょう。
気になる所から確認してみよう
ボアラ軟膏の成分と作用
どんな薬?
ボアラ軟膏は合成副腎皮質ホルモン(ステロイド剤)です。
抗炎症作用により、湿疹や蕁麻疹などの腫れ・痛み・痒みなどを鎮めてくれる効能があります。ステロイド剤は皮膚炎のほか、あせもやニキビ、やけどなどの皮膚疾患に幅広く対応している、よく処方される皮膚科外用薬と言えるでしょう。
ステロイド剤は皮膚への吸収率によって、最も強力なストロンゲストから最も弱いウィークまで5段階に分かれています。ボアラ軟膏はその中間の3番目ストロングに分類されます。
使用法は一般的なステロイド外用薬と一緒で、1日1~数回、患部に塗布が基本。症状により適宜増減します。大量・長期の使用は厳禁です。
デキサメタゾン吉草酸エステル
ボアラ軟膏の主成分はデキサメタゾン吉草酸エステル。1gあたり0.12%含有で、薬価は23.6円となっています。一般的には5g入りの赤いキャップのチューブが使われています。同じものでクリームもあり、こちらは青いキャップのチューブです。
ボアラ軟膏と同じ成分のものにはザルックス軟膏というものも。どちらも先発品となっていて現時点で後発品(ジェネリック医薬品)は出ていません。
ボアラ軟膏で7つの症状を改善しよう
湿疹・皮膚炎
赤いブツブツと共に痒みが特徴の湿疹や皮膚炎。
原因は花粉や薬剤、細菌などの外因性のものと、アレルギーやアトピー、内臓から来ている内因性のものがあります。汗によるかぶれが原因の「あせも」もこの分類に入ります。
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痒疹
蕁麻疹や虫刺症がここに入ります。
蕁麻疹はアレルギーによるものが多く、赤いブツブツや痒みといった湿疹とよく似た症状が出ます。湿疹は痒みが引いた後もしばらくブツブツが残るのに対し、蕁麻疹は痒みと一緒にブツブツも消えるのが特徴。
虫刺症はその名の通り、虫さされです。
オーソドックスなところでいうと蚊ですね。他にもノミやダニ、毛虫などに刺されることにより発疹が出ると虫刺症と呼ばれます。特に様々な虫が活動する夏場は要注意です。
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乾癬
赤褐色や白い垢状の発疹ができ、ボロボロと剥がれ落ちます。
1000人に1人の割合で発症する病気で、もともとの体質に、ストレスや感染症など何かしらの要因が重なることで発症すると言われています。「かんせん」という名前ですが、人に感染するということはありません。
掌蹠膿疱症
手のひら(手掌)や足の裏(足蹠)に膿のある発疹(膿疱)ができるもので、赤みや痒みが出ます。患部がガサガサになることも。
喫煙者に多い疾患と言われており、ほかには慢性感染症により発症するとも言われています。
扁平苔癬
赤や紫色のボツボツが出来るもので、段々と広がっていきカサつきが見られます。
薬剤や化学物質など一部物質に対する免疫反応によるもので、ほかには感染症も原因の一つと言われています。
慢性円板状エリテマトーデス
膠原病の一種で、10万人に3人の割合で発症します。
日の当たった部分に赤い発疹が出るもので、皮膚にのみ症状が出るものを「慢性円板状エリテマトーデス」と呼んでいます。原因は免疫力低下。次第に皮膚がカサつき、ボロボロになって跡が残ります。
その他
ほかにもボアラ軟膏は円形脱毛症に使われることもあります。
もう一つよく使われるのは紅皮症という、全身に赤みと共にボロボロとする皮膚異常を伴う病気です。悪性リンパ腫や各皮膚疾患により発症するケースもあり、その場合にもボアラ軟膏は効果を発揮します。
ボアラ軟膏の強さ! 顔や陰部に塗っても平気なのか?
ボアラ軟膏の強さ
皮膚への吸収率で5段階に分けられるステロイド剤。ボアラ軟膏はその中の3群「Strong」という部類に分けられます。ストロングという名前から「強力」というイメージを抱きがちですが、レベルとしては強すぎず弱すぎずな普通レベルです。
3群は成人の場合、全身~体幹部への使用が可能で、アトピーなら中~軽度の症状で処方されます。
子供の場合は、顔や陰部を除く体幹部への使用に限られ、アトピーなら重~中度で処方されます。子供にとっては少し強めの薬になるため、成人が2週間までの使用に対し、子供は原則1週間までの使用に限られています。
よくステロイドは急にやめてはいけないと聞きますよね。
それは、ステロイド剤はあくまで症状を抑える対処療法であって、根本治癒の薬ではないからです。「もう治った」と思って急にやめてしまうと、逆に症状が悪化してしまったり、再発したりする危険性もあります。
他のものとの混合
ボアラ軟膏の場合、主成分であるデキサメタゾン吉草酸エステルは0.12%しか含まれていません。では残りの99.88%には何が使われているのでしょうか。
ステロイド剤は主成分以外の部分では、ほとんどがワセリンを多く使用しています。ワセリンの油分で塗りやすくすることが目的。そしてもう一つ、ステロイドは油溶性ホルモンといって油分に溶けやすい性質を持っています。ワセリンと混ぜることによって、皮膚への吸収率を上げているのです。
ボアラ軟膏は主にチューブでの処方になるのですが、調剤薬局で軟膏を貰う際、プラスチックのケースに入れられて渡されることがありますよね。
あれはいくつかの軟膏を混合していたり、保湿剤を混ぜているためです。その混合比率によっては、上記で説明した5段階のレベルが左右するのではないかと思われる方も多いのですが、元のステロイドが薄まるようなことはありません。
そのため「保湿剤と混合されて薄まってるから多めに塗ろう」などはしないように注意してください。
ちなみに、ボアラ軟膏の場合、ユベラ軟膏と混ぜると2週間後にステロイドの成分が17.8%にまで下がってしまいます。しかしその点は薬剤師がしっかり確認した上で渡してくれるので心配する必要性はないでしょう。
ユベラ軟膏についてはこちらを参考にして下さい。
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顔や陰部に塗っても平気?
3群のステロイドは成人の場合、全身に使用することが可能です。
しかし顔や陰部の皮膚はとても薄くデリケート。さらにステロイドの皮膚への吸収率は部位によって分かれます。腕を1とすると、顔(頬)は13、陰部は42と言われています。
そのため吸収率の良い顔や陰部に塗る場合には、ある程度のリスクや副作用を頭に入れておかなくてはいけません。
ステロイド剤を顔に長期にわたって塗り続けた場合には「酒さ様皮膚炎」や「口囲皮膚炎」といった顔の皮膚炎を起こす可能性もあります。
ステロイド剤には抗炎症作用とともに免疫抑制機能もあります。その作用により免疫力が低下すると、少しの刺激でも発疹などが出てきてしまい、すぐに悪化してしまいます。
この免疫抑制機能が、ステロイド剤の長期使用が危険と言われる所以です。
ボアラ軟膏の副作用に注意しよう!
副作用
ボアラ軟膏の使用で報告された主な副作用は以下のものです。
✅ 皮膚の赤み
✅ 皮膚の萎縮・毛細血管の拡張(肌が赤くなる・血管が浮き上がる)
✅ 色素脱失(肌の色が抜ける)
✅ 多毛
✅ 刺激感(焼けるような感覚も)
✅ 肌荒れ(しわ・ニキビ・乾燥など)
✅ 接触性皮膚炎(ステロイドのかぶれ)
✅ 皮膚カンジダ症
重篤な副作用
使用方法によっては重篤な副作用を起こすこともあるため使用法には注意しましょう。
まずは長期・広範囲・密封法(ODT)での使用です。密封法とは薬剤を塗った後にラップなどをして吸収率を上げるものです。
効果を強力にする作用があり治療の一環として行われることもありますが、それにより「緑内障」や「白内障」を引き起こすことがあります。赤ちゃんのおむつでも密封法と同じ効果が出てしまうため注意が必要です。
緑内障は瞼への使用でも起こることがあります。
また頭痛や吐き気を訴える人もいるため、なにか異変を感じたら早めに医療機関に相談すると安心でしょう。
使用してはいけない人
ボアラ軟膏を過去に使用してアレルギー反応を起こしたことがある場合には使用できません。
また細菌・真菌・スピロヘータ・ウイルス皮膚感染症(帯状疱疹など)にも厳禁。鼓膜に穴が開いている湿疹性外耳炎や潰瘍、重度の熱傷や凍傷は、免疫抑制機能により治癒を遅らせることもあるため、こちらも使用できません。
帯状疱疹についてはこちらを見て参考にして下さい。
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こんな人は相談しよう
妊婦さんや赤ちゃん、糖尿病患者への安全性はまだ確立していないため、使用の際は医師と相談するようにしましょう。
ボアラ軟膏には併用NGの薬剤はありませんが、もし現在使用中の薬がある場合には医師、薬剤師に報告しておくと安心です。お薬手帳はしっかり管理しておきましょう。
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