肝臓の痛みのコノ症状に注意【原因や位置をしっかり知っておこう】
<監修医師 吉野 聖奈>
肝臓の痛みのその症状、実は注意した方がいいかもしれません。ギリギリ限界まで頑張って稼働してくれる肝臓のSOSは実は気付きにくい、うっかりすると手遅れになってしまうこともあります。
そこで今回は原因や位置をしっかり知っておいて、いざという時の肝臓の痛みに対処できる方法について解説します。
肝臓は重要な臓器
肝臓は主に体内を循環する物質を化学反応を起こすことで変換する機能を担う臓器です。具体的にはいったいどのような働きを担っているのかまずは解説します。
代謝
普段私たちが口にする食べ物や飲み物は体内に入ると消化器官で分解されていきます。そして肝臓に到達する頃には糖・たんぱく質・脂肪に変わっています。
肝臓はこれらの成分を受け取ると貯蔵します。そして身体がエネルギーを必要とする事態になるとエネルギーの原料として供給する役割を担っています。
またエネルギーを蓄えるだけではなく、身体にとって必要不可欠なタンパク質をアミノ酸から作り出し、肉・骨の形成に寄与しています。
解毒
体内の有害物質を分解することで、無毒化する働きがあります。
私たちの身体の中では摂取した物質を様々な形で化学変化させながら使用しますが、その過程で老廃物が生まれたり、使い切れない薬やアルコール、ニコチン、身体に摂取できないその他の有害物質が体内を循環しています。
これらが体外に排出されず蓄積すると、体調を崩す原因となります。そのため肝臓ではこれらの有害物質を処理してくれる重要な器官といえます。
ニコチンについてはこちらを参考にして下さい。
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胆汁の生成と分泌
肝臓では胆汁が生成され、胆管を通して胆のうへと分泌されます。胆のうに貯蔵された胆汁は濃縮され、必要に応じて十二指腸へと送られます。
胆汁の主な役割は脂肪やたんぱく質の分解を助けることと、脂肪の消化吸収をサポートすることです。
肝臓が悪化?こんな症状には注意して
肝臓は別名「沈黙の臓器」と呼ばれます。約85%の機能を失っても人体を稼働させるのに必要な機能を果たすほどタフで、破壊されても再生する力が強いためです。
ただし自覚症状があまりない分、気がついたときには手遅れなほど疾患が悪化している臓器でもあります。
定期的な検診で異常がないかをチェックする必要がありますが、肝臓が悪化したときに現れる特定の症状もありますので解説します。
目や肌の色が変色している
一見してすぐに肝機能の障害が分かるのが、この「黄疸」(おうだん)という症状です。文字通り皮膚や眼球の白目部分が淡黄色に変色して見えます。
最も変化が分かりやすいのが眼球の白目部分で、この白目部分が黄色に変色したら間違いなく肝臓に異変が起きているとみていいでしょう。
これは肝臓の機能低下により胆汁の分泌が滞り、老廃物の一つであるビリルビンが血液中に増加したためです。ビリルビンは黄色の色素を持っているため、皮膚や顔色に変化が現れます。
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倦怠感や眠気
肝臓の機能が低下すると、代謝や解毒機能が低下します。飲酒した際のアルコールはもちろん、ブドウ糖や乳酸菌といった体内の疲労物質も解毒されず代謝機能が落ちます。
すると当然身体の疲れはとれず倦怠感や眠気におそわれ、作業効率が落ちます。
手足のむくみ
肝臓の機能の一つに、「細胞間の液体量を調整する物質を分泌する」というものがあります。この調整物質をアルブミンと呼びますが、肝臓の機能だダウンするとこのアルブミンも分泌されません。
その結果、細胞間に液体が増えすぎてしまい、手足のむくみにつながります。
右肩だけのこり
肝臓は横隔膜の下にあり、肝臓に異変が起きると横隔膜も影響を受けます。横隔膜に生じたトラブルは右側の大胸筋に伝わるため、右肩だけがこるように感じるのです。
思い当たる理由がないのに右肩だけ妙に痛む場合は要注意です。
また肝臓に連なる胆のうに異常が起きた場合は腹部の張りが発生します。胆のうは肝臓と密接な関わりのある器官であり、やはり身体の右側に異常がでます。
通常の肩こりと内臓由来の肩こりを見分けるためには、まずは通常の肩こり解症方法を試すことです。肩こりは血行不良が原因であることがほとんどです。
首筋や痛点をあたためてみて、それでも効果がなければ医療機関を受診しましょう。
肝機能低下による症状についてくわしくはこちらを見て参考にして下さい。
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肝臓の疾患はここに痛みが出る!
腹膜という膜に覆われています。そのため、肝臓の疾患が発生すると肝臓そのものが痛む前に関連する部位が痛むことが多いのです。どの位置がどのように痛むかを解説します。
右側上部
肝臓はお腹上部の右側に位置しています。そのため肝臓疾患を引き起こすと、身体の右側、特に上半身の肩甲骨下部あたりが痛むのです。
胃痛
胃痛の場合、どうしてもお腹を壊したのではないかと勘違いしてしまいますが、胃と肝臓は隣接しているため肝臓の疾患が原因で胃の辺り、みぞおちが痛く感じる場合があります。
腹痛
肝硬変や肝臓の腫れが原因でお腹が痛くなります。更に便秘や下痢といった症状が出てくることもあります。
右側腰痛
肝臓や胆のうの機能に支障が出ると、右側の腰痛が出ます。
右側の背の痛み
寝ていても背中の右側が痛むようであれば、肝臓由来の疾患が原因である可能性があります。
しこり
肝臓がんを発症すると、身体の上から肝臓の辺りにふれるとしこりが分かります。
肝臓が痛い時の原因
肝臓がはっきりと痛む場合、肝機能障害が起きるレベルの疾患が起きていることはまず間違いありません。すぐに医療機関で診察を受け、適切な治療を受けましょう。いったいどのような疾患の可能性があるのか解説します。
アルコール性肝障害
肝臓はアルコールを解毒してくれる器官ですが、その機能を上回る大量の飲酒を行えば肝臓そのものに負担がかかります。
ただし肝臓は非常に快復力の高い器官です。
健康診断などでアルコール性肝障害を指摘されても、初期段階であれば休肝日を設けたり飲酒量を抑えることで脱出することが出来ます。
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脂肪肝
脂肪肝とはいわゆる「フォアグラ」状態になってしまった肝臓を指します。中性脂肪の溜め込みすぎで肝臓が肥大化した状態で、放置していると肝硬変を引き起こす危険性があります。
中性脂肪は主に動物性脂肪に多くみられます。日本人には比較的多く見られ、全体の25%が脂肪肝であるという調査結果もあります。
原因は脂っこい食べ物の食べ過ぎですが、糖質の過剰摂取や極度の運動不足も症状に拍車をかけています。日常的に過食が多いひとは要注意です。
典型的なメタボリックや肥満といった生活習慣病の予備軍とも言えます。また極端なダイエットも脂肪肝を引き起こす場合があります。
糖原病
糖原病は糖の代謝を担う酵素に異常が起き、うまく循環できなくなった結果グリコーゲンが臓器に蓄積される病気です。糖を一時的に貯蓄する肝臓も影響を受けます。
なぜ酵素に異常が起きたかという原因によって症状も異なり、低血糖や高脂血症(脂質異常症)、高尿酸血症といった症状が引き起こされます。
治療は対症療法が中心となり、食事療法による改善がメインになります。放置すると肝硬変や肝不全といった合併症を引き起こすことがあります。
肝炎
肝炎には大きく分けて「急性肝炎」と「慢性肝炎」の二つがあります。
急性肝炎はウイルス性肝炎とも呼ばれ、原因となるA型・B型・C型が知られています。その他にもアルコールや薬の摂取が原因で幹細胞が破壊され、炎症を引き起こすことで急性肝炎が起こります。
ウイルスが原因の場合はウイルスを撃退すると症状は治まります。
ただし急性肝炎の症状が長引くと慢性肝炎に移行し、回復が難しくなります。約4ヶ月以上症状が続いた場合は、慢性肝炎に移行しつつあると考えていいでしょう。
肝硬変
慢性肝炎がなかなか治らないと、肝臓が硬くなってしまいます。これは、肝臓が破壊と再生を繰り返すうちに、肝臓が繊維状に硬直してしまったためです。
弾力を失った肝臓は機能も低下し、普段ならなかなか表に出ない肝機能低下由来の体調の悪化が自覚できるレベルで発症します。
高血圧
脂肪肝の人は、高確率で高血圧に陥っています。高血圧とは慢性的に血圧が高くなる症状のことで、血管に常に負担がかかるため動脈硬化のリスクが高くなります。また肝硬変にもかかりやすくなります。
また脂肪分の多いものばかり食べていると、肝臓はコレステロールを摂取します。少量であれば身体にとっては必要な物質ですが、過剰に分泌されると血管が詰まる原因となります。
血管が通りにくい状態で高血圧となると、無理をして血流が狭い血管を通ろうとするため、血管破裂のリスクが高まります。
肝臓がん
肝臓に発生した疾患を放置すると、最終的には肝臓がんに発展するリスクが高まります。
アルコールや過剰な脂肪はまさに肝臓がんの危険因子であり、検診で怪しい結果が出た人はしばらく断酒や食生活の改善に取り組んだ方がいいでしょう。
肝臓の痛みと症状からみる、肝臓にまつわる疾患の危険性について解説しました。お酒が大好きで食べるのも大好きな人は、定期的に血液検査を受けると早めに病気を予測できます。
肝臓は沈黙の臓器と呼ばれ、異変を自覚したときにはもう手遅れだったということも珍しくないほど、ギリギリまで堪え忍ぶ器官です。予防と日頃からのケアが重要です。
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