b型肝炎は完治するの? 【新薬の効果や注意点を徹底解説!】
<監修医師 吉野 聖奈>
肝炎にはアルコール性・薬剤性・ウイルス性と色々ありますが、その中でも特にウイルス性肝炎その中でもb型肝炎について完治するのか、新薬の効果や注意点は何かを中心に解説します。
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b型肝炎とはどんな病気なのか
肝炎とは肝臓の細胞が壊れ働きが悪くなる病気で、原因は肝炎ウイルス、アルコール、肥満、薬剤などがあります。
肝炎ウイルスにはA、B、C、D型の4種があり肝炎ウイルスに感染すると多くの場合急性肝炎となり、まれに劇症肝炎を起して死亡することがあります。
肝炎ウイルスによる肝炎は、ウイルスが肝臓の細胞の中に入って直接細胞をこわしているのではなく、このウイルスを排除しようとする免疫機能(めんえききのう)が働いてウイルスだけではなく肝細胞(かんさいぼう 肝臓の細胞)ごと破壊してしまう事で炎症が起きます。
急性肝炎は数ヵ月で治る場合もあるが、慢性化した場合は肝硬変や肝癌へ進行することもある病気です。患者数は推定で全世界で約3億5,000万人、日本では約150万人(およそ100人に1人)いると言われています。
ウイルス性肝炎の中でb型肝炎はB型肝炎ウイルス(HBV)の感染が原因で起こる疾患です。
肝硬変についてくわしくはこちらを見て参考にして下さい。
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b型肝炎にかかる2つの原因
治療の目的は「肝硬変への進展や発がんをおさえて長生きすること。毎日を快適に過ごすこと。」で、まず肝炎にかからない事が重要ですがその原因について解説します。
HBVの含まれる血液や体液が体内に入り感染する事が原因ですが、その感染経路によって2つに分けられます。
垂直感染
b型肝炎ウイルスに感染した母親から赤ちゃんに感染することをいい母子感染(母子感染防止策を取られる以前)と言います。
出生した子供に対しb型肝炎ウイルスの感染予防をせずに放置した場合は無症候性キャリア(肝炎の症状が出ていない状態をいいます)になり、そのうち10~15%が慢性肝炎を発症します。
水平感染
性交渉、ピアスの穴あけや入れ墨などで器具の無消毒、注射器を共用し麻薬などを注射するなどして感染することが多いです。
水平感染で検査により現在は改善(ほとんど感染無し)されていますが、医療従事者の針刺し事故、ツボの針治療、献血、予防接種での注射器の使いまわし、HBV に汚染された血液の輸血、臓器移植を行った場合などで感染が起きる事があります。
b型肝炎に感染したらどんな症状がでるのか
発症してでる症状に男女差はなくいずれも発症することがわかっています。また個人差があり、症状が出るまで約1~2ヵ月かかります。
ウイルス肝炎はその状態から4つに分けられています。
無症候性キャリア
免疫機能が働いていない状態で肝炎ウイルスと共存している状態をキャリアと言い、症状は出ていません。
急性肝炎
ウイルスが免疫機能によって急速に排除される状態で、全身倦怠感、食欲減退、濃い色の尿が出る、発熱、黄疸など様々な症状を伴います。
但し発症するのは1/3で多くは自然に治ることがあります。安静にしていれば2~3ヶ月で自然に治るがまれに劇症化する事があります。
慢性肝炎
感染した細胞の一部が壊され、一部は残るという状態を繰り返し、ウイルスが消えることなく生き続けている状態の持続感染者をいいます。
この状態が長く続くと肝硬変を経て肝癌に進み末期になりますと様々な症状がでます。
劇症肝炎
急性肝炎が急激に悪化した状態で、高度の肝不全(かんふぜん 肝臓の機能が失われる状態)と意識障害が見られます。40℃近い発熱や起きあがれないほどのだるさ、強い吐き気等が一度に現れます。
また、意識障害が現れ昏睡状態(肝性昏睡 かんせいこんすい)に陥ることもあり発病した人の70~80%が死亡する重篤な病気です。
b型肝炎の3つの対処方法
治療目的はウイルスの増殖を低下させ肝炎を鎮静化させる事です。対処法には3つの方法があり、年齢によって治療ガイドラインが少し違う場合があります。
抗ウイルス療法
肝機能の指標のひとつでALT値(エーエルティ 高値の場合肝臓の炎症が活発で肝機能が低下している事を表す)が正常値上限の1.5倍以上が2ヶ月持続した場合に治療を行い、インターフェロンと核酸アナログ製剤を使用します。
年齢(35歳未満か35歳以上か)、ウイルス量(高いか低いか)、HBe抗原陽性の有無(HBe抗原 エッチビーイーこうげん HBVを構成するタンパクで陽性の場合HBVが肝臓で活発に増殖しており感染力が強い状態を示します)で使用薬剤などが変ってきます。
35歳未満でHBe抗原陽性の場合、インターフェロン(IFN)治療をおこない、陰性の場合経過観察を行います。
35歳以上でHBe抗原陽性の場合、核酸アナログ製剤(エンテカビル等 バラクルー等〉の服用、インターフェロンの併用治療を行い、陰性の場合は核酸アナログ製剤を使用します。
肝庇後護療法
肝臓に栄養を与えて肝臓を保護したり、炎症を抑える事で肝がんへの移行を防止する療法でインターフェロン療法を行えない患者や副作用の強い患者に使用します。
使用薬剤はグリチルリチン製剤、ウルソデオキシコール酸、小柴胡湯を使用します。小柴胡湯(しょうさいことう)は間質性肺炎(かんしつせいはいえん)の副作用が報告されていますので、使用時は注意が必要です。
くわしくはこちらを見て参考にして下さい。
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免疫療法
ステロイドリバウンド療法はステロイド(プレドニゾロン等の副腎皮質ホルモン剤)を使用し意図的にHBVを増殖させ急にステロイドの使用をやめるとそのリバウンド(反作用)で本人の免疫力が活性化しウイルスを一気にたたくという治療です。
年齢によって治療ガイドラインが少し違う場合があります。この治療は肝機能が改善している人で治療に耐えられる肝臓機能が必要なため患者の誰でもいいというわけにはいきません。
また、肝硬変、肝機能検査値が正常値より高い方、ウイルス量が高い方はこの治療法は行えません。
肝機能のチェックについてくわしくはこちらを見て参考にして下さい。
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b型肝炎新薬の登場
B型肝炎の治療に使われる核酸アナログ剤の従来薬として
✅ ラミブジン(ゼフィックス)
✅ アデホビル(へプセラ) ✅ エンテカビル(バラクルード) |
が使われています。これらの薬剤の作用機序は直接b型肝炎ウイルス(HBV)に対して抗ウイルス作用を示しウイルスの増殖を抑える事でb型肝炎を治療しますが、これらの薬剤に耐性を持ったHBVが出現する事が問題でした。
そこで耐性が出来にくい新薬テノホビル「テノゼット錠」が2014年3月24日に認可されました。この薬はもともと抗HIV薬(こうエッチアイブイやく エイズの治療薬です)として品名は違いますが使われていました。
ウイルスをなくす特効薬はまだありませんが、持続感染者のウイルス鎮静化をはかり肝硬変や肝がんへの進展を防いでいます。
また、抗がん剤治療と同じようにIFN療法(インターフェロン)は初期に入院して治療を受けたりして治療費が高額になるため公費補助が認められています。
また、膠原病や糖尿病を発症している人はb型肝炎で症状が悪化する事がまれにあります。
赤ちゃんへの口うつし食事など唾液による感染、飲酒の際の回し飲み、お風呂、親子、夫や妻とのキス、くしゃみなどの飛沫などの空気感染などで簡単に感染しませんが、感染者やウイルス保持者の体液や血液に接触したり体内に入れると感染しますので日常生活上の注意を守ることで感染防ぐ事が大事です。
家庭で簡易検査キットを使い抗体検査をすることも可能になっていますので、気になればまず自分で検査し、その後医療機関で詳しく検査してもらうことも可能です。
また、厚生労働省によりますと、2016年10月よりb型肝炎ワクチンの原則無料の定期予防接種になる事が発表されています。
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