膝蓋骨骨折の手術やリハビリ法【治療後に後遺症が残るか心配・・】
<監修柔道整復師 岡部大輔>
転倒や事故によって膝を強打して膝が痛いということはありませんか。
痛みが続いたり、膝が伸びないときはただの打撲ではなく膝蓋骨の骨折かもしれません。今回は膝蓋骨骨折の手術やリハビリ法についてご説明します。
気になる所から確認してみよう
膝蓋骨(しつがいこつ)とは
いわゆる「膝の皿」と言われる膝関節の上にある丸い骨です。膝関節とは人体の中の一番大きな関節で大腿骨と脛骨のつなぎ目をいい、膝蓋骨はその名の通り膝関節に蓋をしているように浮いている種子骨です。
種子骨は手首や足の裏等にある腱の滑りを良くしたり、クッションの役割を果たす骨を言います。
膝蓋骨の役割
1. 膝関節の保護(クッション)
衝撃(主に前方)から膝関節を守る盾の役割をしています。繰り返し行われる関節運動の負担を軽減してくれます。強い衝撃を受けると骨折します。
2. 膝関節の摩耗防止
膝蓋骨がない場合、膝の伸展を行う大腿四頭筋が膝関節に直接あたってしまい、大腿四頭筋が摩耗してしまいます。
3. 伸展の効率化
膝蓋骨があることによって滑車の働きをしてくれます。それにより、膝の進展の効率が50%上がります。
膝蓋骨の脱臼についてはこちらを参考にして下さい。
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膝蓋骨骨折について
膝の外傷の中では比較的多い外傷です。転倒や事故などにより、膝の前面に直接衝撃を受けたり、急激に膝を伸ばしたりすることで骨折します。
膝蓋骨を骨折すると膝を伸ばすことができなくなります。
また足首を上に上げられなくなる下垂足という症状を呈します。
骨折の種類
1. 横骨折
膝を強打することにより膝蓋骨が横に割れた状態です。
ひどい時には膝蓋腱膜断裂も起こり、大腿四頭筋や靭帯が収縮し陥凹(かんおう)します。膝の進展ができなくなる場合は手術をすることもあります。
2. 縦骨折
膝を強打することにより膝蓋骨が縦に割れた状態です。
横骨折とは違い、膝の進展ができなくなることは少ないので、ただの打撲と思われて見過ごされることもあります。痛みや腫れが治まらないときには受診してみましょう。
3. 粉砕骨折
膝蓋骨が3つ以上に割れてしまった状態です。
重症なケースで、特に高齢者は骨密度が低くなっているため、軽い転倒でも粉砕する可能性があります。粉砕の度合いにより手術が必要な場合があります。
膝蓋骨骨折の治療方法
保存療法
骨片がずれておらず、膝の伸展や自動運動が可能な場合は温存療法を行います。ギブスや装具で3~5週間程度固定します。
その間筋力が落ちてしまうのでアイソキネティックトレーニング(筋力維持・強化のための静的筋力トレーニング:筋の長さを変えずに収縮を行う)や固定を外した後のリハビリが必要です。
手術
骨片が離開した場合、粉砕の度合いにより手術が必要になります。手術の種類は後述します。
膝蓋骨骨折の手術方法
鋼線締結法
最もよく使われる方法で、膝蓋骨が2つに分かれた時に行います。割れた膝蓋骨に2本の針金を通し、それを軸にしてキルシュナー鋼線で膝蓋骨を固定します。
周辺締結法
割れた膝蓋骨の周囲を針金で絞めて固定します。固定は骨の上からしか行わないのでしっかり固定できないことと、リハビリでできるようになるまで(骨がある程度つながってから)に時間がかかります。
ひまわり法
粉砕骨折をはじめいろいろな骨折に用いられる方法です。比較的新しい手法です。
多方向から砕けた骨に軸を打ち込み、その軸についた針金を通す穴を使って膝蓋骨を緩まないように縛ります。その形がひまわりの花に似ているため、この名前がつきました。
軟部組織ごとインプラントで固定することができ、手術の翌日からリハビリが可能なため、通常の生活への復帰がかなり早くなります。しかし、手術の難易度が高いことと、高価なのが玉に瑕です。
部分摘出術
細かく粉砕した骨を取り出し、残りの骨をつないで固定します。
全摘出術
細かく粉砕されてしまったり、化膿するなどの原因で膝蓋骨を全摘することがあります。
膝蓋骨がなくなると前述の通り、大腿四頭筋への負担が大きくなりますし、力が入らなくなりますのであまりお勧めはできません。
最近ではキルシュナー鋼線の代わりに中空スクリューを使って固定する方法や周辺締結法で抜釘しなくてよい「より糸」を使用した方法など使われることもあるようです。
膝蓋骨骨折のリハビリ方法
治療目標は3つあります。
1. 膝関節の可動域を正常可動域になるようにする
2. 膝伸展機構の修復 3. 膝蓋骨骨折の関節の修復 |
関節可動域訓練(ROM法)
関節の拘縮(関節の可動域が狭くなったり動かなくなったりすること)を予防し、正常な関節可動域に戻したり、筋肉の短縮の防止、血流の改善などを目的として行います。可動域とは関節の動かせる範囲を言います。
✅ 他動ROM運動
自身で動かすことができない人の場合、介助してもらいながら行います。
補助者が片手で対象者の膝を支えて固定します。もう一方の手でかかとを下から持って膝関節の屈曲、伸展をひと動作5~10秒かけて行います。
このとき、つま先が常に上を向いた状態で行うようにします。回数は1度に10回程度、1日に1~2回毎日行います。
✅ 自動ROM運動
自身で動かせる人は同様の動きを自力で行います。
部分荷重歩行訓練
患肢に体重をかけて歩行できないときにその状況に沿って歩行訓練する方法です。部分荷重歩行とは免荷(荷重を全くかけない状態)から全荷重(通常の歩行状態)に至る途中の状況です。
状況によって訓練方法は違います。その見極め方は、患肢を体重計にのせて量ります。
その計測値から負荷の度合いを決め、歩行訓練を行います。徐々に荷重をかけていきますが、無理をしないよう、コミュニケーションをとりながら進めていくことが重要です。
その他の部位を骨折した場合のリハビリについてはこちらを参考にして下さい。
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治療後に後遺症が残る可能性
通常は3か月ほどで痛みが引きます。
それを過ぎても痛みが残っている場合は骨折の固定がうまくいかず未完治であったり、骨折が完治していても何らかの原因により痛みがある場合があります。
膝蓋大腿関節面の変形
膝蓋骨の表面に何らかの原因で凹凸や棘のようなものができてしまうと膝蓋骨が動くことで軟骨がすり減ってしまい、膝蓋大腿関節症になることがあります。
腓骨神経麻痺
下腿外側から足趾(そくし:足の指)背側にしびれを感じたり、間隔が鈍くなったりします。
腓骨神経は膝の外側にある腓骨頭の後ろを巻き付くように走っています。膝蓋骨骨折の治療時に腓骨頭部が圧迫されることによって起こる場合があります。
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いかがでしたか。膝を強く打って痛みが続くようなときには整形外科などを受診してみましょう。
また、しっかり治さないと日常生活にも支障をきたしますのでリハビリもきちんと行うことが大切です。
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