青い白目は病気ではない【白目に斑点がある時は早めの受診を】
<監修医師 豊田早苗>
普段あまり気にすることがない白目部分ですが、白目には様々な病気が現れることがあります。
中には発見が遅れることで、失明する病気が隠れている事もあります。
ここでは白目に関する内容と、注意したい病気についてみていきましょう。
気になる所から確認してみよう
人にだけある白目は進化の表れだった
「目は口ほどに物を言う」ということわざが示す通り、私達のコミュニケーションにおいて、目が占める情報の割合はとても大きいものになっています。
視線を向けることで“興味関心”の方向を示し、黒目の位置や大きさ、瞬きの回数で心理状態を表す、さらには目の動きで嘘まで見抜かれてしまう事もあるのです。
では、なぜ目の動き一つでこんなにも感情が伝わってしまうのでしょうか。
それは、人が持つ「白目」が関係しています。
動物の中で、目の中に白目の部分を持つ生き物は人間だけだと言われています。
正確には白目は強膜と呼ばれ、動物は全て強膜を持つのですが、人間のように目の大部分を占める程の白い強膜をもつ動物は他にいません。
なぜ自然界の動物に白目はないのかというと、目線の動きが相手に伝わる事で不利益を被る事があるからです。
自然界では獲物を狩る時や、敵から逃げる時、潜伏場所や次の行動が相手に伝わる事は死を意味します。このため視線や行動がばれにくい様に白目が発達せずにきたと言えます。
しかし人間は進化の過程で道具を作り出し、仲間と共同体を作り、連携して狩りを行うようになりました。
仲間とのコミュニケーションの中で、言葉以上に大切なものがアイコンタクトでのやり取りだったのです。このため白目が発達したと考えられています。
青い白目は病気ではない
人間が持つ強膜は白いと前述しましたが、なかには遺伝や体質が原因となって白目が青く見える事があります。
特に赤ちゃんや学童期にあたる年齢の子では、白目が青い子供をよく見かける事があります。
これは子供の頃は強膜が薄いため、その下にある成分が透ける事で青く見える事があるようです。
視力は正常ですが、強膜が薄く紫外線に弱いため、お日様の光が眩しく感じてしまいます。
心配せずとも、大人になるにつれ強膜の厚みが増して自然と白い白目に変わっていき、光に対する眩しさも軽減していきます。
しかし大人になってからも青い白目のままならば、青色強膜と呼ばれるようになります。青色強膜に加えて、他の合併症を起こしている場合はヴァンデルヘーベ症候群である可能性があります。
ヴァンデルヘーベ症候群は青色強膜が特徴
ヴァンデルヘーベ症候群は「青色強膜」「骨形成不全症」「難聴」を主症状とする病気です。
強膜が薄いため、目の静脈が透けて見えることで白目が青く見えているようです。
しかし視力に特に問題がないため、日常生活を送る上で困る事といえば、日の光が人より眩しく感じる程度でしょう。
しかし他に出現する症状は個人差が強いため、全く無症状の人もいれば、生まれつき骨形成不全によって骨折しやすかったり、両耳、片耳の難聴であったりと、症状の差がでやすいのが特徴です。
この病気は家族内の遺伝によるものとわかっていますが、中には遺伝子の突然変異で発症する人もいるようです。
完全な治療法はないため、対症療法が中心となってきます。
白目に黒い斑点の正体は結膜母斑
目の白目部分に茶色いシミのような物を見つけたら、結膜母斑かもしれません。
小さなシミであれば気になりませんが、目立つようになってくると病気や美容の面からも心配になりますね。ここでは結膜母斑の原因や症状、治療法についてみていきましょう。
結膜母斑の特徴
結膜母斑は目の白目部分にできる茶色をしたシミになります。大きさは数ミリ程度のもので、目頭側よりも目尻側にできやすい特徴があります。
基本的に凹凸がないものがほとんどですが、なかにはホクロのように少し盛り上がったような形をしたものがあります。この場合は結膜腫瘍と呼ばれます。
結膜母斑の原因
結膜母斑の基本的な考え方は、皮膚にできたシミやホクロと同じです。
原因は物理的な刺激、加齢、紫外線による影響が大きいようです。紫外線対策をしていない人や、目をゴシゴシとこする人、目の老化に伴いできやすくなります。
治療方法と対策
残念ながら結膜母斑は自然治癒しません。どうしてもシミを消したい場合は、レーザー治療によって消すことができます。
結膜母斑を、作らない、大きくしないためには外的な刺激を目に与えないようにすることです。紫外線を避け、目を強くこすらない、目に疲労を溜めないなどを心がけていきましょう。
結膜母斑は放置していると緑内障の危険性がある
結膜母斑はホクロやシミと同じため、基本的には様子を見ていてもよいでしょう。
しかし明らかにシミが大きく濃くなっていくときや、凹凸がひどくなってくるといった症状が見られたら注意が必要です。自己判断せず、一度眼科を受診するようにしましょう。
また、目に何らかの病気や症状を持つ人は緑内障になりやすいというデータが報告されています。以下に緑内障になりやすい人の特徴をあげました。
✅ 真面目な性格の人
✅ 家族に緑内障を持つ人がいる
✅ 強い近視がある
✅ 何かしら目の病気を持つ
✅ 冷え性
✅ 低血圧
✅ 頭痛持ち
✅ 生活習慣病を持つ
これらの症状や病気を持つ人は、緑内障にかかりやすいと言えます。
緑内障は初期の自覚症状が乏しいのが特徴です。このため気付くと視野欠損や失明をしていたという事例も少なくありません。
結膜母斑が大きい人やシミが濃い人は、一度緑内障の症状などもチェックしてみるとよいかもしれません。
ここでは緑内障の症状とその治療法を見ていきましょう。
緑内障とは?
緑内障とは目の中の圧力が高くなることで引き起こされる視野障害の事をいいます。
目の中では房水と呼ばれる水分が循環して目の細胞に栄養や酸素を送っています。
緑内障ではこの房水の出口である線維柱帯が何らかの影響で狭くなり、房水がうまく排泄されなくなるために目の中の圧力が増大、視神経を圧迫することで視野欠損が起こる病気です。
はっきりとしたメカニズムは未だ解明されておらず、眼圧が正常であっても緑内障様の症状を起こす人もいます。
一度視野欠損すると、治療を開始してもほとんど戻ることはありません。このため早期発見早期治療が重要になってきます。
中高年に多いと言われる病気ですが、近年ではスマートフォンやパソコンの影響からか、若年者にも多い病気となっています。このため潜在的な緑内障患者数は増加傾向にあると考えられているようです。
原因は?
緑内障のはっきりとした原因はわかっていません。
前述した性格や家族歴、冷え性、近視、低血圧、生活習慣病などが関係してくるのではないかと考えられていますが、若年者にも増えてきていることからストレスや環境、体質によるものではないかという意見もあります。
緑内障の症状
緑内障の進行は大きく分けて急性緑内障と慢性緑内障に分ける事が出来ます。
急性緑内障では急激な眼圧上昇に伴い、頭痛、吐き気、嘔吐、目の痛み、血圧の上昇といった症状が出るため比較的わかりやすいといえるでしょう。
しかし慢性緑内障では、視野欠損が少しずつ進行していくため、気付きにくいという特徴があります。
慢性緑内障の初期症状は、視力の低下、目のかすみ、目の疲労感、頭痛や肩こりといった症状があります。他にも片目ずつ目を閉じてみた時に、視野の一部が見えないといった症状が見られます。
また糖尿病や血管性の病変を持つ人の中で、飛蚊症を繰り返している人は緑内障を起こす人もいます。自己判断せず眼科を受診するようにしましょう。
治療
緑内障は眼圧を下げるために、まずは点眼薬による薬物治療を開始します。数種類ある点眼薬を試してみて、十分な効果が得られた場合は点眼薬による治療を継続していくことになります。
しかし薬物のみでは症状の進行が止められない場合は、無痛のレーザー治療や外科手術による、線維柱帯切除術を行い、房水の流れをスムーズにするための治療が行われます。
白目に黄色の斑点は瞼裂斑
目にできるシミは何も年齢を重ねた人だけではありません。若年者や子供にできる目のシミに、瞼裂班があります。
瞼裂班とは?
瞼裂班とは白目にできる黄色いシミや膨隆のことです。コンタクトレンズの刺激や紫外線による影響で目の表面に傷ができ、そこにタンパク質や脂質が沈着することでできる班になります。
基本的に様子観察で大丈夫ですが、膨隆しているためドライアイや炎症を起こしやすい病気です。
瞼裂班が炎症を起こすと瞼裂班炎と呼ばれるようになり、目の充血、痛み、目の違和感といった不快な症状が現れます。瞼裂班炎になってしまったら、点眼薬による治療が行われます。
治療と予防策
瞼裂班の治療は日常生活に問題がなければ経過観察という形になります。しかし膨隆が大きくなり瞬きが難しい、美容の面でのコンプレックス、などが考えられた場合は外科出術によって取り除く事も可能です。
ただし再発するリスクもあるため、手術を選択する場合は医師とよく相談の上行うようにしてください。
瞼裂班への対策は、目への刺激を減らすことです。ハードコンタクトレンズの人はソフトコンタクトレンズか眼鏡に変更する、目に入る紫外線対策をする事が必要です。
白目の色と、白目からわかる病気についてみていきました。今回の内容で、目の健康について考えもらえれば幸いです。
少しでも目に異常を感じたら、早期受診するよう心掛けてください。
当記事は医師、薬剤師などの専門家の監修を受けておりますが本サイトで提供する情報、文章等に関しては、主観的評価や時間経過による変化が含まれています。 そのため閲覧や情報収集は利用者ご自身の責任において行っていただくものとしその完全性、正確性、安全性等についていかなる保証も行いません。