眼圧が高い原因や症状を解説【疲れやすいコンタクトの使用は控えて】
今回のテーマは眼圧です。あまり馴染みのない人もいるかもしれませんが、眼圧が高い状態が続いて視神経を圧迫すると、緑内障といって最悪の場合失明に至る病気に進行することもあります。
今回は、眼圧とは何か、眼圧が高くなる原因や症状、眼圧を上げすぎないための予防策などについて説明します。
気になる所から確認してみよう
そもそも眼圧とは
眼圧とは
私たちの眼球は、丸い形を維持するため、眼球の内側から外側に向かって一定の圧力がかかっています。
この圧力が眼圧です。正常な眼圧は10mmHg~21mmHgです。
ちなみに、この眼圧よりも高い状態で、視神経には異常がない状態のことを「高眼圧症」と言います。
眼圧の上昇と房水(ぼうすい)
では、なぜ眼圧が上がるのでしょうか。それは、何らかの原因によって、眼球を満たしている房水(ぼうすい)と呼ばれる体液(液体)のバランスが崩れるためです。
通常、房水は目の毛様体(もうようたい)と呼ばれる場所で作られて、シュレム管から排出されていき、産生量と排出量は一定に保たれています。
しかし、房水の産生量が多い、あるいは排出量が少ないなどバランスが崩れると眼圧は上昇します。
眼圧と緑内障
このように眼圧が高い状態が続くと、緑内障という目の病気に注意しなければなりません。
眼球の縁には視神経の束が走っています。視神経の束は眼圧に圧迫されないように、ほとんどが壁によって守られています。
しかし、視神経の入口である視神経乳頭(にゅうとう)部分には壁がないため、眼圧が高いと圧迫されて視神経が障害されてしまいます。これが緑内障です。
眼圧に影響を与える様々な因子
先程、正常な眼圧は10~21mmHg(日本人の眼圧の平均値は14~15mmHg)だと述べましたが、個人差があるのも事実です。
以下のように、眼圧は様々な因子によって数値が左右されるため、血圧のように「自分の正常値はどれくらいなのか」を定期的に検査して把握しておくことが重要です。
1. 時刻
1日の中でも眼圧は変動すると言われています。
2. 季節
一般的に夏は眼圧が低く、冬は眼圧が高くなる傾向にあります。
3. 年齢
一般的に10~20代の若者は眼圧が高く、歳をとるにつれて眼圧は低くなる傾向にあります。
4. 近視や遠視の有無や程度
一般的に近視や遠視が強いと、眼圧が高くなる傾向にあります。
5. 血圧
一般的に血圧が高いと、眼圧も高くなる傾向にあります。
6. その他
上記の他、人種、運動、体位などによっても数値が変動します。
頭痛やめまいなど5つの不具合な症状
血圧のように眼圧においても、数値が高いからといって、これといった自覚症状が見られない人も多いです。(そのために発見されたときには、病気がかなり進行しているケースもあります。)
ここでは、眼圧が高い場合に伴うことのある症状について説明します。
加齢によるものと決めつけずに、一定時間目を休めても症状が治まらない場合や頻繁に以下のような症状が出る場合は、眼科で検査を受けましょう。
目の痛み・頭痛
人によっては、目の奥の痛みや頭痛(ぼわっとするような鈍い痛み)として症状が出ることがあります。
ピントが合わない、物がかすんで見える
人によっては、物がかすんで見えたり、ピントが合わないということがあります。
めまい
めまいが伴うことがあります。
吐き気
吐き気が伴うことがあります。
目が疲れやすい
いつもより目が疲れやすいと感じる人もいます。
コンタクトも眼圧が高くなる原因だった
実は、なぜ眼圧が高くなるのかということについては、まだ不明な部分も多いのです。
その一つとして、眼圧の上昇に関わる房水がどのように生産・吸収され、循環しているのかといった部分が十分に解明されていないことがあげられます。
しかし、近視や血流の障害、血管の攣縮(れんしゅく:震え)などがあると、眼圧が上昇すると考えられています。
近視
近視が強い人の場合は眼圧が高くなりやすいため、注意が必要です。
血流障害や血管の攣縮(れんしゅく)
血流障害や血管の攣縮があると、眼圧が高くなりやすいと考えられています。攣縮とは一時的に生じる血管の異常収縮のことです。
これらがあると、目などの様々な器官に必要な酸素や栄養分が供給されなくなります。
目の構造に問題がある場合
房水の出口である隅角(ぐうかく)と呼ばれる部分が塞がっていたり、狭くなっている人がいます。
また、隅角に問題はなくても、その近くでフィルターのような役割を果たしている線維柱帯(せんいちゅうたい)が目詰まりを起こして、房水がスムーズに流れなくなっている人もいます。
このように隅角や線維柱帯に問題があると、房水の流れが悪くなって眼圧が上昇します。
眼圧が高いまま放置すると緑内障の危険性がある
眼圧が高い状態が続くと、緑内障という病気のリスクが高まります。ここでは、緑内障について説明します。
緑内障とは
緑内障は日本人の失明原因の第1位になっている目の病気です。
40歳以上の約20人に1人(5%)は緑内障と言われており、年齢を重ねるにつれて(つまり高齢者ほど)緑内障の患者数は増える傾向にあります。
緑内障は自覚症状に乏しいこともあり、緑内障が見つかった人のうち実際に治療を受けている人は約1割にとどまります。
つまり、残りの9割の人は緑内障だと気づかずに放置しているということです。
緑内障の症状
緑内障とは、一定の眼圧に耐えられなくなった視神経が傷つき、視野欠損(視野の一部が欠けてしまうこと)、視野狭窄(しやきょうさく:視野が狭くなること)、視力低下などが生じます。
この状態を放置すると、失明します。
様々なタイプの緑内障
緑内障は、①のように「先天性」のもの、②・③・④・⑤のように「原発性(原因が不明ということ)」のもの、「続発性(他の目の病気、糖尿病、薬の副作用など原因がはっきりしているもの)」の大きく3つに分けられます。
さらに、原発性には房水の出口となる隅角(ぐうかく)に問題がある④・⑤のようなタイプ(閉塞隅角緑内障)と、②・③のように問題のないタイプ(開放隅角緑内障)に分けられます。
日本人の緑内障の約7割は開放隅角緑内障です。
また、開放隅角緑内障であっても、眼圧が高いために起こる②や③、眼圧が正常なのに起こる④といったように細かく分類されます。
①先天性緑内障
ケースとしては少ないですが、生後間もない赤ちゃんに緑内障が見られることもあります。房水が排出される部分である隅角という部分に発達異常があるために起こります。
②若年性緑内障
近年緑内障は10代から30代の若年層にも増えてきている病気です。
通常、緑内障は40代から増える病気のため、30代以下で緑内障を発症するものを若年性緑内障と言います。(学校の健康診断で近視と判定される児童・生徒が、増加傾向なことも関係しているかもしれません。)
症状や治療方法は、他の緑内障と同様です。
③正常眼圧緑内障
注意しなければならないのが、このタイプの緑内障です。基本的には、緑内障は眼圧が高いことが原因となって視神経を傷つけ、様々な症状が現れる病気です。
しかし、中には眼圧が基準値内に収まっているにも関わらず、視力低下、視野欠損、視野狭窄といった緑内障と同じ症状を起こすものがあります。
これを正常眼圧緑内障と言い、日本人に多いタイプなのです。
自覚される症状としては、目が重い・疲れやすい、肩が凝るといった症状があります(ほとんど自覚症状がないこともあります)。
このタイプの場合は、緑内障の症状を改善するために、その人の眼圧をさらに下げたり、血液の流れを良くする治療が必要となります。
④閉塞隅角緑内障
房水の出口となる隅角という場所が詰まってしまうために起こる緑内障のことを閉塞隅角緑内障と言います。
このタイプは、元々隅角が狭い人(狭隅角:きょうぐうかく)、高齢女性、遠視の人に多く見られます。
⑤急性緑内障
緑内障のほとんどはゆっくりと症状が進む慢性緑内障に分類されます。しかし、一部には急激に症状が出現、進行する急性緑内障もあります。
急性緑内障は、元々隅角が狭い(狭隅角の人)、詰まっている(閉塞隅角の人)などの目の構造上の問題を抱えた人が、疲労、睡眠不足、精神的ショック、風邪などの感染症が重なることで起こるとされています。
急性緑内障の症状は、突然の激しい頭痛や目の奥の痛み、目の充血、吐き気や嘔吐、冷や汗、視力低下などがあります。
また、このような急激な症状のことを急性緑内障発作とも言います。発作症状の前触れとして、目のかすみや偏頭痛など何らかの不快な症状を感じる人もいると言います。
急激に症状が進行するために、眼圧を下げる治療が遅れると数日で失明してしまう病気です。
眼圧検査は定期的に行おう
眼圧の検査方法にはいくつかあります。どの検査方法においても、眼圧の基準値は10~21mmHgになります。眼圧だけでなく、緑内障や網膜剥離などの目の病気を知る上でも重要な検査です。
基準値よりも眼圧が高い場合は緑内障や高眼圧症などの病気が疑われます。反対に眼圧が低い場合は、網膜剥離(もうまくはくり)、虹彩毛様体炎(こうさいもうようたいえん)、脱水、外傷などが疑われます。
診断するためには、眼圧だけでなく眼底検査、視野検査、隅角(ぐうかく)検査など他の目の検査も合わせて行い、総合的に判断します。
空気眼圧計
眼科の他、職場の健康診断や人間ドックなどでも用いられる眼圧検査方法です。椅子に座った状態で、目に圧縮空気を当てる測定方法です。
痛みはありません。簡易的に行える分、まつ毛が長い人の場合は眼圧が高く計測されるなどのデメリットもあります。
ゴールドマン眼圧計
主に眼科で行われる眼圧検査方法です。椅子に座った状態で、医師が患者の目に直接器械を当てて測定するものです。痛みはありません。
シェッツ眼圧計
主に眼科の入院病棟において、仰向けの状態の患者さんに対して行われる眼圧検査方法です。目薬の麻酔を使用して行うため、痛みは感じません。
日常生活で正常な眼圧を保つ11の予防策
眼圧が上がる要因として、近視や血流障害が関係しているとされているため、これらに焦点を当てて対策をまとめます。
近視を悪化させないこと
1. 長時間のスマホやパソコン操作を避ける
目を疲れさせないためには、1時間スマホやパソコン操作をした際は、10分休憩することが推奨されています。
特にスマホの場合は、下を向いて操作することが多いのではないでしょうか。下を長時間向いた姿勢は眼圧を上げてしまうため、こまめに姿勢を変えるようにしましょう。
血流を悪くしないこと
1. 目を温める
目を温めることで周辺の血行は促進させることができます。
特に上まぶたの当たりは、刺激することで副交感神経(リラックスさせる神経)のスイッチがオンになると言われています。
そのため、寝る前に温めることでリラックスでき、寝付きが良くなる効果も期待できます。
タオルを電子レンジで1分間チンしたホットタオルの他、ホットアイマスクなどの商品を使うのもお勧めです。
2. 全身を温める
炭酸成分入りの入浴剤を使用して入浴すると血行が促進され、体が温まります。入浴時間は10分、38℃~40℃くらいが良いです。
3. 目に効くツボを押す
目の周辺にあるツボを押すことで、その周辺の血行不良が改善されます。
✅ 清明(せいめい)
目頭と鼻の付け根の間にあるツボです。目の充血や痛み、近視などに効果があるとされます。目の疲れを感じると、自然と押していることが多いのではないでしょうか。
✅ 瞳子髎(どうしりょう)
目尻の外側のくぼみにあるツボです。頭痛や目の痛み・かすみなどに効きます。
✅ 攅竹(さんちく)
眉毛(鼻側)の生え際にあるツボです。頭痛や視力低下、まぶたの痙攣、目の充血・腫れ・痛みなどに効果があります。
✅ 承久(しょうきゅう)
目(瞳孔)の下の骨の縁部分にあるツボです。目の充血・痛みなどに効果があります。
この他、ギュッと強くまばたきをするだけでも血行が改善されます(目だけでなく、顔全体を中心に寄せるよう意識すると効果が高まります)。
4. 睡眠を十分に取る
睡眠中は副交感神経が優位になるため、血管が拡張して血流が良くなります。
反対に睡眠時間が少なかったり、質の低い睡眠しか取れない日が続くと、副交感神経が優位になる時間帯が少ないため、結果的に血行不良となります。(目の下にできる青クマは、血行不良が原因とされています)
量も質も高い睡眠を確保することが大切です。
5. 軽めの運動をする
血行促進が目的であれば、毎日行えるような軽めの運動がお勧めです。散歩やウォーキング、水中ウォーキング、ストレッチ、ヨガ、サイクリング・エアロバイク、軽めの筋トレなどが当てはまります。
6. 体を温める食品を摂る
食品には、体を温めるものや冷やすものがあります。一般的に寒い地域で採れる食材、色の濃い食材は体を温める効果があります。
7. ストレスを発散する
精神ストレスを感じると、交感神経(興奮時に働く自律神経)が優位になるため、血管が収縮します。
それが長時間続くと血流の低下を招きます。自分なりのストレス解消を複数持ち、こまめに解消するようにしましょう。
8. たばこを止める・減らす
たばこに含まれるニコチンには毛細血管の収縮作用があるため、血流が低下します。
9. アルコールの過剰接摂取をしない
少量のアルコールは血流を促進してくれます。しかし、過剰摂取になると反対に血管を収縮させて体を冷やすため、適量を心がけましょう。
10. カフェインの過剰摂取をしない
カフェインには興奮作用や血管収縮作用があるため、過剰摂取は血流が阻害されます。カフェインはコーヒー、紅茶、緑茶、栄養ドリンクなど様々な飲み物に含まれています。
しかし、好んでこれらの飲み物を飲む人にとっては、全く飲まないのはかえってストレスとなります。そこで適量を覚えましょう。
一般的に、体重40kgの人が摂っても安全とされる1日のカフェイン量は228mg、体重60kgで342mg、体重80kgで456mgとされています(欧州食品安全機構より)。
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