血糖値が下がると眠気が起こる2つの原因【この対策法でスッキリ】
<監修医師 田中 恵文>
仕事中、昼食後の眠気に困ることはありませんか。食後の眠気はお腹がいっぱいだからと言いますが実は低血糖が原因で起こっていることもあるということをご存知でしょうか。
近年は、血糖といえば糖尿病の原因となる高血糖への注意がよく聞かれます。しかし、血糖は低くても問題があるのです。低血糖を起こすのは糖尿病患者さんのインシュリン投与によるものだけではありません。
食事などの生活習慣でも起こるし、食後の高血糖が原因で低血糖を起こすこともあるのです。何が原因かわからない体の不調は低血糖が原因だったということもあるのです。ここでは意外と知られていない低血糖についてご紹介します。
気になる所から確認してみよう
血糖値とはなにか?
食事で摂取した炭水化物は消化されてブドウ糖となり血液によって全身に送られて様々な活動のエネルギー源となります。
この血液中のブドウ糖の濃度を血糖値といい、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンによって調整されています。血糖が上昇すると膵臓からインスリンが分泌されて肝臓、筋肉などへ運ばれます。
ここでインシュリンはブドウ糖を細胞の中へ取り込む働きをし、高血糖状態を解消するのです。しかし、何らかの原因でそのバランスが崩れると体に異常が表れます。
低血糖状態時にみられる症状は、体のだるさ・ふらふら感・冷や汗・手の震え・動悸・不安感・頭痛など(自律神経症状)や眠気・脱力・めまい・集中力低下・イライラ・不安感など(中枢神経症状)です。
もっと重症になると意識障害・痙攣・昏睡となり、大変危険です。
昏睡状態についてくわしくはこちらを見て参考にして下さい。
【関連記事】
昏睡状態とは4つの状態です【回復の可能性について解説!】
血糖値が下がる原因
血糖値が下がる原因としては一般的に以下のようなことがあげられます。
✅ 食事量(糖質量)が少ない
✅ 食事を十分にとらない飲酒
✅ 空腹時の激しい運動
✅ 通常より多く活動してエネルギーの消費
✅ 規則正しくない食事時間
✅ 糖尿病薬の量や時間の間違い
✅ 病気(インスリノーマ、平滑筋肉腫や肝がんなどの腫瘍、インスリン自己免疫症候群)
上記以外に、食事などにより急激に血糖値が上昇した時にそれを下げようとしてインスリンが過剰に分泌されて低血糖になる場合があります。急激な血糖値上昇による低血糖、実はこれが一番危険なのです。
低血糖の症状についてくわしくはこちらも参考にして下さい。
【関連記事】
低血糖が眠気や頭痛を誘う?【原因や対処法を詳しく解説!】
血糖値が下がると眠気が起こる2つの原因
脳の活動低下
脳は大量のエネルギーを必要とします。その唯一のエネルギー源がブドウ糖なのでブドウ糖が不足すると脳の活動が低下し、その症状として眠気やあくび、集中力が欠けるなどが表れます。眠気は血糖値低下のサインなのです。
生命維持システムの発動
血糖値が低下すると脳が生命維持システムを発動して眠気などの症状を起こして血糖値の上昇が必要だという合図を送ります。
これは突然やってくるのでびっくりすることもあるかもしれませんが本当に怖いのは低血糖を繰り返すことで脳が麻痺してこのシステムが発動しないままに意識がなくなり死に至るケースがあるということです。
眠気があるうちはまだシステムは正常に作動していますので、この段階で低血糖にならない対策が必要です。
血糖値が下がったらこんな対処法を試してみて!
応急処置
意識があれば糖分を摂る
糖分を取り血糖値を上げましょう。砂糖よりもブドウ糖の方が吸収は早いのでブドウ糖の方がお勧めです。ブドウ糖タブレットが市販されていますので便利です。低血糖を起こしやすいならば外出時にブドウ糖を常備しましょう。
なお、ジュースやアメを利用する場合には注意が必要です。なぜなら、ジュースは最近の糖分低下を求める傾向から糖分が少なく低血糖の改善にならないジュースが多くあります。
また、アメは溶けるまでにやや時間がかかり吸収されるのにも時間がかかるので緊急時には意味がない時があります。
意識障害を起こしている状態の時は周囲の人の協力が必要です。
固形や水に溶かしたものは誤嚥のおそれがあるので砂糖やブドウ糖を歯茎と唇の間に擦り込んでもらう必要があります。定期的に低血糖を起こすのならば周囲の人に前もって協力を依頼しておきましょう。
緊急時や救急処置で回復しない時は病院へ
病院では検査をして状況を確認した後ブドウ糖の点滴や血糖値を上げるホルモンであるグルカゴン注射をされることが多いですが低血糖そのものを治す薬はありませんので、いずれも対処療法です。
根本的な原因が別の病気にあるならばその病気の治療が必要になります。
予防
低血糖の予防で重要なのは糖尿病の方と同じく食事療法です。低血糖になりやすい方はインスリンの過剰分泌で膵臓が疲労してしまっていることが多いと言われますので膵臓を休ませるような食事をすることが大切です。
そのために、膵臓に負担をかけないものを食べるようにすることとその食べ方で血糖値の急上昇を抑えましょう。
まず、脂肪や糖質の多い食事を控えましょう。また、血糖値を急上昇させない食べ物を見分けるものに「GI値」というものがありますので参考にしましょう。
GI値とは、血糖値の度合いを示す指標です。
GI値の低い食べ物は血糖の上昇が緩やかでGI値の高い食べ物は血糖値を急上昇させることが分かっています。
そのため、糖尿病やダイエット中の方がこれを参考にして血糖上昇が緩やかなGI値の低い食べ物を選んで食べることが勧められています。
食べるものを選ぶ
普段の食事でGI値の低いものを摂取するよう心がけましょう。主食なら白米より玄米・麦・全粒粉です。玄米や麦が苦手ならば白米に麦を混ぜて炊くことで白米の割合を減らすという方法もあります。
また、低GI食品の肉・魚介類・卵・乳製品・野菜・海藻・きのこ類などを多く食べることも良いので主食を少なめにして野菜やおかずをたっぷり摂るようにすることで血糖値の急上昇を防げます。
また、ビタミンやミネラルなどの酵素を働かせるのに役立つ栄養素を摂取することも必要です。そのため、新鮮な生野菜や果物は豊富にとりましょう。朝食に旬の生の果物をヨーグルトとともに摂るのがおすすめです。
なお、間食にはナッツ類がおすすめです。ナッツ類にはビタミンB・ビタミンE、ミネラルを豊富に含みます。特にアーモンドやクルミがおすすめです。
クルミの効能についてはこちらを参考にして下さい。
【関連記事】
くるみの食べ過ぎは太る?【腹痛や6つの害にも要注意!】
食べる順番をかえる
食べる順番を工夫することで血糖値の急激な上昇を抑えることができます。
一口目にご飯やパンなどの炭水化物をとると血糖値が上がりやすくなると言われていますので、まず一口目は食物繊維を含む野菜やタンパク質などのおかずを食べ、その後に主食のごはんなどの炭水化物を食べるようにすることがお勧めされます。
間食をする
食事と食事の間隔が長いと低血糖症が起きやすくなるため2・3時間おきに少量のものを間食すると良いです。
血糖値が下がりきる前に少量を口にして血糖値を上げておくことで副腎髄質ホルモンが分泌されすぎて低血糖症の症状が出るのを抑えることができます。
例えば、午前は朝食から昼食までの間に1・2回の間食をとり、午後は昼食から夕食の間に低血糖症状が出やすいため2・3回の間食をとります。夕食から就寝までの間もヨーグルトや牛乳などを軽く摂ることが勧められます。
ここで注意してほしいのがチョコレートやアメなどのGI値が高いお菓子などを間食することです。これらは血糖値を急激に上昇させるので逆効果です。
アルコールは適量に
アルコールは低血糖を引き起こす要因の1つです。アルコール自体にインスリン分泌・感受性を抑える作用があります。アルコール摂取時には飲酒と同時に炭水化物も摂ることで低血糖を予防しましょう。
また、糖質ゼロと書かれていても油断はできません。多量に飲むと「ゼロ」の意味もなくなり糖質を取りすぎてしまうかもしれません。
アルコールは全く摂取してはダメなのではありませんので各々の症状に合わせて適量を飲み、休肝日を適宜持ちましょう。
まとめ
最近の健康ブームでは『○○が高いからダメだ』という文言がよく聞かれます。もちろん、高すぎるのはいけません。だからと言って低すぎるのもいけないのです。
私たちの体は様々なもののバランスからできています。何かが多すぎても欠けていてもいけないのです。今回は血糖についてでしたが、その他のものも同様です。
健康を保つのはバランスの良い食事から成る適度な運動です。過激なダイエットや運動では逆に健康を損ないますのでくれぐれもご注意ください。
当記事は医師、薬剤師などの専門家の監修を受けておりますが本サイトで提供する情報、文章等に関しては、主観的評価や時間経過による変化が含まれています。 そのため閲覧や情報収集は利用者ご自身の責任において行っていただくものとしその完全性、正確性、安全性等についていかなる保証も行いません。