加齢黄斑変性症の症状まとめ【5つの治療法や費用について】
<監修視能訓練士 kenkensanta>
加齢黄斑変性症は文字通り加齢が原因で発症します。目にできる病気で欧米では「社会的失明」とも呼ばれています。必ず失明するというわけではなく、視力障害をきたすものです。
加齢によるとはいうものの、40代で発症する場合もあることから注意が必要ですね。
メディアでも取り上げられるようになってきた加齢黄斑変性症の症状や治療法・費用などを詳しく解説します。
加齢黄斑変性症とは?
加齢黄斑変性症(かれいおうはんへんせいしょう)とはどのような病気なのでしょうか。眼科にはあまりなじみがなくて知らないという方も多いでしょう。
網膜の中心にある、光を集める細胞が多く存在する黄斑の中にある中心窩という部分に異常をきたします。
つまり物を見る黄斑に変性を生じるため、歪みや視力低下などの障害を引き起こします。
加齢によるものが多く、高齢化に伴って日本でも患者数が増加しており、50歳以上では約1%にみられる疾患です。失明原因では第4位で、高齢になるほど患者数が増えています。
年齢を重ねていくと網膜色素上皮の下にたまっていく老廃物によって黄斑部が障害されていくということが原因とされています。
加齢黄斑変性症は老化現象ともいえるほど誰にでも起こりうる目の疾患ですが、ほかにもなりやすい傾向というものがあります。
日光に常に当たっている・日にさらされる時間が長い職業などについている人や肥満体系の人にその傾向がみられるといいます。
もっと多いといわれるのは喫煙者です。喫煙は酸化ストレスが眼にたまって炎症を起こします。発症を避ける、もしくは進行を遅らせるためには禁煙が第一条件なのです。
加齢黄斑変性症は2つの種類があります。
萎縮型は網膜上皮が委縮していくことで視力が少しずつ低下していくものです。「非萎縮型」「乾燥型」とも呼ばれます。
滲出型は脈絡膜新生血管が網膜色素上皮と網膜や脈絡膜の間に入り込んでいくことが原因です。
脈絡膜新生血管とは異常な血管で、血液中の成分が漏れ出したり破れることもあります。漏れ出した液体がたまると網膜の働きが異常化して腫れたり視力が低下します。
その他、加齢によって起こる可能性のある目のトラブルについてはこちらを参考にして下さい。
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加齢黄斑変性症の症状
加齢黄斑変性症の症状は気づかないうちに進行していきます。その症状の出方に特徴があるからだといわれています。また、女性よりも男性に多く発症する傾向があるといわれています。
片方の眼・中心部に発生する
中心部以外は支障なく見え、両眼同時には発症しにくいため、気が付きにくい病気です。まったく光がなくなるわけでもなく、はじめは視力自体が低下するわけでもありません。
両眼ではなく片方の眼に症状が出ることが特徴です。「なんとなく見にくい感じ」が続くため、年齢のせいにしている方が多いといわれています。
料理をしている手元の中心部だけが暗く見えたりしたら検査してみることをおすすめします。進行してくると日常生活に支障をきたすほど視界が狭くなることもあります。
ゆがむ・ぼやける
脈絡膜新生血管から出血する量が多いと見えない範囲が出てきます。視界がゆがんで見える・ぼやけることが特徴です。
視野が部分的に見にくくなったりして見たいところが見えないという症状が続き、気づかないうちに進行していくと視力低下を起こすこともあります。
読んでいる新聞の一部分だけがぼやけて不鮮明に見えたりします。「変視症」と呼ばれ、規則的に並んでいるビルの窓などの一部分がゆがんだりぼやけて見えたりします。
目に異常を感じた場合はこちらも参考にして下さい。
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加齢黄斑変性症の自己チェックを!
ぼやける・かすむ・暗く見えるなどがあって目の充血があるようなら自己チェックをしてみましょう。用意するものは方眼紙だけです。
方眼紙の中央あたりに黒いマジックで点を打っておきましょう。眼鏡(老眼鏡を含む)をかけたままでも大丈夫。
方眼紙を揺らさないように手で持って片目を閉じて中央に打った点を見ます。手と眼の距離は読書をするぐらいだと思ってください。
✅ 部分的に線がゆがむ・曲がる
✅ 部分的にぼやける
✅ 部分的に方眼が欠けて見える
3つのチェックポイントのうち一つでも当てはまれば眼科へ行って検査を受けてみることをおすすめします。
網膜下の出血量が増え続けると著しく視力が低下することもあります。自己チェックをして早めに眼科受診をしましょう。
加齢黄斑変性症の治療法
気づかないうちに発症・進行していく加齢黄斑変性症にはどのような治療法があるのか見ていきましょう。
まず、治療方法の前に検査方法を少しご紹介します。新生血管の有無や剥離した網膜・出血などを確認するための眼底検査や造影剤を使用する蛍光眼底造影を行います。
網膜や眼底の断面を確認するために光干渉断層計(OCT)を行い、黄斑変性の細かな病態を診断できます。
薬物療法
「抗血管新生薬療法」と言われる治療法で、現在主流となっているものです。体内にあるVEGFと呼ばれる血管内非増殖因子を抑える薬剤を眼内に注射します。
VEGFとは脈絡膜新生血管の成長を促進させる物質で、この物質を抑えることで新生血管が増えることを抑制するという治療法です。
日帰り可能な治療法で、定期的に数回繰り返します。
光線力学的療法(PDT)
光線力学的療法は高い技術と安全性を確保しなければならないため、どの眼科に行っても受けられるというものではなく認定医制度が設けられています。
瞳孔を開く散瞳薬を点眼してから「ベルテポルフィン」という光に反応する薬を静脈注射し、病変部にレーザー照射することにより新生血管を詰まらせて伸長を止める治療です。
ベルテポルフィンの「新生血管にだけ集合する」「レーザー照射により化学反応を起こし血管を傷害する」という特徴を利用します。
この治療のメリットは正常組織に障害を与えず、ピンポイントに新生血管を閉じることができるという点です。
ただし、1回の治療で完治するのではなく、定期的な検査と増加した新生血管に光線力学的療法を繰り返すというものです。
検査における注意点として、副作用はわずかですが「光線過敏症」を発症することがあるので、治療直後は直射日光などの強い光を避けるようにしましょう。
1回の治療で2日間の入院が必要となります。
レーザー光凝固術
新生血管にレーザー光を照射して傷害するという治療法ですが、中心窩から離れている場合のみ適応となります。
特殊なコンタクトレンズを装着してレーザー照射し、新生血管のみを焼くことで出血やむくみを止めることができて症状の進行を抑えます。
視力の回復も期待できる治療法ですが、レーザー光が強力なため正常な視細胞などの視野の外周に暗点ができるというデメリットもあります。
サプリメント
循環改善薬や止血剤のような内服薬も使用されていましたがあまり改善効果はありませんでした。このため、現在主流となっているのはサプリメントを内服することです。
網膜にもともとある「ルテイン」という成分を多く摂取することで、すでに加齢黄斑変性症の患者であっても好影響があるようです。
眼科医によっては前兆のような症状があるまたは片眼に発症している場合にはルテイン・抗酸化ビタミン・ミネラル含有のサプリメント「オキュバイト」の内服を推奨しています。
生活習慣改善
遺伝的な体質も原因に数えられていますが、誘発要因のほうが重要です。喫煙は血行不良によって老廃物をため込むため厳禁です。
また、強すぎる光は避けるようにしましょう。太陽光やブルーライトは網膜の色素細胞が酸化するため、サングラスやブルーライトカットの眼鏡を利用します。
食生活では肥満を防ぐことと、眼に良いとされる栄養素であるカロテンや抗酸化作用があるビタミンをたくさん摂るために緑黄色野菜を中心にするように心がけます。
禁煙の方法についてはこちらも参考にして下さい。
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治療法を選択する基準は?
まず病変部位が黄斑の中心なのかそうでないかという2択です。中心部分の「中心窩」かどうかは視力を左右します。
次に加齢黄斑変性症の二つの型です。「萎縮型」では有効な治療法が現在ないという点と、進行が遅いという点から基本的に治療は行わずに経過観察となります。
定期的な検査を受けながら過ごすということです。
「滲出型」では「中心窩」に病変が及んでいなければレーザー治療が適応されますが、「中心窩」に及ぶ場合はその他の治療法を選択することになります。
加齢黄斑変性症の治療費用
加齢黄斑変性症は難病に指定されています。しかし特定疾患治療研究事業対象疾患」には指定されていないため、治療費は公費負担されません。
難病指定されていても治療費は通常の健康保険と同じ負担割合で支払うとなると、どのぐらいかかるのでしょうか。
抗血管新生薬療法
抗血管新生薬を眼内に注射して新生血管が増えるのを抑制するという日帰り治療です。
70歳以上の方では窓口負担の上限があるため1割負担で12,000円、3割負担で44,000円です。
70歳未満ならば3割負担で55,000円となります。
光線力学的療法
2日間の入院費用と薬剤費・レーザー治療費用が必要になります。1割負担で50,000円から100,000円、3割負担では120,000円から200,000円程度の負担となります。
治療費は高額療養費制度が適用されることもありますので、病院の事務担当者や市町村または健康保険の担当窓口に問い合わせてみましょう。
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