動けない!恥骨骨折のつらい症状【治療やリハビリも徹底解説】
<監修医師 豊田早苗>
もしも恥骨を骨折してしまったら、どこがどのぐらい痛むのでしょうか。
病院に行くのもためらわれるような場所という気がしているかもしれませんが、恥骨の場所をきちんと言えますか?
恥骨骨折の発生原因やその症状・治療法などについて詳しく解説します。
気になる所から確認してみよう
恥骨は骨盤の一部
上半身と下半身の間に存在して内臓を守っている骨盤は、体のバランスの要となっています。
骨盤は様々な骨や筋肉・靭帯で形成され、脊柱と大腿骨の間で体を支える役割を持っています。
左右に一対ある寛骨と仙骨・尾骨で形成されていますが、寛骨は腸骨・坐骨・恥骨が成長とともに一体化することで一つの骨になります。寛骨が上半身と下半身をつないでいる骨です。
骨盤には3つの関節があり、一つは有名な股関節です。他には恥骨結合と仙腸関節があります。複雑な形状で、どこか一つにわずかなアクシデントがあっても人間の身体は不安定になってしまいます。
股関節についてはこちらを参考にして下さい。
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年齢も関係する恥骨骨折の3つの原因
恥骨骨折の原因について見ていきましょう。
事故による外傷
自動車事故や高所からの落下事故が原因の多くを占めています。外から加わる打撲などの「外力」による骨折です。
スポーツなどにより発生
ラグビーなどのような直接体をぶつけ合ったり転倒することの多いスポーツ外傷としても恥骨骨折が発生します。
骨粗しょう症によるもの
高齢者に多く見られる骨粗鬆症は骨密度が低下して骨がスカスカになっていきます。
介護現場でもこの骨粗しょう症が問題視されるほど多くの人に見られるようになっています。
何もない平坦な床で転倒することでの骨折もありますが、骨粗しょう症では歩いただけでも恥骨骨折を起こすことがあるのです。
骨密度の著しい低下は、歩行時の足の裏から伝わる衝撃に耐えることができなくなるのです。
骨粗しょう症についてはこちらも参考にして下さい。
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男女問わずつらい!恥骨骨折の症状に要注意
恥骨骨折は様々な症状が起こります。軽い症状ならまだしも、重篤なものもあるのです。
骨折自体が激痛を伴うものですが、恥骨骨折では疼痛も起こり痛みで歩行困難や運動麻痺に陥ることがあります。
恥骨は内臓を包む骨盤なので、骨折の仕方によっては尿道損傷により泌尿器系に合併症があれば血尿が発生したり、骨盤内出血を起こすこともあります。
特に気をつけなければならない重篤な症状として出血性ショックが挙げられます。
内腸骨動脈損傷が一度起きれば出血性ショックが起こり、命の危険もあります。頻脈や結膜の貧血がないか注意して経過を観察する必要があります。
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起き上がって自分の足で歩けるようになるまでに長ければ数週間の期間を要することもあります。
しっかり治療して早期完治を目指そう
たかが骨折と侮れない恥骨骨折、もしも自分の身に起きてしまったら早く治療して1日も早く完治したいですね。
どのような治療法があるのか、見ていきましょう。
薬剤治療と安静
骨折の度合いが軽度であった場合や折れた部位が安定している時には薬剤が処方されます。
鎮痛剤や非ステロイド性抗炎症剤の内服と安静が第一段階の治療法です。
歩行器を使ったリハビリ
薬剤の内服と安静では実際筋力が弱くなってしまいます。1週間寝ているだけでも起きて歩くのが一苦労ということもあるのです。
筋力低下を防ぐためにも安静解除になったらリハビリ目的で歩くことを勧められます。でもすぐに体重をかけて歩くことはできないので歩行器を使用することになります。
骨折観血的整復固定術
長い名称ですが、要は不安定な骨折部位を外科手術によって固定する方法です。金属製のプレートやスクリューなどの創外固定器を使って折れた骨を正しい位置に戻して固定します。
出血があれば動脈塞栓術も
量の多少にかかわらず出血があれば、その箇所にも手術が必要です。動脈塞栓術は一例で、出血量が多く下がった血圧を安定させてショック状態から脱することができます。
きっかけなく恥骨骨折を起こす骨粗しょう症とは
骨は成長につれ強度が高まり私たちの身体を支えてくれますが、加齢とともに骨強度は低下していきます。
骨粗しょう症とは骨密度低下及び骨質劣化によりその骨強度が低下する疾患です。平易な言葉で表すと「加齢により骨の強度が低下し、すかすかになる病気」ということですね。
栄養状態や生活習慣にも左右されますが、骨粗しょう症になると弱い衝撃でも骨折して自覚症状がないまま生活をしているということが多々あります。
骨粗しょう症になると折れやすい部分というのがあります。特に背骨や足や手の付け根・関節などです。
背骨は特に自分の体の重さだけで潰れてしまう「圧迫骨折」が多い箇所で、こうなると背筋が曲がり姿勢が変わります。
骨折の痛みを腰痛と勘違いしていることもあるようです。弱った骨に衝撃が加わって亀裂がたくさん入ると「粉砕骨折」になることもあります。
粉砕骨折も骨粗しょう症では多く見られるものですが、数回に分けて手術が必要になったりと厄介なものです。
健康診断で簡単に骨粗しょう症を見つけられるのは「骨密度検査」です。検査内容は骨の中のミネラルを測定するというものです。オプションに記載されていたらぜひ受けてみましょう。
簡単なセルフチェックもできます。
背が縮んだ・閉経した(女性のみ)・些細なことで骨折した・家族に骨粗しょう症の人がいる
いくつ当てはまりますか?この他にも喫煙・飲酒の量が多く年数も長ければ検査を受けてみることをお勧めします。
普段から骨を丈夫にする7つの栄養素を摂取しよう
超高齢社会と言われる現代ですが、骨粗しょう症を起こさずに健康寿命を伸ばせるように日頃から心がけることが大切です。
骨を丈夫にするためには「骨のリモデリング(新陳代謝)」に必要な生活や栄養素を積極的に摂取するように心がけることも重要です。
骨を丈夫にする生活
栄養素よりも、先に生活を見直してみましょう。
適度な運動は骨に直接的な刺激を与える意味でも有効です。強度的にはウォーキングでも十分な効果はあります。
かえって急激な動きのある運動よりもゆっくりとしたストレッチや、テレビを見ながらでもできる片足立ちも簡単にできて良いでしょう。
骨を作るカルシウム
乳製品や大豆(納豆など)・小魚・大根の葉・春菊などに含まれます。
カルシウムを摂取するだけでなく、日光浴をすることで紫外線を浴びてカルシウム吸収を促進しましょう。
日光浴についてはこちらを参考にして下さい。
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骨を丈夫にするたんぱく質
骨と一緒に筋肉も丈夫にするたんぱく質は肉類や魚・卵などに含まれます。
カルシウムを吸収させるビタミンD
シイタケやキノコ・青魚に含まれるビタミンDは紫外線を浴びることで体内で活性型のビタミンDが生成されます。
日頃から日光によく当たっていても、冬場は日照時間が短くなります。そんな時こそビタミンDを積極的にとりましょう。
骨を作り出す力を上げるマグネシウム
しらすや干しえび・ごまなどに多く含まれているので、青菜のおひたしにプラスしましょう。
骨の土台を作るビタミンC
美容効果ばかりが目立つビタミンC、コラーゲンを生成することで有名ですね。
コラーゲンは肌だけでなく骨にも存在することを思い出してください!キウイや柑橘などの酸っぱい果物やじゃがいも・ブロッコリーなどに含まれます。
ビタミンCの効能についてはこちらを参考にして下さい。
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骨にカルシウムを行き渡らせるビタミンK
大葉やパセリ・ほうれん草・ひじきに多く含まれるビタミンKは、カルシウムを行き渡らせ骨の石灰化を促進するための大切な栄養素です。
サプリメントでも補えるコンドロイチン
鳥の軟骨や皮・魚の目玉・うなぎなどに多く含まれていますが食べるのはちょっと大変そうです。
骨折の回復に欠かせないコンドロイチンはサプリメントが多く出回っているので使用してみましょう。
多くとりすぎてはいけない食品
スナック菓子やインスタント食品・カフェインはとりすぎない方が良いとされています。
特にインスタント食品に頼っていると、せっかくのカルシウムを尿から排出してしまう物質が多く含まれています。炭酸飲料などにも注意しましょう。
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