血管を強くするには【食べ物から運動までしっかり解説】
<監修医師 豊田早苗>
今回のテーマは血管です。血管のトラブルは脳卒中や心筋梗塞など様々な病気の原因となります。
そこで、血管を健康に保つために積極的に摂りたい食品、避けたい食品、効果的な運動などについて御紹介します。
気になる所から確認してみよう
血管が弱いと重篤な病気に要注意
血管の病気は様々ですが、脳内の血管が何らかの原因によって「破れる」ものを脳出血やくも膜下出血と言い、血管に血栓(血の塊)などが「詰まる」ものを脳梗塞と言います。
これらの脳血管疾患は日本人死因の第4位です。
また、心臓の血管が完全に詰まるものを心筋梗塞、血管の内側が狭くなって血流が悪くなるものを狭心症と言い、これらの心疾患は日本人死因の第2位になっています。
中高年期になって、こういった血管の病気になるのは動脈硬化が深く関係しています。動脈硬化とは、動脈と言う血管の内側が脆くなったり、狭くなった状態です。
動脈硬化の主な原因は加齢、高血圧、脂質異常症、糖尿病、高尿酸血症、肥満、運動不足、喫煙、精神的ストレスなどです。
つまり、こういった原因を取り除くことができれば、血管を若く、丈夫に保つことができます。
血管を強くするために必要な9つの栄養素
DHAとEPA
青魚に多く含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)は多価不飽和脂肪酸の一種です。
DHAとEPA、それに後述するα-リノレン酸(ALA)を合わせてω(オメガ)3脂肪酸と呼びます。これらは体内では合成することができず(必須脂肪酸)、食品から摂る必要があります。
DHAやEPAには、中性脂肪やLDL(悪玉)コレステロールを下げる働きがあるため、血栓ができるのを防ぎ、血流を良くする効果(血液をサラサラにする)があります。
そのため、高脂血症を改善したり、動脈硬化が原因となる病気を予防できます。その他にもDHAには脳の機能向上があるとされ、EPAには抗炎症作用、免疫調整作用などがあるとされています。
α-リノレン酸(ALA)
α-リノレン酸は植物油(エゴマ油、亜麻仁油など)に含まれる多価不飽和脂肪酸の一種で、体内に取り込まれると10%~15%程度がDHAやEPAに変換されます。
そのため、血流の改善、血栓の予防、コレステロール値や中性脂肪値の低下などの効果があります。また、近年の研究によってアレルギー症状の緩和、うつ病の改善などの効果もあるとされています。
オレイン酸
オレイン酸も一価不飽和脂肪酸の一つで、植物油(オリーブオイルやゴマ油など)やナッツ類、大豆製品に含まれています。
LDL(悪玉)コレステロールを減少させる働き、動脈硬化を予防する働きがあります。その他にも胃酸の分泌抑制、便秘の予防、発がん抑制の効果もあります。
ビタミン(E、C、プロビタミンA)
ビタミンE、ビタミンC、β-カロテン(プロビタミンA)には抗酸化作用があります。抗酸化作用とは、体内で発生する活性酸素を抑える働きのことです。
活性酸素は血管や細胞を傷つけて動脈硬化の原因となります。つまり、これらのビタミンを摂取することで動脈硬化や動脈硬化から起こる病気を予防できます。
食物繊維
食物繊維には小腸でのコレステロールや糖質の吸収を妨げ、排出を促進する働きがあるため、血中コレステロール値を下げたり、糖尿病を予防する効果があります。
ポリフェノール
ポリフェノールとは植物の樹皮や種子などに含まれる成分で、カテキン、イソブラボン、タンニン、アントシアニン、フェノール酸、ヘスペリジンなどの物質の総称です。
ポリフェノールには活性酸素の働きを抑制したり(抗酸化作用)、血栓の予防、血流の改善などの効果があります。
血管を強くする方法5選!食べ物編
トマト、キノコ、玉葱、しいたけ
DHAやEPAが豊富な食べ物
見出し2で述べたようにDHAやEPAが豊富な食べ物は、血管を丈夫にするには良い食べ物です。サンマ、イワシ、サバ、アジ、ブリなどの青魚に豊富に含まれています。
食物繊維が豊富な食べ物
わかめ、昆布、ひじきなどの海藻類やごぼう、かぼちゃ、たけのこなどの野菜に含まれる食物繊維には、見出し2で述べたような理由から、血管に良い効果があります。
ポリフェノールを含む食べ物
ポリフェノールも見出し2で述べたような理由から血管を丈夫に保つには良い効果があります。
アントシアニンを含むブルーベリーやぶどう、タンニンやクロロゲン酸を含むスモモ、イソフラボンを含む大豆食品(豆腐、おから、枝豆、油揚げ、厚揚げ、ゆば、煮豆など)などが当てはまります。
ビタミンE、C、プロビタミンAが豊富な食べ物
ビタミンE、C、プロビタミンAを含む食品は見出し2で述べたような理由から、動脈硬化を抑制するために積極的に摂りたいものです。
ビタミンEはナッツ類、植物油などに多く、ビタミンCは野菜や果物に多く含まれます。プロビタミンAはにんじん、ほうれん草、春菊、モロヘイヤなどの野菜に多く含まれます。
納豆
納豆に含まれるナットウキナーゼには血栓を予防し、血液をサラサラにする効果があると期待されています。
血管を強くする方法3選!飲み物編
緑茶
緑茶に含まれるカテキンには抗酸化作用があり、血管や体内の細胞の老化を予防します。またLDLコレステロールを減らす効果もあります。
コーヒー
1日1~2杯程度のコーヒー(ブラック)であれば、血管に良い効果があります。カフェインの利尿効果によって体内の余分な物の排出を促進できます。
さらにカフェインには代謝を促進する効果もあります。コーヒーに含まれるフラボノイドはポリフェノールの一種のため、抗酸化作用があり、血管や細胞の老化を予防します。
酢
酢を摂取すると、アデノシンという物質が血管に作用して、血管を広げる働きがあるため、血圧を下げる効果があります。
また、コレステロール値を改善する効果もあるとされています。これらの効果を得るために必要な酢の量は、1日15ml(大さじ1杯)で良いとされています。
血管を強くする方法3選!運動編
有酸素運動(ウォーキング、ジョギングなど)
ウォーキングや軽めのジョギングなどの有酸素運動を行うと、末梢の血管が拡張して血流が良くなります。冷えやむくみといった不快な症状を改善する効果もあります。
また、継続することによって血圧、LDLコレステロール、中性脂肪、血糖値は減少し、反対にHDLコレステロールは増えます。
ストレッチ
ストレッチを行うと筋肉だけでなく血管も伸ばされます。その刺激によって血管を柔らかくする物質が分泌され、血管を広げて血流も良くなります。
体が硬い人も、痛気持ちいいという程度まで伸ばすことをポイントに続けることが大切です。
筋力トレーニング
筋トレにも血流を改善する効果があります。特別な器具を使わなくても血管に良い筋トレを行うことは可能です。どの運動も息を止めないで行いましょう。
1. スクワット
ポイントは足を肩幅程度に開くことと、上体を倒さずまっすぐにする、膝がつま先より前に出ないようにすること、膝が内側に入るように曲げない(まっすぐを意識する)です。
これらを意識することで、膝関節を痛めず行うことができます。
2. かかと上げ運動
5秒かけてゆっくりかかとを上げていき、5秒キープします。その後5秒かけてかかとを下ろします。
1セット10回程度を行い、慣れてきたらセット数を増やしていきましょう。ふくらはぎの筋肉を鍛えるのに効果的です。
3. 脚を後ろに上げる運動
椅子などにつかまり、上体をやや前傾させます。ゆっくり5秒かけて、脚をまっすぐ後方に上げていきます。上げきったら5秒キープし、5秒かけて下ろします。
反対の脚も同様に行います。こちらも1セット10回とし、慣れてきたらセット数を増やします。お尻の後ろ側の筋肉に効きます。
※特に②、③の運動は歯磨き中、料理中など日常のちょっとした時間を利用して出来るため、お勧めです。
5つの食べ物は血管を劣化させやすい可能性がある
飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸
脂肪酸は体内の細胞を作るためには欠かせないもので、食品からバランスよく摂取する必要があります。
脂肪酸には不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸の2種類があります。さらに、不飽和脂肪酸にはトランス型の脂肪酸とシス型の脂肪酸があります。
DHAやEPA、α-リノレン酸などはシス型不飽和脂肪酸に分類され、動脈硬化を抑制するなど、生活習慣病を予防する上では摂取したい脂肪酸です。
トランス脂肪酸を多く含む食品の摂り過ぎは動脈硬化を招く
トランス脂肪酸はLDLコレステロールを増やし、HDLコレステロールを減らします。そのため、摂り過ぎは血流を悪化させ、血管を硬くし、動脈硬化を進行させます。
実際にトランス脂肪酸を多く摂る人は、そうでない人に比べて心疾患のリスクが高くなるというデータがあります。
トランス脂肪酸を多く含む食品は、肉類、乳製品、油脂類(マーガリン、ショートニングなど)、洋菓子、揚げ物です。
国際機関が生活習慣病の予防のためには、1日に摂るトランス脂肪酸の量を総エネルギー量の1%までにするよう勧めています(1日の総エネルギー量は1900キロカロリーであれば、2gまでということになります)。
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