肘の骨折の4つの症状【手術方法やリハビリの治療期間をチェック】
<監修柔道整復師 岡部大輔>
肘の骨折は、小さい子供にはよく見られる症状です。
しかしきちんとどのような症状が出るか把握していなければ、気がついたときには骨がおかしなくっつき方をしており思わぬ後遺症を発症している、なんてこともあります。
そこで今回は肘の骨折の症状について解説します。あわせて手術方法やリハビリの治療期間をチェックしましょう。
肘の骨折の症状
骨折の症状ですが、初めて骨折する人は意外と「まさか骨折しているとは思わなかった」という場合が多いのです。しかし骨折は早期処置が重要です。
すぐに対応できるように、まずは骨折が疑われる症状がどのようなものか解説します。
痛みを感じる
骨折すると、原因となる部分が痛みます。
痛みを感じる箇所の周囲を軽く叩いてみて、その箇所に限局した痛みがある場合骨折が起きている可能性があります。
外から見て異常が何もなくても、痛みを感じる場合は身体からのSOSと受け取って、早急に医療機関を受診しましょう。
また転んだりぶつけたりした記憶はどこにもないのに痛みを感じる場合は病気が原因かもしれません。病気が原因で骨折が起きることを「病的骨折」と呼びます。骨粗鬆症が主な病的骨折の原因として考えられます。
また骨を折っていなくても、疲労骨折で生じた細かなヒビが放置されたことにより骨折症状を引き起こす場合もあります。
変形する
皮膚の上からでもハッキリと分かるほど、患部が突きだしていたり骨が飛び出す場合を「変形」と呼びます。押さなくても骨折したことがハッキリと分かるでしょう。
また関節以外のところで骨が動いたり曲がったりする「異常可動性」がみられる場合もやはり骨折しています。
内出血を引き起こす
骨折すると、患部周辺で出血が起きます。
事故などに遭い大量出血を起こした場合は骨折も出血もどちらも命に関わる問題ですから、迷わずに救急車を要請しましょう。特に大量出血に伴い低血圧や目眩、意識消失には要注意です。
逆に本人も気付かないような骨折の場合、骨折してから3日ほど時間をかけてゆっくりと内出血が痣のように皮膚に浮かび上がってきます。
さらに出血量が少ないと、痣のような内出血も見えにくく、内出血から骨折に気がつくことはあまり多くありません。
内出血についてくわしくはこちらを見て参考にして下さい。
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肘関節部分が腫れる
骨折した瞬間はなんともありませんが、時間が経つと共に骨折した部位が腫れ上がります。これは内出血や炎症が原因です。
特に貧血症状が出ている場合は危険ですので、速やかに医療機関を受診しましょう。
貧血症状についてくわしくはこちらを参考にして下さい。
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肘を骨折!応急処置の方法
肘を骨折して医療機関で処置を受ける前にできる応急処置があります。骨折の状態を悪化させないためにも、非常時の備えとして覚えておきましょう。
冷やす
骨折した直後ではまず、患部を冷やすことが重要です。袋に氷を入れ、患部にあてましょう。凍傷が気になる場合は、洋服の上かタオルで患部を巻いてから冷やします。
固定する
肘を固定することで、骨折部分を安静に保ちます。添え木があれば肘にあて、包帯や布で固定しましょう。きつく縛り上げすぎて血行を阻害しないようにするのが重要です。
固定する際は可能な限り心臓より高い位置で固定するといいでしょう。心臓より高い位置で固定することで、出血や腫れの症状を抑えることが可能です。
また三角巾を用いて上から吊して支えるのも有効です。スカーフや手ぬぐいなどで代用することも出来ますので、緊急時には役立ちます。
折れた骨が動くと内出血が拡大しリスクが増すので、とりあえず動かないようにすることが大切です。
止血方法についてはこちらを参考にして下さい。
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応急処置後の対処方法
応急処置を済ませたら、まずは医療機関を受診し専門的な治療を開始させましょう。あくまで応急処置はこれ以上症状を悪化させないための手段です。そのままだと治癒になりません。
レントゲン検査やMRIを用いて怪我の程度を調べ、然るべき処置を受けます。
肘の骨折の治療方法
具体的には肘の骨折はどのように治療するのか解説します。
治療の方針を決定する
まずは病院で検査を行い、骨折の症状に応じた治療を行います。肘の骨折にはどのような種類があるのか解説します。
【上腕骨顆上骨折】(じょうわんこつかじょうこっせつ)
肘の骨折で最も多いのが、この上腕骨顆上骨折です。
子供の肘の骨折の約80%がこの上腕骨顆上骨折と分類されるほど多い症状と言えます。鉄棒やすべり台で遊んでいた際の転倒で起きる場合がほとんどで、強い痛みの他に顔面蒼白といった症状が出ます。
上腕骨顆上骨折を起こしたらまずは添え木で固定し、なるべく早く医療機関を受診します。
もし固定がきちんとなされていないと、骨が曲がったままつながる「変形治癒」が起きます。変形治癒の程度がひどいと手術を行わなければ治せなくなります。
また放置すると神経麻痺が起き、重症化することがあります。
【上腕骨外顆骨折】(じょうわんこつがいかこっせつ)
上腕骨顆上骨折の次に多い肘の骨折症状となります。転倒した際に手をつくことで発生することが多い肘の骨折です。
成長軟骨の損傷ですので、治療がうまくいかないと成長障害が起きやすくなるため治療は慎重に行われます。
【上腕骨内上顆骨折】(じょうわんこつないじょうかこっせつ)
関節内部で起きる骨折で、やはり成長軟骨に損傷が起きるので治療は慎重に行う必要があります。この症状が起きるのは非常に稀です。
【上腕骨内顆骨折】(じょうわんこつないかこっせつ)
通常、肘関節を脱臼するとじん帯を損傷します。しかし子供の場合はじん帯ではなく肘関節に骨折が起きます。
骨折自体の治療難易度は高くありませんが、肘関節近くに通る尺骨神経を傷つける可能性があり、骨折の程度により手術が行われます。
【上腕骨遠位骨端線離開】(じょうわんこつえんいこったんせんりかい)
成長軟骨を横断して引き起こされる骨折です。脱臼と間違われることも多い症状です。
【尺骨肘頭骨折】(しゃくこつちゅうとうこっせつ)
成長線の骨折ですが、通常ではギプスをはめておけば治ります。
手術療法
手術を行い、体内での骨のズレを矯正し骨を固定する外科的治療手段です。
固定に用いる道具は様々で、金属製のピン・ワイヤー・プレート・ロッドなど、骨折の程度に応じて使用されます。金属とはいえステンレスやチタンで出来ており、衛生的かつMRIの撮影にも耐えうるように設計されています。
固定の仕方にも色々とありますので解説します。
【プレート固定】
骨折した部分に金属プレートを当て、ネジで骨に固定する。
【ピンニング】
先端が尖っているKワイヤーを用いて固定する方法。骨に直接指したり、皮膚の上から指す場合もある。
【髄内釘固定】
比較的大きな骨が折れた際にとられる方法。骨折部を切開せず、髄腔に骨端から長いロッドを打ち込み固定する。
【肘頭骨折の場合】
細い針金で患部を巻いて固定する。
ギプスで固定する
手術を行わず、骨折した部位を外から固定する方法で保存的治療です。二の腕から手までの長い範囲をギプスで覆い、肘を伸ばした状態で固定します。
ギプス部分はかつては石膏が中心でしたが、最近では軽くて丈夫なグラスファイバーが主に使用されています。ただし細かな調整が必要な骨折には、今でも石膏が使用されます。
入院
軽症の肘の骨折であれば検査を含めて1日で処置は終わります。
ただし重症の場合は、一ヶ月ほど入院して経過を見る必要があります。入院期間が長いと、リハビリも必要になります。
入院費用に関してはこちらを参考にして下さい。
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肘の骨折のリハビリ治療期間はどのくらいか
肘の関節部分を骨折した場合、正しく骨がつくまでは関節は動かせません。すると固定期間が長くなれば長くなるほど、筋肉が衰え関節が動かない状態に陥ります。
筋肉を回復し、可動域を広げるためにはリハビリが重要です。関節と筋肉の回復に必要なリハビリについて解説します。
必要な期間
肘の関節や筋肉のリハビリは、治療方針によって必要な期間が変わります。外科的治療を行う場合、直接骨を固定しているので回復は早くなります。
そのためリハビリにも比較的早い段階で移行できるため筋肉の衰弱が少なく、2~4ヶ月のリハビリ期間で済みます。保存的治療の場合は、身体を切り開かないかわりに時間がかかります。固定には約1~2ヶ月ほど必要です。
そのため筋肉の衰えは外科的治療よりも激しくなり、リハビリには3~6ヶ月ほどかかります。
肘の骨折のリハビリ方法
よく行われている肘の骨折のリハビリ方法は、二人で行います。
まず相手に関節が動かないようにおさえてもらいます。そのまま自力で動かせるように筋肉のトレーニングを行います。力を抜くとパートナーが少しづつ関節を動かし、徐々に可動域を広げていきます。
また肘の骨折が完全に治る前から出来るリハビリもあります。これは、患部周辺の筋肉を動かすことで、肘の筋肉のリハビリをスムーズに行うための準備運動にあたります。
肘の骨折のリハビリに必要なこと
リハビリには必ず、医師や専門家の助力が必要です。
無理に自己流でリハビリを行うと、きちんと治らないばかりかうまく骨が繋がらず、おもわぬ後遺症を発症する危険性もあります。必ず医学的指導の下行いましょう。
肘の骨折の症状と手術方法、リハビリの治療期間についてお伝えしました。骨折は早期治療が回復期間を縮める肝です。
しかし子供の場合、大人ほど明白に骨折を自覚できず、処置が遅れて後遺症が残りがちです。保護者がいちはやく気付くように配慮し、医療機関で適切な治療を受けるようにしましょう。
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