脱腸が男性に多い理由とは【原因や予防法も詳しく解説】
<監修医師 まっちゃん>
脱腸と呼ばれる鼠径ヘルニアは男性に多く発症する病気です。
加齢による筋力低下から、生活習慣の乱れ、職業からくる影響など様々な原因があります。
男性に多い鼠径ヘルニアですが、女性がなることもあり、妊婦さんに多い大腿ヘルニアは嵌頓状態という命に関わる危険性のある状態を引き起こす危険性もあります。
今回は脱腸の種類、原因、手術方法、予防法まで詳しく解説いたします。
気になる所から確認してみよう
脱腸とは
脱腸とは、ヘルニアとも呼ばれている病気です。
乳児から高齢者まで幅広い年齢層の方がかかる病気で、乳児の場合には生まれつきの先天性の原因がほとんどです。特に中年の40代男性に多く見られる病気でもあります。
また大人が脱腸になる原因として、体の組織の衰えが引き起こす場合もあります。
鼠径は脚の付け根の部分のことで、鼠経ヘルニアとは身体の組織が正しい位置ではない場所、特に鼠径部に飛び出す病気のことをいいます。
脱腸・鼠径ヘルニアは、通常お腹の中にある腹膜や腸の一部が鼠径部の筋膜の間から皮膚の下に出てきてしまう病気です。
脱腸は初期症状として腹部に違和感を感じ、やがて脚の付け根である鼠径部のふくらみ、ひどくなってくると痛みを感じるようになり、日常生活に影響を及ぼすようになります。
また脱腸はこの後詳しく説明いたしますが、はみ出す部分によって状態や症状が異なります。
脱腸をそのまま放置することにより、嵌頓状態という、飛び出てしまった脱腸が戻らなくなってしまう状態を引き起こします。
嵌頓状態になると、腸閉塞を引き起こしたり、腸の壊死などにように命に関わる危険性もあるのです。
少しでも異常を感じたら早めに病院を受診し、治療を行いましょう。
はみ出している部分で違う3つの種類
次にヘルニアがはみ出している場所により、脱腸の種類や状態が違うことにについて解説いたします。
大きく3つの種類に分けられ、年齢や性別によっても異なります。少しでも異常を感じたら早めの受診をお勧めします。
外鼠径ヘルニア
脱腸の多くが腹壁外側に出てくる、外鼠径ヘルニアといわれるものです。幼児と成人に多く見られる脱腸で、右側に発症する場合が多いです。
幼児の外鼠径ヘルニアは生まれつきの先天的なものが多く、鼠径管に腹膜の一部の構造が残ってしまったことにより起こるケースが多いです。
成人では、筋トレや仕事などで、重たい物を持った際にその荷物を支えるための腹圧がにより、腹壁外側に腸の一部分が飛び出てしまうことが原因で起こりやすいです。
内鼠径ヘルニア
鼠径部後方の腹壁を腸が突き破ることで、ヘルニアを引き起こします。中年以降の男性に多く見られ、加齢に伴う筋力低下や腹壁組織のゆるみが主な原因です。
大腿ヘルニア
大腿ヘルニアは、女性に多く、出産後の女性や中高年以降の女性に発症します。
鼠径部の下部、脚の付け根の血管の脇へとはみ出してしまうヘルニアです。太ももの筋肉や腹膜が弱くなり、腹膜や腸が出てしまいます。
嵌頓状態
嵌頓状態とは、飛び出した脱腸の部分が元に戻らなくなった状態のことをいいます。
外鼠径ヘルニア、内鼠径ヘルニア、大腿ヘルニアのどのヘルニアでも嵌頓状態になる危険性があります。
特に大腿ヘルニアはこの嵌頓状態になりやすい傾向がありますので、注意が必要です。
嵌頓状態になると強い痛みを感じ、腸閉塞を起こしたり、腸の組織が死んでしまう壊死を引き起こし大変危険です。
嵌頓状態になってしまった場合には緊急手術が必要であり、必要によっては腸の切除、また長期間の入院治療が必要となります。
このような状態になる前に少しでも異常を感じたら、早めに病院を受診してください。
ストレスも関係している脱腸の13の原因
続いて脱腸の原因について解説いたします。加齢による原因から、ストレスまで幅広い原因によって脱腸は起こります。
脱腸を起こさない為にも原因をよく知り、日頃から注意をしていきましょう。
先天性
幼児の脱腸の多くは、生まれつきの先天性の脱腸によるものが多いです。特に外鼠径ヘルニアが多く、男の子に多く見られます。
加齢
加齢による脱腸も多く見られます。
年齢を重ねるごとに筋力低下が進んでいき、腸壁の筋肉や筋膜が衰えてきて、内臓を支えきれなくなってしまったり、飛び出しやすくなってしまうのです。
高齢者の多く方の脱腸の原因は加齢によるものであり、男性に多く見られます。
運動・仕事
脱腸を引き起こす原因としては、運動や仕事にも関係があります。運動をする時に力みすぎてしまったり、腹圧のかかる運動をした場合に脱腸を起こします。
また40代以降の男性に多い原因は、仕事でも腹圧のかかる製造業や力仕事、また立ち仕事をしている人に多く発症しています。
立ち仕事で加齢による筋力低下を起こしている場合には、腹部に負担がかかりやすくなり、脱腸を引き起こしやすくなってしまいます。
妊娠・出産
妊娠中や出産後の女性に多いヘルニアは大腿ヘルニアです。
妊娠中のお腹への圧迫が原因となりますし、出産時には強く力むことで腹圧がかかりまることから、出産後の女性にも多く見られます。
大腿ヘルニアは嵌頓状態を引き起こす危険性も高い病状ですので、特に注意しなければなりません。
合併症
また合併症により、脱腸を引き起こす場合もあります。特に多い病気として、ヘルペスウイルスによるものです。
このヘルペスウイルスによって帯状疱疹と脱腸を引き起こし、帯状疱疹が快方に向かっても脱腸は残ったままとなってしまうのです。
心因性が原因
脱腸の原因として、疲労・ストレス・環境の変化や体重増減によって起きる場合があります。特に人間関係や環境の変化に伴うストレスからの影響が大きく関係しています。
ストレスは万病の元というように、ありとあらゆるところに不調をきたしますので、注意しましょう。
咳き込み
喘息や肺疾患、咳の症状がひどい場合には、咳き込む時にお腹に腹圧がかかり、脱腸を引き起こす場合もあります。
ひどくなる前に脱腸の治療も必要ですが、根本的には咳き込みの原因となっている病気の治療が最優先になります。主治医の先生とよく相談して治療を行ってください。
便秘
便秘症の人も脱腸を起こしやすいので注意が必要です。便秘により腹部が圧迫されたり、排便時にも圧迫がされることで発症します。
便秘には繊維質を多くした食生活への改善や適度な運動、またストレスを溜めないことも大事になってきますので、常日頃から身体をいたわるようにしましょう。
成人男性に多い脱腸。引き起こしやすい9つのタイプ
続いて脱腸を引き起こしやすいタイプについて解説いたします。加齢による筋力低下、仕事上の原因など様々な原因がありますので、見ていきましょう。
40代男性
脱腸は、40代以降の男性に多く起こります。
男性に多いこの病気ですが、40代以降になり加齢に伴い、身体の筋肉や筋膜などの組織が弱くなってきてしまい、脱腸を起こしやすくなります。
また、筋力が衰えてきたにも関わらず、若い人たちと同様な力仕事をするのもこの年代です。
そのため、筋力が衰えてきたなと自覚したら、できるだけ荷物を持つ際には気を付けることが必要です。
男性
腸などが出てくる鼠径管の大きさが女性よりも男性は大きい為、脱腸を起こしやすいです。女性の場合は多くの方が出産によるいきみが原因の場合が多いです。
職業
脱腸と職業にも関係があり、腹圧のかかる仕事、立ち仕事などで脱腸を起こしやすくなります。腹圧のかかる仕事とは、重いものを持ちあげる力仕事や製造業などの仕事です。
また立ち仕事の人で加齢に伴う筋力低下が起きている人は、腹部に負担がかかりやすく、脱腸を引き起こしやすくなります。
便秘症・肥満
便秘症の方は排便時に腹部に圧力がかかることから脱腸を起こしやすくなります。また肥満の方も脱腸を起こしやすい傾向にあります。
食生活の改善や適度な運動などを取り入れましょう。
前立腺肥大
前立腺肥大症や排尿障害のある方、腹部の手術の経験のある方は脱腸を起こしやすくなります。
これらの方は前立腺が腹部を圧迫したり、腹部の手術のために健康な方よりも腹壁が弱くなっていますので、注意が必要です。
ひどくならないように、主治医に相談してください。
生活習慣の乱れ
運動不足や食生活の乱れ、ストレスを溜め込んだり、生活リズムが乱れていることからも脱腸を起こしやすくなります。
食生活の乱れやストレスは便秘や肥満にも繋がりますし、生活リズムが乱れることも関係してきます。
また運動不足により、筋肉や筋力低下を招きますので、適度な運動も取り入れましょう。
咳
喘息や肺疾患、風邪の咳き込みにより、腹圧が絶えず生じることにより、脱腸を起こしやすくなります。咳をすることで腹部の筋肉に負担がかかり、脱腸になりやすいのです。
妊婦
妊娠している時、腹部が圧迫されること、また出産時に非常に強く力むことから脱腸を起こしやすくなります。妊娠中、出産時、出産後に腹圧が高くなりますので、注意が必要です。
さらに女性の場合には、大腿ヘルニアになるケースが多く見られます。大腿ヘルニアの場合は嵌頓状態を引き起こす危険性もありますので、しっかりと病院で受診してください。
脱腸は保存療養より手術での治療が有効的
脱腸、鼠径ヘルニアの治療方法は、根本的に治す為には手術しかありません。
脱腸はそのまま放置しておくと、嵌頓状態を引き起こす危険性もある病気ですので、早めに治療を行いましょう。どんな手術方法があるのか、解説いたします。
バッシーニ法
昔から行われているバッシーニ法という手術方法は、飛び出している部分を切り、周りの筋肉などでふたをして出てこないようにするという方法です。
人工補強材を使用せずに本人の筋肉や筋を引っ張り寄せることから、術後の痛みやつっぱり感が残りやすいというデメリットもあります。その為、安静期間も必要になり入院が必要になります。
メッシュ・プラグ法
メッシュ・プラグ法は、現在最も多く行われている手術方法です。
ポリプロピレン製の傘状のプラグである栓を、腸などが出てくる筋膜の弱くなっている部分に入れ、出てくるのを防ぐ方法です。
バッシー二法よりも腸の切除がない分、患者さんへの負担が軽くなるため、予後が良くなります。
リヒテンシュタイン法
リヒテンシュタイン法は大腿ヘルニアの手術に向いている方法で、シート状のメッシュで鼠径管の後管を覆い、ヘルニア門を閉鎖します。
メッシュ・プラグ法では大腿ヘルニアの手術には不向きなのですが、このリヒテンシュタイン法では大腿ヘルニアの手術に向いていて、再発防止にも繋がります。
クーゲル法、ダイレクトクーゲル法
クーゲル法、ダイレクトクーゲル法はポリプロピレン製のメッシュで、筋肉や筋膜の弱った部分を補強して、腸などが出てくるのを防ぐ手術方法です。
様々なタイプの鼠径ヘルニアの手術方法として用いられます。
これらの手術方法がありますが、メッシュ・プラグ法、リヒテンシュタイン法、クーゲル法、ダイレクトクーゲル法では、ポリプロピレン製のメッシュなどの人工膜を使用して手術を行います。
局所麻酔で行うことができ、身体への負担も少ないため、日帰りでの手術が可能です。傷口も小さく、痛みも比較的少ない手術です。
ただし、日帰り手術であっても感染症などには十分に気を付けなければなりません。傷口が感染を起こさないように、また傷口がふさがるまでは安静にしてください。
また階段の昇り降りや、荷物や重たい物を持つ動作は、腹圧がかかりますので控えてください。また便秘気味などの人は便を柔らかくする薬などを処方してもらい、できるだけ腹圧をかけない生活をしてもらいます。
手術方法や術後の経過に関しては、その人その人の病状や状態によって異なります。主治医とよく相談の上、指示に従って過ごすようにしましょう。
再発は避けたい脱腸の予防法7選
脱腸、鼠径ヘルニアの主な原因は、筋肉や筋力低下により腹膜などが弱くなっていて、そこに腹圧がかかることで脱腸を引き起こします。
その為、腹圧がかかる動作は避けるようにしましょう。最後に日常生活の中でできる、脱腸の予防法について解説いたします。
肥満
肥満により、腹圧がかかっていると脱腸を起こしやすくなります。適度に運動をすることで、肥満を解消できるようにしましょう。
喫煙
喫煙により脱腸を引き起こしやすくなる報告がされています。喫煙により、有害物質が体内に入ることに加え、たんぱく質分解酵素活性異常が起こります。
たばこは身体にとって良いことは何一つありません。禁煙できるようにしましょう。
運動
筋肉や筋力低下、腹膜などの身体の組織が弱くなっていることから、適度な運動が必要です。ただし、腹部にあまり腹圧をかけすぎると脱腸を起こしやすくなってしまいます。
運動不足を解消することは重要ですが、筋トレなどでは激しい運動は避けましょう。ウォーキングやストレッチなどを毎日続けることが効果的です。
また立ち仕事の方はずっと立ちっぱなしでいるのではなく、足踏みなどをしたりして運動不足にならないように気をつけましょう。無理せずに少しずつ日常生活の中に運動を取り入れていきましょう。
咳き込まない
喘息や肺疾患、風邪などで咳き込むことで、脱腸を引き起こします。喘息や肺疾患などの持病をお持ちの方は悪化させないようにきちんと治療を受けてください。
また風邪などを引かないようにマスクや手洗い、うがいを心掛けましょう。免疫力を下げないように、規則正しい日常生活、バランスの良い食生活など生活習慣にも気をつけましょう。
腹圧
腹圧のかかる動作は脱腸を引き起こしやすくなります。仕事で腹圧のかかる動作のある力仕事や製造業の場合は注意が必要です。
仕事上どうしても重い物を持つ時には、息を吐きながらゆっくりと行うようにしましょう。大きく呼吸をしながら行うことで、急激に腹圧がかかることを防げます。
生活習慣
生活習慣の乱れ、食生活の乱れなども脱腸を引き起こしやすくなります。普段からバランスの良い食生活、規則正しい日常生活、適度な運動、ストレス解消などを心掛けましょう。
生活習慣に気を付けることで、肥満解消や便秘解消にも繋がり、脱腸を予防することができます。
トイレ
便秘により、トイレで力むことで腹圧がかかり、脱腸を引き起こしやすくなります。食生活の改善などにより便秘を改善することが大切です。
また腹圧がかかってしまう為、トイレで力み過ぎないように気をつけましょう。
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