柴胡桂枝湯は下痢やインフルエンザに効果的【服用方法も解説】
<監修薬剤師 SKFC>
柴胡桂枝湯は中国古来の医書「傷寒論(しょうかんろん)」「金匱要略(きんきようりゃく)」に収載されている薬です。適応証は中間証から虚証とされ、体力が中くらい以下で肋骨下部の張りがあるかどうか(胸脇苦満)を目安とされます。
風邪をひいてから数日たつのにまだ微熱がある・吐き気や胃痛・腹痛などのお腹の症状が残っている人などに効果があるものです。
この柴胡桂枝湯はインフルエンザや下痢にも効果があると言われ、医療機関で処方されたりドラッグストアでも市販されて広く利用されています。今回は詳しい効果や服用方法を解説していきます。
柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)の4つの効果
漢方薬の柴胡桂枝湯は呼吸器症状をこじらせた時や消化器の症状に用います。数日たっても関節痛の残る風邪などにも効果を発揮します。風邪やインフルエンザ以外にも効果があるのでしょうか。
熱性疾患の解熱効果
感冒・肺炎などが熱性疾患の代表です。
風邪をひいてから日数を経過し、もうそろそろ治るころなのに微熱がひかない時がありませんか?日中は平熱なのにどうも夕方になると体温が上がってくるということもあります。
微熱が下がらない・寒気が引かないなどの症状に効果があります。肺炎などでは熱がかなり上がりますし、治るまでの日数も長くかかるので解熱効果がある柴胡桂枝湯を処方されます。
消化器系への消炎効果
風邪の食欲不振や腹痛・吐き気などには当然効果がありますが、他の消化器症状にも作用します。
胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胆石や胆嚢炎・膵臓炎・肝炎などの肋骨下部を中心とする上腹部の炎症性疾患に効果があります。風邪以外の消化器疾患や胃酸過多症などでも処方される漢方薬です。
鎮痛効果
風邪をひいて熱があったりすると頭痛がしたり関節痛が発生します。柴胡桂枝湯はこの痛みにも効果があります。
解熱鎮痛剤と言えば胃が荒れるというイメージがあります。実際病院で処方される解熱鎮痛剤は胃粘膜保護ができる内服薬と同時に飲むよう処方箋で指示され服薬指導がありますね。
でも柴胡桂枝湯は鎮痛効果を目的に服用しても消化器系の炎症にも効果があるため、胃が弱い・すぐ胃が痛くなるなどの症状が出ません。痛みに効くことから神経痛にも応用されます。
風邪が原因で起きる頭痛や関節痛の対処方法についてはこちらも参考にして下さい。
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ストレス
含まれる生薬の相乗効果によって自律神経失調症の周辺症状やうつ病でも処方されることがあります。ストレスが原因となっている肩こりや不妊などにも幅広く利用されています。
柴胡桂枝湯がインフルエンザや下痢に効果があるというのは、インフルエンザの特効薬と言われる薬では抗ウイルス効果はあるもののその周辺の症状が抑えられないということからです。
特にB型などでは胃腸症状が顕著に現れます。発汗や頭痛・発熱に関節痛などのインフルエンザで特にひどく出る症状を抑えた上に胃腸の症状も軽減させることができるのです。
柴胡桂枝湯の構成生薬はコレ
漢方薬でポピュラーなのは葛根湯や麻黄湯です。あまり有名でないかもしれない柴胡桂枝湯の中身について解説します。
自然の草木から取り出した生薬の組み合わせで作るものが漢方薬です。様々な生薬を組み合わせることで相乗効果などを発揮するように考えられています。
もともとは火にかけて煮出す方法で飲まれていましたが、今では乾燥エキスなどが開発されているので飲み方も簡単になりました。
主成分の柴胡と桂皮
柴胡と桂皮を基礎としてその他の生薬との相乗効果を利用します。柴胡は発熱の緩解や抗炎症作用、桂皮は痛みの発散や健胃作用があります。風邪をひいて胃も悪い場合は葛根湯よりも桂皮が配合された柴胡桂枝湯の方が向いていると言えます。
黄ごん
柴胡と黄ごんを組み合わせると炎症を抑える効果や解熱・抗菌の作用を発揮します。炎症物質の生産阻害や肝障害の予防、胆汁の排泄を促進することによる利胆作用があります。
芍薬・甘草・大棗
柴胡と芍薬・甘草・大棗は自律神経の調整をし鎮静作用を発揮します。大棗にはイライラや不安・憂鬱感や緊張感を鎮める効果があります。
また、芍薬は痛みを取る作用や強壮作用があり、漢方処方で最も使用される生薬の一つです。筋肉の硬直や腹部膨満感・頭痛や血の巡りが滞っている時に効果があり、甘草は解毒作用や炎症を抑える作用があります。
半夏・生姜
半夏と生姜は神経に働きかけることで吐き気や胸のつかえ感を緩和して胃の蠕動運動を調整する効果があります。鎮咳作用と痰の抑制にも効きます。桂皮と生姜により悪寒や身体の痛みなどの症状を汗を出して発散させることで緩和します。
人参
滋養作用のある人参は上腹部のつかえを取り、全身の力を高める「補気」という作用があります。
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柴胡桂枝湯の4つの副作用
多くの成分の相互作用により幅広い疾患の治療に使用される柴胡桂枝湯は副作用が少ないことでも知られています。しかし、少ないということは全くないというわけではないのです。
薬には良い作用があれば逆の不利な作用も必ずあるのです。現在服用中の薬や治療中の持病などはきちんと事前に相談しておきましょう。
比較的軽い副作用
服用初期に見られる比較的軽い副作用があります。胃の不快感から起こる吐き気や食欲不振、便が緩くなったり下痢になったりすることがあります。
また皮膚症状として発疹やかゆみ、頻尿や排尿痛・残尿感や若干の血尿など膀胱炎に似た症状が起きることがあります。
飲み合わせによる副作用
複数の薬剤を同時に飲んだり少量でも長期間併用していると飲み合わせによっては副作用が発生します。
柴胡桂枝湯は甘草が配合されているため、同じ甘草が含まれる薬剤を併用することにより「偽アルドステロン症」と呼ばれる症状が出ることがあります。浮腫みを生じたり血圧が上がったり体重増加などが顕著に表れる場合は医療機関で相談してください。
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間質性肺炎
肺が炎症を起こす副作用で発熱・空咳が主な症状で、服用開始から半月から1か月ほどで見られることがあります。風邪の症状と似ているので注意しましょう。
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肝機能障害
肝臓の疾患を治療中だったり体力が落ちている場合、また飲酒量が多く肝臓が弱っている時には副作用が起きやすくなります。
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