思い通りにならないでイライラする!【これ危険な病気ですか?】
<監修臨床心理士 鈴木崇弘>
人間誰しも物事が思い通りにならなかったら、イライラすることはあります。でも、それが年齢や発達に不釣り合いになってくると障害などの病気を考えざるを得ません。
その考えられる症状や特徴、治療方法などを解説していきます。
気になる所から確認してみよう
思い通りにならない!イライラする!病気なの?!
自分の思い通りにいかずイライラするのは、脳機能の障害かもしれません。大きな特徴として、気分や感情のコントロールが不能で、極めて不安定なことが挙げられます。
ADHDとは、
✅ 不注意 〔 集中力がない 〕
✅ 多動性 〔 じっとしていられない、落ち着きがない 〕
✅ 衝動性 〔 考えずに行動してしまう 〕
という3つの症状が見られる発達障害のことを言い、何らかの原因によって発達過程が阻害され、運動・認知・抑制・言語など様々な機能に障害が起こってしまいます。
多動・衝動性優勢型
自分の思い通りにならないとほんの些細な事でもすぐ不機嫌になり、怒りの感情を爆発させるので周囲からは“キレやすい短気な人”と思われがちです。別名、ジャイアン型と呼ばれます。
不注意優勢型
些細な事で不機嫌になるのですが、気持ちが落ち込んでメソメソしてしまいます。別名、のび太方とも呼ばれています。
混合型
多動・衝動性優勢型と不注意優勢型が混ざったものなので、キレたと思ったら落ち込むというように、過去にあった嫌な体験が些細な事でフラッシュバックして、不機嫌になったりメソメソしたりすることがあります。
思い通りにならないでイライラする5つの特徴
ADHDの方は、ストレスに対する耐性が極めて低いため、人一倍心配性で強い不安感を抱き易いのが特徴で、特に5つの不安が見られます。
心気不安
病気の事を心配しやすい
完全壁不安
何でも完璧に済ませないと気が済まない
対人不安
人間関係に対する必要以上の不安や緊張
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分離不安
親、友人、恋人など、近しい人に依存しやすく自立出来ない
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醜形恐怖・自己臭恐怖
自分の顔や、口臭・体臭などを過度に気にする
ADHDの方はちょっとしたことでメソメソしたり怒りを爆発させますが、長続きしないのが特徴的で、すぐに平静状態に戻り嘘のようにケロッとしています。
本人としては、怒りを爆発させたことすら覚えていない場合が少なくないので、執念深くないのは助かりますが、感情の波が激しく、周りにいる人は一緒にいると疲れるものです。
又、本人は忘れていても相手は傷つく場合もあるので、友人を失ったり、家庭崩壊したりと、人間関係で大変な事が多いものです。
発達障害の5つの種類
発達障害の原因は、主に先天性脳機能障害が原因で起こる乳幼児に起こる発達の遅れで、精神障害や知能障害を伴う場合もあり、症状の特徴により下記のように分類されます。
学習障害(LD)
全体的には知的発達に遅れが見られないものの、話す・聞く・書く・読む・推論する・計算という6つの能力のうちの特定なものだけが習得困難になり、学習障害が疑われる場合があります。
多動性障害(ADHD)
注意欠陥・多動性障害とも呼ばれ、幼少期に落ち着きがない子供は少なからずいますが、周囲との協調性が低く、特に学校生活・社会活動に支障をきたしている場合は、発達障害が考えられ、7歳までの間に注意力散漫、衝動性、多動性(落ち着きがない)といった兆候が現れ、8歳以降も継続している場合は、多動性障害の可能性が高くなります。
広汎性発達障害(PDD)自閉症スペクトラム障害
自閉症、アスペルガー症候群、小児期崩壊性障害といった社会性に関わる発達障害の総称で、9割程度の子供は特定の味覚、音を嫌う、触られる事を極端に嫌うなどの感覚過敏の症状がみられるという報告があります。
又、コミュニケーション・対人関係・社会性の障害・行動にパターン化が見られる特徴があり、記憶力が優れている場合もあります。
自閉症の特徴についてはこちらを参考にして下さい。
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高機能自閉症(アスペルガー症候群)
広汎性発達障害の中で、知能障害はあっても軽度、あるいは知能は高いが特定の物事にだけ異様に熱中する、他人との関わりが苦手、言葉を使ったコミュニケーションが不得意などの特徴を持っている子供は、アスペルガー症候群の可能性があります。
知的な遅れを伴わないにもかかわらず、自閉症的性格を備えている為そう呼ばれています。
非定型自閉症
定期の基準を満たさない特定不能の広汎性発達障害に分類され、アスペルガーの特長も持つのですが、自閉症の特徴である創造性・社会性・コミュニケーションの障害のうち1つもしくは2つを満たさないものも可能性があると思われます。
自閉症の特徴全てに該当するものではないけれど、自閉傾向にある障害が非定型自閉症です。一見症状が少ないので軽そうに見えても、社会生活を営む上では何らかの支障をきたすことも少なくありません。
早期の治療で本年の精神的負担も軽減するため、必要な訓練を受けることが推奨されています。
発達障害の特徴は
✅ 先天性の障害である
✅ 障害は生涯にわたるということ ✅ 障害が発達過程で(年齢とともに)現れてくる |
ということが挙げられます。
ADHDの治療方法!充実した社会生活を。
ADHDには、心理社会的治療や薬物療法など色々な治療方法があります。
ソーシャルスキル・トレーニング
ソーシャルスキルとは、周囲の人々と上手にコミュニケーションをとるための社会的技能の事で、通常は成長と共に自然と身につくものですが、ADHDの子供は元々対人関係や集団行動が上手くいかない為、友達が出来にくく孤立しやすいという傾向になり、益々スキルを習得する機会が少なくなってしまい悪循環に陥ります。
そこで、日常生活の中でも上手に使えるようになることを目的に訓練していきます。
会話のコツについてはこちらも参考にして下さい。
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トークンエコノミー
本人意に反して衝動的に行動してしまうADHDの子供に対し、ごほうびや罰を与えることで条件反射的に正しい行動を身に付けていく行動療法の一つを、トークンエコノミーと言います。
低めの目標を設定し、達成感や自信につなげることが行動の改善に期待出来ます。
認知行動療法
現実の受け取り方や物の見方を「認知」といい、認知に働きかけて心のストレスを軽くしていき”認知の歪み”という考え方のクセを矯正していく療法です。
カウンセリング療法
医師やカウンセラーと話し合って、問題解決をしていこうとする療法です。医師と患者の1対1ではなく、家族や周りの人がサポートすることで問題解決に有効に働きます。
薬物療法
以前は薬による治療は、“リタリン”という薬が使用されていましたが、2008年1月に厚生労働省が実質的に使用を禁止し、現在は2種類の薬が使用されています。
✅ ストラテラ〔アトモキセチン〕
ドーパミンを間接的に増やし、ADHDの症状を抑える作用があり、食欲不振、眠気、頭痛などの副作用がある
✅ コンサータ〔メチルフェニデート〕
ドーパミンを直接的に増やし、ADHDの症状を抑える作用があり、副作用として食欲不振、不眠、頭痛、依存性のリスクが若干ある
患者本人を落ち着かせるために利用されることがありますが、人によって合う合わないがあり、副作用もみられる為、薬に頼り過ぎたり自己判断で服用を止めたりせずに、医師としっかり治療方法を相談した上で、用法用量を守って使用することが大切です。
この2種類の薬が大人に適用されるようになったのは最近で、ストラテラが2012年8月、コンサータが2013年12月です。
二次障害
ADHDの方が適切な治療やサポートが受けられない場合は、主症状とは異なる症状を引き起こしてしまう合併症状があり、これを一般的に「二次障害」と言い、注意が必要です。
※ 文部科学省でも特別支援教育として定義されています。
ADHDとは、年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力、及び/又は衝動性、多動性を特徴とする行動の障害で、社会的な活動や学業の機能に支障をきたすものである。
また、7歳以前に現れ、その状態が継続し、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。
ADHDの診断は症状が出てからなので、治療や療育を始める年齢はまちまちで、一般的に年齢には関係なくいつからでも受けることが出来るので、不安に感じたり、障害に気づいた時点で早めに取り組みましょう。
治療終了と判断される基準は、学校・職場や家庭で様々な困難が十分改善されたかどうか、治療を終了しても長期的に改善状況が続く見込みがあるかが課題で、経過を観察していく中で環境が変わったり状況の変化に本人が適応出来ず、治療を再開することも少なくありません。
一度治療期間を終えても、定期的に医師の診断を受けましょう。
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