適応障害での退職理由!【失業保険の受給についても解説】
<監修臨床心理士 鈴木崇弘>
適応障害とは、社会生活をするうえで発生するストレスへの対応がうまくいかず、精神的あるいは身体的な症状が起こることです。
仕事の悩み、生活の心配などに悩むうち、気分が落ち込み何もしたくないなどの精神的な症状が現われます。
また、並行してめまい、どうき、吐き気、頭痛、発熱、倦怠感などの身体的な症状も出てきます。
こんな状態が続き、仕事が手につかなくなり失敗も目立つようになると、もう苦しくて仕事が続けられない、やめて休みたいなどと思うようになります。
こんな時は、どうすればいいのでしょうか。適応障害での退職!となった時の対応、退職理由や失業保険の受給について解説します。
適応障害で退職したい。退職理由について
退職するにあたっては、いろいろな手続きがあります。手続きでは、何をするにも退職理由がついて回ります。
これには大きくわけて会社(雇用主)都合と自己都合の2種類があり、退職することになった原因によって区別されます。
会社都合退職
会社側の都合で退職する場合です。人員整理、経営悪化、組織改変、勤怠不良、定年退職などですが、定年退職を除き、勝手に解雇できないようきびしい制限が設けられています。
どうしてもやめてもらわないといけない合理的な理由が必要です。適応障害によって会社都合で退職となる場合は、現われた症状で仕事が続けられない状態にあることが考えられます。
具体的には気分がふさぎ無断欠勤を続ける、興奮しての暴言・暴力、長期にわたる休職や入院で退職勧奨される場合などがあります。
適応障害が考えられる人への接し方についてはこちらを参考にして下さい。
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自己都合退職
本人の意思による退職です。適応障害の場合はほとんどがこれに該当します。
会社側には何も落ち度がなく、ほとんどの人が問題なく仕事をしている状況であれば、会社側の責任は問えません。
問題のない仕事を多数の人がしていても、ストレスを受ける人だけが発症するという特性から、原因が仕事にあったとしても自己都合退職の扱いになります。
こうなると、退職金はいくらか減額されるのが普通です。雇用保険の失業給付期間も、会社都合退職に比べて短くなります。
その他、考えられる身体の不調についてはこちらを参考にして下さい。
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退職の決断
適応障害になると、倦怠感や吐き気、めまいなどの身体症状が続いて仕事が大変つらくなります。
家族の生活のため無理をして出勤すると、症状がよけいひどくなり、回復がむずかしくなる一方です。
適応障害の特徴として、ストレスの原因から遠ざかると症状は早々に消えてしまうことがあげられます。
原因のある場所に留まることは、症状も引きずることになります。悪化するとうつ病にもつながります。
自己都合で退職すると、家族の生活も心配だし、退職金が減るデメリットもあります。
派遣や試用期間中などの不安定な雇用だと蓄えも少なく、すぐに生活に困ります。
でも症状が悪化して後悔するよりも、早めに退職を決断して仕事から離れて休養し、元気な体で再就職を図るのもいい結果を生むことになるでしょう。
適応障害での失業保険の受給について
適応障害のため仕事に差し障りができて退職したとき、無収入になっても生活にこまらないために失業保険制度があります。
加入年数、年齢によって給付期間が、また加入時の収入によって給付額が決まります。
受給資格
退職して失業保険金をもらうためには二つの条件が必要です。まず雇用保険制度に加入していた期間が1年以上であることです。
もう一つは労働する意思があることです。加入期間については特例があります。
適応障害が理由で退職した人は医師の診断書があれば「特定理由離職者」に該当し、6ヵ月の加入期間があれば資格が得られます。
また、転職していた場合はそれぞれの会社での加入期間を合算できます。
働く意思については、ハローワークに求職登録をして、最低月1回求職活動をすることが必要です。
求職活動とは、求人情報を探して採用面接を受けたり、窓口で求職の相談をするなどです。
適応障害で働けないような身体症状があれば、この条件がクリアできなくなります。
受給延期の特例
適応障害の症状で退職時には働けない状態であれば、受給条件である労働する意思があるとはみとめられません。
当面失業手当は受けられませんが、申請することで受給手続きを延期することができます。受給資格の保留ということです。
退職後30日を過ぎてから1ヵ月以内に雇用保険者証と離職票、診断書を持ってハローワークで申請します。
病気の場合は特例で最長4年延長できます。この間に体調がよくなって働けるようになれば、改めて失業手当金受給の申請をします。
収入の補償
働けないことによる収入の補償は失業保険ではできませんが、代わりに健康保険の傷病手当金制度があります。
こちらの制度では最大1年6ヵ月間補償が見込まれますので、まったく収入がないという事態にはなりません。詳細は後述します。
受給金額、期間
1. 受給金額
受けられる金額は、「基本手当日額」によって決まります。退職前の収入と、年齢によって決められます。
退職前の一日当たりの収入の45%から80%が基本手当日とされ、収入が多かった人ほど減額率が高くなります。
収入が最高ランクの人はその45%しかもらえず、最低ランクの人は80%もらえます。詳しくは下記サイトを参照ください。厚生労働省の資料です。
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000091785.pdf
この日額に受給期間の日数をかけた金額が、受け取り総額になります。
2. 受給期間
受給期間は雇用保険加入期間、退職した理由、年齢などによって決まります。
障害者などの特例も設けられています。詳しくは下記サイトを参照ください。ハローワークの資料です。
https://www.hellowork.go.jp/insurance/insurance_benefitdays.html
決められた期間に達するまで、4週間ごとに、基本手当日額に28日をかけた金額が振り込まれます。
傷病手当金
傷病手当金は健康保険の補償制度です。病気やけがで仕事ができず、給料がもらえない場合、標準報酬月額の1年間の平均額の67%が補償される制度です。
退職日にこの制度の適用を受けていれば、退職後も一定期間継続して給付を受けられます。
最低でも退職前に適応障害の診断を受けて3日以上休んでいて、傷病手当金の申請をしていることが条件です。
退職後には継続給付金として、退職前の受給日数も含めて最長で1年6ヵ月の間手当てが受けられます。
退職日に実際に休んでいることが条件です。手続きは在職中にすませておく必要があります。忘れると退職後の生活に困ることになるので、注意が必要です。
手続きは普通総務の担当者がやることですが、わからないことは健保組合や協会けんぽに問い合わせてください。親切に教えてくれます。
適応障害の退職届の手続きについて
適応障害で退職しようと思った場合、おそらく円満退職ではないでしょう。
偏見や誤解、無理解に悩まされた末のことで、「辞表を出してやるだけでもましと思え」みたいな気持ちかもしれません。
ストレスが原因となる病気は他にも様々ありますので、参考にして下さい。
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思いはいろいろですが、退職となった時には、やはりきちんと退職手続きをする必要があります。
これがないと退職後のいろいろな手続きに支障が出て、給付金などが受けられないことにもなります。
まず会社に退職届けを出します。所定の様式がなければ、退職したい旨、退職日、理由、提出日、氏名が必要な項目です。
これらわかれば様式は何でもかまいません。できるだけ早く、最低でも退職希望日の14日前までに届くように提出します。
必ず挨拶文を添付します。相手の心証がよくなり、あとの手続きもスムーズに進みます。
また、お金がかかることですが、診断書も添付したほうがいいでしょう。
口では説明しにくいことでも診断書ならすなおに理解してもらえます。
民法の規定では労働者は14日前に通告すれば退職できるとされていますが、社会通念上は通告だけでなく仕事の引き継ぎや説明をすべきです。
個別にはいろいろ事情が考えられますが、いきなり退職届を郵送するというのは最悪です。
事前に上司なり総務関係者に退職したい旨伝えて、引き継ぎなどを進めるのが筋道です。
また、会社からの要望(業務上の問い合わせ、書類の提出、保険証の返却、私物の整理依頼などたくさんあります)にはできる限り応じます。
会社には、退職後も証明書類や源泉徴収票の発行などの頼みごとをすることも出てきます。関係を保っておくのは自分のためでもあります。
まとめ
退職は人生の一大事です。収入の途がとだえることなので、慎重に対処しましょう。
わからないことは会社の人間に聞くのがいやなら、担当の役所に問い合わせしましょう。
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