二日酔いで下痢や嘔吐が止まらない【二日酔いの原因や治し方まで紹介】
<監修医師 まっちゃん>
お酒を飲むと、嫌な事を忘れ楽しい気分にさせてくれます。飲み会の雰囲気も相まって、楽しく笑い合いながら飲めるお酒というのは本当に良いものですね。
しかし楽しく飲んでいるうちは良いのですが、だんだんと悪酔いしてくると気分は最悪です。さらに次の日には二日酔い。
楽しかった思い出も霞んで、嫌な思い出になってしまいそうです。
ではなぜ二日酔いや悪酔いといった症状は起こってしまうのでしょうか。今回はそのメカニズムと対策についてみていきましょう。
気になる所から確認してみよう
なぜ二日酔いになるの?メカニズムを解明
二日酔いというと、翌日にも続く酔った様な症状の事を指します。具体的には頭痛、吐き気、下痢、めまい、だるさなどでしょう。
しかし前日の酔いと二日酔いには大きな違いがあります。その違いは、頭の思考がクリアな点ですね。
ではなぜこの違いが出てくるのかというと、アルコールを飲んだ後の「酔い」と「二日酔い」では原因となる物質が異なっているためです。
アルコールを飲んだ直後に感じる「酔い」は、アルコールによって引き起こされる大脳の麻痺が原因となっています。この部分は社会的なモラルや常識、行動、思考を司る部分です。
ここがアルコールによって麻痺することで、普段ならば抑圧された思いや感情が解き放たれ、楽しさや爽快感を感じるようになるのです。
この楽しさや爽快感といった感覚は、適量のアルコールで引き起こされます。ではアルコールを摂取しすぎた場合、一体どうなるのでしょうか。
アルコールが体内に入ると、脳は異物として認識します。そしてすぐさま分解し排泄するように肝臓に命令を出します。
胃腸から吸収されたアルコールは血液の流れに乗って肝臓に運ばれ、アルコールからアセトアルデヒド、酢酸を経て、最終的に水と二酸化炭素に分解し尿中から排泄しようとします。
しかし肝臓の分解許容量を越えるアルコールを摂取すると、一度の処理では分解しきれず、分解途中の産物が血液中に漂う事になるのです。
この途中産物であるアセトアルデヒドが、辛い二日酔いを引き起こす原因になっているのです。
ではなぜ分解がうまくいかず、アセトアルデヒドが残ってしまうのでしょうか。
それには、肝臓が持つ分解酵素が関係しています。肝臓がアルコールを分解するために作り出す酵素には3種類あります。
まずは「アルコール」を「アセトアルデヒド」に分解する酵素です。これにはアルコール脱水素酵素とミクロゾームエタノール酸化酵素の2種類が必要になってきます。
次に「アセトアルデヒド」を「酢酸」に分解する工程です。この工程ではアセトアルデヒド脱水素酵素が必要になってきます。
実はこの3種類の酵素は個人差がとても大きいものになっています。一般的に欧米人に比べアジア人がお酒に弱いとされるのは遺伝子的にお酒に弱いためです。
この酵素の中で唯一、ミクロゾームエタノール酸化酵素は継続して飲酒することで反応性を上げる事が出来ますが、その他の酵素については量を変える事はできません。
二日酔いの原因によって下痢や嘔吐など症状が違う
二日酔いというと、頭痛、吐き気、下痢、などが主な症状と考えられていますが、実は二日酔いを起こした原因によって症状が変わってくるのです。
そのため人によっては頭痛のみ、という人もいれば頭痛はほとんどないが、お腹の調子が悪くなる、という人もいるようです。ここでは二日酔いの症状から、その原因についてみていきましょう。
ズキズキする頭痛
二日酔いの代表的な症状といえばこれですね。通常の頭痛とは違い、無視できない程度の不快な頭痛が続く症状です。
これはアルコールを摂取しすぎた時に起こる症状になります。次の日になってもアルコールの分解ができていないため、体内には「アルコール」「アセトアルデヒド」「酢酸」などが残っている状態になっています。
アルコールやアセトアルデヒド、酢酸は血管を拡張する作用があるため、脳の血管が拡張し頭痛を起こしているのです。
また日本酒に多く含まれている「アデノシン」という物質も、血管を拡張させるため飲みすぎると頭痛を増強させることがあります。
頭痛、だるさ、吐き気、易疲労感、筋肉痛に似た痛み
ひどい頭痛はないけれど、上記の症状に該当する場合は「アセトアルデヒド」が体内に残っているために起こる症状です。
アルコールの分解は終わっているのですが、アセトアルデヒドを酢酸に分解する工程に時間がかかっているため起こる症状になります。
またアルコールに弱い人や、毎日アルコールを飲む人の中には筋肉痛に似た症状を起こすことがあります。
これはアルコールによって筋肉が傷つけられたために起こる症状のようです。しかも通常のトレーニングによる筋肉痛と違うのは、傷つけられた筋肉は戻りにくいという点です。
このためアルコールを毎日飲む人や、アルコール中毒の人は、飲まない人よりも筋力低下を起こしている傾向にあります。
頭痛、吐き気、めまい、寒気、心拍数の増加、低血圧
これらの症状は脱水によって引き起こされる症状になります。
アルコールの分解過程で必要になってくるのが水分です。アルコールを分解し無毒化、尿として排泄するためには、摂取したアルコール量と同量かそれ以上の水分を必要とします。
つまりビール1Lを飲んだ時、体外へ排出される水分は1L~1.5L以上必要になるという事です。
さらに飲酒時の脱水には、「喉が渇かない」脱水と「喉が渇く」脱水があるため注意してください。その種類によっては症状と対策が違ってくるため、こちらも要チェックです。
✅ 「のどが乾かない」脱水…頻脈、低血圧、寒気、嘔気、頭痛
アルコールが分解され尿として排泄される際に、体内のミネラルが必要以上に排泄されてしまったために起こる脱水です。
この場合は「経口補水液」やミネラルを十分含んだ「スポーツドリンク」などを飲むようにしてください。水だけを飲むと症状が悪化することがあります。
✅ 「のどが渇く」脱水…喉の渇き、暑く感じる、発熱、皮膚の血管が窪んでいる
これらは体内水分が減少したために起こる症状です。血液がドロドロの状態のため、「ミネラルウォーター」や「ノンカフェインのお茶」などが望ましいでしょう。
吐き気、腹痛、下痢
アルコールには胃酸の分泌を促進する効果があります。このため、空腹時にお酒を飲んだ時や胃腸の調子が悪い時に飲酒を続けていると胃酸が出過ぎてしまい胃痛や胃炎といった症状を起こすことがあります。
またアルコールを飲んでいる最中は脂肪の分解を行う胆汁の分泌が減少することがあります。このため脂肪がうまく分解できず、下痢になってしまう事があります。
頭痛、だるさ、手の震え、頭重感、易疲労感、寒気、顔色が悪い
これらは低血糖が原因となって起こる事があります。
アルコールの分解を行っている臓器は肝臓になりますが、肝臓には血糖値を適度に保つためグリコーゲンを貯蔵し、必要時にグルコースに変えて血液中の血糖値を維持する働きがあります。
しかしアルコールを飲みすぎると、肝臓がこの働きを十分に行えなくなり、一時的な低血糖症状を起こすことがあります。
いつもより悪酔いしやすい、二日酔いがひどい時は
お酒は製造の段階で多かれ少なかれ不純物が発生してしまいます。この不純物の中でも、ひどい悪酔いや二日酔いを起こしてしまう物質がメタノールです。
私達が通常飲んでいるアルコールはエタノールですが、お酒を造る過程で発生するメタノールは毒性が強く、摂りすぎると失明や神経障害の危険性があるものになります。
両者は風味や香りだけではほとんど区別がつきませんが、メタノールは毒性が強く、体内に残留する時間が長い事が特徴です。特に不純物の除去をあまり行わない安いお酒に含まれている事があります。
またお酒の種類によってはメタノールがごく微量入っている種類もあるため、悪酔いや二日酔いをしたくないなら、これらのお酒を避ける事が望ましいでしょう。
また体が疲れている時や、肝臓の調子が良くない時などにもアルコールの分解がうまくいかず、悪酔いや二日酔いしやすい状態になります。
二日酔いの元凶!アセトアルデヒドに効く食べ物4選
ここからはアセトアルデヒドの分解や排出に高い効果があるとされる食品についてみていきましょう。
飲酒中のおつまみや、辛い二日酔い中の食事に積極的に摂り入れてみましょう。
しじみ、あさり、はまぐり
アセトアルデヒドの分解を早め、肝臓の機能を補助する物質として、アラニンとオルニチンがおすすめです。
特にしじみはアラニンとオルニチンをどちらも多く含んでいるため二日酔いや酒のみには非常に良いとされる食品です。
✅ 貝類が苦手…という人に
上記の貝類が苦手という人には、タンパク質を多く含む食品で代用しましょう。
アニリンやオルニチンといったアミノ酸は、鶏肉や豚肉、牛肉に多く含まれるほか、レバー、ナッツ類、大分などにも多く含まれています。
また魚、肉、卵、大豆、海藻などに含まれるグルタミンにも肝臓の働きを助ける効果があります。
カキ、タコ、イカ
これらの食材に含まれるタウリンには、傷ついた肝臓を修復し、肝機能を補助します。また分解酵素の働きを活性化するためお酒の席でおつまみとして取り入れたい成分です。
しかし二日酔いの日に上記食材を食べられるかというと、難しいものがありますね。そんな時には、タウリンが含まれる栄養ドリンクを取り入れてみましょう。
ゴマ
ゴマが持つセサミンという成分にはアセトアルデヒドの分解を促進する働きがあります。このセサミンという物質はゴマにしか含まれません。
しかしセサミンと類似した物質を含む食品には、ナッツ類、ライ麦や大麦などがあります。
豚肉、卵、ニンニク、玉ねぎ、赤ピーマン、ブロッコリー
これらの食品に共通して含まれるメチオニンはLシステインの材料となる物質です。Lシステインは毒素の排出、代謝の促進効果に加えて、美肌や美容に効果が高いとされる成分です。
さらにアセトアルデヒドの排出にも高い効果を持つとして注目されています。
お酒のおつまみとして取り入れたい食品になりますが、二日酔いの日であればLシステインが含まれているハイチオールC+錠も良いと口コミで広がっています。
これらの食品は、二日酔いの日に食べる事でも十分に効果が得られますが、一番良いのは飲酒時に一緒に食べる事です。おつまみの種類なども考えて選んでみましょう。
二日酔いによる下痢や嘔吐の治し方はコレ
二日酔い中に感じる嘔気や下痢の原因にはアセトアルデヒドが原因となる事が多いですが、それ以外にも、アルコールによって胃腸の働きがうまく機能しなくなることが原因となる事があります。
特に空腹時や胃の調子が悪い時にアルコールを飲むと胃酸過多を起こし胃痛や嘔気を起こしやすくなります。
また、肝臓がアルコールの分解に尽力することで、脂肪を分解する胆汁の分泌が追い付かなくなり、脂肪がうまく分解できず下痢になってしまうこともあります。
もし二日酔いで嘔気や下痢になったら、どのように対処すればよいのでしょうか。
市販薬の吐き気止め、下痢止め
手っ取り早く症状を緩和したいのであれば薬に頼るのも良いでしょう。
薬局で販売されている吐き気止めや下痢止めには、その成分によって作用が全く違ってきます。
胃酸の分泌を抑えるもの、胃炎を緩和するもの、吐き気を感じにくくするものなどあるため、薬剤師に相談して薬を選んでもらいましょう。
症状が長引く時や、薬を飲んでもあまり改善がない時などは、病院を受診するようにしてください。
家にあるもので!
薬に頼るのは嫌だ、薬局が近くにない、という人には民間療法がおすすめです。
✅ 水を飲む
一番簡単で、誰でもすぐにできる方法です。アセトアルデヒドの分解と排出には水分が必要不可欠です。アルコールを飲んだ後は進んで飲むようにしましょう。
✅ シジミの味噌汁
二日酔いと言えばシジミです。シジミにはアセトアルデヒドの分解、排出作用、さらに肝臓の保護作用があります。
また、温かい味噌汁として飲むことで、失ったミネラルの補給の他、体が温まり代謝が促進される効果が期待できます。
お手軽なインスタント食品としても販売されているため、二日酔いの朝にはぴったりです。
✅ 柿
柿に含まれるタンニンがアセトアルデヒドと結びつき、体外へ排出してくれます。また、柿は東洋医学で下痢止めとして漢方で使用されています。
お腹が緩い時には1日1個の適量を食べるとよいでしょう。しかし食べ過ぎは却って便秘を起こすことがあります。量を守って食べるようにしてください。
✅ はちみつ
はちみつに含まれる果糖にはアセトアルデヒドの分解を助ける働きがあります。また疲労回復効果や肝臓の機能補助の働きもあるため、二日酔いで疲れた体に最適です。
✅ しょうが
しょうがは古くから吐き気や船酔いを緩和する民間療法として親しまれてきました。温かくて甘い生姜湯として飲んだり、お粥やお汁にすりおろしたしょうがを加えてみたりしてもいいですね。
✅ 重曹
胃酸の出過ぎによる吐き気には重曹小さじ1/2 から1杯を水に溶かして飲んでも効果があるようです。重曹に含まれる成分が胃痛を緩和します。
注意点として、重曹には掃除用と調理用の2種類があります。掃除用は不純物が多く含まれているため、飲用する際は必ず調理用の重曹を使用してください。
✅ ツボ押し
吐き気に効果があるとされるツボを紹介します。
関衝(かんしょう)…薬指の爪の付け根を指の側面から押します。両方の指どちらでも構いませんが、痛みが強い方を心地よい強さで押します。
内関(ないかん)…手首から指三本分下の真ん中にあるツボです。親指でやや強めに押すようにしましょう。
合谷(ごうこく)…様々な症状に効く万能ツボと呼ばれる場所です。親指の付け根の大きく盛り上がった所です。親指でやや強めに押してみましょう。
二日酔いの時にしてはいけない4つのNG
アルコールを飲んだ後や、二日酔いの時に何気なくしている行為の中には、実は症状を悪化させる行為の他に命の危険性があるものがあります。
以下に、特にNGな行動を載せました。注意してください。
熱いお風呂やサウナ、激しい運動
アルコールを汗で流そうとしてお風呂やサウナに入る人がいますが、これは大変危険な行為になります。
アルコールを飲んだ後、ほとんどの場合において体の中は脱水状態になっています。この状態からの汗をかく行為は、脱水が悪化し心筋梗塞や脳梗塞、意識障害を起こすリスクが高まります。
薬の飲みすぎ
辛い二日酔いでは、頭痛や胃痛、下痢といった症状が併発することがあります。症状が辛いからといって鎮痛薬や下痢止め、胃薬を合わせて飲む事はあまり良いことではありません。
というのも薬の分解を行う場所は肝臓のため、アルコール分解と同時に薬の分解をすることで、肝臓に過剰な負担がかかる事があるからです。
アルコール分解が遅れてしまったり薬が効きすぎたりするリスクがあります。
迎え酒
二日酔いの不快な症状を緩和するために迎え酒をする人もいますが、これも良くない行動の一つです。アルコールは脳の機能を麻痺させ、不快な症状を感じにくくさせてくれます。
しかしアルコールを常に摂取することで肝臓に多大な負担を与え、内臓機能を低下させます。またアルコール中毒のリスクも高まっていくことになります。
強いカフェイン飲料
二日酔いの朝、気分をすっきりさせるため、お茶やコーヒーを飲みたくなる人もいるでしょう。しかしカフェインには利尿作用があるため、二日酔いで脱水気味の体にはあまり良いとはいえません。
またコーヒーやお茶は胃酸を分泌する効果もあるため、アルコールで傷ついた胃壁には負担になります。
つらい二日酔いを回避する方法とは
楽しい飲み方の後、翌日のつらい二日酔いは本当に気分が滅入るものです。元々アルコールにそんなに強い人でなければ、悪酔いや二日酔いは悩みの種でしょう。
しかしちょっとした事に気を付ける事で、悪酔いや二日酔いになりにくくなり症状を劇的に抑える事ができます。
まずは飲み会の前の下準備です。
アルコールは分解するために肝臓の機能が大変重要になってきます。飲む前には、肝機能を高めてくれるウコンを含む飲料を飲むようにしましょう。
またアルコールの吸収を遅らせるために牛乳やヨーグルトを少し飲んでおくと、アルコールの吸収が遅くなる効果に加え、胃に膜を作り粘膜を保護してくれます。
飲み会中は、前述したアルコール分解に良い食品を取り入れたつまみを選ぶようにしましょう。油分を多く含む食品は消化不良を起こしやすいため、少量にしましょう。
お酒のペース配分も注意したいものです。アルコールは飲んでから約30分後に酔いを感じると言われています。そのため、飲み過ぎた、と自覚してから飲む量をセーブしても意味がありません。
また、飲むお酒をコロコロ変える人も酔いやすいと言われています。お酒を変えることで味が変わり、ペース配分が乱れてしまう事が原因と考えられています。
楽しくてついつい飲みすぎないように、自分のペースを守りながら飲むようにしましょう。
飲み会の最中と後には、体は脱水状態になっています。必ず水を飲むように心がけましょう。
可能であれば、飲んだ量かそれ以上の水分を摂る事が望ましいですが、アルコールが入って満腹の状態ではそれも難しいといえます。一度にたくさん飲もうとせず、一口ずつ時間を分けて飲むようにしましょう。
帰宅後、すぐに眠りたい気持ちはありますが、実は睡眠中はアルコールの分解が遅れる事がわかっています。酩酊状態でベッドに入ると、次の日に辛い二日酔いが起こりやすいのはこのためです。
一番良いとされる方法は、水を飲みながらアルコールが抜けるのを待つことです。次の日が仕事の日などは、アルコールを飲む時間を調整し、翌日が休みの日に飲むように心がけましょう。
以上が二日酔いや悪酔いになりにくくする方法になります。楽しい飲み会ですが、飲みすぎてしまった後の嫌な酔い方だけは避けたいものです。
飲み会の前後やつまみの種類、飲む時間、お酒の種類に配慮して、楽しい時間を過ごしてください。
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