食後横になると太るというのは嘘?【胃痛には注意して!】
<監修医師 田中 恵文>
「食後すぐに横になると太る!」と親や知り合いに言われたことはありませんか?そのせいで、食後ちょっと苦しくても、眠くても、我慢している方は多いのではないでしょうか。
いったい「食後横になると太る」という格言がどれくらい真実を持つのか、今回は解説していきます。最も注意すべきなのは実は胃痛でした!
食後なぜ眠くなるの?
まずは食後になぜ眠くなるのかを解説します。
食後眠くなる原因はどこにあるのか
「お腹が満たされると、何だか眠くなる」という経験がある人は多いのではないでしょうか。
しかし「満腹後に横になると太る」「食後すぐに横になると牛になる」という格言を思い出して、なんとか思いとどまっていませんか?そもそもなぜ、食後に眠くなるのでしょうか。
それは血糖値が大きく関わっているためです。食事で炭水化物(米、小麦粉など、主に主食に含まれている栄養素)を摂ると、血糖値が上昇します。
血糖値が上昇すると、余分な血糖値の値を下げるために腎臓が大量の水分を排出します。すると尿と共にエネルギー源のひとつである糖分が体外に排出され、強烈な眠気を催します。
腎臓の位置や機能についてはこちらを参考にして下さい。
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さらに血糖値を下げるためにインスリンが分泌されます。インスリンは血液中に増加したブドウ糖が他の細胞で効率よく利用できるように促す働きがあります。
また空腹を我慢してようやく食事にありつけた際も、食後の眠気が強くなります。これは空腹状態が長かったために、インスリンの分泌に異常が起きるためです。
さらに食事を摂ると自律神経のはたらきが副交感神経に切り替わります。副交感神経はリラックスしている際に活発になる神経なので、なおさら眠くなります。
食後に眠るのと横になるのは意味が違う
ところで、食後に睡眠をとるのと横になるのとは、実は意味が違います。日本語の意味の上では「横になる」というとき「横になって眠る」という意味でもとらえられることがあるため混合されがちですが、実際には違う行為です。
「食後に睡眠をとる」とは具体的には朝食後の二度寝、昼食後のお昼寝、夕食後の仮眠を指します。
床やソファ、ベッドで「ちょっとだけ眠る」という行為や椅子に座ったまま机に突っ伏すようにして仮眠を取ることも「睡眠をとる」という行為に当てはまります。
一方で、「横になる」とは、体を横たえる行為を指します。実は食後に横になるのは推奨されるべき行為で、食後の睡眠の方が危険性があるのです。
そのため、両者の違いを知っておく必要があります。「食べてすぐ横になる」という格言は行儀の悪さを戒めるための言葉です。実際にはどんな違いとメリット・デメリットがあるのか解説していきます。
食後横になるのはむしろ健康的!?
では実際に、なぜ食後横になった方が体にとってはプラスの意味を持つのか解説します。
消化を助ける
人間が口から食べ物を摂取すると、消化器官では摂取した食べ物を消化するための活動が開始されます。そのため、食事の直後から数時間は胃や十二指腸などに血液が集中します。
そのため、血液が自然な流れで消化器官に供給されるように、横になった方が体への負担が少なくなります。
特に胃の向きを考慮して、胃の出口が下側になるように体の右下を下にして横になるのが最適です。胃下垂の人は特に、食後でなくても眠る際は体の右側を下にした方が負担が少ないです。
また肝機能も横になると促進されます。食後すぐに運動してしまうと、血流が筋肉に集中して消化不良を起こします。入浴も体の別の部分の血行を良くしてしまう可能性があるので、食後すぐにはおすすめできません。
まず食後はリラックスした姿勢で背もたれのある椅子に座るか、体を少しだけ横にするといいでしょう。足を上げることも効果的です。
なお、食後すぐにうつぶせになってごろ寝をするとガスが溜まりやすくげっぷがとまらなくなるので姿勢には要注意です。
姿勢についてはこちらを参考にして下さい。
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ダイエット効果がある
「食べ物を吸収してしまったらますます太る!」と考えてしまう方もいるかも知れませんが、それは考え違いです。むしろ、口にした食べ物からきちんと栄養を摂取できないからこそ、太りやすい体質になるのです。
食後に横になり消化を助けると基礎代謝への負担が減ります。すると浮いた分のエネルギーは脂肪燃焼へとまわされることになり、太りにくい体質に変えることも可能です。
食後眠ってしまうのは太るし危険?!
食後横になる場合はお行儀はあまり良くないと教えられてきましたが、実は体のためにはプラスになることが多いです。
しかし、睡眠は注意が必要です。その理由について、解説します。
消化不良を引き起こす
人間は眠っているとき、呼吸などの必要最低限の機能を残し、他の機能は省エネモードに切り替わります。脈拍や血圧低下が起きるものです。
そのため、消化吸収機能もスローモードに切り替わります。つまり、眠る寸前まで食事をしていた場合、まだきちんと消化されていない食べ物が腸へと送り出されてしまうのです。
しかるべき工程を経なかった食べ物はそのまま腐敗し、腸内環境を悪化させる原因となります。食べ物を栄養素に分解させる酵素は少ない量で頑張らなければならず、その結果基礎代謝は働きが低下してしまいます。
そのため消化不良を引き起こしてしまうのです。
特に妊娠中の女性は眠気を感じやすいものですが、便秘や下痢といった消化器官のトラブルも抱えやすく、食後すぐに眠ってしまうと体調に悪いです。妊婦さんは食後すぐの睡眠には要注意です。
妊娠中気持ち悪い場合の対処策についてはこちらを参考にして下さい。
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太りやすい体質になる
ただしく消化吸収されないと、蓄積される脂肪量が増加してしまいます。これは、少ない栄養素で生き残ろうとする体の本能です。
とはいえ、きちんと食事を摂っているはずなのに必死に体が脂肪を溜めようとしてしまうと、当然のことながらカロリーオーバーに陥ります。そのため太りやすい体質になってしまうのです。
せっかくのバランスの良い食事も、太りやすい体質になってしまうと台無しです。リバウンドもしやすくなりますから、食後すぐに眠るのは辞めた方が良いでしょう。間食もやめた方が、眠りタイミングをはかるためにはベストです。
肌荒れの原因になる
基礎代謝はすなわち、肌の質を維持するために必要不可欠な「ターンオーバー」に繋がります。食後すぐに眠ると基礎代謝が低下してしまうお話はしましたが、基礎代謝が下がるとターンオーバー力が下がります。
その結果、今までは自力で分解できていたメラニンがそのまま色素沈着を引き起こすこととなり、シミやソバカス、ニキビの原因となります。あっという間に肌荒れしてしまうというわけです。
睡眠の質が下がる
「身体に悪いのは分かっているから眠ってはいけない」と思いつつ睡眠をとってしまうと、非常に浅い睡眠になります。睡眠は摂った時間ではなく質に左右されるものです。
そのため、食後すぐに睡眠を摂ると質が下がり体に負担がかかります。また自律神経の調節がうまくいかず、ひどい寝汗をかいてしまうことにもなります。
お昼ご飯の後のお昼寝は午後の作業の効率が上がるとも言われていますが、それも15分ほどの短い睡眠の場合です。
夜に眠らず昼寝を繰り返すと体内時計が狂ってしまい、睡眠の質も下がりますから食後睡眠は我慢した方が良いでしょう。
睡眠の質を高めるポイントについてはこちらを参考にして下さい。
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脳にダメージ
食後は消化のために血流が消化器官に集中し、脳血流は低下します。そのため脳の活動は低下してしまい、その状態で睡眠をとると脳にダメージが蓄積されてしまうことになるのです。
睡眠を摂る間は体全体が省エネモードに入るため、少ないエネルギーで脳を稼働させなければなりません。しかしそのすくない血流が脳に回らないために、ダメージになってしまうのです。
胃痛に注意!食後睡眠の症状
食後に睡眠を行う「食後睡眠」が身体に悪いことはご紹介しましたが、「それだけですむならまあいいか」と軽く考えていませんか?
実は、食後睡眠がクセになると病気を発症するリスクが高まります。一体どんな可能性があるのか解説します。
糖尿病
実は、食後睡眠を強く感じる人は糖尿病の恐れがある場合が多いのです。昼間であっても食後2~3時間以内に強烈な眠気を感じる場合は、糖尿病の検査を病院で受けましょう。
糖尿病であれば、食事制限や運動によって血糖値を下げたりと、さまざまな治療を継続して行う必要があります。
慢性胃炎・胃潰瘍
腹痛や胸ヤケ(胸の不快感)を感じる消化器系の疾患です。何らかの理由で胃酸過多の症状が引き起こされ、粘膜の一部が消化されてしまい壊れてしまう病気です。
胃酸過多はストレスの他、食後睡眠などの生活習慣によっても引き起こされます。症状が悪化すると胃に穴が空いてしまいますので、注意が必要です。
逆流性食道炎
食後睡眠に限らず、横になることも要注意なのが逆流性食道炎です。これは胃酸が食道に逆流することにより起こる病気で、胃酸によって食道の粘膜が傷つきます。
腹痛に限らず、吐き気や嘔吐、酷い場合は下血もあり得ます。胃液が逆流する恐れがあるため、完全に横になるのではなく、背もたれ付きのソファなどで楽な体勢を取った方が良いでしょう。
慢性化すると食道癌の原因にもなりますから、気になる方は精密検査を受けて早期発見に励みましょう。
高齢者に多く、看護をする人間には注意が必要とされる疾患ですが、食後睡眠でも起きる可能性はありますので年齢に関係なく注意が必要です。
逆流性食道炎の治療についてくわしくはこちらを参考にして下さい。
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脳卒中
食後は消化のために血が消化器官に集中します。そのままで眠ると脳に必要な血流が回らず、脳梗塞に近い状態になります。
そしてこの行為が日常化すると脳卒中を引き起こしやすい体質になってしまいます。
研究によると、食後一時間以内に睡眠をとるひとは、1時間以上たってから睡眠をとるグループよりも脳卒中のリスクが4割以上高いという結果が出ています。
急性冠動脈疾患
冠動脈が急に塞がって起きる病気です。こちらも食後睡眠により正常な血流が阻害された場合に引き起こされやすくなります。
動脈が塞がった位置によっては心筋梗塞や狭心症などが起きる原因となるので見逃せません。胸に突発的な痛みを感じたり、息切れ、動悸、異常などの疲労を感じたら早めに病院で診察を受けましょう。
食後の睡眠が体に与える悪影響についてお伝えしました。横になって消化を助けるのは問題ありませんが、睡眠をとると太りやすい体質になるほか、深刻な疾患の原因となる場合もあります。食後3時間は眠らないように注意しましょう。
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