乙字湯の5つの副作用を解説!【効果も確認しておこう】
<監修薬剤師 BlueP>
乙字湯(おつじとう)は江戸時代から存在する便秘漢方薬で痔の治療にも用いられ、痔の炎症をおさえ便通をよくする効果があります。
漢方薬なので副作用が少ないと思われがちですが、乙字湯に限らず漢方薬といっても副作用がありますので使い方を間違えれば危険です。
この機会に、注意点や副作用について確認しておきましょう。
乙字湯の6つの生薬
乙字湯には、柴胡(さいこ)、黄芩(おうごん)、当帰(とうき)、升麻(しょうま)、大黄(だいおう)、甘草(かんぞう)の6つの生薬が配合された内服薬です。各々の生薬には各々の働きがあり、これらが一緒に働くことにより良い効果を発揮します。
痔の薬は西洋薬では坐薬や注入軟膏などの外用薬が一般的ですが漢方薬では内服薬がよく使われます。
柴胡(さいこ)
消炎、強肝、解熱、脂肪代謝改善などの作用があり、乙字湯では炎症をしずめ痛みをやわらげる働きをします。
副作用として胃部不快感・便秘などがあります。
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黄芩(おうごん)
消炎、強肝、解熱、脂肪代謝改善などの作用があり、乙字湯では炎症をしずめ痛みをやわらげる働きをします。
副作用として、空咳、発熱、労作時の息切れなど、間質性肺炎の初期にみられるような症状があります。
大黄(だいおう)
やわらかい排便を促進させ、乙字湯では便通をつける作用と炎症をしずめ痛みをやわらげる働きをします。
副作用として、胃もたれ・胃痛・吐気・嘔吐・下痢・胸焼け・食欲不振、など、胃腸障害がありますので胃腸の弱い人には向きません。
甘草(かんぞう)
消化器系の炎症の治療作用、鎮痛作用があり、乙字湯では炎症をしずめ痛みをやわらげる働きをします。また、甘草は他の薬物の効能を高め、毒性を緩和する効果があるため数多くの漢方処方に配合されます。
副作用として、血圧上昇・偽アルドステロン症・低カリウム症があります。
当帰(とうき)
血管を拡張して血液の循環を改善します。古くから婦人科系の疾患に良いと漢方薬に配合されてきました。乙字湯では炎症をしずめ痛みをやわらげる働きをします。
副作用として、長期間や多量服用で咽喉痛・鼻孔の灼熱感などの症状があります。また、活血の効能が強いので性器出血過多の場合には使用しないでください。
升麻(しょうま)
下方にうっ帯したものを上昇させる作用があり、痔や精神的に落ち込んでいる状態を高める生薬として用いられます。乙字湯では、痔核や脱肛に働きます。
副作用として、むくみ(浮腫)や血圧上昇があります。同様の副作用をもつ生薬が他にもあるため複数の漢方薬を併用して服用する時には注意が必要です。
乙字湯の副作用
漢方便秘薬の副作用として、胃の不快感、腹痛、下痢があります。腹痛や下痢がひどい場合は早めに受診してください。また、個人差やその日の体調によって症状の表れ方が異なりますので注意してください。
また、以下のような比較的重い副作用がみられることがあります。
胃腸の不快感
「大黄」には腸を刺激する作用がありますのでストレスや食べ過ぎ、飲み過ぎ等で胃や腸が不調になりやすい方は注意が必要です。
乙字湯を飲み始めて数日前後で胃や腸に痛みや激しい下痢等の副作用が出てしまった場合は服用を中止して医療機関を受診してください。
偽アルドステロン症
甘草が配合された漢方薬に共通する副作用として「偽アルドステロン症」があります。その症状はむくみ(浮腫)、体重増加、血圧上昇、低カリウム血症などです。
これらの症状があらわれた場合は服用を中止して医療機関を受診してください。
くわしくはこちらをみて参考にして下さい。
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ミオパチー
低カリウム血症の結果として「ミオパチー」が起こる場合があります。その症状は脱力感、手足の筋肉の痙攣などで重い場合には脱力感、筋力低下、筋肉痛、手足の痙攣・麻痺などの横紋筋融解症の症状があらわれる可能性があります。
これらの症状があらわれた場合は服用を中止して医療機関を受診してください。
間質性肺炎
柴胡が配合された漢方薬に共通する副作用として「間質性肺炎」があり、乙字湯でも事例は少ないものの報告があります。その症状は、から咳、息苦しさ呼吸困難、発熱、ひどい倦怠感、皮膚や白目が黄色くなる、などです。
これらの症状がみられた場合は服用を中止して医療機関を受診してください。
【関連記事】
間質性肺炎の初期症状は発熱?治療方法も分かりやすく解説
肝障害
漢方薬のみではなく西洋薬の服用でもよく知られる副作用に「肝障害」があります。事例は少ないのですが、乙字湯でもその報告例があります。肝臓は“沈黙の臓器”と言われるほど障害を受けてもそれに気づきにくい臓器ですので注意が必要です。
服用中は時々血液検査を受けて肝機能の状態を確認してください。「肝障害」の症状は、だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる(黄疸)、茶褐色尿になるなどがあります。
これらの症状がみられた場合は服用を中止して医療機関を受診してください。
市販の乙字湯を比較してみよう
一般的な西洋薬に比べて漢方薬は副作用が少ない場合が多く、既往症があり他にも薬を服用中の方にはおすすめしやすい場合があります。
費用も比較的安価ですので長期服用に使いやすいお薬だと思います。乙字湯は、数種の製薬メーカーが製造販売されています。ここでいくつかご紹介します。
株式会社ツムラの『漢方乙字湯エキス顆粒』
体力が中位で衰弱していない方向け。病状がそれほど激しくなく、大便がかたく便秘ぎみの方の「キレ痔」、「イボ痔」の治療に処方されます。
クラシエホールディングス株式会社の『乙字湯エキス錠クラシエ』
体力中等度以上の方向け。大便がかたくて便秘傾向の方の「痔核(いぼ痔)」、「きれ痔」、「便秘」の治療に処方されます。
小太郎製薬株式会社から『コタロー 乙字湯 エキス細粒』
体力中等度以上の方向け。「痔核」、「脱肛」、「肛門出血」、「痔疾」の疼痛に処方されます。
三和生薬株式会社から『三和生薬 乙字湯Aエキス細粒』
体力が中等度以上の方向け。便秘がちで局所に痛みがあり、時に少量の出血がある時の一般的な「痔疾」、「痔核」、「脱肛」、「肛門出血」、「女子陰部そう痒症」の治療に処方されます。
こんな時は服用を避けて。使用上の注意
乙字湯の服用を控えたほうが良い方
基本的に、乙字湯は健康状態の良い人向けのものです。身体が健常な状態でない場合(体調不良、胃腸が弱い、既往歴がある、など)は必ず医師に相談してください。
病状や健康状態が悪化し副作用が強く出ることがあります。
基本とする注意事項
乙字湯は、肝臓トラブルや間質性肺炎等の副作用が起こるリスクは低いものの、薬やサプリメントなど何らかの効果を示すものは何であっても、重複した服用は危険を伴う場合があります。
他の漢方薬を服用する場合、市販薬や過去に飲んだ残り薬等との同時服用が必要な場合は必ず医師や漢方薬処方の担当の方に相談してください。
体に異常を感じる方・既往歴がある方
少しでも体に異常を感じる(著しい体力の低下、下痢・軟便のある方、著しく胃腸の虚弱な方)及び既往歴がある方は服用を控えて医師へ相談してください。
妊娠中や授乳中の方
「大黄」には子宮収縮作用や骨盤内臓器の充血作用があることが分かっています。これは流早産の原因になりかねませんので意が必要です。
大量でなければ心配ないのですが妊娠中の服用については必ず医師とよく相談してください。
妊娠中の方が気をつけるべき事についてはこちらも参考にして下さい。
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