鼻の奥が痛い時の治し方【頭痛や風邪以外の症状も見逃さないで】
<監修医師 豊田早苗>
皆さんは鼻の奥が痛くなった経験はありますか。ツーンとした痛みは不快なものです。
鼻は意外にも様々な働きをしているため、乾燥などちょっとしたことが原因で痛くなったりするのです。今回は鼻の奥が痛む原因や対処法について紹介します。
気になる所から確認してみよう
鼻の構造は結構複雑
鼻は意外と複雑な構造をしており、ここではその構造について説明します。鼻は外鼻(がいび)、鼻腔(びくう)、副鼻腔の3つから構成されています。
外鼻
外鼻は鼻を外側から見たときの名称です。鼻を正面から見たとき、根元を鼻根、先端を鼻尖(びせん)と言い、その中間部分を鼻背(びはい)と言います。
鼻孔(びこう:鼻穴のこと)を仕切っている中央部分を鼻柱(びちゅう)と言い、小鼻の部分を鼻翼(びよく)と言います。鼻は上半分が骨で構成され、下半分は軟骨で構成されます。
鼻腔
鼻腔の構造を理解する上でポイントになるのは、3つの骨で仕切られた3つの通路です。
鼻穴(鼻腔)は鼻中隔(びちゅうかく)によって左右に分けられます。
左右それぞれから3つの骨が張り出しており、それらを上鼻甲介(じょうびこうかい)、中鼻甲介(ちゅうびこうかい)、下鼻甲介(かびこうかい)と呼びます。
さらに、この鼻甲介の張り出しによって、空気の通り道は上鼻道、中鼻道、下鼻道の3つに分けられています。
鼻腔は血管が密集した粘膜で覆われています。上鼻道には、においを感知する嗅粘膜があります。
鼻の中がかゆい原因についてはこちらを参考にして下さい。
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副鼻腔
副鼻腔とは鼻腔周辺にある空洞で4つ(左右に一対ずつ)あります。
額の上側にある前額洞(ぜんがくどう)、目の間にある篩骨洞(しこつどう)、鼻の奥にある蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)、歯の上にある上顎洞(じょうがくどう)です。
副鼻腔は細い孔で鼻甲介に通じており、鼻呼吸によって空気の交換が行われています。副鼻腔も鼻腔同様、粘膜で覆われています。
鼻は体にとって必要不可欠な部位
鼻は空気を出し入れする呼吸器官でもあり、においを感知する嗅覚器官でもあります。ここではそんな鼻の4つの役割について説明します。
空気を取り込む
鼻腔は空気を出し入れする始めの呼吸器官です。吸った空気(吸気:きゅうき)は主に上鼻道を通り、吐く空気(呼気:こき)は中鼻道や下鼻道を通ります。
取り込んだ空気を加温・加湿する
鼻腔は冷たい外気で気管支や肺を痛めないように、吸い込んだ空気を加温・加湿しています。鼻腔を通過する間に気温25~37℃、湿度35~80%に調節されます。
ほこりなどを吸着・除去する
鼻腔粘膜から分泌される粘液や線毛(鼻毛のこと)によって、ほこりなどの異物を吸着し、排泄する働きをしています。これを粘膜線毛運動と言います。
また、異物が入った際にくしゃみを出して排除する反応をくしゃみ反射と言います。くしゃみや咳などの反射は、私たちの体に備わった生体防御反応なのです。
においを感じる
上鼻道には嗅(きゅう)粘膜という嗅覚器があります。嗅粘膜にある嗅細胞がにおいの情報を脳に伝えることで、においとして感知することができます。
嗅粘膜は切手サイズほどの大きさですが、人間は数千から1万種類くらいのにおいを嗅ぎ分けられるとされています。
8月7日は鼻の日
語呂合わせで8月7日は「鼻の日」とされています。1961年に日本耳鼻咽喉科学会が制定しました。この日は、鼻以外にも「花の日」、「バナナの日」でもあります。どれも語呂合わせなのが共通しています。
鼻の奥が痛い!4つの原因
さて、鼻の奥が痛むときにはどんな原因が考えられるのかについて説明します。
低温・乾燥
まず考えられるのは気温が低すぎる、または湿度が低すぎる場合です。前述した通り、鼻は外気を加温・加湿する役割を担っています。
しかし、あまりに低温・低湿だと鼻が対応できず、粘膜が冷やされ乾燥し、痛みとして感じてしまいます。
喫煙
タバコには様々な化学物質が含まれます。その化学物質が鼻の粘膜を刺激するために自律神経のバランスが崩れ、鼻水が過剰に出たり、粘膜の血管が拡張して鼻づまりを起こします。
痛みとして感じる場合もあります。これらの影響は喫煙者本人にも周囲の人(受動喫煙)にも出ます。
喫煙の身体への影響についてはこちらも参考にして下さい。
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鼻のかみすぎ
何度も鼻をかむと、鼻の粘膜に負担がかかり痛みを感じることがあります。また、風邪、花粉症などになると鼻粘膜が炎症を起こすため、痛みを感じることがあります。
耳鼻科系の病気
病気が原因となって鼻の奥(またはのどの上の方)が痛くなる場合があります。詳細については後述しますが、風邪、ドライノーズ、花粉症、副鼻腔炎、上咽頭(いんとう)炎、悪性腫瘍(がん)などが考えられます。
花粉症についてはこちらも参考にして下さい。
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鼻の奥の痛みと頭痛がある時は病気の疑い
鼻はのど、耳、目とつながっている器官のため、「鼻の奥が痛い」という症状だけでは原因となる病気を特定できないこともあります。
ここでは、病気が疑われる場合、併発する症状について説明していきます。
頭痛
インフルエンザの場合は、鼻の奥の痛み(のどの痛みと感じる場合おあります)、頭痛、関節痛、倦怠感(全身のだるさ)、寒気などの症状があり、39℃以上の高熱が出ます。
予防接種を受けた人や高齢者などは高熱が出ないこともあります。これらの症状が出た場合は近所の内科を受診し検査を受けましょう。
発熱
風邪の場合もインフルエンザと症状が似ています。インフルエンザほどの高熱でないことが多く、微熱に留まることもあります。
鼻水、鼻づまり、のどの痛み、せき、痰などインフルエンザよりも多彩な症状であることが多いようです。
鼻水
副鼻腔炎の場合は、黄色っぽいまたは緑色で粘り気の高い鼻水が特徴的です。鼻水に臭いがすることもあります。
花粉症、その他のアレルギー性鼻炎、急性鼻炎(鼻風邪)の場合は、透明でサラサラした鼻水であることが多いです。
鼻づまり
副鼻腔炎、花粉症、アレルギー性鼻炎、急性鼻炎(鼻風邪)、鼻ポリープなどで鼻づまりが起こります。
鼻づまりに関してはこちらも参考にして下さい。
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鼻血
鼻血がよく出る病気としては耳鼻科系の病気、全身の病気の可能性があります。耳鼻科系の病気は上顎洞がん、上咽頭(いんとう)がんが考えられます。
全身の病気は白血病、血友病、高血圧症、動脈硬化症、肝炎・肝硬変などです。
上顎洞がんのその他の症状としては、物が二重に見える、歯痛、頬の痛みなどがあります。上咽頭がんは鼻づまり、耳が聞こえづらい、物が二重に見えるなどが出ます。
血友病は血液中の凝固因子が少ないために血液が固まりにくくなります。白血病は正常な血液を作り出すことができず、貧血、出血が止まりにくいなどの症状が出ます。
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痰
痰は色や性状が病気を判断する材料になります。白~淡黄色で膿性(どろっとした)痰は急性咽頭炎、肺炎、急性気管支炎などが考えられます。最もポピュラーな痰です。
緑色で膿性の痰は慢性気管支炎、気管支拡張症などで見られます。さび色で膿性の痰は肺腫瘍などで見られます。
透明~白色の粘液性(膿性よりはとろっとしている)の痰はアレルギー性気管支炎、COPDなどで見られます。透明~白色の漿液(しょうえき)性(さらさらした)の痰は気管支喘息などで見られます。
血痰(けったん:血混じりの痰)は肺がん、肺結核などで見られます。
せき
せきが出る病気は症状の持続期間や性質によって異なります。症状が3週間未満の場合は風邪、気管支喘息、気管支炎、急性肺炎、うっ血性心不全、アレルギー性鼻炎などが考えらます。
症状が8週間以上と長期間に及ぶ場合は肺結核、肺がん、咳喘息、COPD、間質性肺炎などが考えらます。
湿性咳嗽(しっせいがいそう:痰が絡んだような咳)の場合は、気管支炎、副鼻腔炎、肺がん、肺結核、COPDなどの可能性があります。
乾性咳嗽(かんせいがいそう:空せき)は過敏性肺炎、間質性肺炎、咳喘息などで見られます。
顔面の腫れ・感覚鈍麻
顔面が腫れて、感覚鈍麻(どんま:感覚が鈍くなること)を伴う病気としては腫瘍が考えらます。良性の場合と悪性(がん)の場合がありますが、どちらの場合も耳鼻科での精密検査が必要となります。
鼻の奥の痛みが続く時は早めの検査
見出し4と重複する部分もありますが、ここでは鼻の奥の痛みが続く場合の病気について説明します。
乾燥性鼻炎(ドライノーズ)
ドライアイという病気があるようにドライノーズという病気もあります。ドライノーズとは鼻の中の粘膜が乾燥し、乾燥感、ムズムズ感、ピリピリとした痛みを伴います。
ムズムズしていると鼻をかみたくなるのですが、鼻水は出ません。進行すると出血や炎症の原因となります。最近は気密性の高い建物に冷暖房完備という環境が整っています。
しかし、そういった恵まれた環境は乾燥を招いてしまい、長期間過ごすことがドライノーズの原因になると考えられています。
ドライノーズの治し方についてはこちらを参考にして下さい。
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上咽頭炎
上咽頭は鼻の奥の方にあたります。上咽頭炎とは上咽頭に細菌やウイルスが付着・感染して炎症を起こした状態を言います。
上咽頭炎になると、耳のつまり、鼻と喉(のど)の間の焼けるような痛み・乾燥感、発熱、鼻水、痰、後鼻漏などの症状が出ます。
1~2週間で症状が治まるものを急性上咽頭炎、それ以降も症状が続くものを慢性上咽頭炎(ただし発熱の症状は見られません)と言います。
副鼻腔炎
副鼻腔炎には急性副鼻腔炎と慢性副鼻腔炎があります。正式名称ではありませんが、慢性副鼻腔炎のことを俗に蓄膿症と呼ぶことがあります。
急性副鼻腔炎は細菌感染が原因となり、慢性副鼻腔炎は鼻腔と副鼻腔をつなぐ孔(あな)が何らかの原因で狭くなり、副鼻腔内の空気循環が悪くなるために起こります。
副鼻腔炎の症状は鼻水、鼻づまり、鼻の周辺(頬、目、歯の辺り)の痛み、鼻水がのどの方に垂れる(後鼻漏(こうびろう)と言います)、においが分からなくなるなどがあります。
鼻水は黄色もしくは緑がかった粘り気の高いものになり、臭いを伴うこともあります。花粉症よりも鼻の症状が長く続くのが特徴です。現在は抗生物質の投与によって、症状の改善が見られますので早めに耳鼻科を受診しましょう。
鼻ポリープ
鼻ポリープとは副鼻腔にできる良性の腫瘍(ポリープ)のことで鼻たけとも呼ばれます。鼻ポリープは症状がないことも多いのですが、最も多い症状は鼻づまり、次に鼻水、後鼻漏が見られます。
一部の人は慢性副鼻腔炎を合併しています。また、ポリープが大きくなると口呼吸になったり、嗅覚の低下、睡眠障害を伴うこともあります。
腫瘍
まれですが良性腫瘍や悪性腫瘍(がん)が原因となることもあります。鼻の奥の痛みの他に、顔の感覚鈍麻(感覚が鈍くなること)や腫れ、鼻血などがあります。
これらの症状が見られた場合は早急に耳鼻科を受診しましょう。
鼻の奥が痛い時の7つの治し方
保湿する
乾燥すると鼻の奥が痛みやすくなりますので、湿度は50%~65%程度になるように加湿器を使用するなど工夫しましょう。室内で洗濯物(タオルなど)を干したり、観葉植物を置くのも湿度を保つコツです。
また、乾燥しやすい冬はストーブやエアコンでも室内が乾燥しますので、湿度計を設置し、湿度が下がりすぎないように調節しましょう。
その他にも入浴時にゆっくり湯船に浸かったり、生理食塩水入りの点鼻薬(鼻スプレー)を使用すると鼻が保湿されます。
温度差に注意する
急に寒いところに出ると鼻の奥が痛みやすいため、マスクをしたり、マフラーなどで鼻を覆うと良いでしょう。また、下がった気温に体が慣れるまで一気に空気を吸い込まないようにするのも一つです。
鼻うがいをする
鼻うがいは生理食塩水や専用の洗浄液を使って鼻の中を洗浄します。水道水を使用すると浸透圧の違い(生理食塩水などは人の体液と同じ0.9%になっています)によってツーンとした痛みが出てしまうため避けましょう。
鼻うがいは粘膜に付着した花粉や細菌などの異物を洗い流してくれるため、風邪予防、花粉症対策になります。また、鼻炎・鼻づまりも改善できます。
初めて鼻うがいに挑戦する方は、市販されている専用の鼻うがい器具を使用するとやりやすいでしょう。
鼻のかみ方を工夫する
鼻に負担のかからないかみ方は、①片方ずつかむ(このときもう片方の鼻はしっかり押さえましょう)、②ゆっくり、優しく小刻みにかむ(一気にかもうとすると、鼻腔内に過度な圧力がかかり痛めます)、③鼻をかむときに口から息を吸う(鼻水を効率良く押し出すために、口から空気を取り込んでおきましょう)です。
また鼻の奥ではありませんが、鼻のかみすぎによって鼻の下がヒリヒリした経験をしたことのある人も多いと思います。
風邪を引いたとき、花粉の飛散時期などは、少し高価でも柔らかい紙質のティッシュを使った方が、鼻の下の皮膚への負担も少なくすみます。
鼻の下や鼻の中が乾燥してピリピリするときはローションやワセリンなどで保湿するのも良いでしょう。
ツボを押してみる
風邪の引き始めや鼻炎などに効くとされているツボを御紹介します。
1. 合谷(ごうこく)
親指と人差し指の付け根にあるツボで押すと若干の痛みを感じます。喉のイガイガ、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの風邪の引き始めにかなり効果があると言われています。
5分程度、少し強めに押すのがポイントです。
また、合谷は便秘改善、血圧降下作用などもあり、万能のツボとされています。
2. 大椎(だいつい)
首の付け根付近に骨のでっぱりがありますが、その根元に大椎があります。鼻や喉の痛み・不快感の緩和、寒気の緩和、解熱作用があるとされています。
自力で押しにくい場合は、カイロやドライヤーなどで温めると効果的です。2~3分押しましょう。
3. 天柱(てんちゅう)
天柱は後頭部の髪の生え際、両耳の下端ぐらいの高さにあるツボです。左右にあります。鼻づまり・鼻水の緩和だけでなく、頭痛や疲労、だるさの軽減もしてくれるツボです。
指圧が痛いという人はホットタオルやドライヤーなどで温めるのも良いです。
市販薬を試す
原因となる病気が何か分からないときは早めに医療機関を受診して、医師の処方する薬を使用するのがベストです。
症状は、同じ鼻水・鼻づまりであっても風邪の場合、花粉症の場合、副鼻腔炎の場合とで対処法が異なってくるためです。
原因が分かっている場合は、近所のドラックストアやインターネットなどで市販薬を常備しておくと良いでしょう。どの薬にも副作用があるため、特に持病がある人は、必ず効能と同時に副作用も確認しましょう。
発熱・痛み(頭痛・咽頭痛・関節痛など)がある場合はアセトアミノフェン、アスピリン(アセチルサリチル酸)、イブプロフェン、ロキソプロフェンなどの解熱鎮痛成分がお勧めです。
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鼻水・鼻づまりなど鼻の症状が強い場合はマレイン酸クロルフェニラミン、フェキソフェナジン塩酸塩、エピナスチン塩酸塩、塩酸プソイドエフェドリンなどが配合された薬が良いでしょう。
せき・痰の症状が強い場合はリン酸ジヒドロコデイン、塩酸ブロムヘキシン、L-カルボキシステインなどが配合された薬がお勧めです。
医療機関を受診する
症状が強い場合や小見出し1~6の方法を1週間程度試してみても改善が見られない場合は、耳鼻科や内科を受診しましょう。
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