産後の不正出血の5つの原因【鮮血や腹痛が起こる理由はコレ】
<監修医師 Dr.masa>
不正出血は女性なら経験のある人も多いのではないでしょうか。出産後に不正出血が起こることは多いとされていますが、放っておいて大丈夫なものと、すぐに対処しなくてはいけない危険なものがあります。
出産後は女性にとって、とても大切な時期ですし、初産ともなれば特に心配になってしまうと思います。
産後に起こる不正出血の原因と種類について、参考にしてみてください。
不正出血とは
不正出血とは
不正出血とは、生理や出産などの正常な理由がない時に起こる出血のことを指します。
子宮や膣の傷、炎症、ストレスやホルモンバランスの乱れ、排卵日の前後など、不正出血が起こる原因は人によってバラバラ。
また出血量も、茶色いおりものが出る程度から月経時と同じような赤い出血が出る人まで様々です。
産後に出血!生理?それとも不正出血?
妊娠すると生理が止まる、というのはご存知のことと思います。これは卵巣の機能が停止するからで、出産後しばらくするまでは再開されません。
本来、授乳中はプロラクチンというホルモンが生理を抑制するため、身体が母乳を作っている間は生理が始まらないことが多くなっています。
母乳の出る時期についてはこちらを見て参考にして下さい。
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しかし近年では、完全ミルクでの授乳や栄養バランスが整っていることなどの理由から、産後1か月ほどで生理が始まる人も増えてきています。
このように、産後の生理開始はホルモンバランスによるものなので、例えば帝王切開で体に負担がかかっているから遅くなっているという判断はできません。
また生理が再開するにあたって、卵巣機能のホルモンバランスの切り替えが不安定になるため不正出血も起こりやすくなっています。そのため産後1年ほどは気をつけておくに越したことはありません。
不正出血の中には、大量出血を起こして命の危険にさらされるものもあります。「このくらいの出血なら大丈夫、生理が始まったのかも…」なんて自己判断は危険です。
出血の状態をよく観察して、必要とあればすぐ医師に相談できるようにしておいてください。
妊娠中の不正出血
妊娠中でも不正出血は起こることがあります。その場合、子宮外妊娠や流産の危険性があります。速やかに産婦人科に連絡してください。
不正出血の5つの原因
機能性出血
女性ホルモンの分泌のバランスによるもので、さほど心配しなくて大丈夫です。女性なら誰にでも起こり得る可能性があり、無排卵月経や産後のホルモンバランスの乱れが影響して不正出血を起こすことが多いです。
比較的短期間で終わるものですが、何度も繰り返す場合には、黄体ホルモン剤やピルの服用をします。
中間期出血
これもまた女性ならば経験することの多い、ホルモンバランスの乱れによるものです。エストロゲンという女性ホルモンが減少することが原因で、生理と生理の中間にある排卵日付近で少量の出血をします。
生理現象の一つなので心配はいりませんが、基礎体温や生理周期を把握しておくと安心かもしれません。
エストロゲンの効能についてくわしくはこちらを見て参考にして下さい。
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出産後の症状
出産後しばらくは、子宮口が柔らかく開いていることが多くなっているため、どっと出血することがあります。だんだんと子宮口が閉じてくれば治まるものなので、基本は経過観察で大丈夫です。
要注意その1 膣内の傷
出産の際についた膣内の傷が治っていなかったり、肉芽という赤い盛り上がりになっていたりすると出血することがあります。
注意したいのは、ホルモンバランスが崩れたり、細菌の侵入によって膣炎や膣部びらん、子宮頚管ポリープなどになってしまうことがあるということ。気になる症状があれば、一度診察を受けておくと安心です。
要注意その2 がん
不正出血で注意しなくてはいけないのは、子宮頸がんと子宮体がんの可能性です。恐らく皆さん出産前に検査はしていると思いますが、妊娠出産の間に1年近くが経過しています。
がんは命に関わるため、出産後にももう一度受けておくと安心でしょう。
子宮頸がんは初期症状がほとんどなく、数年経ってから、不正出血や茶色のおりもの、下痢や下腹部痛、体がだるいといった症状が現れます。
風邪の症状と間違えやすいのですが、20~30代に多いがんのため、出産の有無に関わらず検診は受けるようにしましょう。
対して50代からの発症率が高い子宮体がんは、初期から不正出血が見られる人が多いです。閉経後でもダラダラと出血が続くようならば再度検診を受けたほうが良いでしょう。
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こんな症状は危険かも!
長引く出血
出血がいつまでも続く、少なくなるどころか多くなった。そんな時は急いで病院に行ってください。最悪の場合、大量出血によるショック状態を引き起こすこともあります。
赤黒い出血と共に、下腹部痛がある場合には要注意です。
出産で胎盤が剥がれた際に、その下の血管がいつまでも塞がらない「弛緩出血」は、子宮の収縮が上手くいかなかったり、出産で子宮に負担がかかり過ぎたりした時に起こります。
放置すると、血が固まりにくくなって、止血剤を投与しても出血が止まらなくなる、なんてこともあります。
本来は排出されるはずの胎盤が残ってしまうことで起こる「胎盤遺残」。何らかの理由で子宮壁に付着したままになっていて、退院してから剥がれ落ちることもあります。出血と共に大量の悪露が出ることもあります。
鮮血が出る
真っ赤な鮮血が出る場合、まずは生理が再開した可能性を考えます。しかし、出血のほかに発熱や痛みなど他の症状がある場合には病気の可能性を疑いましょう。
悪臭のする悪露と38度以上の高熱、それに加えて腹痛や腰痛がある場合には「子宮内感染症」。これは膣内の傷に細菌が感染することで起こります。
大量出血に真っ赤な悪露も混ざる場合には「胎盤ポリープ」。これは子宮内に残った胎盤にできるポリープで、流産の後でも出来る可能性があります。
生理が重くなった
妊娠前よりも出血量が多くなったり、生理痛が痛くなったり。生理の諸症状が重くなったと感じる場合には、「子宮内膜症」が疑われます。
最近では妊娠前の女性にも増えてきているため、耳にする人も多いのではないでしょうか。
内膜という組織が、本来あるところ以外にもできてしまう病気で、激しい生理痛に伴って、腰や股関節に痛みが広がることもあります。
妊娠前から発症している人だと出産後にさらに悪化することもあるので注意してください。
悪露にも注意
悪露とは、出産後の残留物の総称です。子宮内に残った胎盤や各組織が約1か月に渡って少しずつ体外へと排出されていきます。
悪露は時間経過とともに色や量が変わっていくので、そのことを頭に入れておくと慌てずに済むかもしれませんね。
✅ 2~3日:赤い悪露が大量に出る。
✅ 4~7日:茶色くなり、量も少しずつ減っていく。
✅ 10日前後:黄色くなり、血液はほとんど混ざらなくなる。
✅ ~3週間:だんだんと白へ、普段のおりものと変わらなくなってくる。
これはあくまでも目安です。人によって経過は違うので、自分の悪露の状態は常にチェックしておきましょう。
また、あきらかに混じる血液量が多かったり、血の塊のようになっていたり、悪臭がするなどの異変がある場合には注意が必要です。
1か月以上経っても悪露が出続ける場合にも他に病気が隠れている可能性があります。
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不正出血と生理の見極め
不正出血と生理、そして悪露の見極めは難しくなっています。
妊娠を考え始めると気にする人も多いかと思いますが、まずは基礎体温をしっかり計るようにし、自分の排卵期を予測しておくと安心でしょう。
自分の大体の生理周期も把握しておければなお良いですが、最近ではストレスによる生理不順に悩んでいる人も多いかと思います。
ただの生理不順なのか不正出血なのか見分けるには、普段の生理の時の状態と比較してみるのも一つの手です。
出血の量や色、臭いなど何か普段と違うことがある場合は、自分で判断せずに病院で相談しましょう。生理痛が時間と共に増していく時にも何か病気が隠れている可能性があります。
産後の生理の再開では、産前と同じように「あ、生理始まるかも」といった兆候を自分で感じる人が多いそうです。
生理前は自律神経が乱れやすいためイライラや頭痛、また腹痛、腰痛、吐き気、下痢、便秘などの兆候があれば生理がまた始まるのかもしれないと判断しても良いでしょう。
基礎体温から見る身体の変化についてくわしくはこちらを見て参考にして下さい。
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女性にとって大切な時期なので
産後は慣れない育児に加え、家事や仕事をすぐに再開する人も多く、ストレスが溜まりやすくなっています。ストレスが溜まると必然的にホルモンバランスも乱れ、不正出血を起こしやすくなります。
疲れやすい時期だからこそ、睡眠はしっかり取りたいですね。赤ちゃんと同じタイミングで一緒に寝ると良いかもしれません。また、栄養バランスの取れた食事を心がけ、心身ともに健康を保ちましょう。
これから赤ちゃんを育てていくお母さんの健康が何よりです。不正出血はもちろんのこと、他にもちょっと風邪を引いたなど、体調不良を感じたら遠慮せずに医療機関を受診しましょう。
今回ご紹介したものはほんの一部、自己判断で解決してしまうのは危険です。
これから2人目、3人目を考えている人はもちろん、出産経験のない女性でも、少しでも気になることがあれば必ず医師に相談してくださいね。
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